2021年度書評一覧

『週刊読書人』 [2021年4月9日号、第3385号] から(評者:三浦伸夫氏)

ルネサンスの数学思想

ルネサンスの数学思想

東慎一郎著『ルネサンスの数学思想』が、『週刊読書人』(2021年4月9日号、第3385号、読書人発行)で紹介されました。科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。

“…… 中世以降展開したさまざまな用語である「数学の確実性」をはじめとして、「中間性」「最強論証」「不定量概念」「無中項」「遡行」「共永遠」など、論者における相違を本書は次々と解明していく。当時公刊された膨大な量のラテン語テクストを精査し、妥協を許さない厳密な史料読解で人物別に論じている。取り上げられるのは、ツィマラ、ピッコローミニ、バロッツィ、そしてイエズス会数学者のブランカヌス、ペレリウスなどで、大半は限られた研究者の間でしか従来その数学思想が語られることはなかったが、本書では時系列に彼らの主張が明らかにされる、当時の数学論をひとくくりにすることはできない。それぞれが独自の立場から自説を論じ、ルネサンス数学思想は決して一枚岩ではなかったのである。まさにここにルネサンス思想史研究の面白さがあるのではなかろうか。……”(『週刊読書人』2021年4月9日号、第3面)

東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
在庫有り


「朝日新聞」 [2021年5月8日付] から(評者:保阪正康氏)

戦争障害者の社会史
20世紀ドイツの経験と福祉国家

戦争障害者の社会史

北村陽子著『戦争障害者の社会史』が、「朝日新聞」(2021年5月8日付)読書欄で紹介されました。二度の大戦により、300万人におよぶ大量の戦争障害者を生み出したドイツで、国家に奉仕した「英雄」はどのようなその後を生きたのか。公的支援や医療の発達、義肢や盲導犬などの補助具の発展と、他方での差別や貧困、ナチへの傾倒などの多面的な実態を丁寧に描き、現代福祉の淵源を示します。

北村陽子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-1017-7 C3022
在庫有り


『芸術新潮』 [2021年5月号] から

移り棲む美術
ジャポニスム、コラン、日本近代洋画

移り棲む美術

三浦篤著『移り棲む美術』が、『芸術新潮』(2021年5月号、新潮社発行)で紹介されました。グローバルな〈美〉の往還 ——。日本から西洋へ、そして西洋から日本へと海を越えた芸術の種子。どのように移動・変容・開花したのか。「アカデミスム対前衛」の構図に囚われることなく、ジャポニスムの多面的展開から近代洋画の創出まで、フランスを中心に一望し、選択的な交雑による新たな芸術史を描きだします。

“本書のカバーを飾るのが黒田清輝《鉄砲百合》で、なかの文章も、恩師ラファエル・コランの庭に日本から取り寄せた百合などが植えられていたとの黒田の回想から始まるのは象徴的だ。日仏美術交流史を3部構成で立体的に捉える本書は、フランスにおけるジャポニスムの多彩な側面と、同国に学んだ日本の洋画家たちを対象とする諸論を、コランについてのテキストが扇の要となって繋ぐ。コランの美的理想にはそもそも鈴木春信と通じるものがあり、彼の日本美術への接し方は異国趣味とも造形的ジャポニスムとも言い切れない。それを「共鳴のジャポニスム」と呼び、そんな画家だったから黒田らは惹きつけられたとする見方は説得力あり。他にも「アジア」の寓意像がいつから日本娘で表されるようになったかなど、発見と卓見に満ちている。”(『芸術新潮』2021年5月号、p.131)

三浦 篤 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-1016-0 C3071
在庫有り


『科学史研究』 [2021年1月号、第Ⅲ期第59巻 No.296] から(評者:瀬戸口明久氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『科学史研究』(2021年1月号、第Ⅲ期第59巻 No.296、日本科学史学会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

