内 容
12億の人口を抱え、民族・宗教的にも経済的にも多様なインドはどのように動いているのか? —— インド政治のダイナミズムは、実は経済成長以上の驚異である。独立から現在までの民主主義体制の構造変化を軸に、巨大で複雑な全体像を、叙述的分析と統計的分析によって見通しよく描いた待望の著作。
目 次
まえがき
略語一覧
序 章 インドの民主主義体制の位相
1 はじめに —— インド民主主義体制の「パズル」
2 最小限定義としてのインドにおける「民主主義体制」の確立
3 民主主義体制と民主主義的価値
4 「限られた階層・階級・集団による支配」という主張
5 「多数派の専制」という主張
6 選挙制度と政党の重要性
7 民主主義体制定着における政党の重要性
第Ⅰ編 政党システムの変容
第1章 民主主義体制の成立と課題
—— インド国民会議派を中心とする「一党優位体制」の展開
1 インドの独立とインド国民会議派
2 会議派政権と「一党優位体制」モデル —— 民主主義体制の定着
3 「一党優位体制」と会議派政権
まとめ
第2章 危機の10年と会議派政治の変質
—— 経済危機と体制変容
1 会議派内の権力闘争と「社会主義型社会」政策の急進化
2 経済危機とインディラ・ガンディー政権 —— 非常事態宣言
3 非常事態体制 —— 抑圧と「改革」
4 ジャナター党政権の成立と崩壊
5 非会議派政権としてのジャナター党政権の政策と実績
6 中間的諸階層の台頭とジャナター党
まとめ
第3章 政党システムの多党化と変容
—— 包摂的民主主義の可能性
1 インディラ・ガンディー会議派政権 —— 復活と挫折
2 ラジーヴ・ガンディー会議派政権
—— エスニック問題融和の試みと経済自由化
3 国民戦線政権
4 ナラシンハ・ラーオ会議派政権 —— 構造改革とコミュナル暴動
5 統一戦線政府
6 第1次BJP連合政権 —— 連立戦略の成功と失敗
7 BJP主導のNDA政権
—— 経済改革の継続・発展と隠されたヒンドゥー・ナショナリズム
8 会議派を中心とする第1次「統一進歩連合政権」
9 第15次連邦下院総選挙と第2次UPA政権
まとめ
資料1 1989年以降の政党システムの構図(選挙直後の状況)
第Ⅱ編 政治意識の変化と民主主義体制
第4章 社会変容と政治参加
—— 連邦下院選挙の分析
1 政治参加の一形態としての投票率を決める要因
2 選挙制度の変遷とデータセットの整備
3 投票率の性格
4 社会的動員と州政治の多様化
まとめ
資料2 バッラとシンの県区分へのデータの再編成
第5章 政党システムと経済変動、宗派間亀裂
—— 連邦下院選挙の分析
1 選挙における政党選択研究の特色
2 選挙におけるヒンドゥー多数派と宗教的少数派
3 経済投票およびヒンドゥー・ムスリム間の宗派間亀裂が政党選択に与える
長期的影響
4 宗派間亀裂投票と経済投票の顕在化 —— 1962-1999年の展開
まとめ
第6章 民主主義体制における「トラスト」
—— 政治的安定性の認識構造
1 トラストと民主主義体制
2 インド大都市部住民のトラストと民主主義に関する認識モデル
まとめ
第Ⅲ編 民主主義における多様性の中の調和
第7章 ヒンドゥー・ナショナリズムと多数派主義
—— 州政治と宗派間の暴力
1 パンジャーブ問題と反シク暴動
2 ヒンドゥー・ナショナリズムとコミュナル暴動 —— 問題構造の把握
3 ヒンドゥー・ナショナリズムとアヨーディヤー問題の展開
4 マハーラーシュトラ州1992-1993年
—— コミュナル暴動とヒンドゥー・ナショナリズムの拡大
5 グジャラート州2002年
—— コミュナル暴動とヒンドゥー多数派の専制
6 ウッタル・プラデーシュ州
—— ヒンドゥー・ナショナリズムの「抑制」
まとめ
第8章 中央-州関係の展開
—— 多党化と協調的連邦制
1 「ステート・ネーションズ」としてのインド
2 会議派による一党優位体制と中央-州関係の不安定化
3 行政改革委員会における中央-州関係の検討
4 非会議派州政権の分権化要求
5 サルカリア委員会と政党
6 非会議派連合政権の成立と中央-州関係の進展
—— 1980年代末以降の展開
まとめ
終 章 多様性の中の民主主義
1 経済改革と政治的自律性のポリティカル・エコノミー
2 会議派政治の後退とアイデンティティ政治の高まり
3 民主主義体制の頑健性
4 多様性の中のインド民主主義体制
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『アジア・アフリカ地域研究』(第17-1号、2017年11月、評者:上田知亮氏)
『アジア経済』(第57巻第2号、2016年6月、評者:中溝和弥氏)
『アジア研究』(第62巻第1号、2016年、評者:森悠子氏)