2021年度書評一覧
『英文学研究』 [第98巻、2021年] から(評者:石倉和佳氏)
美学イデオロギー
商業社会における想像力
大河内昌著『美学イデオロギー』が、『英文学研究』(第98巻、2021年、日本英文学会発行)で紹介されました。個々人が自らの情念にしたがって利益を追求する社会は調和しうるのか —— この政治経済学の問いは、あからさまに美学的であり、しかも近代英国の道徳哲学からロマン主義文学までを貫く根本問題だった。テクストの精読により、イデオロギーの構造と展開を批判的に跡づけ、思想史と文学研究を編みなおす画期的労作。
大河内 昌 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-0966-9 C3097
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『英文学研究』 [第98巻、2021年] から(評者:桐山恵子氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、『英文学研究』(第98巻、2021年、日本英文学会発行)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
在庫有り
『都市史研究』 [第8号、2021年10月] から(ラウンドテーブル、参加者:坂下史氏ほか)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』のラウンドテーブルが、『都市史研究』(第8号、2021年10月、都市史学会)に掲載されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
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『史苑』 [第81巻第2号、2021年3月] から(評者:金澤周作氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、『史苑』(第81巻第2号、2021年3月、立教大学史学会)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
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「読売新聞」 [2022年3月27日付] から(評者:牧野邦昭氏)
塩と帝国
近代日本の市場・専売・植民地
前田廉孝著『塩と帝国』が、「読売新聞」(2022年3月27日付)読書欄で紹介されました。帝国日本の経済と生命を支えた一次産品、塩の生産・流通・消費の動態をトータルに解明、植民地塩の内地への浸透プロセスを専売や瀬戸内塩業も視野にとらえて、忘れられた塩の経済圏の全体像を示すとともに、戦後へとつながる食料、資源の対外依存構造のルーツを描き出します。
“…… 身近な塩の生産・流通・制度・消費を多くの資料や統計により詳細に分析した本書を通じて、私たちは近代および現代の日本を捉えなおすことができる。”(「読売新聞」2022年3月27日付、第12面)
前田廉孝 著
税込8,800円/本体8,000円
A5判・上製・484頁
ISBN978-4-8158-1055-9 C3033
在庫有り
『化学』 [2022年4月号、通巻851号] から
世界の発光生物
分類・生態・発光メカニズム
大場裕一著『世界の発光生物』が、『化学』(2022年4月号、通巻851号、化学同人発行)の新刊紹介欄に掲載されました。発光バクテリアからツキヨタケ、ホタル、そしてチョウチンアンコウなどの脊椎動物まで ——。現在知られているすべての発光生物について、第一人者が分子生物学的知見を含めて紹介。光る生き物たちを通して見える世界と、そこに至る進化の道筋を描き出します。
大場裕一 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-1057-3 C3045
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『経済研究』 [第73巻第1号、2022年1月] から(評者:小野有人氏)
戦前日本のユニバーサルバンク
財閥系銀行と金融市場
粕谷誠著『戦前日本のユニバーサルバンク』が、『経済研究』(第73巻第1号、2022年1月、一橋大学経済研究所編/岩波書店発行)で紹介されました。証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかけます。
粕谷 誠 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-1004-7 C3033
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「UTokyo BiblioPlaza」 [2022年3月17日公開、自著紹介] から
外交と移民
冷戦下の米・キューバ関係
上英明著『外交と移民』の自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2022年3月17日公開、東京大学)に掲載されました。人の移動がもたらす力 ——。ワシントン、ハバナ、そしてマイアミ。衝撃はキューバ危機だけではなかった。移民とその社会が生みだす三つ巴のダイナミズムを捉え、グローバルな冷戦の現場と、アメリカ、キューバの国内政治の連関を、アクセス困難な史料から鮮やかに描きだした俊英の力作。
上 英明 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0948-5 C3022
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「UTokyo BiblioPlaza」 [2022年3月1日公開、自著紹介] から
近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで
岡本拓司著『近代日本の科学論』の自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2022年3月1日公開、東京大学)に掲載されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。
岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り
『映像学』 [107号、2022年] から(評者:成田雄太氏)
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『NO NUKES』が、『映像学』(107号、2022年、日本映像学会発行)で紹介されました。〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り
「UTokyo BiblioPlaza」 [2022年3月1日公開、自著紹介] から
宣教と適応
グローバル・ミッションの近世
『宣教と適応』(齋藤晃編)の執筆者のひとりである網野徹哉先生による自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2022年3月1日公開、東京大学)に掲載されました。異文化と出会った〈普遍〉の使者たち ——。大航海時代から啓蒙時代にかけて、アジアやアメリカに派遣されたイエズス会士らは、現地社会に適応することで布教を試みる。だが、それは今日なお解決しえない難問の蓋を開けることだった。異文化適応を軸にキリスト教の世界宣教の全体像に迫る、待望の著作。
齋藤 晃 編
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・554頁
ISBN978-4-8158-0977-5 C3022
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『医学教育』 [第53巻第1号、2022年2月] から(評者:木村武司氏、錦織宏氏)
社会科学の考え方
認識論、リサーチ・デザイン、手法
野村康著『社会科学の考え方』が、『医学教育』(第53巻第1号、2022年2月、日本医学教育学会発行)で紹介されました。学際化がすすむ社会諸学のロジックをいかにして身につけるか。日本で初めて認識論から説き起こし、多様な調査研究手法を明晰に整理して、メソドロジーの全体像を提示する。社会科学を実践するための要諦をつかみ、創造的研究を生み出すための最良のガイドブック。
野村 康 著
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0876-1 C3036
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「朝日新聞」 [2022年2月26日付] から(評者:阿古智子氏)
愛国とボイコット
近代中国の地域的文脈と対日関係
吉澤誠一郎著『愛国とボイコット』が、「朝日新聞」(2022年2月26日付)読書欄で紹介されました。中国ナショナリズムの実像 ——。時に暴力をともなう激しい対日ボイコットはなぜ繰り返されたのか。たんなる外交懸案の解決でも自国工業の振興でもない、それぞれの運動が生じた異なる地域事情と利害・思想を詳らかにするとともに、それらが愛国主義へとつながっていくメカニズムを捉えた力作。
吉澤誠一郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・314頁
ISBN978-4-8158-1048-1 C3022
在庫有り
「日本経済新聞」 [2022年2月26日付、読書欄「半歩遅れの読書術」] から(評者:上野誠氏)
歴史は現代文学である
社会科学のためのマニフェスト
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史は現代文学である』が、「日本経済新聞」(2022年2月26日付)読書欄の「半歩遅れの読書術」で紹介されました。文学的ゆえに科学的? 真実と物語のあいだで揺れ動き、その意義を問われてきた歴史。ポストモダニズムの懐疑を乗り越えた後で、いかにして「歴史の論理」を立て直すことができるのか。自らの実践に基づき、社会科学と文学の手法を和解させ、歴史記述を刷新するための挑戦の書。『メタヒストリー』以後の新たな歴史論であり、好評既刊『私にはいなかった祖父母の歴史』の姉妹編。
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・320頁
ISBN978-4-8158-0908-9 C3022
在庫有り
「毎日新聞」 [2022年2月19日付] から(評者:鹿島茂氏)
フランク史Ⅰ クローヴィス以前
佐藤彰一著『フランク史Ⅰ クローヴィス以前』が、「毎日新聞」(2022年2月19日付)で紹介されました。ヨーロッパのもう一つの起源 ——。欧州はギリシア・ローマからまっすぐに生まれたのではない。世界システムの大変動後、遠隔地交易、ローマ帝国との対抗、民族移動などを経て誕生した、500年にわたるフランク国家。「自由なる民」の淵源から王朝断絶までをたどる初めての通史。本巻では、初代王にいたる波乱の歴史を描く。
“…… 新見解だけでも本書は学問的に大きな価値を持つが、続巻ではさらなる新説が飛び出してきそうである。青銅器文明の崩壊から説き起こし、ローマ帝国末期を経て、最終的にはフランス史に接続する、歴史ファン必読の空前絶後の大作である。”(「毎日新聞」2022年2月19日付、第23面)
佐藤彰一 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1030-6 C3022
在庫有り
『みすず』 [2022年1・2月合併号、読書アンケート特集] から
『みすず』(2022年1・2月合併号、みすず書房発行)の読書アンケート特集で、以下の図書が紹介されました。
【栩木伸明氏による紹介】
松原知生著
『転生するイコン —— ルネサンス末期シエナ絵画と政治・宗教抗争』
“…… シエナで描かれたルネサンス絵画には、中世的なるもの(古いイコンの再利用など)の「転生」があるという。フィレンツェとの都市間抗争に破れてルネサンスに乗り遅れたと言われる、丘の上のあの都市を訪ねたときのことを思い出しながら読んだ。……”(p.13)
【佐藤文隆氏による紹介】
大塚淳著
『統計学を哲学する』
“…… 研究界でも社会でも仕事の仕方が急速に統計学に変わりつつあるようだ。現実をデジタルデータに落とし込む技術とコンピュータの浸透によるのだが、文系でも理系でも、実証的の意味が変わっていくかも知れない。これまでは背後の法則性で考察したが、こうなると経験データから予測データの生成を機械にやらせることになる。大塚本は統計学が遍く注目され出したこの時期に時宜を得たものであり、哲学を謳っているにしては読みやすい。……”(pp.17-18)
【小澤実氏による紹介】
池上俊一著
『ロマネスク世界論』
“…… 高山と同期で駒場のフランス科に着任した池上は、初年度の94年、本郷にも出講し、ボソボソとした口調で図像学を講じた。以後、私は、彼のミシュレをテキストとしたフランス語購読やピウス二世の著作のラテン語購読にも出席し、刊行される著書や論文は全て読んだ。教師として、研究者として、ファンとして、『狼男伝説』と並び、アナール派の西洋中世研究を本邦で最も咀嚼した池上の著作の中で私が一番好きな単著。……”(p.33)
【重田園江氏による紹介】
ブノワ・ゴダン著/松浦俊輔訳/隠岐さや香解説
『イノベーション概念の現代史』
“…… イノベーションと言えばみんな大人しくなり反論できない。なんだか胡散臭いのにどこがダメなのか言い当てられない。そういう概念を、産業主義を十分に意識した科学史として描く本書には、イノベーションを怪しく思うべき理由が存分に書かれている。……”(p.37)
【郷原佳以氏による紹介】
松澤和宏著
『生成論の探究 —— テクスト・草稿・エクリチュール』
“…… 生成研究とは、完成稿に至るまでに作家が残した厖大な草稿を精査する文学研究の手法だが、私はこれまで、それは起源としての作者の意図を重視するものではないかと疑問をもっていた。しかし、フローベールおよびソシュール研究の第一人者である著者が本書で明らかにするのは、生成研究こそ決定稿の権威に懐疑の目を向け、作者の意図をはみ出して複数的、同時的に生成する言葉の運動を再構成しようとするものであり、そこにエクリチュールの探究があるのだということだった。”(pp.50-51)
【犬塚元氏による紹介】
1. イヴァン・ジャブロンカ著/田所光男訳
『私にはいなかった祖父母の歴史 —— ある調査』
2. イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳
『歴史は現代文学である —— 社会科学のためのマニフェスト』
“…… 1は、自分のごく平凡な祖父母がポーランドからパリに逃れて、アウシュビッツで殺されるまでの足跡を、史料を探りあてて描いた歴史書。「私」の迷いや無力感、あるいは親族としての感情と歴史家としての役割のあいだの葛藤も記しながら、しかしあくまで史料をふまえるかたちで、祖父母の生を現在形で見事に叙述していく。このスタイルの歴史叙述を、方法論として理論的に考察したのが2。二正面作戦の本だ。ジャブロンカは、一方では文学的要素を周辺化してきた歴史叙述の伝統に抗うが、他方では、相対主義や懐疑主義をもたらすといって言語論的転回やヘイドン・ホワイトをつよく批判する。かつてジョン・ポーコックの歴史叙述論(『島々の発見』)を翻訳したことがあるが、世代も、めざす方向も異なるこの二人が、近しい位置にいるはずのポストモダニズムに苛立ちながら歴史叙述を立て直そうとしている共通性が、同時代の学問史・思想史として興味深い。……”(pp.59-60)
【早川尚男氏による紹介】
稲葉肇著
『統計力学の形成』
“…… 統計力学の歴史と言えば、これまでマクスウェルとボルツマンに焦点が当たって、当時の科学の中心から離れて独力で平衡統計力学を完成させたギブスが過小評価されてきたきらいがある。また現在の講義や教科書で標準的に教えられる(平衡)統計力学の完成形までは、フォン・ノイマンによる量子統計力学の定式化を含めたそれ以降の進展史を辿る必要がある。本書は統計力学の研究史の始まりから現在までの通史を枢軸となる数式を省略せず、比較的コンパクトにまとめたものであり、評者の様に非平衡統計力学の研究者にとっても必携の書となっている。……”(p.71)
【小松美彦氏による紹介】
岡本拓司著
『近代日本の科学論 —— 明治維新から敗戦まで』
“…… 厖大な文献の精読を基礎に、明治維新からアジア・太平洋戦争敗戦までの日本の科学論の歴史を跡づけた。異彩を放つのは、マルクス主義科学論から日本主義的科学論への展開過程を詳解した点であり、篠原雄や橋田邦彦の生物学主義・科学主義が超国家主義や日本精神と繋がっていく機構が特に興味深かった。……”(p.90)
『フランス学士院碑文・文芸アカデミー ニューズレター』 [2022年2月号] から
フランク史Ⅰ クローヴィス以前
佐藤彰一著『フランク史Ⅰ クローヴィス以前』が、フランス学士院碑文・文芸アカデミーが発行するニューズレター(2022年2月号)で紹介されました。ヨーロッパのもう一つの起源 ——。欧州はギリシア・ローマからまっすぐに生まれたのではない。世界システムの大変動後、遠隔地交易、ローマ帝国との対抗、民族移動などを経て誕生した、500年にわたるフランク国家。「自由なる民」の淵源から王朝断絶までをたどる初めての通史。本巻では、初代王にいたる波乱の歴史を描きます。
佐藤彰一 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1030-6 C3022
在庫有り
『日本歴史』 [2022年2月号、第885号] から(評者:小林延人氏)
戦前日本のユニバーサルバンク
財閥系銀行と金融市場
粕谷誠著『戦前日本のユニバーサルバンク』が、『日本歴史』(2022年2月号、第885号、日本歴史学会編)で紹介されました。証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかけます。
“…… 時代は江戸中後期から昭和戦前期まで、対象は政府・日銀の金融政策から個別の銀行経営まで幅広く取り組んだ日本経済史研究の金字塔である。分析の手立てとしては、世界史的・現代史的な視点に加え、クラスター分析(第5章)、OLS 推計(第6章)、カプラン・マイヤー法、ログランク検定、一般化ウィルコクスン検定(第8章)、などの統計手法を取り入れている点がこの分野で顕著な新規性を発揮している。直観的に考えうる仮説を、一つずつ着実に実証する姿勢が看取されよう。……”(『日本歴史』2022年2月号、p.106)
粕谷 誠 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-1004-7 C3033
在庫有り
「ブックトーク・オン・アジア」 [第28回(前編)・第29回(後編)、2022年1月26日配信]
世界史のなかの東南アジア(上下巻)
歴史を変える交差路