“…… 本書を読んで驚かされるのは、20世紀前半におけるエコロジーと開発との親和性である。1970年代以降の環境主義の時代においては、生態学とは反開発であり、ときには反体制にすらなりうるものだった。だが本書に登場する植民地科学者たちは、人間を含む自然全体を総合的に把握し、環境と調和した「合理的」な開発を推進しようとする。かつて環境史家ドナルド・ウォースターは『ネイチャーズ・エコノミー』において、自然と親しむ牧歌主義と自然の管理を目指す帝国主義の二つの流れから生態学史を描いた。本書に登場する科学者たちが後者の流れをくむエコロジストであることは間違いないだろう。そして現在、環境情報を収集し自然を総合的に管理しようとする科学知は、生物多様性保全やスマート農業の名のもとに、ふたたび「持続的開発」との結びつきを強めつつある。「エコロジーの世紀」は、21世紀の現在においても進行しつつあるといえよう。”(『科学史研究』2021年1月号、p.410)

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:溝上宏美氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:松浦正孝氏)

対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後

対日協力者の政治構想

関智英著『対日協力者の政治構想』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかける。

“…… 本書の最大の貢献は、これまで扱われてこなかった「占領地政権」や「対日協力者」の情報を詳らかにしたということよりも、もっと別のところにあると評者は考える。…… それは、日中戦争前後における、日本と「中国」とを取り巻く歴史環境(特に周辺部・圏界)、そして日本と「中国」ないしアジアとの内的紐帯を明らかにしたことである。…… 対日協力者の政治思想が、いかに多様で複雑かということを構造的にあるいは状況に即して解明することに成功した。これは、本書の貢献の一つと言って良い。
しかしながら評者はそれよりもむしろ、日本帝国が彼らに用意した行動空間・思索空間のありようを析出したことこそ、本書の最も重要な貢献であると感じた。このテーマをトレースするのは至難の業であるが、本書はそのデッサンに十分成功していると思う。例えば本書は、近年の経済史や政治経済史、国際政治史などで明らかになった、福建・台湾・満洲・「蒙疆」・東南アジア・インドなどの「日本帝国」の周縁の連関性をつなぐ稜線を示した。その稜線は、戦後日本にも、脈々とつながっている。本書は、ほとんどの日本人が知らない、しかし坊間の捏造された歴史でもない、もう一つの重要な日中関係史のありかたを指し示したと言えよう。否、日中関係史と呼ぶにはあまりに壮大な、新たな日本(「日本」という枠組みも適当ではないかも知れない)とアジアとの関係史の幕開けである。……”(『史林』第106巻第3号、pp.62-63)

関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り


『史林』 [第103巻第6号、2020年11月] から(評者:安岡健一氏)

引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究

引揚・追放・残留

蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『史林』(第103巻第6号、2020年11月、史学研究会編集)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。

蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
在庫有り


「朝日新聞」 [2021年4月24日付] から(評者:生井英考氏)

NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力

NO NUKES

ミツヨ・ワダ・マルシアーノ著『NO NUKES』が、「朝日新聞」(2021年4月24日付)読書欄で紹介されました。〈見えないもの〉とたたかう——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。

ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り


『図書新聞』 [2021年5月1日号、第3494号] から(評者:河本真理氏)

現代アート入門

現代アート入門

デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『図書新聞』(2021年5月1日号、第3494号、武久出版発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。

“…… 本書の多角的なアプローチから浮かび上がってくるのは、矛盾やパラドックスを孕んだ両義的なモダン・アートの動態である。モダン・アートは、大衆(消費)文化を貪欲に取り込む一方で、思想や表象の「難解さ」によって文化的エリート主義に結びついており、開かれていると同時に排他的でもある。また、モダン・アートが、対立していたはずのメインストリーム=美術館によって制度化され、消費主義やスペクタクルに同化していく傾向も顕著だ。メディアと結託してセレブ化する芸術家の例として言及されるトレイシー・エミンは、フェミニズムや(過去の)モダン・アートを参照しながら、前衛の批判的な姿勢を失う危険を冒している。著者は、こうした前衛の困難さを自覚しながらも、本書の最後で、芸術に癒しを求めるのか、それとも批判的な抵抗・思考を求めるのかを問いかけるのだ。…… なお、表紙の装幀は、一見するとピンクを基調にしたポップなものに見えるが、帯を外すと、エドワード・キーンホルツの《移動式戦争記念碑》が現れて意表を突かれた。このギャップがまさに現代モダンアートなのかもしれない。”(『図書新聞』2021年5月1日号、第4面)

デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り


『週刊読書人』 [2021年4月23日号、第3387号] から(評者:長崎浩氏)

近代日本の科学論
明治維新から敗戦まで

近代日本の科学論

岡本拓司著『近代日本の科学論』が、『週刊読書人』(2021年4月23日号、第3387号、読書人発行)で紹介されました。科学の営みや社会との関係をめぐる言説は、維新から対米戦までの歴史の流れに呼応し、劇的に変転した。本書は、文明開化、教養主義の時代を経て、科学を標榜し革命を起こしたマルクス主義の衝撃と、それを契機に誕生した日本主義的科学論をふくむ多様な議論の展開を、初めて一望します。

岡本拓司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・552頁
ISBN978-4-8158-1019-1 C3010
在庫有り


『現代化学』 [2021年5月号、第602号] から

分子地球化学

分子地球化学

高橋嘉夫編『分子地球化学』が、『現代化学』(2021年5月号、第602号、東京化学同人発行)で紹介されました。物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。

高橋嘉夫 編
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・444頁
ISBN978-4-8158-1018-4 C3044
在庫有り


『外交』 [2021年3・4月号、第66号] から(評者:伊藤亜聖氏)

世界史のなかの東アジアの奇跡

世界史のなかの東アジアの奇跡

杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、『外交』(2021年3・4月号、第66号、外務省発行/都市出版発売)で紹介されました。脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。—— 豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。

杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
在庫有り


『図書新聞』 [2021年4月24日号、第3493号] から(評者:浅妻章如氏)

租税回避と法
GAARの限界と解釈統制

租税回避と法

本部勝大著『租税回避と法』が、『図書新聞』(2021年4月24日号、第3493号、武久出版発行)で紹介されました。スターバックスやアップル、グーグルなど、名だたるグローバル企業がおこない、世界的に問題化した租税回避行為をいかに抑止すべきか。各国で導入が進むGAARの効果と限界を実証的に浮き彫りにし、岐路に立つわが国がとるべき道を、GAARにかわる第三のアプローチとともに提示します。

本部勝大 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・336頁
ISBN978-4-8158-0999-7 C3032
在庫有り


『イギリス哲学研究』 [第44号、2021年3月] から(評者:島内明文氏)

スミスの倫理
『道徳感情論』を読む

スミスの倫理

竹本洋著『スミスの倫理』が、『イギリス哲学研究』(第44号、2021年3月、日本イギリス哲学会発行)で紹介されました。スミス倫理学の真の射程とは。近代における倫理のメカニズムと意義を明瞭に説き、政治・経済・社会のよき運用を支える心理学的な人間学を打ち立てた、もうひとつの主著から描き出す。『国富論』とは違った現代への示唆と、経済学にとどまらない社会科学的知への豊かな洞察を浮かび上がらせる。

竹本 洋 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・262頁
ISBN978-4-8158-0990-4 C3012
在庫有り


『化学』 [2021年5月号、第76巻第5号] から(評者:平田岳史氏)

分子地球化学

分子地球化学

高橋嘉夫編『分子地球化学』が、『化学』(2021年5月号、第76巻第5号、化学同人発行)で紹介されました。物質循環などマクロな現象の統一的把握は、「元素の個性」に基づくミクロからのアプローチにより、初めて可能となり、その理解は地球史解読や将来の環境予測にも適用できる。本書は、XAFS法などの研究手法の基礎と、海底鉱物資源から地球外天体までの最新の成果を、系統的に解説。

