2020年度書評一覧
『経営史学』 [第55巻第4号、2021年3月] から(評者:上野継義氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『経営史学』(第55巻第4号、2021年3月、経営史学会発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
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『史苑』 [第81巻第1号、2020年12月] から(評者:中川灯里氏)
普遍史の変貌
ペルシア語文化圏における形成と展開
大塚修著『普遍史の変貌』が、『史苑』(第81巻第1号、2020年12月、立教大学史学会発行)で紹介されました。歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
“…… 本書の意義は、研究の対象とする範囲が時代や王朝という枠組みを越えた包括的なものである点に特に求められよう。中でも使用されている文献の豊富さは特筆に値する。膨大な一次資料を精査する試みは著者の長年の研究の蓄積あってのものである。独自に見出した写本を使用するなど広く史料を渉猟し、かつ丁寧な考察を行った著者の見識が、先行研究の限定的な枠組みへの鋭い指摘と普遍史研究への包括的なアプローチを可能にしたといえよう。”(p.184)
大塚 修 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
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「京都新聞」 [2021年3月27日付] から
統計学を哲学する
『統計学を哲学する』の著者である大塚淳先生のインタビューが、「京都新聞」(2021年3月27日付)に掲載されました。【内容】統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・上製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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『広島大学現代インド研究』 [第11号、2021年3月] から(評者:岡橋秀典氏)
インド経済史
古代から現代まで
ティルタンカル・ロイ著/水島司訳『インド経済史』が、『広島大学現代インド研究』(第11号、2021年3月、広島大学現代インド研究センター発行)で紹介されました。古代以来、有数の巨大経済でありながら看過されてきた、独自の発展のダイナミズムとは何か。地理・気候から商品・技術・知識まで、インドの固有性と世界経済との接続の効果を縦横に論じ、アジアとヨーロッパを結ぶ経済の全体像を浮かび上がらせた、地域史からのグローバル・ヒストリー。現代の興隆への道筋をも示します。
ティルタンカル・ロイ 著
水島 司 訳
税込4,620円/本体4,200円
A5判・上製・340頁
ISBN978-4-8158-0964-5 C3022
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「日本経済新聞」 [2021年3月27日付] から
災後日本の電力業
歴史的転換点をこえて
橘川武郎著『災後日本の電力業』が、「日本経済新聞」(2021年3月27日付)で紹介されました。東日本大震災と原発事故は、日本電力業のすがたを根底から変えてしまった。福島への補償から電源エネルギー構成の再編、10電力体制の終焉まで、政策と経営戦略の包括的検討により原発事故前後25年の実態を解明、真の課題のありかを特定し、電力業の歴史的再生へむけた道筋を示します。
“…… エネルギー政策や企業の歴史に詳しい著者が、原発事故の前夜から、事故を経て今日に至るエネルギー政策や電力産業の変化を検証する。著者は原発事故が日本の電力業に3つの大転換をもたらしたと指摘する。原発を主要電源とする時代の終わり、10電力会社体制の終わり、そして電力を発電した場所で利用する分散型供給システムの構築が始まったことである。…… 過去10年の電力・エネルギー改革の姿は進んだ市場改革と、進まぬ原子力改革の「まだら模様」だとの指摘には説得力がある。…… 原発事故から10年の節目に歩みを振り返る資料的価値もある一冊だ。”(「日本経済新聞」2021年3月27日付、第33面)
橘川武郎 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1015-3 C3033
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『図書新聞』 [2021年4月3日号、第3490号] から
NO NUKES
〈ポスト3・11〉映画の力・アートの力
『NO NUKES』の著者であるミツヨ・ワダ・マルシアーノ先生のインタビュー(聞き手:久保豊氏)が、『図書新聞』(2021年4月3日号、第3490号、武久出版発行)に掲載されました。【内容】〈見えないもの〉とたたかう ——。大震災/原発事故後、なすべきことを問いかけ、時代のメディア環境の中で自生した、追従せざる映画やアート。「小さき声」の響く作品と向き合い、作家たちの揺れ動く言葉を聴く。新たな困難によっても上書きされない、明日への記憶のために。
ミツヨ・ワダ・マルシアーノ 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・244頁
ISBN978-4-8158-1014-6 C3074
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「河北新報」 [2021年3月7日付] から
