内 容
「量」では測れないものを科学的に考えるために ——。質的研究に関するさまざまな疑問・疑念に、ツボを押さえた説明や独自のモデルで答え、量的研究者も納得。認識論を起点に、研究を進めるうえで大切な考え方や質的データ分析手法SCATの使い方を解説する。人文・社会科学はもちろん医療等に携わる人にも最適の入門書。
【本書「はじめに」公開】
目 次
はじめに
本書の著者の研究的背景
第Ⅰ部 質的研究のデザイン、方法、パラダイム
第1章 質的研究とは何か
—— いくつかの基本概念とその検討
1 質的研究とは何か
2 質的研究「方法」と質的研究「方法論」
3 記録とコード化
4 質的研究における主観と客観
5 質的研究の評価規準としての客観性、信頼性、妥当性
6 「母集団とサンプル」概念の再考
7 質的研究における結果の再現性
第2章 リサーチ・クエスチョンの設定
1 質的研究のリサーチ・クエスチョン
2 リサーチ・クエスチョンの評価
第3章 研究デザイン
1 質的研究の研究デザイン
2 質的研究のためのガイドライン
第4章 データ採取
1 質的研究の研究参加者
2 観察やインタビューの中立性の再考 —— 観察の理論負荷性
3 サンプリングとサンプルサイズ
4 観察と観察記録
5 個別インタビュー
6 フォーカス・グループ
7 文書研究・文書分析
8 人工物研究・人工物分析
9 アートを用いたデータ採取
第5章 データ分析
1 カテゴリー分析(テーマ分析)とシークエンス分析
2 分析的枠組みとしての概念的・理論的枠組みの適用
3 質的データ分析手法の必要性
4 「分析の妥当性を高めるためのスーパービジョン」の問題
第6章 理論化とモデル化
1 質的研究における理論化
2 質的研究におけるモデル化
第7章 質的研究の結果の表象
1 質的研究論文のタイトル
2 質的研究論文の執筆形式(IMRaD と質的研究)
3 Reflexivity の記述
4 アートを含む多様な表象
第8章 質的研究の研究倫理
1 研究倫理への深い配慮の必要性
2 「研究参加しないことは不利益にならない」という説明の問題
—— 研究倫理は研究デザインで保証する
3 教育研究に合った研究倫理はあり得るか
4 研究参加者名の実名表記について —— 実名表記と匿名表記の判断
5 研究参加者がインフォームド・コンセントを超えるデータ採取を望んだら
6 質的研究における研究参加の同意の撤回について
7 解釈的な研究と研究倫理
8 データの改ざんとねつ造は何をもたらすのか
第9章 質的研究に関するその他の問題と課題
1 さまざまな質的研究手法の使い分けは可能か
2 教育実践研究と質的研究
3 量的研究手法と質的研究手法の併用
4 「定性的・定量的」という表現について
5 質的研究とエビデンスレベル
6 質的研究に関する諸概念・言説をその歴史的文脈において理解する必要性
7 プログラムやシステムの開発と評価における質的研究の有効な活用の可能性
8 質的研究のために研究者が備えておくべき知識、理解、能力とは何か
第Ⅱ部 SCAT による質的データ分析
第10章 SCAT とは何か
—— その機能と意義
1 SCAT とは何か
2 SCAT の機能と特徴
3 諸刃の剣としての SCAT
4 質的データ分析手法としての SCAT の意義
第11章 SCAT による分析
1 SCAT のフォームを準備する
2 テクストをセグメント化してテクスト欄に記入する
3 コーディングの前にテクスト(データ)をよく読む
4 〈1〉の「テクスト中の注目すべき語句」を書く
5 〈2〉の「テクスト中の語句の言いかえ」を書く
6 〈3〉の「左を説明するようなテクスト外の概念」を書く
7 〈4〉の「テーマ・構成概念」を書く
8 分析的枠組み(概念的・理論的枠組み)の利用とその際の注意点
9 〈5〉の「疑問・課題」を書く
10 「ストーリー・ライン」を書く
11 「理論記述」を行う
12 「さらに追究すべき点・課題」を書く
13 その他の分析例
第12章 SCAT での分析の参考のために
—— SCAT の Tips & Pitfalls
1 SCAT の Tips(コツ)
2 SCAT の Pitfalls(落とし穴)
第13章 SCAT の FAQ
1 コーディング以前に関する FAQ
2 コーディングに関する FAQ
3 ストーリー・ラインに関する FAQ
4 分析結果に関する FAQ
結語にかえて
1 研究領域を超えた世界共通の研究言語としての質的研究
2 研究対象となる人々と社会の理解のために
謝 辞
文献リスト
図表一覧
索 引
関連書
『現代の母性看護 概論』 入山茂美・春名めぐみ・大林陽子 編
『現代の母性看護 各論』 入山茂美・春名めぐみ・大林陽子 編