“…… 本書では、元素の性質の系統的理解は、もはや Goldschmidt の夢ではなく、現実可能なものとなっていることを多くの実例をあげながら、ていねいかつ厳格に紹介している。
評者は還元主義には懐疑的であった。懐疑的というより、研究手法としての限界を感じてしまっていた。本書はその考えを真っ向から否定し、地球や環境で起こっている複雑な現象を、単純かつ明確な「化学反応式」で記述しようとしている。本書は、学問に対する純粋な期待を忘れてしまったシニア研究者……にも強烈なメッセージを数多く含んでいる。……”(『化学』2021年5月号、p.56)

高橋嘉夫 編
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・444頁
ISBN978-4-8158-1018-4 C3044
在庫有り


『日本森林学会誌』 [第102巻第4号、2020年] から(評者:香坂玲氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『日本森林学会誌』(第102巻第4号、2020年、日本森林学会発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『教育學雑誌』 [第57号、2021年3月] から(評者:間篠剛留氏)

大学論を組み替える
新たな議論のために

大学論を組み替える

広田照幸著『大学論を組み替える』が、『教育學雑誌』(第57号、2021年3月、日本大学教育学会発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。

広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り


『教育學雑誌』 [第57号、2021年3月] から(評者:冨士原雅弘氏)

歴史としての日教組【上下巻】

歴史としての日教組

広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『教育學雑誌』(第57号、2021年3月、執筆者による紹介、日本大学教育学会発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。

広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
在庫有り


『科学哲学』 [第53巻第2号、2020年] から(評者:植原亮氏)

〈概念工学〉宣言!
哲学×心理学による知のエンジニアリング

〈概念工学〉宣言!

戸田山和久・唐沢かおり編『〈概念工学〉宣言!』が、『科学哲学』(第53巻第2号、2020年、日本科学哲学会)で紹介されました。概念は、人類の幸福に深くかかわる人工物であり、概念工学とは、有用な概念を創造・改定する新たなフレームワークである。本書は基礎的な理論を提示するとともに、「心」「自由意志」「自己」などを例に実践的な議論を展開し、豊饒な学の誕生を告知します。

戸田山和久・唐沢かおり 編
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・292頁
ISBN978-4-8158-0941-6 C3010
在庫有り


『経済セミナー』 [2021年4・5月号] から(評者:末石直也氏)

統計学を哲学する

統計学を哲学する

大塚淳著『統計学を哲学する』が、『経済セミナー』(2021年4・5月号、日本評論社発行)で紹介されました。統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直します。科学と哲学を架橋する待望の書。

大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
在庫有り


『図書新聞』 [2021年4月10日号、第3491号] から(評者:増記隆介氏)

鳥獣戯画を読む

鳥獣戯画を読む

伊藤大輔著『鳥獣戯画を読む』が、『図書新聞』(2021年4月10日号、第3491号、武久出版発行)で紹介されました。謎の絵巻とも言われる国宝「鳥獣戯画」。なぜ動物が擬人化されているのか。その流動する画面はどのように連環しているのか ——。中世日本の芸能、王権、美意識にもとづく精緻な分析と、動物と人間のシームレスな関係についての考察により、全四巻を読み解く。マンガ・アニメ起源論も検証。

“…… 氏が提案するのは、「鳥獣戯画」甲・乙・丙・丁の4巻、それぞれのある種のまとまりを持つ場面ごとの関係性、そして4巻相互の関係性を「連歌」という文学行為を支えた文化的なありようによって読み解くことである。全体に特定の物語や意味があるのではなく、部分相互の関係性の中にこそこの絵巻を生み出した時代の痕跡が残されているという見方はこれまでにないものである。…… 伊藤氏の語りは、現在の氏が備えている様々な知の蓄積、文化人類学、王権論、記号論、漫画論といったものを縦横に駆使する。しかし、そのような現在の知のありようが、およそ800年前に描かれた作品を論じるときに作品から決して浮き上がらない、乖離していかないところに氏の議論の魅力がある。それは、氏の作品を見る力、作品の底に潜む作品が生み出された状況を鮮やかに浮かび上がらせる透徹した論理性による。本書が提案する「鳥獣戯画」の新しい読み方は、それぞれの読者に必ずや新しい絵画の見方を与えてくれるであろう。展覧会で「鳥獣戯画」をみる前に、そしてみた後に本書を手に取って、「鳥獣戯画」とは何か? について考える時間を持つことは、現在と過去を回遊する愉しい時間を過ごすことに他ならない。”(『図書新聞』2021年4月10日号、第6面)