アンソニー・リード著『世界史のなかの東南アジア』(上下巻)の監訳者である太田淳先生、長田紀之先生が出演された、「ブックトーク・オン・アジア」(第28回(前編)・第29回(後編)、2022年1月26日、京都大学東南アジア地域研究研究所)が配信されました。お二方が、本書の魅力を語り尽くします(進行:中西嘉宏氏)。
アンソニー・リード 著
太田 淳・長田紀之 監訳
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上398頁+下386頁
ISBN 上:978-4-8158-1051-1 下:978-4-8158-1052-8 C3022
在庫有り
『経営史学』 [第56巻第3号、2021年12月] から(評者:鷲崎俊太郎氏)
近世貨幣と経済発展
岩橋勝著『近世貨幣と経済発展』が、『経営史学』(第56巻第3号、2021年12月、経営史学会発行)で紹介されました。「三貨制」史観を塗り替える画期的労作 ——。小額貨幣の流通は、庶民の生活水準の上昇を示す指標である。銭貨や藩札などの需要面に注目し、多様性とダイナミズムを内包する日本各地の実態を分析、東アジアにおける徳川経済の先進性を実証します。
岩橋 勝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0965-2 C3033
在庫有り
『経営史学』 [第56巻第3号、2021年12月] から(評者:老川慶喜氏)
満鉄経営史
株式会社としての覚醒
平山勉著『満鉄経営史』が、『経営史学』(第56巻第3号、2021年12月、経営史学会発行)で紹介されました。満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換えます。
平山 勉 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0945-4 C3021
在庫有り
『社会学評論』 [第72巻第3号、2021年12月] から(評者:眞住優助氏)
建設労働と移民
日米における産業再編成と技能
惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『社会学評論』(第72巻第3号、2021年12月、日本社会学会発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。
惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り
『社会学評論』 [第72巻第3号、2021年12月] から(評者:南川文里氏)
引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究
蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『社会学評論』(第72巻第3号、2021年12月、日本社会学会発行)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。
蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
在庫有り
「北海道新聞」 [2021年12月26日付、読書欄特集「『読書ナビ』16人が選ぶ『今年の3冊』」] から(評者:吉田徹氏)
政治的暴力の共和国
ワイマル時代における街頭・酒場とナチズム
原田昌博著『政治的暴力の共和国』が、「北海道新聞」(2021年12月26日付)の読書欄特集「『読書ナビ』16人が選ぶ『今年の3冊』」で紹介されました。苛烈な暴力を許容する社会はいかにして生まれたのか ——。議会制民主主義を謳うワイマル共和国。だが、街頭は世論を左右する新たな公共圏として、ナチスや共産党のプロパガンダの場となり、酒場を拠点とした「暴力のサブカルチャー」が形成されていく。実像を初めて描きだした力作。
“現代は大恐慌を経験し、急進的な政治勢力が台頭した1930年代に似ているとされる。…… 当時のワイマール共和国での出来事をつぶさに検証しながら、ナチスや共産党などの政治勢力がいかに「酒場」と「街頭」に繰り出し、それぞれが衝突したのかを描く。暴力こそが政治参加の手段だった時代だ。もっとも、日常生活が暴力に彩られているのは昔の話ではない。……”(「北海道新聞」2021年12月26日付、第9面)
原田昌博 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-1039-9 C3022
在庫有り
「河北新報」 [2021年12月26日付、読書欄特集「わたしの3冊 2021」] ほか計18地方紙から(評者:古田徹也氏)
客観性
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン著『客観性』(瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪訳)が、「河北新報」(2021年12月26日付、読書欄特集「わたしの3冊 2021」)ほか計18地方紙で紹介されました。客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
[下野新聞:2021年12月12日付、北日本新聞・山陰中央新報・高知新聞・沖縄タイムス:2021年12月25日付、岩手日報・河北新報・新潟日報・福井新聞・岐阜新聞・静岡新聞・日本海新聞・山陽新聞・中国新聞・徳島新聞・愛媛新聞・熊本日日新聞・南日本新聞:2021年12月26日付]
“「客観性」は科学の代名詞のようにも思えるが、…… この概念が生まれたのは19世紀半ばだという。本書は、厖大な図像や資料を読み解きながら、この概念を形成してゆく科学者たちの実践の内実を跡づけ、その共同性や多元性、科学者のわざや徳の変容といった重要な論点を浮き彫りにする。緻密な調査と考察の下に、壮大なスケールで描かれた科学史上の一大成果である。……”(「河北新報」2021年12月26日付、第12面)
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-1033-7 C3010
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『近現代東北アジア地域史研究会 News letter』 [第33号、2021年12月] から(評者:大野絢也氏)
東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア
林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、『近現代東北アジア地域史研究会 News letter』(第33号、2021年12月、近現代東北アジア地域史研究会発行)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。
林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
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『漢字之窓』 [第3巻第2号、2021年12月] から
詩文と経世
幕府儒臣の十八世紀
山本嘉孝著『詩文と経世』が、『漢字之窓』(第3巻第2号、2021年12月、日本漢字学会編集兼発行)で紹介されました。江戸時代の漢詩文制作はどのように政治と結びつき、古来の言葉に何が託されたのか。これまで注目されてこなかった幕府儒臣に焦点を当て、漢詩・漢文書簡・建議などの多彩な表現を読み解くとともに、武家の学問論や民間の技芸論をも視野に入れて、近世日本における「文」の行方を問い直します。
山本嘉孝 著
税込6,930円/本体6,600円
A5判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-1043-6 C3095
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『新しい漢字漢文教育』 [第72号、2021年11月] から(評者:澤崎久和氏)
怪を志す
六朝志怪の誕生と展開
佐野誠子著『怪を志す』が、『新しい漢字漢文教育』(第72号、2021年11月、全国漢文教育学会発行)で紹介されました。「怪力乱神を語らぬ」儒教の国にあって、怪異はなぜ、いかにして記録されるようになったのか。『今昔物語集』等にも影響を与えた古代中国の「志怪」について、史書の伝統や仏教伝来との関係を軸に、社会的文脈から生成過程、文体まで、初めてトータルに捉え、中国人の精神のかたちを逆照射します。
“…… 本書は六朝志怪に関する初めての専著である。…… どの章にも新たな着眼があり、検証の過程は綿密周到である。…… 著者は本書に取り上げるどの文献についても、変異の起こった場(中央と地方、公人と個人、南と北等)、変異の情報の取得方法(口頭、書物、碑文、寺院の記録、また地方官の役割等)、文体と構成、記録者の立場・意識・関心、などの検討に力を注いでいる。いずれの観点も志怪の読み方として興味深い。本書によって、志怪には伝奇とはまた別種の独自の面白さがあることを知ったのは、大きな収穫であった。”(『新しい漢字漢文教育』第72号、p.117)
佐野誠子 著
税込6,930円/本体6,600円
A5判・上製・382頁
ISBN978-4-8158-0983-6 C3022
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『東洋史研究』 [第80巻第3号、2021年12月] から(評者:小武海櫻子氏)
関羽と霊異伝説
清朝期のユーラシア世界と帝国版図
太田出著『関羽と霊異伝説』が、『東洋史研究』(第80巻第3号、2021年12月、東洋史研究会編集兼発行)で紹介されました。三国志の英雄はなぜ中国を代表する神となったのか。民間信仰の広がりと近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出します。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。
太田 出 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-0961-4 C3022
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「朝日新聞」 [2021年12月25日付、読書欄特集「今年の3点」] から(評者:保阪正康氏)
戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家
北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、「朝日新聞」(2021年12月25日付)読書欄の特集「今年の3点」で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。
“…… 戦敗国兵士の戦傷を通して福祉の源流を探る書。こうした視点は、戦傷者と国の関係を洗い直す意味を含んでいる。随所に戦争という国家事案の責任が浮かび上がる。……”(「朝日新聞」2021年12月25日付、第27面)
北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
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「UTokyo BiblioPlaza」 [2021年12月20日公開、自著紹介] から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
『移り棲む美術』の著者・三浦篤先生による自著紹介が、「UTokyo BiblioPlaza」(2021年12月20日公開、東京大学)に掲載されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
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『週刊ダイヤモンド』 [2021年12月25日・2022年1月1日合併号] から
統計学を哲学する
大塚淳著『統計学を哲学する』が、『週刊ダイヤモンド』(2021年12月25日・2022年1月1日合併号、ダイヤモンド社発行)の特集「経済学者・経営学者・エコノミスト128人が選んだ 2021年『ベスト経済書』」で取り上げられました。統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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「毎日新聞」 [2021年12月18日付、読書欄特集「2021 この3冊 下」] から(評者:内田麻理香氏)
客観性
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン著『客観性』(瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪訳)が、「毎日新聞」(2021年12月18日付)読書欄の特集「2021 この3冊 下」で紹介されました。客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-1033-7 C3010
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『社会経済史学』 [第87巻第3号、2021年11月] から(評者:武田晴人氏)
戦前日本のユニバーサルバンク
財閥系銀行と金融市場
粕谷誠著『戦前日本のユニバーサルバンク』が、『社会経済史学』(第87巻第3号、2021年11月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかけます。
粕谷 誠 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-1004-7 C3033
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『アジア経済』 [第62巻第4号、2021年12月] から(評者:松本はる香氏)
台湾外交の形成
日華断交と中華民国からの転換
清水麗著『台湾外交の形成』が、『アジア経済』(第62巻第4号、2021年12月、アジア経済研究所発行)で紹介されました。「一つの中国」という原則と、国際社会での地位存続との板挟みのなかで、台湾は何を選択してきたのか。安全保障をめぐる米国との交渉、国連の中国代表権問題、日中国交回復とその裏での対日断交などを、台湾側の動向を軸にたどり、今日の台湾外交の真の根源を浮き彫りにする画期的著作。
“…… 本書は、従来、歴史の表舞台ともいえる中華人民共和国の外交に比べて、やや等閑視されがちな「中華民国外交」そして「台湾外交」の展開に正面から焦点を当て、台湾側の一次史料を多数用いて分析したという点においても重要である。また、本書は、台湾海峡をめぐる「現状維持」の根源を歴史的に遡って紐解いており、歴史が主たるテーマでありながらも、そこには現代的インプリケーションが多く含まれており、示唆に富むものである。
近年、中国における情報統制が厳しさを増すなかで、中国大陸での史料調査そのものがより困難な状況となり、「袋小路」に入りつつある。そのような厳しい状況のなかで、本書の著者が正面から取り組んだような、台湾での史料調査は、今後の中国・台湾研究の発展のために、より一層重要な意義や役割をもつことになるだろう。そのような意味においても、本書は、中国や台湾をめぐる国際関係に興味を有する学生や専門家にとって参考になる1冊である。”(『アジア経済』第62巻第4号、p.104)
清水 麗 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-0935-5 C3031
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『図書新聞』 [2021年12月18日号、第3524号、特集「21年下半期読書アンケート」] から(評者:坂野徹氏)
客観性
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン著『客観性』(瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪訳)が、『図書新聞』(2021年12月18日号、第3524号、武久出版発行)の特集「21年下半期読書アンケート」で紹介されました。客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-1033-7 C3010
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『史林』 [第104巻第3号、2021年5月] から(評者:張子康氏)
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、『史林』(第104巻第3号、2021年5月、史学研究会発行)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描きます。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
“…… 本書の意義は、大きく以下二点にまとめられる。一点目は、19世紀中後期の琉球にとっての激動の時代を、真正面から通史的に叙述したことそれ自体にある。本書の対象とする時代は、著者も指摘する通り、古くはキリスト教宣教史、日本英学史にはじまり、日本開国史、琉球史、東アジア近代史など様々な分野、関心から豊富な研究蓄積がある。だがそれらのほとんどは、個別の事件、人物に着目したものであり、この時代を総体的に把握する研究は乏しい。そんな中、本書の通史的叙述によって、従来別個に研究されてきた個々の事象の関係が鮮明となった。…… 二点目は、中心史料たる『琉球王国評定所文書』…… の徹底した読み込みと、綿密な分析・記述により、この時代の政治史的展開はもとより、欧米諸国からの「外圧」が当時の琉球社会とそこに生きる人々に与えた影響を、ミクロな視点から再現していることである。……”(『史林』第104巻第3号、p.71)
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
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『大原社会問題研究所雑誌』 [第758号、2021年12月号] から(評者:根川幸男氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『大原社会問題研究所雑誌』(第758号、2021年12月号、法政大学大原社会問題研究所編集兼発行)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