現代アート入門
デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、「河北新報」(2021年3月7日付)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
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「日本経済新聞」 [2021年3月20日付] から
東アジアのなかの満鉄
鉄道帝国のフロンティア
林采成著『東アジアのなかの満鉄』が、「日本経済新聞」(2021年3月20日付)で紹介されました。帝国拡大の原動力となり、世界でも最高水準を誇った満鉄の鉄道技術はいかにして伝播していったのか。見過ごされてきた本業・鉄道業の姿をはじめて解明、その経済的・技術的インパクトを数量的に位置づけるとともに、東アジア鉄道システムの形成から、戦後再編の新たな全体像を描き出します。
“日本版「東インド会社」とも呼ばれる満鉄こと南満州鉄道の歩みを、本業である鉄道事業に焦点をあてて探究 …… 様々な角度から、満鉄の経営のありようを実証的に分析している。…… 日本語、中国語、韓国語、英語の史料を縦横に駆使した綿密な考証は味わい深い。”(「日本経済新聞」2021年3月20日付、第33面)
林 采成 著
税込8,580円/本体7,800円
A5判・上製・638頁
ISBN978-4-8158-1013-9 C3022
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『図書新聞』[2021年3月27日号、第3489号] から(評者:佐々充昭氏)
宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本
永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、『図書新聞』(2021年3月27日号、第3489号、武久出版発行)で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。
“…… 本書の最大の読みどころは、『七十年史』の編纂事業に多数の宗教学者がかかわり、「民衆宗教」概念の構築がなされた過程について詳細な検証を行っている点であろう。編纂事業における大量の資料や原稿、聞き取り調査や討議の記録として残された「大本七十年史資料」をテキストとして、編纂事業に関わる教団・信仰当事者とその他の宗教学者との間に繰り広げられるポリティクスを、「読みの運動」と「協働表象」という独自の分析視点で読み解いている。…… 本書ではまた、『七十年史』編纂という一種の「公共圏」に登場した思想家や信仰者たちの生き様を通じて、戦後の日本社会や日本の学界状況が間接的に描かれている。若き日の安丸良夫がアルバイト生としてこの事業にかかわり単著『出口なお』を編んだこと、出口榮二が「万教同根」思想を探究するためにシャーマニズム研究を行ったことなど、学術書として読み応えのある内容となっている。本書は、戦後「民衆宗教」史を記述する一つのスタイルを確立した本であると言えるだろう。”(『図書新聞』2021年3月27日号、第5面)
永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
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『アジア経済』 [第62巻第1号、2021年3月] から(評者:浅野宜之氏)
試される正義の秤
南アジアの開発と司法
佐藤創著『試される正義の秤』が、『アジア経済』(第62巻第1号、2021年3月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。文字も読めない社会的弱者の権利を守り、裁判所みずから正義を届けるべくはじまった公益訴訟。インド経済の急速な発展のもと、司法の恣意的利用をもひきおこしたその両義的性格を鋭くとらえ、南アジア法の最大の特徴にせまるとともに、政治の司法化をめぐる世界的潮流をも指し示します。
佐藤 創 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・298頁
ISBN978-4-8158-0976-8 C3032
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「日刊建設工業新聞」 [2021年3月18日付] から
建設労働と移民
日米における産業再編成と技能
惠羅さとみ著『建設労働と移民』が、「日刊建設工業新聞」(2021年3月18日付、日刊建設工業新聞社発行)で紹介されました。オリンピックや相次ぐ再開発を控え、高齢化と人手不足が著しい建設現場にいち早く導入されてきたベトナム人などの外国人技能実習生たち。安価な移民労働力の利用とする画一的理解をこえて、日米の比較から産業再編成と技能継承をめぐる課題に迫り、建設労働移民のグローバルな文脈を示します。
惠羅さとみ 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-1020-7 C3036
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『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:田口晃氏)
政治教育の模索
オーストリアの経験から
近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づけます。