伊藤大輔 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1012-2 C3071
在庫有り


『日本歴史』 [2021年4月号、第875号] から(評者:高塩博氏)

徳川日本の刑法と秩序

徳川日本の刑法と秩序

代田清嗣著『徳川日本の刑法と秩序』が、『日本歴史』(2021年4月号、第875号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。江戸の裁きにおいて、罰せられるべき者はいかにして決まったのか。具体的な判例から江戸期固有の法理を探り出し、西洋法を規範とする刑法理解を塗り替えるとともに、幕政を基礎づけた統治原則をも浮き彫りにします。今日に及ぶ日本人の法観念への新たな理解を開く力作。

“…… 刑事責任という視点から江戸幕府の判例を分析し、その刑法理論の解明を目指したのである。分析の対象とした主たる幕府判例は、評定所評議の「御仕置例撰述」(35冊、未翻刻)と「御仕置例類集」とである。加えて火附盗賊改の判例集である「刑例抜萃」や長崎奉行所の「犯科帳」などにも幅広く眼を通しており、その厖大な分量の判決を精査して縦横に駆使した著者の熱量にまずは敬意を表する。…… 江戸幕府刑法の理解に「身分責任」という視角を導入したのは慧眼であり、説得力に富む。法解釈の理論を判例から探り出すにあたり、先入観にとらわれることなく、数々の判例を熟読玩味した結果、「身分責任」という視角にたどりついたのであろう。近代刑法の概念のみをもってしては、判例に内包された刑法理論を十全には把握できないのである。とはいうものの、著者の精緻な分析は現代刑法についての解釈学が有効に働いている。ここに、江戸幕府刑法を理解するための必読の一冊が誕生したのである。……”(『日本歴史』2021年4月号、pp.94-95)

橘川武郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・386頁
ISBN978-4-8158-0980-5 C3032
在庫有り


「京都新聞」 [2021年3月27日付] から

統計学を哲学する

統計学を哲学する

『統計学を哲学する』の著者である大塚淳先生のインタビューが、「京都新聞」(2021年3月27日付)に掲載されました。【内容】統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。

大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・上製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
在庫有り


「日本経済新聞」 [2021年3月27日付] から

災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて

災後日本の電力業

橘川武郎著『災後日本の電力業』が、「日本経済新聞」(2021年3月27日付)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。

“…… エネルギー政策や企業の歴史に詳しい著者が、原発事故の前夜から、事故を経て今日に至るエネルギー政策や電力産業の変化を検証する。著者は原発事故が日本の電力業に3つの大転換をもたらしたと指摘する。原発を主要電源とする時代の終わり、10電力会社体制の終わり、そして電力を発電した場所で利用する分散型供給システムの構築が始まったことである。…… 過去10年の電力・エネルギー改革の姿は進んだ市場改革と、進まぬ原子力改革の「まだら模様」だとの指摘には説得力がある。…… 原発事故から10年の節目に歩みを振り返る資料的価値もある一冊だ。”(「日本経済新聞」2021年3月27日付、第33面)

橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り


『図書新聞』 [2021年4月3日号、第3490号] から

NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力

NO NUKES

『NO NUKES』の著者であるミツヨ・ワダ・マルシアーノ先生のインタビュー(聞き手:久保豊氏)が、『図書新聞』(2021年4月3日号、第3490号、武久出版発行)に掲載されました。【内容】〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。

ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り


「河北新報」 [2021年3月7日付] から

現代アート入門

現代アート入門

デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、「河北新報」(2021年3月7日付)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。

デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り


「日本経済新聞」 [2021年3月20日付] から

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、「日本経済新聞」(2021年3月20日付)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