“…… 本書は、「表象の危機」後の人類学・社会学の直近の成果をふまえ、民族誌の方法論的問題に自覚的・批判的でありつつ、民族誌的記述の新たな可能性を提示した。綿密なフィールドワークによって収集した史資料をふまえた実証研究としても、すぐれた内容となっている。本書がブラジル日系移民研究の新たな出発点となることは言を俟たない。……”(『大原社会問題研究所雑誌』第758号、p.65)
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
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『社会経済史学』 [第87巻第3号、2021年11月] から(評者:中島信吾氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『社会経済史学』(第87巻第3号、2021年11月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“…… 本書は、旧日本海軍のエリート技術集団たる側面に着目し、その多様な戦後の歴史的な足跡を、個別的かつ実証的に深く掘り下げた点に大きな意義があろう。一口に海軍技術者といっても内実は多様であり、母体たる海軍が消滅した戦後においては、活動の舞台も国家機関、学界、民間企業と多岐にわたった。本書は、そうした多様性を実に丁寧に描いているが、個を追う作業に加えて、全体を視野に捉えることによって浮き彫りになるものについても等閑にはしていない。そこにより説得力を加えているのが、膨大な人数を対象にした付表や人員のリストであり、旧日本海軍における配置や役職、階級そして戦後における経歴等を提示している。こうした作業によって、個々人それぞれの経歴を追っていただけでは把握できない集団としての方向性や特性などを把握することも可能となっている。……”(『社会経済史学』第87巻第3号、p.86)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
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『宣伝会議』 [2022年1月号] から
イノベーション概念の現代史
ブノワ・ゴダン著『イノベーション概念の現代史』(松浦俊輔訳/隠岐さや香解説)が、『宣伝会議』(2022年1月号、宣伝会議発行)で紹介されました。現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。
ブノワ・ゴダン 著
松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・216頁
ISBN978-4-8158-1046-7 C3036
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「読売新聞」 [2021年12月5日付] から(評者:加藤聖文氏)
奴隷貿易をこえて
西アフリカ・インド綿布・世界経済
小林和夫著『奴隷貿易をこえて』が、「読売新聞」(2021年12月5日付)で紹介されました。豊かな消費市場として発展を始めたアフリカが、18・19世紀の世界経済の興隆に果たした役割とは。奴隷貿易史観をこえ、現地の動向からインド綿布への旺盛な需要がもたらしたインパクトを実証、グローバル化の複数の起源を解き明かし、西アフリカの人々の主体的活動に新たな光をなげかけます。
“一国史という閉じられた歴史ではなく、複数の国や地域の相互連関の歴史を明らかにするグローバルヒストリーは、近年の歴史学のなかで一大潮流となっている。本書もその流れに位置づけられる刺激的かつ野心的な成果だ。…… インド綿布をめぐる経済のダイナミズムは、支配・非支配の一方通行的視点では解き明かすことのできない人びとの欲望、価格よりも他者との差異化を求める文化的嗜好、そしてこれに応えようとする市場経済について、時代を超えた普遍性を教えてくれる。
今もアフリカ・インド・ヨーロッパは経済的に密接に結びついている。本書は、研究者だけではなく、ビジネスマンはじめ一般の人びとにとっても大きな視野と未来への示唆を与えてくれるだろう。”(「読売新聞」2021年12月5日付、第22面)
小林和夫 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1037-5 C3022
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『南アジア研究』 [第32号、2021年9月] から(評者:孝忠延夫氏)
試される正義の秤
南アジアの開発と司法
佐藤創著『試される正義の秤』が、『南アジア研究』(第32号、2021年9月、日本南アジア学会発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。
佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
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『社会政策』 [第13巻第2号、2021年11月] から(評者:浅見和彦氏)
建設労働と移民
日米における産業再編成と技能
惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『社会政策』(第13巻第2号、2021年11月、社会政策学会発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。
惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
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『東方宗教』 [第137号、2021年11月] から(評者:横手裕氏)
道教経典の形成と仏教
神塚淑子著『道教経典の形成と仏教』が、『東方宗教』(第137号、2021年11月、日本道教学会発行)で紹介されました。大宗教への飛躍と確立 ——。仏教伝来のインパクトを受け体系化する道教。中国固有の思想との相克のなか、融合はいかになされたのか。霊宝経から坐忘論まで、生み出された経典・儀礼・聖像等を通して、六朝隋唐時代におけるダイナミックな展開を描き出す労作。
神塚淑子 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・596頁
ISBN978-4-8158-0885-3 C3014
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「読売新聞」 [2021年11月28日号] から(評者:瀧澤弘和氏)
イノベーション概念の現代史
ブノワ・ゴダン著『イノベーション概念の現代史』(松浦俊輔訳/隠岐さや香解説)が、「読売新聞」(2021年11月28日付)で紹介されました。現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。
“…… 本書は、我々が疑うことなく受け入れてしまっている重要概念の来歴を、改めて解き明かしてくれる貴重な本である。…… 様々に中身を変化させつつも一貫しているのは、市場経済イデオロギーと結託しつつ国家的政策に貫入してきたイノベーション概念の生命力である。この概念が、「社会的イノベーション」や「持続可能なイノベーション」といった新奇な変奏を奏でつつ、環境問題や不平等問題が解決を迫る現代においても力を持ち続けていることは何とも不思議な感じがする。隠岐さや香氏の解説もわかりやすい。……”(「読売新聞」2021年11月28日付)
ブノワ・ゴダン 著
松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・216頁
ISBN978-4-8158-1046-7 C3036
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『現代化学』 [2021年12月号、通巻609号] から
統計力学の形成
稲葉肇著『統計力学の形成』が、『現代化学』(2021年12月号、通巻609号、東京化学同人発行)で紹介されました。アナロジーから基礎づけへ ——。時間的に可逆であるミクロな多数の要素と、不可逆なマクロとを関係づける、統計力学。マクスウェルやボルツマンによる気体運動論との差異を踏まえつつ、その歴史と意義を丹念に追跡。アンサンブル概念はいかに誕生・発展し、フォン・ノイマンによる量子統計に到ったか?
稲葉 肇 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・378頁
ISBN978-4-8158-1036-8 C3040
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『化学』 [2021年12月号、通巻847号] から
統計力学の形成
稲葉肇著『統計力学の形成』が、『化学』(2021年12月号、通巻847号、化学同人発行)で紹介されました。アナロジーから基礎づけへ ——。時間的に可逆であるミクロな多数の要素と、不可逆なマクロとを関係づける、統計力学。マクスウェルやボルツマンによる気体運動論との差異を踏まえつつ、その歴史と意義を丹念に追跡。アンサンブル概念はいかに誕生・発展し、フォン・ノイマンによる量子統計に到ったか?
稲葉 肇 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・378頁
ISBN978-4-8158-1036-8 C3040
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「読売新聞」 [2021年11月14日付] から(評者:瀧澤弘和氏)
客観性
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン著『客観性』(瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪訳)が、「読売新聞」(2021年11月14日付)で紹介されました。客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
“科学は客観性を追求するものとして発展してきたというのが素朴な通念だろう。だが、本書は科学の歴史を丹念に追い、この通念を覆す。科学研究を貫く規範(認識的徳)が時代とともに変化してきたこと、我々が通常理解するような客観性が19世紀半ばに登場してきたことを主張するのだ。何という力技だろう。…… 素晴らしい訳で、科学的知識を持たない読者も楽しめる重厚な一冊だ。”(「読売新聞」2021年11月14日付、第12面)
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-1033-7 C3010
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「読売新聞」 [2021年11月10日付、文化欄] から
言論と経営
戦後フランス社会における「知識人の雑誌」
「読売新聞」(2021年11月10日付)文化欄の、第38回「渋沢・クローデル賞」受賞者紹介で、本賞を受賞された中村督先生と著書『言論と経営』が紹介されました。【本書の内容】メディア企業の生き方とは ——。言論によって民主主義に奉仕すると同時に、私企業として資本主義のなかで動くジャーナリズム。戦後フランスに生まれ、サルトルはじめ知識人を結集する一方、市場で稀有な成功を収めたニューズマガジンの歴史を、変容する社会とともに捉え、その思想と身体を見つめた俊英の力作。
中村 督 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・442頁
ISBN978-4-8158-1022-1 C3036
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『教養学部報』 [第631号、2021年11月] から(評者:永井久美子氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『教養学部報』(第631号、2021年11月、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
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『週刊エコノミスト』 [2021年11月16日号] から
イノベーション概念の現代史
ブノワ・ゴダン著『イノベーション概念の現代史』(松浦俊輔訳/隠岐さや香解説)が、『週刊エコノミスト』(2021年11月16日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。現代社会のキーワードとして君臨する「イノベーション」。いかにして考え出され、政策や経営に組み込まれていったのか。また、研究はどのように商業化に巻き込まれたのか。国際機関や省庁・企業の実務家たちに焦点を合わせ、科学・技術の「有用性」を問い直す、私たちの時代の概念史。
“現代社会を論じるにあたって、「イノベーション」という概念が使われる機会が多くなった。従来は「技術イノベーション」として流通していたこの概念は、今や経済や環境が抱える難問、気候変動や資源エネルギーの枯渇、老化や健康まで改善してくれる万能の切り札の感さえある。今年急逝したイノベーション概念史の第一人者である著者は、信仰の域にすら達した同概念の乱用を危惧し、その起源を問い、いかに商業化されるにいたったかを検証する。”(『週刊エコノミスト』2021年11月16日号、p.54)
ブノワ・ゴダン 著
松浦俊輔 訳/隠岐さや香 解説
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・216頁
ISBN978-4-8158-1046-7 C3036
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『教育学研究』 [第88巻第3号、2021年9月] から(評者:乾彰夫氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『教育学研究』(第88巻第3号、2021年9月、日本教育学会発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『教育史フォーラム』 [第16号、2021年6月] から(富山仁貴氏による書評と編者からのリプライ)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『教育史フォーラム』(第16号、2021年6月、教育史フォーラム・京都編、書評とリプライ)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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「日本経済新聞」 [2021年10月30日付] から
現代中国 内政と外交
毛里和子著『現代中国 内政と外交』が、「日本経済新聞」(2021年10月30日付)で紹介されました。世界政治の焦点 ——。強勢外交と権威主義政治は切り離せない。グローバル大国化した中国の内政と外交を同時にとらえ、国家資本主義から「周縁」問題まで、両者のネクサスに照準を合わせつつ、革命後の70年をふまえて現在の姿を浮き彫りにした、第一人者によるエッセンシャルな一冊。
“巨大な中国では内政と外交の諸課題が交錯している。伝統的な中国研究では両者を切り分けて分析する手法が主流だった。だが、これでは現代中国を総合的に捉えるのは困難だ。本書はこの問題の克服に挑戦している。…… 外交が内政の延長であるのは自明である。特に習近平時代に入ってからは権力集中が進み、その傾向が鮮明になった。強硬な「戦狼外交」は内政の産物であるのは間違いない。”(「日本経済新聞」2021年10月30日付、第35面)
毛里和子 著
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・240頁
ISBN978-4-8158-1035-1 C3031
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『歴史学研究』 [2021年11月号、第1016号] から(評者:村上衛氏)
闘う村落
近代中国華南の民衆と国家
蒲豊彦著『闘う村落』が、『歴史学研究』(2021年11月号、第1016号、歴史学研究会編)で紹介されました。互いに武力闘争を繰り返す城塞化した村落 ——。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示した渾身の力作。
“…… 本書の大きな貢献は、近代華南農村の人々が政治的変動の中でどのような集団に結集し、またそうした集団から離れていったのか、その中で、いかに暴力が行使されたのかを具体的に描き、静態的に捉えられがちな農村社会を動態的に示したことである。これを可能にしたのがイギリス長老教会、アメリカン・バプティストを中心とするキリスト教宣教師の文書史料の徹底的な利用である。…… 手書きで細かい内容が多いというこの扱いづらい史料を清末から民国期にかけて、全面的に使用して中国の地域史を描いたのは、日本では本書が初めてとなる。
本書のもう一つの大きな貢献は、ソヴィエト政権にいたる潮汕・海陸豊地区を、明代中期から民国期に至る長期的な視野で位置づけ直したことにある。日本の中国近代史研究においては使用する史料の影響もあって清末史研究と民国史研究の間に断絶がみられるが、本書は清末・民国期を通じて使用できる宣教師文書に加え、多くの漢文・中国語史料を用いたことにより、械闘的性格という通時的な特色のみならず、組織的で、農村部にまで浸透する教会の布教や中華民国期の政治運動の特色を明らかにすることができた。…… 本書で示された事例は中国に限定されるものではなく、特に日本中世との類似性の指摘も興味深い(4頁)。流動性の高い日本中世社会から政府が社会の末端へと介入していく豊臣政権から江戸時代への変化は、中国における民国期以降の変化と比較することも可能であろうし、日本のみならず、他地域の農村地帯との比較史の可能性も広げてくれる。……”(『歴史学研究』2021年11月号、p.74)
蒲 豊彦 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0998-0 C3022
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『歴史学研究』 [2021年11月号、第1016号] から(評者:岡田一郎氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『歴史学研究』(2021年11月号、第1016号、歴史学研究会編)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