近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
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『西洋史学』 [第270号、2020年12月] から(評者:後藤春美氏)
大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障
大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、『西洋史学』(第270号、2020年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。
大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
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『社会経済史学』 [第86巻第4号、2021年2月] から(評者:水谷智氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『社会経済史学』(第86巻第4号、2021年2月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
“…… 一般に、開発の目的が現地住民の生活向上であるというのは表向きの理由で、植民地支配体制への批判をかわしつつヨーロッパの各国がその海外領土から持続的に資源を搾取しつづけるための方便にすぎない、とされてきた。本書でも指摘されるとおり、第一次大戦以降にイギリス政府が熱帯の各植民地に直接資金を投下するようになったのも、産業・食糧資源の本国への供給先としてそれらの価値を見いだしたからにほかならない。少なくとも政策決定者たちに関する限り、実際の彼らの考え方は、開発の動機は帝国主義的なものであるという上述のイメージと大きく異なることはないといえるだろう。しかし、これだけではなぜ開発がエコロジーという普遍的な価値観と結びついたのかを説明できない。ここで重要になるのが、「植民地科学者」という範疇である。本書の方法論の核にあるのは、この範疇を生態学的な学知の形成主体として定位し、全体をとおしてそれを歴史分析の中心に据えたということである。……
…… 植民地主義自体は非対称の関係のもとになりたっていたが、学問的な真理を追究するなかで、科学者たちは人種主義的な観点から現地社会を見下すこともなければ、ヨーロッパの事例から組み立てられたモデルを普遍的基準として導入・強制することを試みることもなかった。むしろ、植民地におけるローカルな「接触」の経験をとおして現地の慣習を評価し、それを積極的に採り入れることで生態学的アプローチは生成されていったのである。つまり、学知形成のダイナミズムに着眼したとき、上述したステレオタイプでは看過されてしまう開発の歴史的側面が浮かびあがってくる。そしてそれは、著者のいうとおり、「近代科学がヨーロッパから非ヨーロッパ世界に広がったとするヨーロッパ中心主義的な普及論に対する反証にもなる」(p.183)のである。本書は、こうした主張を、包括的かつ綿密な関連史料の分析をとおして立証することに見事に成功している。ここで付言すれば、著者の文章は極めて明快かつ論理的であり、本書は狭義の専門家以外の読者でも多くの示唆を享受することができる優れた学術書である。……”(『社会経済史学』第86巻第4号、pp.76-77)
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
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『ヒストリア』 [第283号、2021年1月] から(評者:矢嶋光氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『ヒストリア』(第283号、2021年1月、大阪歴史学会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“…… 本書の特徴は、著者が述べるように、日本の国家総動員体制を米英のそれと比較し、広く世界史的な文脈から捉え直そうとしている点である。…… 特殊性だけでなく、国際比較の観点から普遍性の側面にも注目しつつ、日本の国家総動員体制を明らかにしようとした最初の研究として位置づけることができる。…… また、本書は、軍にとどまらず政党や官僚、実業家、さらにはジャーナリズムや学界にまで目を配り、国内の政治・社会情勢の全体を視野に収めた研究でもある。そのなかでも、とくに本書第Ⅱ部の主人公ともいえる松井春生の存在は興味深かった。……
…… これまでファシズムや軍国主義への道として理解されてきた日本の国家総動員体制の形成過程を再考し、世界史的な文脈のなかでそれが持つ類似性と特異性を丹念に解き明かした本書は、間違いなく総力戦体制研究の画期となる著作である。くわえて、国内外の広範な史料を駆使して執筆された本書には、ここでは紹介しきれなかった論点がまだまだあり、軍事史はもちろん、政治史や外交史、あるいは経済史やメディア史など多様な分野の研究者にとって価値ある一冊となっている。……”(『ヒストリア』第283号、p.75, 77)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