“日本版「東インド会社」とも呼ばれる満鉄こと南満州鉄道の歩みを、本業である鉄道事業に焦点をあてて探究 …… 様々な角度から、満鉄の経営のありようを実証的に分析している。…… 日本語、中国語、韓国語、英語の史料を縦横に駆使した綿密な考証は味わい深い。”(「日本経済新聞」2021年3月20日付、第33面)

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


『図書新聞』[2021年3月27日号、第3489号] から(評者:佐々充昭氏)

宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本

宗教文化は誰のものか

永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、『図書新聞』(2021年3月27日号、第3489号、武久出版発行)で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。

“…… 本書の最大の読みどころは、『七十年史』の編纂事業に多数の宗教学者がかかわり、「民衆宗教」概念の構築がなされた過程について詳細な検証を行っている点であろう。編纂事業における大量の資料や原稿、聞き取り調査や討議の記録として残された「大本七十年史資料」をテキストとして、編纂事業に関わる教団・信仰当事者とその他の宗教学者との間に繰り広げられるポリティクスを、「読みの運動」と「協働表象」という独自の分析視点で読み解いている。…… 本書ではまた、『七十年史』編纂という一種の「公共圏」に登場した思想家や信仰者たちの生き様を通じて、戦後の日本社会や日本の学界状況が間接的に描かれている。若き日の安丸良夫がアルバイト生としてこの事業にかかわり単著『出口なお』を編んだこと、出口榮二が「万教同根」思想を探究するためにシャーマニズム研究を行ったことなど、学術書として読み応えのある内容となっている。本書は、戦後「民衆宗教」史を記述する一つのスタイルを確立した本であると言えるだろう。”(『図書新聞』2021年3月27日号、第5面)

永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り


『アジア経済』 [第62巻第1号、2021年3月] から(評者:浅野宜之氏)

試される正義の秤
南アジアの開発と司法

試される正義の秤

佐藤創著『試される正義の秤』が、『アジア経済』(第62巻第1号、2021年3月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。

佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
在庫有り


「日刊建設工業新聞」 [2021年3月18日付] から

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、「日刊建設工業新聞」(2021年3月18日付、日刊建設工業新聞社発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り


『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:田口晃氏)

政治教育の模索
オーストリアの経験から

政治教育の模索

近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づけます。

近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
在庫有り


『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:後藤春美氏)

大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障

大陸関与と離脱の狭間で

大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。

大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第86巻第4号、2021年2月] から(評者:水谷智氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『社会経済史学』(第86巻第4号、2021年2月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

“…… 一般に、開発の目的が現地住民の生活向上であるというのは表向きの理由で、植民地支配体制への批判をかわしつつヨーロッパの各国がその海外領土から持続的に資源を搾取しつづけるための方便にすぎない、とされてきた。本書でも指摘されるとおり、第一次大戦以降にイギリス政府が熱帯の各植民地に直接資金を投下するようになったのも、産業・食糧資源の本国への供給先としてそれらの価値を見いだしたからにほかならない。少なくとも政策決定者たちに関する限り、実際の彼らの考え方は、開発の動機は帝国主義的なものであるという上述のイメージと大きく異なることはないといえるだろう。しかし、これだけではなぜ開発がエコロジーという普遍的な価値観と結びついたのかを説明できない。ここで重要になるのが、「植民地科学者」という範疇である。本書の方法論の核にあるのは、この範疇を生態学的な学知の形成主体として定位し、全体をとおしてそれを歴史分析の中心に据えたということである。……
…… 植民地主義自体は非対称の関係のもとになりたっていたが、学問的な真理を追究するなかで、科学者たちは人種主義的な観点から現地社会を見下すこともなければ、ヨーロッパの事例から組み立てられたモデルを普遍的基準として導入・強制することを試みることもなかった。むしろ、植民地におけるローカルな「接触」の経験をとおして現地の慣習を評価し、それを積極的に採り入れることで生態学的アプローチは生成されていったのである。つまり、学知形成のダイナミズムに着眼したとき、上述したステレオタイプでは看過されてしまう開発の歴史的側面が浮かびあがってくる。そしてそれは、著者のいうとおり、「近代科学がヨーロッパから非ヨーロッパ世界に広がったとするヨーロッパ中心主義的な普及論に対する反証にもなる」(p.183)のである。本書は、こうした主張を、包括的かつ綿密な関連史料の分析をとおして立証することに見事に成功している。ここで付言すれば、著者の文章は極めて明快かつ論理的であり、本書は狭義の専門家以外の読者でも多くの示唆を享受することができる優れた学術書である。……”(『社会経済史学』第86巻第4号、pp.76-77)

