内 容
満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換える。
目 次
凡 例
序 章 満鉄の歴史的位置づけを問いなおす
1 侵略と支配の歴史研究から
2 地域史の中の中国東北
3 満鉄史研究
4 本書の課題と分析視角
第Ⅰ部 「国策会社」としての挫折
第1章 満鉄経営を担った人々
—— 課長級以上社員の分析
はじめに
1 満鉄の組織と人事異動
2 満鉄社員会の制度と本部役員人事
3 社員会機関誌『協和』の特性
おわりに
第2章 社員の経営参画
—— 課長級以上の人事異動と社員会の活動
はじめに
1 満鉄社員会の設立
2 1930年職制改正と満州事変
3 満鉄改組問題と東京支社
4 社員会の体制化
5 満州重工業の設立
おわりに
第3章 「国策会社」の統計調査
—— 慣習的方法による達成と限界
はじめに
1 後藤新平という端緒 —— 調査活動の始まり
2 調査活動の拡大
3 統制政策立案への挑戦
4 調査基盤の脆弱性
5 調査活動の専業化
6 調査方法の改善と失敗
7 国策調査との不協和 —— 満鉄調査の硬直性
おわりに
第Ⅱ部 株式市場の中の満鉄
第4章 満鉄の資金調達と民間株主
—— 1933年増資とその制度的前提
はじめに
1 満鉄と株主の良好な関係
2 1933年増資と第二新株の発行
おわりに
第5章 満鉄改組と株式市場
—— 変動する民間株主と満鉄の対応
はじめに
1 第二新株発行後の民間株主の動態
2 満鉄株の放出と引受の要因
3 株主の声と経営の合理化
おわりに
第6章 株式市場の拡大と零細株主の参入
—— 満鉄株をめぐる訴訟の分析
はじめに
1 事件と訴訟の経過
2 法廷の外の原告と被告
3 株式市場の拡大の「実態」
おわりに
第7章 経済統制下の満鉄経営
—— 1940年増資と株式市場からの反応
はじめに
1 統制の展開と満鉄の増資
2 株主と東京支社の認識
3 満鉄の相対的位置の変化
おわりに
終 章 「調査部史観」を超えて
1 各章の概要
2 本書の成果
巻末付表
文献一覧
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『アジア経済』(第63巻第1号、2022年3月、評者:加藤聖文氏)
『経営史学』(第56巻第3号、2021年12月、評者:老川慶喜氏)
『日本植民地研究』(第32号、2020年7月、評者:齊藤直氏)
『アジア研究』(第66第3号、2020年7月、評者:湊照宏氏)
『図書新聞』(2019年8月3日号、第3410号、評者:須永徳武氏)