2021年度書評一覧

『科学哲学』 [第53巻第2号、2020年] から(評者:植原亮氏)

〈概念工学〉宣言!
哲学×心理学による知のエンジニアリング

〈概念工学〉宣言!

戸田山和久・唐沢かおり編『〈概念工学〉宣言!』が、『科学哲学』(第53巻第2号、2020年、日本科学哲学会)で紹介されました。概念は、人類の幸福に深くかかわる人工物であり、概念工学とは、有用な概念を創造・改定する新たなフレームワークである。本書は基礎的な理論を提示するとともに、「心」「自由意志」「自己」などを例に実践的な議論を展開し、豊饒な学の誕生を告知します。

戸田山和久・唐沢かおり 編
税込3,960円/本体3,600円
A5判・上製・292頁
ISBN978-4-8158-0941-6 C3010
在庫有り


『経済セミナー』 [2021年4・5月号] から(評者:末石直也氏)

統計学を哲学する

統計学を哲学する

大塚淳著『統計学を哲学する』が、『経済セミナー』(2021年4・5月号、日本評論社発行)で紹介されました。統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直します。科学と哲学を架橋する待望の書。

大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
在庫有り


『図書新聞』 [2021年4月10日号、第3491号] から(評者:増記隆介氏)

鳥獣戯画を読む

鳥獣戯画を読む

伊藤大輔著『鳥獣戯画を読む』が、『図書新聞』(2021年4月10日号、第3491号、武久出版発行)で紹介されました。謎の絵巻とも言われる国宝「鳥獣戯画」。なぜ動物が擬人化されているのか。その流動する画面はどのように連環しているのか ——。中世日本の芸能、王権、美意識にもとづく精緻な分析と、動物と人間のシームレスな関係についての考察により、全四巻を読み解く。マンガ・アニメ起源論も検証。

“…… 氏が提案するのは、「鳥獣戯画」甲・乙・丙・丁の4巻、それぞれのある種のまとまりを持つ場面ごとの関係性、そして4巻相互の関係性を「連歌」という文学行為を支えた文化的なありようによって読み解くことである。全体に特定の物語や意味があるのではなく、部分相互の関係性の中にこそこの絵巻を生み出した時代の痕跡が残されているという見方はこれまでにないものである。…… 伊藤氏の語りは、現在の氏が備えている様々な知の蓄積、文化人類学、王権論、記号論、漫画論といったものを縦横に駆使する。しかし、そのような現在の知のありようが、およそ800年前に描かれた作品を論じるときに作品から決して浮き上がらない、乖離していかないところに氏の議論の魅力がある。それは、氏の作品を見る力、作品の底に潜む作品が生み出された状況を鮮やかに浮かび上がらせる透徹した論理性による。本書が提案する「鳥獣戯画」の新しい読み方は、それぞれの読者に必ずや新しい絵画の見方を与えてくれるであろう。展覧会で「鳥獣戯画」をみる前に、そしてみた後に本書を手に取って、「鳥獣戯画」とは何か? について考える時間を持つことは、現在と過去を回遊する愉しい時間を過ごすことに他ならない。”(『図書新聞』2021年4月10日号、第6面)

伊藤大輔 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1012-2 C3071
在庫有り


『日本歴史』 [2021年4月号、第875号] から(評者:高塩博氏)

徳川日本の刑法と秩序

徳川日本の刑法と秩序

代田清嗣著『徳川日本の刑法と秩序』が、『日本歴史』(2021年4月号、第875号、日本歴史学会編/吉川弘文館発行)で紹介されました。江戸の裁きにおいて、罰せられるべき者はいかにして決まったのか。具体的な判例から江戸期固有の法理を探り出し、西洋法を規範とする刑法理解を塗り替えるとともに、幕政を基礎づけた統治原則をも浮き彫りにします。今日に及ぶ日本人の法観念への新たな理解を開く力作。

“…… 刑事責任という視点から江戸幕府の判例を分析し、その刑法理論の解明を目指したのである。分析の対象とした主たる幕府判例は、評定所評議の「御仕置例撰述」(35冊、未翻刻)と「御仕置例類集」とである。加えて火附盗賊改の判例集である「刑例抜萃」や長崎奉行所の「犯科帳」などにも幅広く眼を通しており、その厖大な分量の判決を精査して縦横に駆使した著者の熱量にまずは敬意を表する。…… 江戸幕府刑法の理解に「身分責任」という視角を導入したのは慧眼であり、説得力に富む。法解釈の理論を判例から探り出すにあたり、先入観にとらわれることなく、数々の判例を熟読玩味した結果、「身分責任」という視角にたどりついたのであろう。近代刑法の概念のみをもってしては、判例に内包された刑法理論を十全には把握できないのである。とはいうものの、著者の精緻な分析は現代刑法についての解釈学が有効に働いている。ここに、江戸幕府刑法を理解するための必読の一冊が誕生したのである。……”(『日本歴史』2021年4月号、pp.94-95)