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『ヒストリア』 [第283号、2021年1月] から(評者:矢嶋光氏)

「国家総動員」の時代
比較の視座から

「国家総動員」の時代

森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『ヒストリア』(第283号、2021年1月、大阪歴史学会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

“…… 本書の特徴は、著者が述べるように、日本の国家総動員体制を米英のそれと比較し、広く世界史的な文脈から捉え直そうとしている点である。…… 特殊性だけでなく、国際比較の観点から普遍性の側面にも注目しつつ、日本の国家総動員体制を明らかにしようとした最初の研究として位置づけることができる。…… また、本書は、軍にとどまらず政党や官僚、実業家、さらにはジャーナリズムや学界にまで目を配り、国内の政治・社会情勢の全体を視野に収めた研究でもある。そのなかでも、とくに本書第Ⅱ部の主人公ともいえる松井春生の存在は興味深かった。……
…… これまでファシズムや軍国主義への道として理解されてきた日本の国家総動員体制の形成過程を再考し、世界史的な文脈のなかでそれが持つ類似性と特異性を丹念に解き明かした本書は、間違いなく総力戦体制研究の画期となる著作である。くわえて、国内外の広範な史料を駆使して執筆された本書には、ここでは紹介しきれなかった論点がまだまだあり、軍事史はもちろん、政治史や外交史、あるいは経済史やメディア史など多様な分野の研究者にとって価値ある一冊となっている。……”(『ヒストリア』第283号、p.75, 77)

森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り


『歴史評論』 [2020年10月号、第846号] から(評者:纐纈厚氏)

「国家総動員」の時代
比較の視座から

「国家総動員」の時代

森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『歴史評論』(2020年10月号、第846号、歴史科学協議会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

“この領域の研究は、1970年代後期から着実に進められて来たが、間違いなく本書は、その研究水準を一気に引き上げた労作である。総力戦体制研究を長年続けてきた評者も、大いに学ばせて頂いた。……
本書の最大の特徴は、当該期英米両国の国家総動員構想をも俎上に載せ、日本が両国の影響を受けていたのか、英米両国が日本の国家総動員構想を如何に把握していたのかを、比較検討を行っていることである。…… 文字通りグローバルな視点から、国家総動員準備の構想や実態を比較史のアプローチを用いて分析し、それが一国主義的でありながら国際的潮流として立ち現れ、戦争発動を目的とすると言うより、戦争抑止力として機能するために導入された、政治的経済的軍事的な方法であるとする。それは軍部だけが主導したのではなく、国家国民の総力を前提にして構築される政策方針であったと。軍国主義やファシズムの必然的産物であり、戦争のためのツールであったとする、従来の研究成果を批判する。……”(『歴史評論』2020年10月号、p.93, 97)

森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り


『中央公論』 [2021年4月号] から

ルネサンスの数学思想

ルネサンスの数学思想

『ルネサンスの数学思想』の著者・東慎一郎先生のインタビューが、『中央公論』(2021年4月号、中央公論新社発行)の「著者に聞く」に掲載されました。【本書の内容】科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。

東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
在庫有り


『北大史学』 [第60号、2020年12月] から(評者:諫早庸一氏)

辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業

辺境の生成

足立孝著『辺境の生成』が、『北大史学』(第60号、2020年12月号、北大史学会)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。