“…… 労働組合を取り巻く情勢が複雑であった1940年代から50年代、1980年代から90年代にかけての労働運動史を懇切丁寧に整理しており……、またこれまで先行研究で使われなかった日教組の内部資料を用いて、日教組に関する記述の間違い(共産党の影響力だけでなく、スローガン「教え子を再び戦場に送るな」の成立過程など多岐にわたる)を正すなど、編者の専門である教育史研究としてだけでなく、労働運動史研究としても価値の高いものとなっている。……”(『歴史学研究』2021年11月号、pp.72-73)
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『日本労働研究雑誌』 [2021年9月号、第734号] から(評者:チャールズ・ウェザーズ氏)
建設労働と移民
日米における産業再編成と技能
惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、『日本労働研究雑誌』(2021年9月号、第734号、労働政策研究・研修機構発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。
“移民労働は先進国の最も重要な課題の一つである。本書では日本とアメリカの移民労働を比較し、問題を掘り下げて論じている。実態として、日本とアメリカでは、移民労働の状態、それに関連する政策方法及び政治論争のトレンドはかなり異なっているが、両国ともに将来に亘って避けて通れない大きな課題であることは事実である。本書、『建設労働と移民』で特記すべきは著者、惠羅さとみ氏が長年に亘って膨大なフィールドワークを行い、非常に詳しく、綿密に日米の建設業労働の状態について論じている点である。聞き取り調査によって得られた、事実に基づくそれぞれの個人の多くの経験は本書の議論に意義深さや面白さを加えている。……”(『日本労働研究雑誌』2021年9月号、p.77)
惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
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『北東アジア地域研究』 [第27号、2021年5月] から(評者:新井洋史氏)
海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済
左近幸村著『海のロシア史』が、『北東アジア地域研究』(第27号、2021年5月、北東アジア学会編集発行)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。
左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
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「台湾新聞」 [2021年10月4日号] から
緑の工業化
台湾経済の歴史的起源
堀内義隆著『緑の工業化』が、「台湾新聞」(2021年10月4日号、臺灣新聞社発行)で紹介されました。植民地下の台湾は、たんに帝国の食糧供給基地にとどまったのではなかった。見過ごされてきた工業化の契機を、豊かな農産品の加工・商品化と、それに伴う機械化・電動化に見出し、小零細企業が叢生する農村からの発展経路を実証、戦後台湾経済の原型をとらえた注目の成果。
堀内義隆 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・286頁
ISBN978-4-8158-1032-0 C3033
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『図書新聞』 [2021年10月16日号、第3515号] から(評者:種村剛氏)
不定性からみた科学
開かれた研究・組織・社会のために
吉澤剛著『不定性からみた科学』が、『図書新聞』(2021年10月16日号、第3515号、武久出版発行)で紹介されました。科学には「モヤモヤ」がつきまとう、されど ——。不確実性・偶然性・規範性などさまざまな形をとり、研究から組織・評価・大学・社会・未来まであらゆる次元に現れる不定性。これら避けがたいものと向きあい、科学のリアルを捉え直すことで、知と未知への態度を鍛える21世紀の学問論。
“…… 本書は「知れば知るほどわからなくなる」ことの根本的な理由を、3つの次元の不定性から解き明かしているのである。それならば結局のところ学問や研究は不要ということになるのか。本書の答えは否である。むしろ知識が不定性を持つことを前提とした上で、研究や学問の意義を再度組み立て直すことを試みる。著者は、知識の増加を善いことであると価値づけて科学や学問を肯定する立場に対し、一定の距離をおく。そして学問の意義を、望ましい未来の可能性を開くための寛容さや、未知に対して向かい合う勇気といった、学問の社会的責任の根本に通底する徳性の涵養の中に見出している。
本書の主張の説得力は、知識の不定性に対する著者の分析的な態度に裏打ちされている。その一端は90ページにわたる丁寧な註に表れている。註に挙がった文献からは、関連概念や事象に関する著者の幅広い思索や深い洞察をうかがくことができる。本文と註を行きつ戻りつしながら読むことで、本書の味わいはより一層豊かになるだろう。”(『図書新聞』2021年10月16日号、第3面)
吉澤 剛 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1025-2 C3040
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『オリエント』 [2021年第64巻第1号] から(評者:鎌田由美子氏)
イスラーム・ガラス
真道洋子著/桝屋友子監修『イスラーム・ガラス』が、『オリエント』(2021年第64巻第1号、日本オリエント学会発行)で紹介されました。歴史を彩る「世界の華」——。古来のガラス文化を統合して成立し、近代芸術にも大きな影響を与えたイスラーム・ガラス。その器形や成形・装飾技法から、美術工芸としての展開、さらには日本をはじめ世界各地への伝播まで、多数のカラー図版とともに豊かな物質文化の全体像を映し出します。
“…… 本書はガラス研究の重要な基本書として価値を持つ。国際的にも貢献度の大きな研究成果がちりばめられる一方で、考古学資料を通じて歴史や社会、文化、人々の生活を明らかにしていくことの面白さを存分に伝えてくれる。すなわち、研究者にとっても一般読者にとっても有益な書となっている。ガラスに関する書籍は多いが、本書のように長い時間軸を射程に収めて広大な地域におけるガラスの製造、交易、使用をとらえ、かつ長年の発掘調査研究による成果を盛り込んだものは見当たらない。類書のない重要な試みである。……”(『オリエント』2021年第64巻第1号、p.75)
真道洋子 著/桝屋友子 監修
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・496頁
ISBN978-4-8158-1001-6 C3072
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『日本教育行政学会年報 47』 [2021年10月] から(評者:水本徳明氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『日本教育行政学会年報 47』(2021年10月、日本教育行政学会発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『同時代史研究』 [第14号、2021年9月] から(評者:山本公徳氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『同時代史研究』(第14号、2021年9月、同時代史学会発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『理学部ニュース』 [2021年9月、自著紹介] から
分子地球化学
『分子地球化学』の編者・高橋嘉夫先生による自著紹介が、『理学部ニュース』(2021年9月、東京大学大学院理学系研究科・理学部発行)に掲載されました。物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。
高橋嘉夫 編
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・444頁
ISBN978-4-8158-1018-4 C3044
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『中国研究月報』 [2021年9月号、第75巻第9号] から(評者:阿南友亮氏)
闘う村落
近代中国華南の民衆と国家
蒲豊彦著『闘う村落』が、『中国研究月報』(2021年9月号、第75巻第9号、中国研究所発行)で紹介されました。互いに武力闘争を繰り返す城塞化した村落 ——。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示した渾身の力作。
蒲 豊彦 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0998-0 C3022
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『日本歴史』 [2021年10月号、第881号] から(評者:頴原澄子氏)
ヒロシマ
グローバルな記憶文化の形成
ラン・ツヴァイゲンバーグ著『ヒロシマ』(若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子訳)が、『日本歴史』(2021年10月号、第881号、日本歴史学会編)で紹介されました。原爆とホロコーストの交点へ ——。かつて「75年間は草木も生えない」と言われた都市は復興を遂げ、平和記念公園は「穏やかな」聖地と化した。どのようにして? 追悼・記念や観光をめぐる記憶の政治、証言とトラウマ、絡み合う犠牲者言説などに注目し、世界のなかのヒロシマの位置を問い直す挑戦作。
ラン・ツヴァイゲンバーグ 著
若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子 訳
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-0994-2 C3021
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『アジア研究』 [第67巻第3号、2021年7月] から(評者:板倉和裕氏)
試される正義の秤
南アジアの開発と司法
佐藤創著『試される正義の秤』が、『アジア研究』(第67巻第3号、2021年7月、アジア政経学会発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。
佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
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『アフリカ研究』 [99号、2021年5月] から(評者:片山夏紀氏)
ジェノサイド再考
歴史のなかのルワンダ
鶴田綾著『ジェノサイド再考』が、『アフリカ研究』(99号、2021年5月、日本アフリカ学会発行)で紹介されました。1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
“…… 筆者がとてつもない量の史資料や論文と向き合い格闘したことは明々白々で、ただただ驚嘆するばかりだった。筆者は「ジェノサイドを単純化せずに、個々人の体験を重視しながら、複雑だった状況をできるたけそのまま理解することが重要」(p.238)という信念のもとに、史資料に裏付けられた歴史の一片一片を緻密に収集して組み合わせ、新たなルワンダ像を提示した。…… 筆者の独自性のある見解は、現在のルワンダが様々な「-後(ポスト-:post-)」に直面しているというものである。具体的には紛争後(post-conflict)、ジェノサイド後(post-genocide)、エスニシティ後(post-ethnicity)、ポストコロニアル(post-colonial)という岐路である(p.241)。このような局面で現政権が単純化された「正史」以外を認めなければ、個々の記憶は反映されず、エスニックな違いが政治的に利用されかねないことに危機感をつのらせている。……”(『アフリカ研究』99号、p.53)
鶴田 綾 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0931-7 C3031
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「中日新聞」 [2021年9月18日付、夕刊、「ほんの裏ばなし」] から
鳥獣戯画を読む
「中日新聞」(2021年9月18日付、夕刊、「ほんの裏ばなし」)に、『鳥獣戯画を読む』の著者・伊藤大輔先生による自著紹介が掲載されました。謎の絵巻とも言われる国宝「鳥獣戯画」。なぜ動物が擬人化されているのか。その流動する画面はどのように連環しているのか ——。中世日本の芸能、王権、美意識にもとづく精緻な分析と、動物と人間のシームレスな関係についての考察により、全四巻を読み解きます。マンガ・アニメ起源論も検証。
伊藤大輔 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1012-2 C3071
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Tokyo Academic Review of Books(TARB)[2021年9月15日] から(評者:岡澤康浩氏)
客観性
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン著『客観性』(瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪訳)が、Tokyo Academic Review of Books(TARB、オンラインジャーナル、2021年9月15日)で紹介されました。客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
ロレイン・ダストン/ピーター・ギャリソン 著
瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-1033-7 C3010
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「朝日新聞」 [2021年9月11日付、読書欄「著者に会いたい」] から
フランク史Ⅰ クローヴィス以前
『フランク史Ⅰ クローヴィス以前』の著者・佐藤彰一先生が、「朝日新聞」(2021年9月11日付)読書欄の「著者に会いたい」で紹介されました。ヨーロッパのもう一つの起源 ——。欧州はギリシア・ローマからまっすぐに生まれたのではない。世界システムの大変動後、遠隔地交易、ローマ帝国との対抗、民族移動などを経て誕生した、500年にわたるフランク国家。「自由なる民」の淵源から王朝断絶までをたどる初めての通史。本巻では、初代王にいたる波乱の歴史を描く。
佐藤彰一 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1030-6 C3022
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『地域と社会』 [第24号、2021年8月] から(評者:金早雪氏)
世界史のなかの東アジアの奇跡
杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、『地域と社会』(大阪商業大学比較地域研究所紀要、第24号、2021年8月)で紹介されました。脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。—— 豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。
杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
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『週刊読書人』 [2021年9月3日号、第3405号] から(評者:小宮正安氏)
ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成
田中智晃著『ピアノの日本史』が、『週刊読書人』(2021年9月3日号、第3405号、読書人発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。
田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
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『日本歴史』 [2021年9月号、第880号] から(評者:ティネッロ・マルコ氏)
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、『日本歴史』(2021年9月号、第880号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描く。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
“…… 本書は、異国船来航による要求、また宣教師の問題とそれの対応をめぐる琉球王府・薩摩藩・幕府の交差する駆け引きを実証的に明らかにした大作である。また列強の要求と王府・薩摩藩・幕府の交渉展開において、琉球の民衆も大きな影響を受けたことが見出されている。列強からの「外圧」と日本からの「内圧」の間に置かれた王府が、自らの王国を存立させるために外交交渉を必死に行った過程を追究することで、浦賀中心の開国史とは別の、新しい日本開国史像を浮かび上がらせた。本書は、19世紀アジアの国際関係を研究している評者にとっても、日本・琉球の対外関係研究者にとっても、大変有意義なテキストになるであろう。……”(『日本歴史』2021年9月号、p.87)
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
在庫有り
『日本歴史』 [2021年9月号、第880号] から
神仏融合の東アジア史
吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、『日本歴史』(2021年9月号、第880号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。