橘川武郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・386頁
ISBN978-4-8158-0980-5 C3032
在庫有り


「京都新聞」 [2021年3月27日付] から

統計学を哲学する

統計学を哲学する

『統計学を哲学する』の著者である大塚淳先生のインタビューが、「京都新聞」(2021年3月27日付)に掲載されました。【内容】統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。

大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・上製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
在庫有り


「日本経済新聞」 [2021年3月27日付] から

災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて

災後日本の電力業

橘川武郎著『災後日本の電力業』が、「日本経済新聞」(2021年3月27日付)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。

“…… エネルギー政策や企業の歴史に詳しい著者が、原発事故の前夜から、事故を経て今日に至るエネルギー政策や電力産業の変化を検証する。著者は原発事故が日本の電力業に3つの大転換をもたらしたと指摘する。原発を主要電源とする時代の終わり、10電力会社体制の終わり、そして電力を発電した場所で利用する分散型供給システムの構築が始まったことである。…… 過去10年の電力・エネルギー改革の姿は進んだ市場改革と、進まぬ原子力改革の「まだら模様」だとの指摘には説得力がある。…… 原発事故から10年の節目に歩みを振り返る資料的価値もある一冊だ。”(「日本経済新聞」2021年3月27日付、第33面)

橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
在庫有り


『図書新聞』 [2021年4月3日号、第3490号] から

NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力

NO NUKES

『NO NUKES』の著者であるミツヨ・ワダ・マルシアーノ先生のインタビュー(聞き手:久保豊氏)が、『図書新聞』(2021年4月3日号、第3490号、武久出版発行)に掲載されました。【内容】〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。

ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
在庫有り


「河北新報」 [2021年3月7日付] から

現代アート入門

現代アート入門

デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、「河北新報」(2021年3月7日付)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。

デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り


「日本経済新聞」 [2021年3月20日付] から

東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア

東アジアのなかの満鉄

林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、「日本経済新聞」(2021年3月20日付)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。

“日本版「東インド会社」とも呼ばれる満鉄こと南満州鉄道の歩みを、本業である鉄道事業に焦点をあてて探究 …… 様々な角度から、満鉄の経営のありようを実証的に分析している。…… 日本語、中国語、韓国語、英語の史料を縦横に駆使した綿密な考証は味わい深い。”(「日本経済新聞」2021年3月20日付、第33面)

林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
在庫有り


『図書新聞』[2021年3月27日号、第3489号] から(評者:佐々充昭氏)

宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本

宗教文化は誰のものか

永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、『図書新聞』(2021年3月27日号、第3489号、武久出版発行)で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。

“…… 本書の最大の読みどころは、『七十年史』の編纂事業に多数の宗教学者がかかわり、「民衆宗教」概念の構築がなされた過程について詳細な検証を行っている点であろう。編纂事業における大量の資料や原稿、聞き取り調査や討議の記録として残された「大本七十年史資料」をテキストとして、編纂事業に関わる教団・信仰当事者とその他の宗教学者との間に繰り広げられるポリティクスを、「読みの運動」と「協働表象」という独自の分析視点で読み解いている。…… 本書ではまた、『七十年史』編纂という一種の「公共圏」に登場した思想家や信仰者たちの生き様を通じて、戦後の日本社会や日本の学界状況が間接的に描かれている。若き日の安丸良夫がアルバイト生としてこの事業にかかわり単著『出口なお』を編んだこと、出口榮二が「万教同根」思想を探究するためにシャーマニズム研究を行ったことなど、学術書として読み応えのある内容となっている。本書は、戦後「民衆宗教」史を記述する一つのスタイルを確立した本であると言えるだろう。”(『図書新聞』2021年3月27日号、第5面)

永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り


『アジア経済』 [第62巻第1号、2021年3月] から(評者:浅野宜之氏)

試される正義の秤
南アジアの開発と司法

試される正義の秤

佐藤創著『試される正義の秤』が、『アジア経済』(第62巻第1号、2021年3月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。

佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
在庫有り


「日刊建設工業新聞」 [2021年3月18日付] から

建設労働と移民
日米における産業再編成と技能

建設労働と移民

惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、「日刊建設工業新聞」(2021年3月18日付、日刊建設工業新聞社発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。

惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
在庫有り


『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:田口晃氏)

政治教育の模索
オーストリアの経験から

政治教育の模索

近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づけます。

近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
在庫有り


『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:後藤春美氏)

大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障

大陸関与と離脱の狭間で

大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。

大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
在庫有り


『社会経済史学』 [第86巻第4号、2021年2月] から(評者:水谷智氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『社会経済史学』(第86巻第4号、2021年2月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

“…… 一般に、開発の目的が現地住民の生活向上であるというのは表向きの理由で、植民地支配体制への批判をかわしつつヨーロッパの各国がその海外領土から持続的に資源を搾取しつづけるための方便にすぎない、とされてきた。本書でも指摘されるとおり、第一次大戦以降にイギリス政府が熱帯の各植民地に直接資金を投下するようになったのも、産業・食糧資源の本国への供給先としてそれらの価値を見いだしたからにほかならない。少なくとも政策決定者たちに関する限り、実際の彼らの考え方は、開発の動機は帝国主義的なものであるという上述のイメージと大きく異なることはないといえるだろう。しかし、これだけではなぜ開発がエコロジーという普遍的な価値観と結びついたのかを説明できない。ここで重要になるのが、「植民地科学者」という範疇である。本書の方法論の核にあるのは、この範疇を生態学的な学知の形成主体として定位し、全体をとおしてそれを歴史分析の中心に据えたということである。……
…… 植民地主義自体は非対称の関係のもとになりたっていたが、学問的な真理を追究するなかで、科学者たちは人種主義的な観点から現地社会を見下すこともなければ、ヨーロッパの事例から組み立てられたモデルを普遍的基準として導入・強制することを試みることもなかった。むしろ、植民地におけるローカルな「接触」の経験をとおして現地の慣習を評価し、それを積極的に採り入れることで生態学的アプローチは生成されていったのである。つまり、学知形成のダイナミズムに着眼したとき、上述したステレオタイプでは看過されてしまう開発の歴史的側面が浮かびあがってくる。そしてそれは、著者のいうとおり、「近代科学がヨーロッパから非ヨーロッパ世界に広がったとするヨーロッパ中心主義的な普及論に対する反証にもなる」(p.183)のである。本書は、こうした主張を、包括的かつ綿密な関連史料の分析をとおして立証することに見事に成功している。ここで付言すれば、著者の文章は極めて明快かつ論理的であり、本書は狭義の専門家以外の読者でも多くの示唆を享受することができる優れた学術書である。……”(『社会経済史学』第86巻第4号、pp.76-77)

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『ヒストリア』 [第283号、2021年1月] から(評者:矢嶋光氏)

「国家総動員」の時代
比較の視座から

「国家総動員」の時代

森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『ヒストリア』(第283号、2021年1月、大阪歴史学会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

“…… 本書の特徴は、著者が述べるように、日本の国家総動員体制を米英のそれと比較し、広く世界史的な文脈から捉え直そうとしている点である。…… 特殊性だけでなく、国際比較の観点から普遍性の側面にも注目しつつ、日本の国家総動員体制を明らかにしようとした最初の研究として位置づけることができる。…… また、本書は、軍にとどまらず政党や官僚、実業家、さらにはジャーナリズムや学界にまで目を配り、国内の政治・社会情勢の全体を視野に収めた研究でもある。そのなかでも、とくに本書第Ⅱ部の主人公ともいえる松井春生の存在は興味深かった。……
…… これまでファシズムや軍国主義への道として理解されてきた日本の国家総動員体制の形成過程を再考し、世界史的な文脈のなかでそれが持つ類似性と特異性を丹念に解き明かした本書は、間違いなく総力戦体制研究の画期となる著作である。くわえて、国内外の広範な史料を駆使して執筆された本書には、ここでは紹介しきれなかった論点がまだまだあり、軍事史はもちろん、政治史や外交史、あるいは経済史やメディア史など多様な分野の研究者にとって価値ある一冊となっている。……”(『ヒストリア』第283号、p.75, 77)

森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り


『歴史評論』 [2020年10月号、第846号] から(評者:纐纈厚氏)

「国家総動員」の時代
比較の視座から

「国家総動員」の時代

森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『歴史評論』(2020年10月号、第846号、歴史科学協議会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。

