内 容
赤い夕日と凍てつく大地、森を切り裂く鉄道と疾駆する馬車、特産の大豆と独自の紙幣、大商人と移民、廟会とペストなど、生態系から経済・政治・宗教まで、相互のダイナミックな連関を解き明かし、中国本土とは異なる社会システムとその形成過程を初めてトータルに捉えた画期的著作。
執筆者一覧
(執筆順、*は編者)
*深尾葉子
永井リサ
兼橋正人
*安冨 歩
原山 煌
松重充浩
上田貴子
目 次
はじめに
序 章 バイコフに捧ぐ ……………… 深尾葉子
第Ⅰ部 密林を切り裂く鉄道
第1章 タイガの喪失 ……………… 永井リサ
はじめに
1 清朝における生態保全システムとその崩壊
2 満洲森林調査と森林開発 1895~1930年
3 日本による森林調査・開発
4 ロシアによる森林調査
5 中国による森林調査
6 鴨緑江森林開発の経緯
おわりに
第2章 鉄道・人・集落 ……………… 兼橋正人・安冨 歩
はじめに
1 鉄道ネットワークの形成過程
2 人口のマクロ構造
3 都市集落分布から見る経済システム
おわりに —— 交通手段の変遷と地理構造の固着化
第3章 凍土を駆ける馬車 ……………… 永井リサ・安冨 歩
はじめに
1 満洲の馬車
2 馬車材の生産と流通
3 馬車生産拠点の移動
4 蒙古馬の流通
5 馬車の台数から見た馬車輸送システムの形成
6 考 察
第4章 タルバガンとペストの流行 ……………… 原山 煌
はじめに
1 タルバガンとはどんな動物か
2 野に満ちるタルバガン
3 毛皮原料としてのタルバガン
4 タルバガンの暗部 —— ペスト媒介獣として
5 モンゴルにおけるタルバガン狩りの知恵
おわりに —— タルバガンの不幸
第Ⅱ部 すべての道は県城へ
第5章 県城経済
—— 1930年前後における満洲農村市場の特徴 ……………… 安冨 歩
はじめに
1 定期市の分布
2 満洲の農村流通機構 —— スキナー・モデルとの違い
3 県城一極集中の理由
4 考 察
第6章 県流通券 ……………… 安冨 歩
はじめに
1 満洲事変以前の私帖
2 満洲事変下の県流通券発行
3 考 察
附論 黒田明伸の「支払協同体」論について
第7章 廟に集まる神と人 ……………… 深尾葉子・安冨 歩
はじめに
1 廟会の期日と市場機能
2 郷村の廟と廟会
3 大石橋迷鎮山の娘娘廟会
4 考 察
第Ⅲ部 新たな権力構造の創出
第8章 国際商品としての満洲大豆 ……………… 安冨 歩
はじめに
1 満洲から華中・華南への流れ
2 満洲大豆と日本
3 満洲大豆とヨーロッパ
4 世界の大豆貿易の概観
5 考 察
第9章 営 口
—— 張政権の地方掌握過程 ……………… 松重充浩
はじめに
1 西義順破綻の背景
2 張奉政府による西義順負債整理策の展開
3 西義順破綻処理をめぐる張奉政府側の施策意図
おわりに
附論 張作霖・張学良地方政権史研究における到達点と課題
第10章 奉 天
—— 権力性商人と糧桟 ……………… 上田貴子
はじめに
1 「満洲」物流モデル —— 南満を例として
2 奉天総商会の歴史
おわりに
第Ⅳ部 比較の視点
第11章 山東の小農世界 ……………… 深尾葉子
はじめに
1 山東の郷村市場
2 鉄道敷設とその影響
3 葉タバコ栽培の普及と山東市場社会構造
4 産地の分布とその社会経済要因
5 商品作物の分布域の違い
第12章 スキナー定期市論の再検討 ……………… 安冨 歩
はじめに
1 スキナーの伝統中国の農村市場モデル
2 中心地理論的ファサードの問題点
3 考 察
附論 「農村」という言葉のもたらす認識障害について
第13章 中国農村社会論の再検討 ……………… 深尾葉子・安冨 歩
はじめに
1 共同体/市場の二項対立
2 共同体と市場の混合理論
3 中国村落論の系譜
4 考察 —— 市場と共同体の混合理論から見た近代「満洲」社会
終 章 森林の消尽と近代空間の形成
—— 樹状組織の出現 ……………… 安冨 歩
はじめに
1 人口と市場機構
2 異なった流通機構の成立した理由
3 県城経済機構の政治や文化との相互作用
4 権力性商人
5 営口の掌握
6 タルバガンとペスト
7 生態的多様性の利用と消耗
8 大 豆
おわりに
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『日本歴史』(2012年2月号、第765号、評者:白田拓郎氏)
『社会経済史学』(第76巻第3号、2010年11月、評者:古市大輔氏)
『文藝春秋 オール讀物』(2010年9月号、評者:丸谷才一氏)
『中国研究月報』(2010年8月号、第64巻第8号、評者:阿部由美子氏)