内 容
近世を代表する遠隔地取引の担い手・北前船商人の経営展開と日本の産業化を、その活動が頂点を迎えた近代を視野に、徹底的な一次資料の精査により描き出す。北前船商人たちの活躍を幅広く捉えて、現代にまで及ぶ、日本および日本海地域の産業発展にもたらした影響を示した注目の成果。
目 次
凡 例
巻頭地図
序 章 海の富豪からみた近代日本
はじめに —— 海の豊かさと陸の産業化
1 船持遠隔地間商人と地方資産家
2 19世紀の主要船主と商品市場の概観
3 主要北前船主の概観と本書の構成
第Ⅰ部 商品・資本市場と北前船主
はじめに —— 特定商品取扱と垂直統合経営
第1章 場所請負商人から巨大漁業家へ
—— 近江国八幡・住吉屋西川家の事例
はじめに
1 場所請負商人としての経営
2 近代的諸勢力との対抗 —— 生産面を中心に
3 海運業撤退後の漁業経営
おわりに —— 柏屋藤野家との比較
第2章 買積船商人の多拠点化と資産運用
—— 加賀国橋立・酒屋酒谷家の事例
はじめに
1 買積船主としての経営
2 近代的諸勢力との対抗 —— 流通面を中心に
3 海運業撤退後の資産運用
おわりに —— 西村屋西村家との比較
第Ⅰ部補論 北陸親議会加盟北前船主の垂直統合経営と全国市場
第Ⅱ部 地域経済と北前船主
はじめに —— 多種商品取扱と複合経営
第3章 青森県船主の海運・酒造・銀行経営
—— 陸奥国野辺地・野村屋野村家の事例
はじめに
1 資産規模の推移と問屋業の展開
2 綿製品重視から魚肥重視への海運経営
3 酒造経営の展開と金融業への進出
おわりに —— 秋野家との比較
第4章 新潟県船主の海運・農業経営
—— 越後国鬼舞・鞍屋伊藤家の事例
はじめに
1 米穀・塩・砂糖・綿重視の海運経営
2 魚肥重視の海運経営への転換
3 収益構造と農業経営
おわりに —— 三国屋斎藤家との比較
第5章 石川県船主の海運・不動産経営
—— 加賀国湊・熊田屋熊田家の事例
はじめに
1 北陸重視から北海道重視への海運経営
2 商業部設立後の多角経営
3 多様な収益基盤と不動産経営
おわりに —— 津山屋瀧田家との比較
第Ⅱ部補論 東岩瀬・高岡地域北前船主の複合経営と富山県経済
第Ⅲ部 地域社会と北前船主
はじめに —— 御用重視の経営と制度転換
第6章 旧金沢藩有力船主と地域経済・社会の展開
—— 越中国放生津・綿屋宮林家の事例
はじめに
1 海運経営と金沢藩御用
2 農業経営への展開
3 有価証券投資と収益構造の変容
おわりに —— 能登屋藤井家との比較
第7章 旧小浜藩有力船主と地域経済・社会の展開
—— 若狭国小浜・古河屋古河家の事例
はじめに
1 資産重視の推移と収益構造
2 海運経営と小浜藩御用
3 醸造経営と多店舗化
おわりに —— 木屋木谷家との比較
第Ⅲ部補論 三国・敦賀湊北前船主の御用と福井県の産業化
終 章 日本の産業化と北前船主
1 北前船主の多角化戦略の特質
2 資産家商家と日本の資本主義化
3 近代日本の地域格差と「農工連関」型産業化
注
あとがき
初出等一覧
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
著者の既刊書
『世界経済の歴史[第2版]』 金井雄一・中西 聡・福澤直樹 編