“「神仏融合」とは、従来「神仏習合」という用語で語られてきた概念のことである。習合は神道側からの言葉であり、それが日本における宗教融合の特徴でもあったが、そこから離れ自由に考察するために「融合」の語が選ばれた。16名の執筆者によって、中国のみならずアジア各地における神仏融合の諸相、また日本における古代から近世にかけての神仏融合の歴史的展開が解き明かされる。宗教文化史研究必読の基本文献が新たに一冊加わった。”(『日本歴史』2021年9月号、p.116)
吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
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『図書新聞』 [2021年8月28日号、第3509号] から(評者:瀬戸口明久氏)
近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで
岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『図書新聞』(2021年8月28日号、第3509号、武久出版発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。
岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り
『月刊ショパン』 [2021年9月号、第452号] から
ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成
田中智晃著『ピアノの日本史』が、『月刊ショパン』(2021年9月号、第452号、ハンナ発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。
田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
在庫有り
『ミュージックトレード』 [2021年7月号] から
ピアノの日本史
楽器産業と消費者の形成
田中智晃著『ピアノの日本史』が、『ミュージックトレード』(2021年7月号、ミュージックトレード社発行)で紹介されました。富裕層の専有物であったピアノが人々に親しまれるようになった由来を、明治~現代の歴史からたどり、その普及を可能にした意外な原動力を示します。斜陽産業化の危機を超えるメカニズムをはじめてとらえ、音楽教室とともに世界へと拡がった日本の鍵盤楽器産業の全体像を描ききった意欲作。
田中智晃 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-1029-0 C3021
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『西洋史学』 [第271号、2021年6月] から(評者:佐藤公美氏)
訴える人びと
イタリア中世都市の司法と政治
中谷惣著『訴える人びと』が、『西洋史学』(第271号、2021年6月、日本西洋史学会)で紹介されました。ネッロに地代の支払いを求めたチェッコーロ、重税の免除を願い出たヤコポ、ジョヴァンニ、トゥーリ……。私的な利害に突き動かされて法廷に立つ市井の人びとが、その訴えを通して秩序に息を吹き込み、正義と公共善の結びあいを絶えず更新していく動態を、未踏査の裁判記録から明らかにします。
中谷 惣 著
税込11,000円/本体10,000円
A5判・上製・530頁
ISBN978-4-8158-0851-8 C3022
在庫有り
『西洋史学』 [第271号、2021年6月] から(評者:松浦義弘氏)
セレブの誕生
「著名人」の出現と近代社会
アントワーヌ・リルティ著『セレブの誕生』(松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳)が、『西洋史学』(第271号、2021年6月、日本西洋史学会)で紹介されました。スキャンダラスな公共性 ——。称賛と批判につつまれた「セレブ」とは、現代のメディアが作り上げた虚像なのか、それとも新たな威光の形なのか。王族・政治家から作家・俳優・音楽家まで、近代の始まりとともに生まれた「セレブリティ」の展開をたどり、公共圏が孕むパラドックスを問います。
アントワーヌ・リルティ 著
松村博史・井上櫻子・齋藤山人 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・474頁
ISBN978-4-8158-0933-1 C3022
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『西洋史学』 [第271号、2021年6月] から(評者:中野忠氏)
イギリス歴史人口学研究
社会統計にあらわれた生と死
安元稔著『イギリス歴史人口学研究』が、『西洋史学』(第271号、2021年6月、日本西洋史学会)で紹介されました。人口・家族の動態の復元で世界を牽引し、政治・経済・文化の解明に決定的な影響を与え続けたイギリス歴史人口学の史料・方法とその実践的応用をトータルに叙述、公衆衛生や疾病などの最新の分析も加え、英国社会の新たな全体像に迫った著者渾身のライフワーク。
安元 稔 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・468頁
ISBN978-4-8158-0954-6 C3022
在庫有り
『西洋史学』 [第271号、2021年6月] から(評者:松塚俊三氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフほか著『家族の命運』(山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦訳)が、『西洋史学』(第271号、2021年6月、日本西洋史学会)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
在庫有り
『人口学研究』 [第56号、2020年9月] から(評者:髙橋美由紀氏)
イギリス歴史人口学研究
社会統計にあらわれた生と死
安元稔著『イギリス歴史人口学研究』が、『人口学研究』(第56号、2020年9月、日本人口学会)で紹介されました。人口・家族の動態の復元で世界を牽引し、政治・経済・文化の解明に決定的な影響を与え続けたイギリス歴史人口学の史料・方法とその実践的応用をトータルに叙述、公衆衛生や疾病などの最新の分析も加え、英国社会の新たな全体像に迫った著者渾身のライフワーク。
安元 稔 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・468頁
ISBN978-4-8158-0954-6 C3022
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『UP』 [2021年8月号、第50巻第8号] から(評者:佐藤康宏氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『UP』(2021年8月号、第50巻第8号、東京大学出版会発行)の「日本美術史不案内」(第147、佐藤康宏氏)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
『図書新聞』 [2021年8月14日号、第3508号] から(評者:森周子氏)
戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家
北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、『図書新聞』(2021年8月14日号、第3508号、武久出版発行)で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。
北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り
「毎日新聞」 [2021年7月31日付] から(評者:三浦雅士氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、「毎日新聞」(2021年7月31日付)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
“500頁を超す大著だが読みやすい。19世紀後半のヨーロッパを席巻したジャポニスムを論じた専門書にもかかわらず、推理小説のように面白い。日本の浮世絵がフランスの画家を刺激して印象派を生み出したとは通説だが、ジャポニスムはさらにいっそう広汎な現象としてあったということがよく分かる。著者の代表作になることは間違いない。…… 記述がすべて示唆に富み連想を呼ぶ。画面上方に描かれたマネの水平線が広重の版画を思わせるとすれば、マネのみならず、クリムトの地平線もまた同じ流れにあるのではないか、というのがその一つ。また、コランの「ダフニスとクロエ」が春信を連想させるとすれば、たとえば宮崎駿のアニメ「天空の城ラピュタ」の、兄妹を思わせる若き恋人たちもじつは遠く春信の雰囲気を揺曳させているのではないか、というのもその一つ。美術史は人生を豊かにする。”(「毎日新聞」2021年7月31日付)
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
「中日新聞」 [2021年7月31日付、夕刊] から
戦時期日本の私立大学
成長と苦難
伊藤彰浩著『戦時期日本の私立大学』が、「中日新聞」(2021年7月31日付、夕刊)で紹介されました。それは成長の時代でもあった。—— 高まる進学熱のなか、国公立を超えてマジョリティを占めるようになった私立大学。一方的な統制だけではなかった政府との関係もふくめ、そのたくましい経営行動を軸に当時の実態に迫り、長期的な視野のもとで、多様な私学の全体像を初めて捉えた労作。
“政府の統制政策が注目されがちな戦時期の私立大学を、経営体としての切り口を軸に総体的に分析する。資料やデータを踏まえ、高まる進学熱を受けて財政面から見ても成長の時代だったことを明らかにする。戦時期の私大の全体像を捉えた労作。”(「中日新聞」2021年7月31日付夕刊)
伊藤彰浩 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・338頁
ISBN978-4-8158-1024-5 C3037
在庫有り
『IDE現代の高等教育』 [2021年8-9月号、第633号] から(評者:米田俊彦氏)
戦時期日本の私立大学
成長と苦難
伊藤彰浩著『戦時期日本の私立大学』が、『IDE現代の高等教育』(2021年8-9月号、第633号、IDE大学協会発行)で紹介されました。それは成長の時代でもあった。—— 高まる進学熱のなか、国公立を超えてマジョリティを占めるようになった私立大学。一方的な統制だけではなかった政府との関係もふくめ、そのたくましい経営行動を軸に当時の実態に迫り、長期的な視野のもとで、多様な私学の全体像を初めて捉えた労作。
伊藤彰浩 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・338頁
ISBN978-4-8158-1024-5 C3037
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『史学雑誌』 [2021年6月号、第130編第6号] から(評者:神田惟氏)
イスラーム・ガラス
真道洋子著/桝屋友子監修『イスラーム・ガラス』が、『史学雑誌』(2021年6月号、第130編第6号、史学会編集兼発行)で紹介されました。歴史を彩る「世界の華」——。古来のガラス文化を統合して成立し、近代芸術にも大きな影響を与えたイスラーム・ガラス。その器形や成形・装飾技法から、美術工芸としての展開、さらには日本をはじめ世界各地への伝播まで、多数のカラー図版とともに豊かな物質文化の全体像を映し出します。
真道洋子 著/桝屋友子 監修
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・496頁
ISBN978-4-8158-1001-6 C3072
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『史学雑誌』 [2021年6月号、第130編第6号] から(評者:関口哲矢氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『史学雑誌』(2021年6月号、第130編第6号、史学会編集兼発行)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“…… 世界潮流のなかで、日本の国家総動員準備だけが独自色の強いものであったのか、日本は世界の趨勢を学んでいなかったのか、という問いの追究である。また、欧米との比較が行き届いていない研究状況が、戦争に対する資源の「根こそぎ動員」(14頁)という印象を生み出しているのではないかとの疑義も示す。同時代の欧米と日本の動向を並行させることで、日本の特徴を導き出そうとする手法は挑戦的なものといえよう。
国家総動員体制の構築に携わったメンバーが何を考え、何をモデルとしていたのかを説得的に示すために、著者は膨大な資料の裏づけをとる。英米や日本の資料を精緻に読み解くことで、日本に横たわる問題を浮かび上がらせた点は、本書の大きな功績である。
日本と欧米の比較による新知見の提示は、どれも目をみはるものがある。……”(『史学雑誌』2021年6月号、p.90)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り
『図書新聞』 [2021年7月24日号、第3505号] から(評者:坂野徹氏、小松美彦氏)
近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで
岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『図書新聞』(2021年7月24日号、第3505号、武久出版発行)の特集「2021年上半期読書アンケート」で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。
坂野徹氏評:“…… 今後、日本の科学史や思想史に関心をもつ研究者が必ず参照すべき著作となるはずである。……”(第6面)
小松美彦氏評:“…… 膨大な文献の精読を基礎に、明治維新から敗戦までの日本の科学論の展開史を詳解した、この分野の金字塔。評者にとって特に興味深かったのは、篠原雄や橋田邦彦の生物学主義・科学主義が超国家主義や日本精神と繋がっていく機構であり、また、それがナチスを彷彿させることである。敗戦を挟んで日本科学は民主主義科学へと “転成” した。かような戦後を論じる次作に期待が膨らむ。……”(第7面)
岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り
「読売新聞」 [2021年7月11日付] から(評者:瀧澤弘和氏)
不定性からみた科学
開かれた研究・組織・社会のために
吉澤剛著『不定性からみた科学』が、「読売新聞」(2021年7月11日付)で紹介されました。科学には「モヤモヤ」がつきまとう、されど ——。不確実性・偶然性・規範性などさまざまな形をとり、研究から組織・評価・大学・社会・未来まであらゆる次元に現れる不定性。これら避けがたいものと向きあい、科学のリアルを捉え直すことで、知と未知への態度を鍛える21世紀の学問論。
“…… 本書は、「科学は確立した知的業績ではなく、科学として作られつつある途上のプロセスである」というスタンスに立ち、知識の生産、評価から社会利用に至る各所に潜む様々な「不定性」を明るみに出す。…… 自然・社会・人文の諸科学に目配りして不定性を整理し、適所で適例をあげ、説得的に不定性を論じる。…… 平明な文章で、現代科学が抱える問題を知りたい一般読者も楽しめるし、注が充実しているので、最先端の議論を知りたい人にも素晴らしいガイドになる。”(「読売新聞」2021年7月11日付、第14面)
吉澤 剛 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1025-2 C3040
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「日本経済新聞」 [2021年7月10日付] から
不定性からみた科学
開かれた研究・組織・社会のために
吉澤剛著『不定性からみた科学』が、「日本経済新聞」(2021年7月10日付)で紹介されました。科学には「モヤモヤ」がつきまとう、されど ——。不確実性・偶然性・規範性などさまざまな形をとり、研究から組織・評価・大学・社会・未来まであらゆる次元に現れる不定性。これら避けがたいものと向きあい、科学のリアルを捉え直すことで、知と未知への態度を鍛える21世紀の学問論。
“…… 科学や科学者がいつもデータを持って客観的に正解を出してくれると思っていたら、しっぺ返しをくらう。昨今のエビデンス(科学的根拠)至上主義の死角にも警鐘を鳴らす。研究不正や科学が巨大化する背景も独自の視点で解説する。
原発事故やコロナの大流行で科学と社会のあり方が問われるようになった。…… 科学とは一体何かを知る、学ぶ上で、興味深い有益な本である。”(「日本経済新聞」2021年7月11日付、第29面)
吉澤 剛 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・326頁
ISBN978-4-8158-1025-2 C3040
在庫有り
『図書新聞』 [2021年7月17日号、第3504号] から(評者:石井知章氏)
毛沢東論
真理は天から降ってくる
中兼和津次著『毛沢東論』が、『図書新聞』(2021年7月17日号、第3504号、武久出版発行)で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。
中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
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『東洋史研究』 [第80巻第1号、2021年6月] から(評者:豊岡康史氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『東洋史研究』(第80巻第1号、2021年6月、東洋史研究会編集兼発行)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
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『都市問題』 [2021年7月号、第112号] から(評者:周郷万里菜氏)
災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて
橘川武郎著『災後日本の電力業』が、『都市問題』(2021年7月号、第112号、後藤・安田記念東京都市研究所発行)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。
橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り
「聖教新聞」 [2021年6月29日付] から
災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて
『災後日本の電力業』の著者である橘川武郎先生のインタビューが、「聖教新聞」(2021年6月29日付)に掲載されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。
橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り
「ふぇみん婦人民主新聞」 [2021年7月5日号、第3291号] から
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『NO NUKES』が、「ふぇみん婦人民主新聞」(2021年7月5日号、第3291号、ふぇみん婦人民主クラブ)で紹介されました。〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り
『年報政治学』 [2021-Ⅰ号] から(評者:中溝和弥氏)
試される正義の秤
南アジアの開発と司法
佐藤創著『試される正義の秤』が、『年報政治学』(2021-Ⅰ号、日本政治学会編集兼発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。
“…… 本書の意義は、次の三点に集約できる。第一が、包括性である。検討対象を、インドを軸としながらも南アジア全域に広げ、かつ公益訴訟の法的起源をイギリス大権令状に求めて法源を検証し、その後の展開を法学の議論を踏まえた上で政治経済的要因も取り込んで論じた。公益訴訟を体系的に分析した点で、貴重な研究である。
第二に、第一点とも重なるが、政治経済的要因との関わりを重視して、公益訴訟の展開を理解する視点を打ち出したことである。法学の議論では、判例の分析が何よりも重視されるが、より捉えがたい政治経済的要因を重視した点に本書の特長がある。
最後に、これを踏まえた上で、南アジア諸国において、民主化が公益訴訟の展開にとって重要な役割を果たしていることを見いだした点である。これを単なる時期の一致としてではなく、人事を中心とする司法内部の変化と関連付けて論じようと試みている点が興味深い。南アジアを超えた射程を持ちうる議論である。……”(『年報政治学』2021-Ⅰ号、pp.258-259)
佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
在庫有り
「日本経済新聞」 [2021年7月3日付] から
近代世界システム(全4巻)
I・ウォーラーステイン著/川北稔訳『近代世界システム』(全4巻)が、「日本経済新聞」(2021年7月3日付)読書欄の「リーダーの本棚」(紹介者:KKRジャパン社長 平野博文氏)で紹介されました。歴史・経済・政治・社会の記述を大きく書換え、現代の古典となった記念碑的著作の新版。
“…… 長期投資のプライベート・エクイティ投資は、次に何が起きるのか未来を読む仕事でもあります。そのために歴史に学べとヘンリーやジョージからよく言われます。ウォーラーステインの『近代世界システム』は国や地域の覇権争いの歴史をひもときます。覇権の変遷をたどりながら、脱炭素でゲームチェンジを仕掛けようとする今の欧州の狙いに思いをはせたりします。……”(「日本経済新聞」2021年7月3日付、第29面)
I. ウォーラーステイン 著
川北 稔 訳
税込各5,280円/本体各4,800円
在庫有り
『移民研究年報』 [第27号、2021年6月] から(評者:根川幸男氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『移民研究年報』(第27号、2021年6月、日本移民学会編)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
在庫有り
『移民研究年報』 [第27号、2021年6月] から(評者:山本明代氏)
引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究
蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『移民研究年報』(第27号、2021年6月、日本移民学会編)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。
蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
在庫有り
『月刊アートコレクターズ』 [2021年7月号、第148号] から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
『月刊アートコレクターズ』(2021年7月号、第148号、生活の友社発行)に、『移り棲む美術』の著者・三浦篤先生のインタビューが掲載されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
「山形新聞」 [2021年6月20日付] 他から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、「山形新聞」(2021年6月20日付)ほか計6地方紙で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。[山形新聞:2021年6月20日付、佐賀新聞・大分合同新聞:2021年6月13日付、宮崎日日新聞:2021年6月6日付、日本海新聞・徳島新聞:2021年5月30日付]
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
「読売新聞」 [2021年6月27日付] から(評者:国分良成氏)
毛沢東論
真理は天から降ってくる
中兼和津次著『毛沢東論』が、「読売新聞」(2021年6月27日付)で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。
“本書は、毛沢東に関する過去の研究業績や評論等を再吟味し、それに新たな史料を加えつつ毛の思想と行動を客観的に分析し、鋭く批判した渾身の力作である。著者は日本の中国経済研究の今日的基礎を築いた経済学者である。評者もその研究から多くを学んできたが、経済ではなく毛や中国政治についての私論をこれほど痛快に開陳するのは初めてだ。……”(「読売新聞」2021年6月27日付、第10面)
中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
在庫有り
「佐賀新聞」 [2021年6月13日付] 他から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、「佐賀新聞」(2021年6月13日付)ほか計5地方紙で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。[佐賀新聞・大分合同新聞:2021年6月13日付、宮崎日日新聞:2021年6月6日付、日本海新聞・徳島新聞:2021年5月30日付]
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
『日本歴史』 [2021年7月号、第878号] から(評者:上川通夫氏)
中世日本の王権神話
阿部泰郎著『中世日本の王権神話』が、『日本歴史』(2021年7月号、第878号、日本歴史学会編集/吉川弘文館発行)で紹介されました。龍や狐、海人や童子、神仏や魔王が躍動し、神器や国土の由来を説く物語たち ——。中世の権力は、自らの「正統」を示す数多の縁起説話によって支えられていた。天皇の即位儀礼から、武家の始祖伝承や幸若舞などの芸能、さらには「中世日本紀」の歴史叙述まで、豊かな王権神話の水脈を探る、永年の探究の到達点。
阿部泰郎 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・452頁
ISBN978-4-8158-0982-9 C3095
在庫有り
「産経新聞」 [2021年6月12日付、「モンテーニュとの対話 随想録を読みながら」] から
毛沢東論
真理は天から降ってくる
中兼和津次著『毛沢東論』が、「産経新聞」(2021年6月12日付)の「モンテーニュとの対話 随想録を読みながら」で紹介されました。その男は中国に何をもたらしたのか ——。大躍進政策や文化大革命によって大量の犠牲者を出しながら、現在なお大陸で英雄視される稀代の指導者。「秦の始皇帝+マルクス」とも言われる、その思想と行動を冷静かつ大胆に分析。中国経済研究をリードしてきた碩学が、現代中国の核心に迫ります。
中兼和津次 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・438頁
ISBN978-4-8158-1023-8 C3022
在庫有り
『社会経済史学』 [第87巻第1号、2021年5月] から(評者:奥田伸子氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフ/C・ホール著『家族の命運』(山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦訳)が、『社会経済史学』(第87巻第1号、2021年5月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
“…… 本書は、中間層が「中産階級」として確立する過程とジェンダー秩序の構築が密接に結びついていたことを示し、近代イギリス社会の形成を描いた壮大な構想による研究書である。職業によるアイデンティティの獲得によって中産階級の男性性の構築がなされ、家族を扶養し、保護者兼指導者としてふるまう夫/父親像が確立していく過程は特に興味深い。ジェンダー史と銘打ちながら、女性にのみ着目する研究が多い中、女性性と男性性の構築は表裏一体であったことを鮮やかに示している。本書は確かに男女の二項対立形成の物語ではあるが、性的役割分担を複雑な諸相でとらえている。家族経営体において働くことがなくなった後も、女性は資本の形成、次世代の養育、信用形成等の領域で果たすべき役割があったことを指摘することが目的だったと著者は述べている(p.393)が、その意図は十分に果たされている。男女の二項対立を固定的に捉え、女性が公的領域から排除された側面を強調する研究姿勢にも本書は注意を促している。……”(『社会経済史学』第87巻第1号、p.72)
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2021年6月19日号、第3500号] から(評者:遠山公一氏)
転生するイコン
ルネサンス末期シエナ絵画と政治・宗教抗争
松原知生著『転生するイコン』が、『図書新聞』(2021年6月19日号、第3500号、武久出版発行)で紹介されました。古今の時間を自在に行き来し、「像」と「アート」の汽水域にたゆたうシエナ派絵画。イタリア戦争と宗教改革にともなう波乱のなか、「聖母の都市」を守護する古きイコン=聖画像はいかに動員され、新たな使命を獲得したのか。繊細なシエナ美術に秘められたダイナミズムを析出し、イメージ論の新地平を切り拓きます。
“…… 本書は、宗教イメージが生まれ、受容されたのちに転用され、さらに再受容される、そのイメージがたどった一生を「転生するイコン」と呼ぶ。そして、その一生がどのように展開したか、その経緯を尋ね、どのような結末を迎えたのか、その歴史的プロセスをたどる。イコン(宗教イメージ)は場や機能、形式や環境を変えるかもしれない。具体的には加筆・削除・改変・切断・移動・挿入・貫入が行われ、1つのイメージはオリジナルの状態から、文脈に合わせて姿を変えながら生き続けたのである。…… 安定した美術の形式分析およびディスクリプションと、シエナを巡る社会状況の歴史的叙述に加えて、本書は特に理論面で優れている。いくつもの魅力的な造語を用いて、新しい考え方を呈示する。そこれでは、イコン転生のあり方は4つに分けられる。パリンプセスト化、再コンテクスト化、モード化とメタ・イメージ化である。このようにして、本書はベルティンクやストイキツァを始めとする新しい美術史の成果を積極的に取りあげ、今日の人類学的な美術史に接近しつつも、なおかつシエナ派というスペシフィックな歴史的・美術的事象を論ずることに成功している。”(『図書新聞』2021年6月19日号、第4面)
松原知生 著
税込12,980円/本体11,800円
A5判・上製・652頁
ISBN978-4-8158-1007-8 C3071
在庫有り
『図書新聞』 [2021年6月12日号、第3499号] から(評者:宇都宮明子氏)
歴史教育の比較史
近藤孝弘編『歴史教育の比較史』が、『図書新聞』(2021年6月12日号、第3499号、武久出版発行)で紹介されました。「歴史認識」を語る前に ——。なぜ歴史をめぐって国どうしが争うのか。世界各地で歴史はどのように教えられてきたのか。歴史家と教育学者の共同作業により、自国史と世界史との関係を軸に、四つの地域の現在までの「歴史教育」の歴史を跡づけ、歴史とは何か、教育とは何かを問い直す、未曾有の試み。
近藤孝弘 編
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・328頁
ISBN978-4-8158-1011-5 C3022
在庫有り
「世界史の眼」 [第15号、2021年6月] から(評者:秋田茂氏)
世界史のなかの東アジアの奇跡
杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、「世界史の眼」(第15号、2021年6月、世界史研究所)で紹介されました。脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。—— 豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。
杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2021年5月28日号、第3391号] から(評者:古田亮氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『週刊読書人』(2021年5月28日号、第3391号、読書人発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
“本書が解き明かそうとしているテーマは、ゴッホと広重との関係に代表されるジャポニスムの問題である。美術に特別な関心のない読者であっても馴染みのあるテーマであろうが、本書は、日本の浮世絵がフランスの印象派の画家たちに影響を与えたといった、これまでのジャポニスム論を完全に凌駕する内容となっている。…… 全編を通しての語り口は優しく軽快である。心地よく読み進めることができるという意味で、快著というにふさわしい。……”(『週刊読書人』2021年5月28日号、第4面)
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
「読売新聞」 [2021年5月23日付] から(評者:中島隆博氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、「読売新聞」(2021年5月23日付)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
“象徴的な書名である。日本の美術がジャポニスム(日本趣味)として19世紀後半から20世紀初頭のヨーロッパ特にフランスに影響を与え、その影響を与えられたフランスの美術から、今度は日本の美術が影響を与えられる。このダイナミックな相互の往還と変容を、著者は植物が異国の地に移植され交雑し開花するかのごとく、「移り棲む」と切り取って見せたのである。
本書の特徴はその目配りの規模の大きさにある。たとえば、ジャポニスムの要素が、浮世絵のような絵画作品だけでなく、陶磁器などの工芸品、建築や文学からファッションにまでその範囲を拡大させた。またジャポニスムの影響においても、印象派やポスト印象派に集中していた関心を広げ、パリのサロン(官展)に出品された絵画を取り上げて、当時のフランスの制度の中にある美術にまで浸透するジャポニスムを明らかにすることに成功している。……”(「読売新聞」2021年5月23日付)
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
『週刊佛教タイムス』 [2021年5月20日号] から
神仏融合の東アジア史
吉田一彦編『神仏融合の東アジア史』が、『週刊佛教タイムス』(2021年5月20日号、仏教タイムス社発行)で紹介されました。日本独自の宗教現象だと考えられてきた「神仏習合」。しかし、神信仰と仏教の融合はアジア各地域で広く見られる。インド・中国から北東・東南アジアまで多岐にわたる「神仏融合」の実態を解き明かし、一国史的な認識を超えて新たに日本の宗教文化を捉え直します。
“…… アジア各地に見られる共通の宗教現象である神仏融合は、「仏法が全般として持つ神信仰との親和性」がアジア各地域の個性的な神々の信仰と出会うことで生じ、アジア各地の多彩な宗教風土を形成していった。そして日本の神仏習合もその一形態であることを知る時、本書が到達した比較研究の成果は諸宗教間対話の現場へと還元できるものとなる。アジアの信仰基盤の共通性と差異を明らかにすることから、利害がせめぎ合うアジアの真の対話が始まるからである。”(『週刊佛教タイムス』2021年5月20日号、第5面)
吉田一彦 編
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-1021-4 C3021
在庫有り
『図書新聞』 [2021年5月29日号、第3497号] から(評者:南明日香氏)
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『図書新聞』(2021年5月29日号、第3497号、武久出版発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
『月刊美術』 [2021年6月号、通巻549号] から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『月刊美術』(2021年6月号、通巻549号、サン・アート発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
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「神奈川新聞」 [2021年5月9日付] から
災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて
橘川武郎著『災後日本の電力業』が、「神奈川新聞」(2021年5月9日付)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。
橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り
『キネマ旬報』 [2021年6月上旬号、第1865号] から(評者:藤田直哉氏)
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『NO NUKES』が、『キネマ旬報』(2021年6月上旬号、第1865号、キネマ旬報社発行)で紹介されました。〈見えないもの〉とたたかう——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り
『週刊読書人』 [2021年4月9日号、第3385号] から(評者:三浦伸夫氏)
ルネサンスの数学思想
東慎一郎著『ルネサンスの数学思想』が、『週刊読書人』(2021年4月9日号、第3385号、読書人発行)で紹介されました。科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。
“…… 中世以降展開したさまざまな用語である「数学の確実性」をはじめとして、「中間性」「最強論証」「不定量概念」「無中項」「遡行」「共永遠」など、論者における相違を本書は次々と解明していく。当時公刊された膨大な量のラテン語テクストを精査し、妥協を許さない厳密な史料読解で人物別に論じている。取り上げられるのは、ツィマラ、ピッコローミニ、バロッツィ、そしてイエズス会数学者のブランカヌス、ペレリウスなどで、大半は限られた研究者の間でしか従来その数学思想が語られることはなかったが、本書では時系列に彼らの主張が明らかにされる、当時の数学論をひとくくりにすることはできない。それぞれが独自の立場から自説を論じ、ルネサンス数学思想は決して一枚岩ではなかったのである。まさにここにルネサンス思想史研究の面白さがあるのではなかろうか。……”(『週刊読書人』2021年4月9日号、第3面)
東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
在庫有り
「朝日新聞」 [2021年5月8日付] から(評者:保阪正康氏)
戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家
北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、「朝日新聞」(2021年5月8日付)読書欄で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。
北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り
『歴史と経済』 [第251号、2021年4月] から(評者:立松潔氏)
郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提
伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『歴史と経済』(第251号、2021年4月、政治経済学・経済史学会発行)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。
伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
在庫有り
『歴史と経済』 [第251号、2021年4月] から(評者:中西聡氏)
日本中世市場論
制度の歴史分析
安野眞幸著『日本中世市場論』が、『歴史と経済』(第251号、2021年4月、政治経済学・経済史学会発行)で紹介されました。支払い・貸借・契約・裁判・差押えなど、市場が果たした多様な役割を明らかにするとともに、債権取立てを軸に中世日本の展開を描き出したライフワーク。神人・悪僧に発し金融を担う「公界」と公権力とは、慣習法と制定法、文書とその破棄、暴力と秩序等をめぐり、いかに切り結ぶのか。
安野眞幸 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・460頁
ISBN978-4-8158-0921-8 C3021
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『芸術新潮』 [2021年5月号] から
移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画
三浦篤著『移り棲む美術』が、『芸術新潮』(2021年5月号、新潮社発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。
“本書のカバーを飾るのが黒田清輝《鉄砲百合》で、なかの文章も、恩師ラファエル・コランの庭に日本から取り寄せた百合などが植えられていたとの黒田の回想から始まるのは象徴的だ。日仏美術交流史を3部構成で立体的に捉える本書は、フランスにおけるジャポニスムの多彩な側面と、同国に学んだ日本の洋画家たちを対象とする諸論を、コランについてのテキストが扇の要となって繋ぐ。コランの美的理想にはそもそも鈴木春信と通じるものがあり、彼の日本美術への接し方は異国趣味とも造形的ジャポニスムとも言い切れない。それを「共鳴のジャポニスム」と呼び、そんな画家だったから黒田らは惹きつけられたとする見方は説得力あり。他にも「アジア」の寓意像がいつから日本娘で表されるようになったかなど、発見と卓見に満ちている。”(『芸術新潮』2021年5月号、p.131)
三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り
『科学史研究』 [2021年1月号、第Ⅲ期第59巻 No.296] から(評者:瀬戸口明久氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『科学史研究』(2021年1月号、第Ⅲ期第59巻 No.296、日本科学史学会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
“…… 本書を読んで驚かされるのは、20世紀前半におけるエコロジーと開発との親和性である。1970年代以降の環境主義の時代においては、生態学とは反開発であり、ときには反体制にすらなりうるものだった。だが本書に登場する植民地科学者たちは、人間を含む自然全体を総合的に把握し、環境と調和した「合理的」な開発を推進しようとする。かつて環境史家ドナルド・ウォースターは『ネイチャーズ・エコノミー』において、自然と親しむ牧歌主義と自然の管理を目指す帝国主義の二つの流れから生態学史を描いた。本書に登場する科学者たちが後者の流れをくむエコロジストであることは間違いないだろう。そして現在、環境情報を収集し自然を総合的に管理しようとする科学知は、生物多様性保全やスマート農業の名のもとに、ふたたび「持続的開発」との結びつきを強めつつある。「エコロジーの世紀」は、21世紀の現在においても進行しつつあるといえよう。”(『科学史研究』2021年1月号、p.410)
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:溝上宏美氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
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『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:松浦正孝氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかける。
“…… 本書の最大の貢献は、これまで扱われてこなかった「占領地政権」や「対日協力者」の情報を詳らかにしたということよりも、もっと別のところにあると評者は考える。…… それは、日中戦争前後における、日本と「中国」とを取り巻く歴史環境(特に周辺部・圏界)、そして日本と「中国」ないしアジアとの内的紐帯を明らかにしたことである。…… 対日協力者の政治思想が、いかに多様で複雑かということを構造的にあるいは状況に即して解明することに成功した。これは、本書の貢献の一つと言って良い。
しかしながら評者はそれよりもむしろ、日本帝国が彼らに用意した行動空間・思索空間のありようを析出したことこそ、本書の最も重要な貢献であると感じた。このテーマをトレースするのは至難の業であるが、本書はそのデッサンに十分成功していると思う。例えば本書は、近年の経済史や政治経済史、国際政治史などで明らかになった、福建・台湾・満洲・「蒙疆」・東南アジア・インドなどの「日本帝国」の周縁の連関性をつなぐ稜線を示した。その稜線は、戦後日本にも、脈々とつながっている。本書は、ほとんどの日本人が知らない、しかし坊間の捏造された歴史でもない、もう一つの重要な日中関係史のありかたを指し示したと言えよう。否、日中関係史と呼ぶにはあまりに壮大な、新たな日本(「日本」という枠組みも適当ではないかも知れない)とアジアとの関係史の幕開けである。……”(『史林』第106巻第3号、pp.62-63)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
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『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:安岡健一氏)
引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究
蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。
蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
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「朝日新聞」 [2021年4月24日付] から(評者:生井英考氏)
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『NO NUKES』が、「朝日新聞」(2021年4月24日付)読書欄で紹介されました。〈見えないもの〉とたたかう——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
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『図書新聞』 [2021年5月1日号、第3494号] から(評者:河本真理氏)
現代アート入門
デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『図書新聞』(2021年5月1日号、第3494号、武久出版発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
“…… 本書の多角的なアプローチから浮かび上がってくるのは、矛盾やパラドックスを孕んだ両義的なモダン・アートの動態である。モダン・アートは、大衆(消費)文化を貪欲に取り込む一方で、思想や表象の「難解さ」によって文化的エリート主義に結びついており、開かれていると同時に排他的でもある。また、モダン・アートが、対立していたはずのメインストリーム=美術館によって制度化され、消費主義やスペクタクルに同化していく傾向も顕著だ。メディアと結託してセレブ化する芸術家の例として言及されるトレイシー・エミンは、フェミニズムや(過去の)モダン・アートを参照しながら、前衛の批判的な姿勢を失う危険を冒している。著者は、こうした前衛の困難さを自覚しながらも、本書の最後で、芸術に癒しを求めるのか、それとも批判的な抵抗・思考を求めるのかを問いかけるのだ。…… なお、表紙の装幀は、一見するとピンクを基調にしたポップなものに見えるが、帯を外すと、エドワード・キーンホルツの《移動式戦争記念碑》が現れて意表を突かれた。このギャップがまさに現代アートなのかもしれない。”(『図書新聞』2021年5月1日号、第4面)
デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
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『週刊読書人』 [2021年4月23日号、第3387号] から(評者:長崎浩氏)
近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで
岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『週刊読書人』(2021年4月23日号、第3387号、読書人発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。
岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
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『現代化学』 [2021年5月号、第602号] から
分子地球化学
高橋嘉夫編『分子地球化学』が、『現代化学』(2021年5月号、第602号、東京化学同人発行)で紹介されました。物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。
高橋嘉夫 編
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・444頁
ISBN978-4-8158-1018-4 C3044
在庫有り
『外交』 [2021年3・4月号、第66号] から(評者:伊藤亜聖氏)
世界史のなかの東アジアの奇跡
杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、『外交』(2021年3・4月号、第66号、外務省発行/都市出版発売)で紹介されました。脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。—— 豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。
杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2021年4月24日号、第3493号] から(評者:浅妻章如氏)
租税回避と法
GAARの限界と解釈統制
本部勝大著『租税回避と法』が、『図書新聞』(2021年4月24日号、第3493号、武久出版発行)で紹介されました。スターバックスやアップル、グーグルなど、名だたるグローバル企業がおこない、世界的に問題化した租税回避行為をいかに抑止すべきか。各国で導入が進むGAARの効果と限界を実証的に浮き彫りにし、岐路に立つわが国がとるべき道を、GAARにかわる第三のアプローチとともに提示します。
本部勝大 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・336頁
ISBN978-4-8158-0999-7 C3032
在庫有り
『イギリス哲学研究』 [第44号、2021年3月] から(評者:島内明文氏)
スミスの倫理
『道徳感情論』を読む
竹本洋著『スミスの倫理』が、『イギリス哲学研究』(第44号、2021年3月、日本イギリス哲学会発行)で紹介されました。スミス倫理学の真の射程とは。近代における倫理のメカニズムと意義を明瞭に説き、政治・経済・社会のよき運用を支える心理学的な人間学を打ち立てた、もうひとつの主著から描き出す。『国富論』とは違った現代への示唆と、経済学にとどまらない社会科学的知への豊かな洞察を浮かび上がらせる。
竹本 洋 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・262頁
ISBN978-4-8158-0990-4 C3012
在庫有り
『化学』 [2021年5月号、第76巻第5号] から(評者:平田岳史氏)
分子地球化学
高橋嘉夫編『分子地球化学』が、『化学』(2021年5月号、第76巻第5号、化学同人発行)で紹介されました。物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。
“…… 本書では、元素の性質の系統的理解は、もはや Goldschmidt の夢ではなく、現実可能なものとなっていることを多くの実例をあげながら、ていねいかつ厳格に紹介している。
評者は還元主義には懐疑的であった。懐疑的というより、研究手法としての限界を感じてしまっていた。本書はその考えを真っ向から否定し、地球や環境で起こっている複雑な現象を、単純かつ明確な「化学反応式」で記述しようとしている。本書は、学問に対する純粋な期待を忘れてしまったシニア研究者……にも強烈なメッセージを数多く含んでいる。……”(『化学』2021年5月号、p.56)
高橋嘉夫 編
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・444頁
ISBN978-4-8158-1018-4 C3044
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『日本森林学会誌』 [第102巻第4号、2020年] から(評者:香坂玲氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『日本森林学会誌』(第102巻第4号、2020年、日本森林学会発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
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『教育學雑誌』 [第57号、2021年3月] から(評者:間篠剛留氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『教育學雑誌』(第57号、2021年3月、日本大学教育学会発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
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『教育學雑誌』 [第57号、2021年3月] から(評者:冨士原雅弘氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『教育學雑誌』(第57号、2021年3月、執筆者による紹介、日本大学教育学会発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『科学哲学』 [第53巻第2号、2020年] から(評者:植原亮氏)
〈概念工学〉宣言!