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『歴史評論』 [2020年10月号、第846号] から(評者:纐纈厚氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『歴史評論』(2020年10月号、第846号、歴史科学協議会)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“この領域の研究は、1970年代後期から着実に進められて来たが、間違いなく本書は、その研究水準を一気に引き上げた労作である。総力戦体制研究を長年続けてきた評者も、大いに学ばせて頂いた。……
本書の最大の特徴は、当該期英米両国の国家総動員構想をも俎上に載せ、日本が両国の影響を受けていたのか、英米両国が日本の国家総動員構想を如何に把握していたのかを、比較検討を行っていることである。…… 文字通りグローバルな視点から、国家総動員準備の構想や実態を比較史のアプローチを用いて分析し、それが一国主義的でありながら国際的潮流として立ち現れ、戦争発動を目的とすると言うより、戦争抑止力として機能するために導入された、政治的経済的軍事的な方法であるとする。それは軍部だけが主導したのではなく、国家国民の総力を前提にして構築される政策方針であったと。軍国主義やファシズムの必然的産物であり、戦争のためのツールであったとする、従来の研究成果を批判する。……”(『歴史評論』2020年10月号、p.93, 97)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
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『中央公論』 [2021年4月号] から
ルネサンスの数学思想
『ルネサンスの数学思想』の著者・東慎一郎先生のインタビューが、『中央公論』(2021年4月号、中央公論新社発行)の「著者に聞く」に掲載されました。【本書の内容】科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。
東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
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『北大史学』 [第60号、2020年12月] から(評者:諫早庸一氏)
辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業
足立孝著『辺境の生成』が、『北大史学』(第60号、2020年12月号、北大史学会)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。
“…… 精緻な文書読解・分析が「征服=入植運動」、「封建制」、「商業」といったそれぞれに厚みのある問題系に連結され、しかもそれらが個々別々に接続されるのみならず、この3つの問題系同士もまた「辺境」を土台に有機的に結び付けられる。著者のマクロ・ミクロ双方の分析面での実力に圧倒される。都市/農村、市民/貴族、キリスト教徒/非キリスト教徒、ピレネー以北/以南といった既存の二項対立が揚棄され、そのうえで新たなモデルが提示される流れは非常にスリリングであり、読み手を大いに引き込んでいく。そのなかでも特に、ピレネー山脈の以北と以南とを相対化する試みは非常に野心的であると言えよう。この視座が同書を、ピレネー以南の「辺境」の特殊性をキリスト教とイスラム教の関係性のなかで語るいわゆる “レコンキスタ史観” と一線を画するものとしている。これらの史観のどちらが優れているか以前の問題として、レコンキスタ史観は必然的にピレネー南北の歴史動態をそれぞれに別のものと見ることになる。足立が本書で志向するのはピレネー以南が「辺境」すなわち特殊であるという見方を覆し、この地域における議論を広くピレネー以北にまで開こうとすることである。……”(『北大史学』第60号、p.49)
足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
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『月刊美術』 [2021年3月号、第546号] から
現代アート入門
デイヴィッド・コッティントン著/松井裕美訳『現代アート入門』が、『月刊美術』(2021年3月号、第546号、サン・アート発行)で紹介されました。「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に ——。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
デイヴィッド・コッティントン 著
松井裕美 訳
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・224頁
ISBN978-4-8158-1009-2 C3070
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『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:岡本隆司氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り
『歴史学研究』 [2021年3月号、第1006号] から(評者:磯部裕幸氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『歴史学研究』(2021年3月号、第1006号、歴史学研究会編集)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『民衆史研究』 [第100号、2021年2月] から(評者:花田史彦氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『民衆史研究』(第100号、2021年2月、民衆史研究会編集兼発行)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
