内 容
文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示す。
目 次
凡 例
序 章 岐路に立つ公益訴訟という試み
第Ⅰ部 インド
第1章 開発政策と司法積極主義の変遷
1 司法制度の概観
2 財産権をめぐる政権と司法の対立
3 「公益」をめぐる政権と司法の協働的対立
4 経済社会の発展段階と司法
第2章 公益訴訟の展開
—— その光と陰
1 公益訴訟の始まりと確立
2 公益訴訟の拡大
3 公益訴訟の迷走
4 押し寄せ続ける最高裁への手紙
第3章 公益訴訟とはなにか
—— 伝統的訴訟モデルとの相違
1 訴訟手続
2 権利と救済手段
3 現代型訴訟としての公益訴訟
4 インド固有の特徴と普遍的な特徴
第4章 公益訴訟を可能にする諸要因
—— 制度変容のダイナミズム
1 令状管轄権
2 令状管轄権の継受と展開
3 公益訴訟の制度的条件
4 公益訴訟の政治経済的条件
第5章 公益訴訟と上位裁判所裁判官の任命方法
—— 政権と司法の綱引き
1 先任慣行の確立
2 裁判官任命方法に関する判例の展開
3 憲法第99次改正違憲判決
4 インド司法の抱える問題
第Ⅱ部 他の南アジア諸国
第6章 パキスタンにおける公益訴訟の展開
—— 軍政と民政の反復と司法
1 司法制度の概観
2 民政復活と公益訴訟の始まり
3 軍事政権の復活・終焉と公益訴訟
4 行き過ぎた司法積極主義の功罪
第7章 バングラデシュにおける公益訴訟の展開
—— 政争に巻き込まれる司法
1 司法制度の概観
2 民主化後の公益訴訟の展開
3 非政党暫定政府制度の廃止と公益訴訟
4 政党政治の混迷と基軸のない司法の関与
第8章 スリランカとネパールにおける公益訴訟の展開
1 スリランカ公益訴訟の確立
2 スリランカ公益訴訟の特徴
3 ネパール憲法の変遷
4 ネパール公益訴訟の展開とその特徴
終 章 公益訴訟の両義性と政治の司法化
—— 南アジアの開発と司法
参考文献
資 料
あとがき
図表一覧
事項索引
判例索引
受 賞
書 評
『南アジア研究』(第32号、2021年9月、評者:孝忠延夫氏)
『アジア研究』(第67巻第3号、2021年7月、評者:板倉和裕氏)
『アジア経済』(第62巻第1号、2021年3月、評者:浅野宜之氏)