“…… 精緻な文書読解・分析が「征服=入植運動」、「封建制」、「商業」といったそれぞれに厚みのある問題系に連結され、しかもそれらが個々別々に接続されるのみならず、この3つの問題系同士もまた「辺境」を土台に有機的に結び付けられる。著者のマクロ・ミクロ双方の分析面での実力に圧倒される。都市/農村、市民/貴族、キリスト教徒/非キリスト教徒、ピレネー以北/以南といった既存の二項対立が揚棄され、そのうえで新たなモデルが提示される流れは非常にスリリングであり、読み手を大いに引き込んでいく。そのなかでも特に、ピレネー山脈の以北と以南とを相対化する試みは非常に野心的であると言えよう。この視座が同書を、ピレネー以南の「辺境」の特殊性をキリスト教とイスラム教の関係性のなかで語るいわゆる “レコンキスタ史観” と一線を画するものとしている。これらの史観のどちらが優れているか以前の問題として、レコンキスタ史観は必然的にピレネー南北の歴史動態をそれぞれに別のものと見ることになる。足立が本書で志向するのはピレネー以南が「辺境」すなわち特殊であるという見方を覆し、この地域における議論を広くピレネー以北にまで開こうとすることである。……”(『北大史学』第60号、p.49)

足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
在庫有り


『月刊美術』 [2021年3月号、第546号] から

現代アート入門

現代アート入門

デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『月刊美術』(2021年3月号、第546号、サン・アート発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。

デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り


『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:岡本隆司氏)

朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序

朝貢・海禁・互市

岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。

岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り


『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:磯部裕幸氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『民衆史研究』 [第100号、2021年2月] から(評者:花田史彦氏)

映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史

映画観客とは何者か

藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『民衆史研究』(第100号、2021年2月、民衆史研究会編集兼発行)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。

藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り

年度別書評一覧

近刊案内

2021年5月19日出来予定

原典 イタリア・ルネサンス芸術論【上巻】

池上俊一 監修
A5判・上製・524頁
税込9,900円/本体9,000円
ISBN 978-4-8158-1026-9
Cコード 3070

2021年5月19日出来予定

原典 イタリア・ルネサンス芸術論【下巻】

池上俊一 監修
A5判・上製・506頁
税込9,900円/本体9,000円
ISBN 978-4-8158-1027-6
Cコード 3070

2021年5月28日出来予定

ピアノの日本史

田中智晃 著
A5判・上製・400頁
税込5,940円/本体5,400円
ISBN 978-4-8158-1029-0
Cコード 3021

近刊書籍の予約を受け付けております。予約をご希望の方は、上の「予約の受付ページへ」をクリックして受付ページへリンクしていただき、そこでご予約の手続きをお願いいたします。刊行次第、商品を発送いたします。

重版案内

2021年4月30日出来

フィルム・アート

D.ボードウェル/K.トンプソン 著
藤木秀朗 監訳/飯岡詩朗・板倉史明・北野圭介・北村 洋・笹川慶子 訳
A4判・並製・552頁
税込5,280円/本体4,800円
ISBN 978-4-8158-0567-8
Cコード 0074

2021年4月28日出来

ヨーロッパ中世の想像界

池上俊一 著
A5判・上製・960頁
税込9,900円/本体9,000円
ISBN 978-4-8158-0979-9
Cコード 3022

2021年4月28日出来

質的研究の考え方

大谷 尚 著
菊判・並製・416頁
税込3,850円/本体3,500円
ISBN 978-4-8158-0944-7
Cコード 3036

2021年4月5日出来

社会思想の歴史

坂本達哉 著
A5判・並製・388頁
税込2,970円/本体2,700円
ISBN 978-4-8158-0770-2
Cコード 3010

2021年4月5日出来

科学技術をよく考える

伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
A5判・並製・306頁
税込3,080円/本体2,800円
ISBN 978-4-8158-0728-3
Cコード 3040

2021年4月5日出来

細胞診断学入門[第三版]

社本幹博・越川 卓 監修
長坂徹郎・横井豊治 編
B5判・並製・318頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-0895-2
Cコード 3047

2021年3月11日出来

社会科学の考え方

野村 康 著
A5判・上製・358頁
税込3,960円/本体3,600円
ISBN 978-4-8158-0876-1
Cコード 3030

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