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「京都新聞」 [2021年2月21日付] から(評者:内田孝氏)
宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本
永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、「京都新聞」(2021年2月21日付)読書欄で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。
“…… 本書の圧巻は、弾圧事件の聞き取り部分の再現と読み解きだ。事件当時19歳で、王仁三郎らと逮捕された信者が内務省、警察、検察など関係者に当たる。告発調ではなく丁寧な依頼で相手の信頼を得て、大半の関係者から聞き取る。
京都府警の特高は、やみくもな摘発はしない。緻密な教義研究を重ね、取り調べ担当者は王仁三郎に宗教家の魅力を感じた。教団は戦後の平和運動に関わったが、聞き取りで弾圧の根拠を否定した結果、皮肉にも教義の戦前回帰につながった —— と著者は読み解く。……”(「京都新聞」2021年2月21日付、第18面)
永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り
『みすず』 [2021年1・2月合併号、読書アンケート特集] から
『みすず』(2021年1・2月合併号、みすず書房発行)の読書アンケート特集で、以下の図書が紹介されました。
【酒井哲哉氏による紹介】
広田照幸編
『歴史としての日教組』(上下巻)
“…… 実像とかけ離れたイメージが先行してきた日教組の歴史を、日教組所蔵の未公刊文書を駆使しながら実証的に検証した貴重な研究。…… 戦後史の重要な担い手の足跡が内部史料を基に詳細に描かれているのは感慨深い。……”(p.73)
【三中信宏氏による紹介】
大塚淳著
『統計学を哲学する』
“…… 現代社会のさまざまな場面で求められている統計学に対して科学哲学の観点から光を当てた注目の新刊だ。ともすれば実用的・実利的な「統計データ解析」の側面ばかりに目を向けられがちな統計学はけっして難解な数学ですべてが解決できるような学問ではない。利用できる既知の情報をよりどころとして未知の現象を帰納的に説明・予測・推測することが統計学に課された務めだ。本書は存在論・認識論・意味論という哲学の本道を進みつつ、現代の統計学が伝統的な哲学や科学哲学とどのように接点をもちうるのかを明確に示している。科学と科学哲学は切っても切れない関係にある。……”(p.78)
【長谷正人氏による紹介】
アントワーヌ・リルティ著
松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳
『セレブの誕生 ——「著名人」の出現と近代社会』
“…… ハーバーマスが18世紀のジャーナリズムに公共空間の誕生を見たのに対して、本書は著名人のプライバシーに対する好奇心の出現を見る。著名人ゲームとしてのメディア社会は啓蒙期からあったのだと。『博物誌』で名声を獲得したビュフォンの死後に出された数々の私的自伝は、彼の業績を説明するのでなく、彼の私生活を描写して人びとの好奇心を煽るものばかりだった。……”(p.89)
【川本隆史氏による紹介】
ラン・ツヴァイゲンバーグ著
若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子訳
『ヒロシマ —— グローバルな記憶文化の形成』
“…… 祖父母4人のうち3名がホロコーストを経験したというイスラエル生まれの著者が、原爆を生き延びた人びとの記憶や記念・追悼に関わる論争的な歴史を丹念に描き出す。…… ホロコーストの記憶から逆照射することにより、ヒロシマの「記憶文化」を
「日本経済新聞」 [2021年2月13日付、読書欄「半歩遅れの読書術」] から(評者:磯田道史氏)
経済成長の日本史
古代から近世の超長期GDP推計 730-1874
高島正憲著『経済成長の日本史』が、「日本経済新聞」(2021年2月13日付)読書欄「半歩遅れの読書術」(磯田道史氏)で紹介されました。奈良時代~近代初頭にいたる列島経済の展開を一望、最貧国水準を抜け出し、1人あたりGDPが着実な上昇に転じていく過程を、利用可能な数値の精査と多様な文献の活用により、災害・飢饉・環境・都市化なども視野に解明。はじめて日本の超長期GDP推計を実現し、日本史の新たな扉を開きます。
高島正憲 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・348頁
ISBN978-4-8158-0890-7 C3033
在庫有り
『経済史研究』 [第24号、2021年1月] から(評者:小堀聡氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『経済史研究』(第24号、2021年1月、大阪経済大学日本経済史研究所発行)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『週刊東洋経済』 [2021年2月13日号] から
海のロシア史
ユーラシア帝国の海運と世界経済
左近幸村著『海のロシア史』が、『週刊東洋経済』(2021年2月13日号、東洋経済新報社発行)で紹介されました。第一次グローバリゼーションのもと、東アジアの海とヨーロッパの海を結んだ長距離航路と、義勇艦隊が果たした役割とは。政治と経済が混然一体となった海洋戦略により、極東を含む帝国の辺境を統合、国際的経済闘争への参入を試みる姿を捉え、ロシア史をグローバルヒストリーに位置づけます。
