内 容
第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づける。
目 次
凡 例
参考地図
序 章 ロシア帝国と近代世界
1 本書の背景
2 ロシアとアジア
3 海運を通して見るロシア帝国
4 義勇艦隊に関する先行研究と史料、本書の構成
第Ⅰ部 地域 —— ロシア極東の近代
はじめに
第1章 帝政期ロシア極東の農業と移民
1 19世紀のロシア極東統治の概要
2 1895年の調査に見る、沿海州とアムール州の比較
3 日露戦争後の方針転換
4 日露戦争後のロシア極東の農村
小 括
第2章 無関税港制に見るロシア極東の変容
1 無関税港制と自由港制
2 19世紀後半のウラジオストク
3 1901年の無関税港廃止
4 日露戦争後のウラジオストク港
小 括
第3章 茶が結んだロシアとアジア
1 19世紀後半の中国茶の種類
2 義勇艦隊就航までのロシアと茶
3 イギリスの中国茶市場からの撤退と義勇艦隊の就航
4 ロシア国内における需要の喚起
小 括
補論1 アムール川とスンガリ川をめぐる露中関係
1 ロシア帝国のスンガリ川への進出 —— 日露戦争前の状況
2 中国のアムール川への進出 —— 日露戦争後の状況
小 括
第Ⅱ部 国家 —— ロシア義勇艦隊史
はじめに
第4章 19世紀のロシア義勇艦隊
—— 就航とその後の模索
1 義勇艦隊の設立
2 義勇艦隊の始動
3 新たな規程制定をめぐる論争の始まり
4 1886年時限規程の制定
5 ブラジル航路の計画
6 ミハイル・カジのロシア商船批判
7 1890年代の発展
小 括
第5章 セルゲイ・ヴィッテの海運政策
1 若きセルゲイ・ヴィッテの道のり
2 ヴィッテの経済思想
3 ヴィッテによる海運の改革
4 1902年の義勇艦隊時限規程
5 海運の国産化と外国資本の排除
小 括
第6章 商船化への道
—— 日露戦争後の義勇艦隊
1 義勇艦隊の組織の見直し —— 海軍省から商工省へ
2 義勇艦隊と各地の取引所委員会
3 第一次世界大戦直前の義勇艦隊
4 バルト海-ウラジオストク航路の創設計画
小 括
第Ⅲ部 世界経済 —— ロシア海運の発展
はじめに
第7章 ロシア東亜汽船と義勇艦隊の競争
—— 帝国の西と東
1 ロシア東亜汽船の設立
2 ユダヤ人移民とパスポート問題
3 大西洋航路の設立
4 大西洋航路の見直し
5 日露戦争後の極東近海航路の再編
6 決算報告の分析 —— 義勇艦隊への補助金
7 警戒しつつ手を結ぶ —— 日露戦争後の日露関係
小 括
第8章 北方汽船の模索
1 北方汽船の船出
2 黒海・バルト海への進出
3 東方への回帰
4 インド、セイロンからの茶の輸入
5 茶の輸送競争 —— 義勇艦隊と北方汽船
6 ロシアによる茶の輸送網の把握
小 括
第9章 ロシア商船とオデッサ
1 19世紀前半のオデッサ
2 ロシア商船の設立
3 東地中海とロシア
4 オデッサの自由港制案
5 ペルシア湾航路の設立
6 ペルシア湾航路の結果
小 括
補論2 スエズ運河の通航料問題
1 スエズ運河とのかかわりの始まり
2 補助金の条件の改定
小 括
終 章 海から見たロシア帝国
1 第一次グローバリゼーションとロシア帝国
2 ソ連時代への遺産
巻末付表
あとがき
注
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
『西洋史学』(第274号、2022年12月、評者:薩摩真介氏)
『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、評者:中西聡氏)
『社会経済史学』(第88巻第1号、2022年5月、評者:塩谷昌史氏)
『軍事史学』(第57巻第4号、2022年3月、評者:諸橋英一氏)
『北東アジア地域研究』(第27号、2021年5月、評者:新井洋史氏)