哲学×心理学による知のエンジニアリング
戸田山和久・唐沢かおり編『〈概念工学〉宣言!』が、『科学哲学』(第53巻第2号、2020年、日本科学哲学会)で紹介されました。概念は、人類の幸福に深くかかわる人工物であり、概念工学とは、有用な概念を創造・改定する新たなフレームワークである。本書は基礎的な理論を提示するとともに、「心」「自由意志」「自己」などを例に実践的な議論を展開し、豊饒な学の誕生を告知します。
戸田山和久・唐沢かおり 編
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・292頁
ISBN978-4-8158-0941-6 C3010
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『経済セミナー』 [2021年4・5月号] から(評者:末石直也氏)
統計学を哲学する
大塚淳著『統計学を哲学する』が、『経済セミナー』(2021年4・5月号、日本評論社発行)で紹介されました。統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直します。科学と哲学を架橋する待望の書。
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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『図書新聞』 [2021年4月10日号、第3491号] から(評者:増記隆介氏)
鳥獣戯画を読む
伊藤大輔著『鳥獣戯画を読む』が、『図書新聞』(2021年4月10日号、第3491号、武久出版発行)で紹介されました。謎の絵巻とも言われる国宝「鳥獣戯画」。なぜ動物が擬人化されているのか。その流動する画面はどのように連環しているのか ——。中世日本の芸能、王権、美意識にもとづく精緻な分析と、動物と人間のシームレスな関係についての考察により、全四巻を読み解く。マンガ・アニメ起源論も検証。
“…… 氏が提案するのは、「鳥獣戯画」甲・乙・丙・丁の4巻、それぞれのある種のまとまりを持つ場面ごとの関係性、そして4巻相互の関係性を「連歌」という文学行為を支えた文化的なありようによって読み解くことである。全体に特定の物語や意味があるのではなく、部分相互の関係性の中にこそこの絵巻を生み出した時代の痕跡が残されているという見方はこれまでにないものである。…… 伊藤氏の語りは、現在の氏が備えている様々な知の蓄積、文化人類学、王権論、記号論、漫画論といったものを縦横に駆使する。しかし、そのような現在の知のありようが、およそ800年前に描かれた作品を論じるときに作品から決して浮き上がらない、乖離していかないところに氏の議論の魅力がある。それは、氏の作品を見る力、作品の底に潜む作品が生み出された状況を鮮やかに浮かび上がらせる透徹した論理性による。本書が提案する「鳥獣戯画」の新しい読み方は、それぞれの読者に必ずや新しい絵画の見方を与えてくれるであろう。展覧会で「鳥獣戯画」をみる前に、そしてみた後に本書を手に取って、「鳥獣戯画」とは何か? について考える時間を持つことは、現在と過去を回遊する愉しい時間を過ごすことに他ならない。”(『図書新聞』2021年4月10日号、第6面)
伊藤大輔 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1012-2 C3071
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『日本歴史』 [2021年4月号、第875号] から(評者:高塩博氏)
徳川日本の刑法と秩序
代田清嗣著『徳川日本の刑法と秩序』が、『日本歴史』(2021年4月号、第875号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。江戸の裁きにおいて、罰せられるべき者はいかにして決まったのか。具体的な判例から江戸期固有の法理を探り出し、西洋法を規範とする刑法理解を塗り替えるとともに、幕政を基礎づけた統治原則をも浮き彫りにします。今日に及ぶ日本人の法観念への新たな理解を開く力作。
“…… 刑事責任という視点から江戸幕府の判例を分析し、その刑法理論の解明を目指したのである。分析の対象とした主たる幕府判例は、評定所評議の「御仕置例撰述」(35冊、未翻刻)と「御仕置例類集」とである。加えて火附盗賊改の判例集である「刑例抜萃」や長崎奉行所の「犯科帳」などにも幅広く眼を通しており、その厖大な分量の判決を精査して縦横に駆使した著者の熱量にまずは敬意を表する。…… 江戸幕府刑法の理解に「身分責任」という視角を導入したのは慧眼であり、説得力に富む。法解釈の理論を判例から探り出すにあたり、先入観にとらわれることなく、数々の判例を熟読玩味した結果、「身分責任」という視角にたどりついたのであろう。近代刑法の概念のみをもってしては、判例に内包された刑法理論を十全には把握できないのである。とはいうものの、著者の精緻な分析は現代刑法についての解釈学が有効に働いている。ここに、江戸幕府刑法を理解するための必読の一冊が誕生したのである。……”(『日本歴史』2021年4月号、pp.94-95)
橘川武郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・386頁
ISBN978-4-8158-0980-5 C3032
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「京都新聞」 [2021年3月27日付] から
統計学を哲学する
『統計学を哲学する』の著者である大塚淳先生のインタビューが、「京都新聞」(2021年3月27日付)に掲載されました。【内容】統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・上製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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「日本経済新聞」 [2021年3月27日付] から
災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて
橘川武郎著『災後日本の電力業』が、「日本経済新聞」(2021年3月27日付)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。
“…… エネルギー政策や企業の歴史に詳しい著者が、原発事故の前夜から、事故を経て今日に至るエネルギー政策や電力産業の変化を検証する。著者は原発事故が日本の電力業に3つの大転換をもたらしたと指摘する。原発を主要電源とする時代の終わり、10電力会社体制の終わり、そして電力を発電した場所で利用する分散型供給システムの構築が始まったことである。…… 過去10年の電力・エネルギー改革の姿は進んだ市場改革と、進まぬ原子力改革の「まだら模様」だとの指摘には説得力がある。…… 原発事故から10年の節目に歩みを振り返る資料的価値もある一冊だ。”(「日本経済新聞」2021年3月27日付、第33面)
橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
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『図書新聞』 [2021年4月3日号、第3490号] から
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
『NO NUKES』の著者であるミツヨ・ワダ・マルシアーノ先生のインタビュー(聞き手:久保豊氏)が、『図書新聞』(2021年4月3日号、第3490号、武久出版発行)に掲載されました。【内容】〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
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「河北新報」 [2021年3月7日付] から
現代アート入門
デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、「河北新報」(2021年3月7日付)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
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「日本経済新聞」 [2021年3月20日付] から
東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア
林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、「日本経済新聞」(2021年3月20日付)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。
“日本版「東インド会社」とも呼ばれる満鉄こと南満州鉄道の歩みを、本業である鉄道事業に焦点をあてて探究 …… 様々な角度から、満鉄の経営のありようを実証的に分析している。…… 日本語、中国語、韓国語、英語の史料を縦横に駆使した綿密な考証は味わい深い。”(「日本経済新聞」2021年3月20日付、第33面)
林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り
『図書新聞』[2021年3月27日号、第3489号] から(評者:佐々充昭氏)
宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本
永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、『図書新聞』(2021年3月27日号、第3489号、武久出版発行)で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。
“…… 本書の最大の読みどころは、『七十年史』の編纂事業に多数の宗教学者がかかわり、「民衆宗教」概念の構築がなされた過程について詳細な検証を行っている点であろう。編纂事業における大量の資料や原稿、聞き取り調査や討議の記録として残された「大本七十年史資料」をテキストとして、編纂事業に関わる教団・信仰当事者とその他の宗教学者との間に繰り広げられるポリティクスを、「読みの運動」と「協働表象」という独自の分析視点で読み解いている。…… 本書ではまた、『七十年史』編纂という一種の「公共圏」に登場した思想家や信仰者たちの生き様を通じて、戦後の日本社会や日本の学界状況が間接的に描かれている。若き日の安丸良夫がアルバイト生としてこの事業にかかわり単著『出口なお』を編んだこと、出口榮二が「万教同根」思想を探究するためにシャーマニズム研究を行ったことなど、学術書として読み応えのある内容となっている。本書は、戦後「民衆宗教」史を記述する一つのスタイルを確立した本であると言えるだろう。”(『図書新聞』2021年3月27日号、第5面)
永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り
『アジア経済』 [第62巻第1号、2021年3月] から(評者:浅野宜之氏)
試される正義の秤
南アジアの開発と司法
佐藤創著『試される正義の秤』が、『アジア経済』(第62巻第1号、2021年3月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。
佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
在庫有り
「日刊建設工業新聞」 [2021年3月18日付] から
建設労働と移民
日米における産業再編成と技能
惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、「日刊建設工業新聞」(2021年3月18日付、日刊建設工業新聞社発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。
惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り
『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:田口晃氏)
政治教育の模索
オーストリアの経験から
近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づけます。
近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
在庫有り
『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:後藤春美氏)
大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障
大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。
大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
在庫有り
『社会経済史学』 [第86巻第4号、2021年2月] から(評者:水谷智氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『社会経済史学』(第86巻第4号、2021年2月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
“…… 一般に、開発の目的が現地住民の生活向上であるというのは表向きの理由で、植民地支配体制への批判をかわしつつヨーロッパの各国がその海外領土から持続的に資源を搾取しつづけるための方便にすぎない、とされてきた。本書でも指摘されるとおり、第一次大戦以降にイギリス政府が熱帯の各植民地に直接資金を投下するようになったのも、産業・食糧資源の本国への供給先としてそれらの価値を見いだしたからにほかならない。少なくとも政策決定者たちに関する限り、実際の彼らの考え方は、開発の動機は帝国主義的なものであるという上述のイメージと大きく異なることはないといえるだろう。しかし、これだけではなぜ開発がエコロジーという普遍的な価値観と結びついたのかを説明できない。ここで重要になるのが、「植民地科学者」という範疇である。本書の方法論の核にあるのは、この範疇を生態学的な学知の形成主体として定位し、全体をとおしてそれを歴史分析の中心に据えたということである。……
…… 植民地主義自体は非対称の関係のもとになりたっていたが、学問的な真理を追究するなかで、科学者たちは人種主義的な観点から現地社会を見下すこともなければ、ヨーロッパの事例から組み立てられたモデルを普遍的基準として導入・強制することを試みることもなかった。むしろ、植民地におけるローカルな「接触」の経験をとおして現地の慣習を評価し、それを積極的に採り入れることで生態学的アプローチは生成されていったのである。つまり、学知形成のダイナミズムに着眼したとき、上述したステレオタイプでは看過されてしまう開発の歴史的側面が浮かびあがってくる。そしてそれは、著者のいうとおり、「近代科学がヨーロッパから非ヨーロッパ世界に広がったとするヨーロッパ中心主義的な普及論に対する反証にもなる」(p.183)のである。本書は、こうした主張を、包括的かつ綿密な関連史料の分析をとおして立証することに見事に成功している。ここで付言すれば、著者の文章は極めて明快かつ論理的であり、本書は狭義の専門家以外の読者でも多くの示唆を享受することができる優れた学術書である。……”(『社会経済史学』第86巻第4号、pp.76-77)
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『ヒストリア』 [第283号、2021年1月] から(評者:矢嶋光氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『ヒストリア』(第283号、2021年1月、大阪歴史学会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“…… 本書の特徴は、著者が述べるように、日本の国家総動員体制を米英のそれと比較し、広く世界史的な文脈から捉え直そうとしている点である。…… 特殊性だけでなく、国際比較の観点から普遍性の側面にも注目しつつ、日本の国家総動員体制を明らかにしようとした最初の研究として位置づけることができる。…… また、本書は、軍にとどまらず政党や官僚、実業家、さらにはジャーナリズムや学界にまで目を配り、国内の政治・社会情勢の全体を視野に収めた研究でもある。そのなかでも、とくに本書第Ⅱ部の主人公ともいえる松井春生の存在は興味深かった。……
…… これまでファシズムや軍国主義への道として理解されてきた日本の国家総動員体制の形成過程を再考し、世界史的な文脈のなかでそれが持つ類似性と特異性を丹念に解き明かした本書は、間違いなく総力戦体制研究の画期となる著作である。くわえて、国内外の広範な史料を駆使して執筆された本書には、ここでは紹介しきれなかった論点がまだまだあり、軍事史はもちろん、政治史や外交史、あるいは経済史やメディア史など多様な分野の研究者にとって価値ある一冊となっている。……”(『ヒストリア』第283号、p.75, 77)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り
『歴史評論』 [2020年10月号、第846号] から(評者:纐纈厚氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『歴史評論』(2020年10月号、第846号、歴史科学協議会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“この領域の研究は、1970年代後期から着実に進められて来たが、間違いなく本書は、その研究水準を一気に引き上げた労作である。総力戦体制研究を長年続けてきた評者も、大いに学ばせて頂いた。……
本書の最大の特徴は、当該期英米両国の国家総動員構想をも俎上に載せ、日本が両国の影響を受けていたのか、英米両国が日本の国家総動員構想を如何に把握していたのかを、比較検討を行っていることである。…… 文字通りグローバルな視点から、国家総動員準備の構想や実態を比較史のアプローチを用いて分析し、それが一国主義的でありながら国際的潮流として立ち現れ、戦争発動を目的とすると言うより、戦争抑止力として機能するために導入された、政治的経済的軍事的な方法であるとする。それは軍部だけが主導したのではなく、国家国民の総力を前提にして構築される政策方針であったと。軍国主義やファシズムの必然的産物であり、戦争のためのツールであったとする、従来の研究成果を批判する。……”(『歴史評論』2020年10月号、p.93, 97)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り
『中央公論』 [2021年4月号] から
ルネサンスの数学思想
『ルネサンスの数学思想』の著者・東慎一郎先生のインタビューが、『中央公論』(2021年4月号、中央公論新社発行)の「著者に聞く」に掲載されました。【本書の内容】科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。
東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
在庫有り
『北大史学』 [第60号、2020年12月] から(評者:諫早庸一氏)
辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業
足立孝著『辺境の生成』が、『北大史学』(第60号、2020年12月号、北大史学会)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。
“…… 精緻な文書読解・分析が「征服=入植運動」、「封建制」、「商業」といったそれぞれに厚みのある問題系に連結され、しかもそれらが個々別々に接続されるのみならず、この3つの問題系同士もまた「辺境」を土台に有機的に結び付けられる。著者のマクロ・ミクロ双方の分析面での実力に圧倒される。都市/農村、市民/貴族、キリスト教徒/非キリスト教徒、ピレネー以北/以南といった既存の二項対立が揚棄され、そのうえで新たなモデルが提示される流れは非常にスリリングであり、読み手を大いに引き込んでいく。そのなかでも特に、ピレネー山脈の以北と以南とを相対化する試みは非常に野心的であると言えよう。この視座が同書を、ピレネー以南の「辺境」の特殊性をキリスト教とイスラム教の関係性のなかで語るいわゆる “レコンキスタ史観” と一線を画するものとしている。これらの史観のどちらが優れているか以前の問題として、レコンキスタ史観は必然的にピレネー南北の歴史動態をそれぞれに別のものと見ることになる。足立が本書で志向するのはピレネー以南が「辺境」すなわち特殊であるという見方を覆し、この地域における議論を広くピレネー以北にまで開こうとすることである。……”(『北大史学』第60号、p.49)
足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
在庫有り
『月刊美術』 [2021年3月号、第546号] から
現代アート入門
デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『月刊美術』(2021年3月号、第546号、サン・アート発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り
『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:岡本隆司氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り
『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:磯部裕幸氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『民衆史研究』 [第100号、2021年2月] から(評者:花田史彦氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『民衆史研究』(第100号、2021年2月、民衆史研究会編集兼発行)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り