“…… 義勇艦隊の軌跡を通して、英国主導の自由貿易体制に参画せざるをえなかったロシアの苦悩とその限界を明らかにするなど、グローバル化批判が高まる今、示唆に富む1冊となっている。”(『週刊東洋経済』2021年2月13日号、p.99)
左近幸村 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-1008-5 C3022
在庫有り
『週刊エコノミスト』 [2021年2月16日号] から(評者:平山賢一氏)
戦前日本のユニバーサルバンク
財閥系銀行と金融市場
粕谷誠著『戦前日本のユニバーサルバンク』が、『週刊エコノミスト』(2021年2月16日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかけます。
“…… 戦前の大銀行がどのような人的管理を行い、証券市場および外国為替業務への多角化を図ったのかについて、膨大な資料を基に整理している。特に旧三井銀行の経営方針が経済環境に応じて変化してきた系譜からは、現在我々が抱く固定化された銀行観が、決して普遍的なものではない点が明らかにされる。中心となる経営者が代わるにつれ、プライベートバンク、マーチャントバンクという銀行像を経て、預金・貸し出しと国際業務を兼営するユニバーサルバンクに至る事例が鮮やかに記されているからだ。……
…… 人材を基盤としたユニバーサルバンクとしての銀行像は、第一次世界大戦後に確立され、高度経済成長期を経て現代にもつながっている。逆に言えば、明治から大正期にかけて大きく変化した銀行像は、人材管理の定着とともに固定化され、現代まで連続していると見なせるのかもしれない。…… 戦前と戦後の銀行ビジネスモデルの橋渡しとなった人材管理が、産業構造の変化により陳腐化し、断絶面を迎えているのではないかと思えてくるのは評者だけではないはずだ。銀行という業態がこれからどう変化するか、生き残るのか残らないのか、そのことを真剣に考える上で、戦後よりもはるかに大きな変化にさらされた戦前期の動向を整理して見せた本書の意義は大きい。”(『週刊エコノミスト』2021年2月16日号、pp.52-53)
粕谷 誠 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-1004-7 C3033
在庫有り
「週刊佛教タイムス」 [2021年2月4日号] から
宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本
永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、「週刊佛教タイムス」(2021年2月4日号、仏教タイムス社発行)で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。
永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り
『ラテンアメリカ・レポート』 [第37巻第2号、2021年1月] から(評者:近田亮平氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『ラテンアメリカ・レポート』(第37巻第2号、2021年1月、アジア経済研究所)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
在庫有り
『比較文學研究』 [106号、2020年12月] から(評者:西槇偉氏)
中国芸術というユートピア
ロンドン国際展からアメリカの林語堂へ
範麗雅著『中国芸術というユートピア』が、『比較文學研究』(106号、2020年12月、東大比較文学会)で紹介されました。中華文人の生活芸術か、想像された国民芸術か ——。第二次世界大戦前、中英の協力により一大展覧会が開かれた。様々な出版や外交を伴い東西文化交流の転換点となったイベントを軸に、日本の影響深いウェイリーらの研究から、在英中国知識人の活動、パール・バックの後押しした林語堂の傑作まで、中国芸術とは何かを問いかけます。
“…… ここでは比較文学研究としての本書の価値にふれておきたい。第一に、日英中三つの言語による浩瀚な一次、二次資料を駆使し、絵画のみでなく、演劇や古典文学、近現代文学など複数の文芸ジャンルに跨がって、文化の接触・受容に照射をあてた著者の手腕は見事である。英国における中国絵画理解に対して、「西洋の眼」「中国の眼」「日本の眼」と、三点測量を意識的に行い、説得的な論を展開している。…… 次に、日本の比較文学研究の中で、本書は「西欧における中国文化受容」に関する画期的大著となるだろう。というのも、「日本における西洋受容」や「西洋の中の日本」についてはすでに豊富な研究の蓄積があるのに対して、本書のテーマについては、ほとんど類書が見当たらない。アーサー・ウェイリーは『源氏物語』の翻訳者として日本では知られているが、欧米の中国研究者の中では、彼の中国絵画理解は今まで知られていたとはいえない。そのほか、ビニヨン、オズワルド・シレン Osvald Sirén(1879-1966年)、ジョン・ファーガソン John Ferguson(1866-1945年)など、西欧の主な中国絵画研究者についても、本書によってかなりの知見が得られる。今後、様々な領域の研究者にとって、本書は高い参照価値を持つことになるだろう。苦節十数年、東京大学大学院総合文化研究科及び国際日本文化研究センターの共同研究チームなどの師友から支援され仕上げられた本書は、その学術的な壮大さとともに、著者の強靭な精神力を感じさせ、感動的な好著である。”(『比較文學研究』106号、p.167)