“この領域の研究は、1970年代後期から着実に進められて来たが、間違いなく本書は、その研究水準を一気に引き上げた労作である。総力戦体制研究を長年続けてきた評者も、大いに学ばせて頂いた。……
本書の最大の特徴は、当該期英米両国の国家総動員構想をも俎上に載せ、日本が両国の影響を受けていたのか、英米両国が日本の国家総動員構想を如何に把握していたのかを、比較検討を行っていることである。…… 文字通りグローバルな視点から、国家総動員準備の構想や実態を比較史のアプローチを用いて分析し、それが一国主義的でありながら国際的潮流として立ち現れ、戦争発動を目的とすると言うより、戦争抑止力として機能するために導入された、政治的経済的軍事的な方法であるとする。それは軍部だけが主導したのではなく、国家国民の総力を前提にして構築される政策方針であったと。軍国主義やファシズムの必然的産物であり、戦争のためのツールであったとする、従来の研究成果を批判する。……”(『歴史評論』2020年10月号、p.93, 97)

森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り


『中央公論』 [2021年4月号] から

ルネサンスの数学思想

ルネサンスの数学思想

『ルネサンスの数学思想』の著者・東慎一郎先生のインタビューが、『中央公論』(2021年4月号、中央公論新社発行)の「著者に聞く」に掲載されました。【本書の内容】科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。

東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
在庫有り


『北大史学』 [第60号、2020年12月] から(評者:諫早庸一氏)

辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業

辺境の生成

足立孝著『辺境の生成』が、『北大史学』(第60号、2020年12月号、北大史学会)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。

“…… 精緻な文書読解・分析が「征服=入植運動」、「封建制」、「商業」といったそれぞれに厚みのある問題系に連結され、しかもそれらが個々別々に接続されるのみならず、この3つの問題系同士もまた「辺境」を土台に有機的に結び付けられる。著者のマクロ・ミクロ双方の分析面での実力に圧倒される。都市/農村、市民/貴族、キリスト教徒/非キリスト教徒、ピレネー以北/以南といった既存の二項対立が揚棄され、そのうえで新たなモデルが提示される流れは非常にスリリングであり、読み手を大いに引き込んでいく。そのなかでも特に、ピレネー山脈の以北と以南とを相対化する試みは非常に野心的であると言えよう。この視座が同書を、ピレネー以南の「辺境」の特殊性をキリスト教とイスラム教の関係性のなかで語るいわゆる “レコンキスタ史観” と一線を画するものとしている。これらの史観のどちらが優れているか以前の問題として、レコンキスタ史観は必然的にピレネー南北の歴史動態をそれぞれに別のものと見ることになる。足立が本書で志向するのはピレネー以南が「辺境」すなわち特殊であるという見方を覆し、この地域における議論を広くピレネー以北にまで開こうとすることである。……”(『北大史学』第60号、p.49)

足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
在庫有り


『月刊美術』 [2021年3月号、第546号] から

現代アート入門

現代アート入門

デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『月刊美術』(2021年3月号、第546号、サン・アート発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。

デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
在庫有り


『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:岡本隆司氏)

朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序

朝貢・海禁・互市

岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。

岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り


『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:磯部裕幸氏)

エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境

エコロジーの世紀と植民地科学者

水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。

水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り


『民衆史研究』 [第100号、2021年2月] から(評者:花田史彦氏)

映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史

映画観客とは何者か

藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『民衆史研究』(第100号、2021年2月、民衆史研究会編集兼発行)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。

藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り

年度別書評一覧

近刊案内

2021年4月14日出来予定

毛沢東論

中兼和津次 著
四六判・上製・440頁
税込3,960円/本体3,600円
ISBN 978-4-8158-1023-8
Cコード 3022

2021年4月23日出来予定

不定性からみた科学

吉澤 剛 著
A5判・上製・328頁
税込4,950円/本体4,500円
ISBN 978-4-8158-1025-2
Cコード 3040

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重版案内

2021年4月5日出来

社会思想の歴史

坂本達哉 著
A5判・並製・388頁
税込2,970円/本体2,700円
ISBN 978-4-8158-0770-2
Cコード 3010

2021年4月5日出来

科学技術をよく考える

伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
A5判・並製・306頁
税込3,080円/本体2,800円
ISBN 978-4-8158-0728-3
Cコード 3040

2021年4月5日出来

細胞診断学入門[第三版]

社本幹博・越川 卓 監修
長坂徹郎・横井豊治 編
B5判・並製・318頁
税込6,930円/本体6,300円
ISBN 978-4-8158-0895-2
Cコード 3047

2021年3月11日出来

社会科学の考え方

野村 康 著
A5判・上製・358頁
税込3,960円/本体3,600円
ISBN 978-4-8158-0876-1
Cコード 3030

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