内 容
教育史から浮かび上がるロシア帝国 —— 西欧的学知の受容過程を俯瞰し、「教育の身分制原理」とその揺らぎをエリート教育に即して読み解くとともに、辺境地域で展開された教育政策をたどることで、ロシア帝国固有の教育システムを解明、教育の社会文化史の可能性を問いかけた渾身作。
目 次
序 帝制期ロシアにおける教育の社会文化史
—— 課題・対象・方法
第Ⅰ部 ロシアとヨーロッパ
—— 知識社会史からのアプローチ
第1章 ロシアの近代化と西欧的知の移入・受容
はじめに
1 近世から近代におけるヨーロッパ的知の変動
2 人文主義とロシア
3 科学アカデミーと大学
おわりに
第2章 東スラヴの正教世界と「ラテン文化」受容の問題
はじめに
1 人文学知と東スラヴ世界
2 キエフ・モヒラ・コレギウムの成立
3 キエフからモスクワへ
第3章 ライプニッツとロシア
はじめに
1 科学革命の時代と知の世界の変容
2 ヨーロッパとロシア —— 初期近代から近代へ
3 ライプニッツの「普遍学」構想とロシア
4 ロシアとの接触と科学アカデミー設立提案
おわりに
第4章 帝制期ロシアの「御雇外国人」教師
はじめに
1 18世紀の科学アカデミー
——「学者の天国」? 「ドイツ人の植民地」?
2 モスクワ大学と御雇外国人教師
3 「学問のロシア化」と御雇外国人教師の運命
第Ⅱ部 「教育の身分制原理」とエリート教育
第5章 ロシアの身分制と「教育の身分制原理」
はじめに
1 近代ロシアの身分制
2 帝制期教育と「教育の身分制原理」
第6章 貴族の特権的教育機関の成立と拡大
はじめに
1 貴族の特権的教育機関とエリート教育 —— 軍事教育機関の場合
2 貴族の特権的教育機関とエリート教育 —— 文官養成機関の場合
おわりに
第7章 国民教育省管下教育機関における身分制問題
はじめに
1 大学と身分制問題
2 ギムナジアと身分制問題
3 国民教育省管下のその他の中等・高等教育機関 —— リツェイ
おわりに
第8章 エリート形成の転換と学校
—— 19世紀後半-20世紀初頭
はじめに —— 大改革の時代
1 19世紀後半-20世紀初頭の大学とギムナジア
2 特権的教育機関の再編と自己保存
3 高等専門学校の成長
4 就学構造の転換とその要因
おわりに
第9章 エリート中等教育における古典語教育問題
はじめに
1 古典教養の微弱な伝統
2 ウヴァーロフと古典陶冶主義の導入
3 トルストイ教育相と古典陶冶主義
おわりに —— 改革の帰結
第10章 ロシア正教会聖職者身分の学校
はじめに
1 ピョートル教会改革と18世紀の聖職者教育
2 1808年改革と19世紀前半の身分制問題
3 改革と革命の時代における危機への対応と葛藤
おわりに
第Ⅲ部 教育システムの帝国的編成と民族問題
第11章 帝国とネイションと学校
はじめに
1 膨張する帝国と民族教育問題
2 西部諸県の教育構造
3 沿バルト諸県の教育構造
4 帝国東部・南部辺境とムスリム教育
おわりに
第12章 ウヴァーロフ教育大臣期の西部諸県教育政策と「ポーランド問題」
はじめに
1 西部諸県の教育的伝統と「ポーランド問題」
2 アレクサンドル1世の学制改革と西部諸県
3 ポーランド民族運動と教育政策の転換
4 ウヴァーロフと西部諸県教育政策
おわりに
第13章 沿バルト諸県の初等教育体制と「ロシア化」政策
はじめに
1 18世紀の民衆教育の展開
2 19世紀 ——「ロシア化」以前の学制と就学構造
3 ゲルマン化・ロシア化・民族覚醒
おわりに
補論① ロシアのなかのドイツの大学 —— タルト大学小史
第14章 対ユダヤ教育政策の展開とユダヤ人の教育経験
はじめに
1 「ユダヤ人問題」の浮上と初期ユダヤ人教育政策
2 ユダヤ人教育政策の展開
3 ユダヤ人社会と学校 —— 紛争と葛藤
補論② ロシア帝国極東地域朝鮮人移民の学校
——『ロシアとカザフスタンの朝鮮人教育の歴史 19世紀後半-2000年』
をてがかりに
あとがき
注
索 引