範 麗雅 著
税込12,100円/本体11,000円
菊判・上製・590頁
ISBN978-4-8158-0909-6 C3070
在庫有り
『東南アジア研究』 [58巻2号、2021年1月] から(評者:武内進一氏)
平和構築を支援する
ミンダナオ紛争と和平への道
谷口美代子著『平和構築を支援する』が、『東南アジア研究』(58巻2号、2021年1月、京都大学東南アジア地域研究研究所)で紹介されました。リベラル平和構築論を超えて ——。15万人に及ぶ犠牲者を出し、日本も関わるアジアの代表的地域紛争の和平をいかに実現すべきか。徹底した現地調査により、分離独立紛争とその影に隠れた実態を解明、外部主導の支援の限界を示して、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を考えます。
谷口美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-0985-0 C3031
在庫有り
『山』 [2021年1月号、第908号] から(評者:近藤雅幸氏)
森林の系統生態学
ブナ科を中心に
広木詔三著『森林の系統生態学』が、『山』(2021年1月号、第908号、日本山岳会発行)で紹介されました。従来の生態学が偏重しがちであった個体群ではなく、歴史性を担う種に注目し、遷移現象やすみ分けなど、樹木の種間関係を通じて森林群集を空間的・時間的に捉え直す。日本の多くの森林で優占種となっているブナ科を通して、系統分類学と生態学の統合を試みた、エコロジーの新地平。
広木詔三 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0987-4 C3045
在庫有り
『史学雑誌』 [2020年12月号、第129編第12号] から(評者:城戸照子氏)
辺境の生成
征服=入植運動・封建制・商業
足立孝著『辺境の生成』が、『史学雑誌』(2020年12月号、第129編第12号、史学会編集兼発行)で紹介されました。とめどなく生み出される無数の「辺境」—— そこではなにが生起するのか。中世イベリア半島を舞台に、従来のレコンキスタの図式を排して、征服=入植運動、封建制、商業の展開プロセスを実証的に解明。遍在する「辺境」から、ラテン・ヨーロッパをも見通す新たなモデルを導き出します。
足立 孝 著
税込10,780円/本体9,800円
A5判・上製・612頁
ISBN978-4-8158-0962-1 C3022
在庫有り
『芸術新潮』 [2021年2月号、特集「ブックガイド2021 愛でたい読書」] から
『芸術新潮』(2021年2月号、新潮社発行)の特集「ブックガイド2021 愛でたい読書」で、以下の図書が紹介されました。
【保坂健二朗氏による紹介】
水野千依著
『イメージの地層 —— ルネサンスの図像文化における奇跡・分身・予言』
【橋本麻里氏による紹介】
石川九楊著
『日本書史』
「朝日新聞」 [2021年1月30日付] から
歴史教育の比較史
近藤孝弘編『歴史教育の比較史』が、「朝日新聞」(2021年1月30日付)読書欄の「情報フォルダー」で紹介されました。「歴史認識」を語る前に ——。なぜ歴史をめぐって国どうしが争うのか。世界各地で歴史はどのように教えられてきたのか。歴史家と教育学者の共同作業により、自国史と世界史との関係を軸に、四つの地域の現在までの「歴史教育」の歴史を跡づけ、歴史とは何か、教育とは何かを問い直す、未曾有の試み。
近藤孝弘 編
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・328頁
ISBN978-4-8158-1011-5 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2021年2月6日号、第3482号] から(評者:宮内肇氏)
闘う村落
近代中国華南の民衆と国家
蒲豊彦著『闘う村落』が、『図書新聞』(2021年2月6日号、第3482号、武久出版発行)で紹介されました。互いに武力闘争を繰り返す城塞化した村落 ——。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示した渾身の力作。
“…… ここから見えてくるのは、闘争し続ける基層社会であり、そこに生きた人々は、常に生命の危機に直面し、自己を保護するものを見定め、あるいは自ら闘争に参加しなければならなかった姿であろう。著者も終章にて、農民は共産主義者を理解し、それに従う義務はなかったし、遠方から異国にやってきた宣教師を受け入れる必要も義務もなかったと述べるように、自身を守るものは自分でしかなく、時々の状況において誰が味方であるかを判断していた。あまりに過酷な社会がそこにはあった。王朝の権力が基層社会までは及んでいなかった伝統中国において、すなわち、国家が国民を保護するという経験を有さない人々にとって、こうした自己解決の手段は、自明の行動様式であったとも言えよう。本書の魅力と面白さは、それをさまざまな新史料を用いて、リアルな実態を描き上げたことにあろう。……”(『図書新聞』2021年2月6日号、第3面)
蒲 豊彦 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0998-0 C3022
在庫有り
「愛媛新聞」 [2021年1月24日付] 他
小津映画の日常
戦争をまたぐ歴史のなかで
朱宇正著『小津映画の日常』が、「愛媛新聞」(2021年1月24日付)ほか計4地方紙で紹介されました。無の美学から日常の政治性へ ——。小津は保守的で日本的なのか。だとしても、それはどういう意味でか。映画産業との関係を含め、大不況や戦争、復興など、近代性と葛藤する同時代の日本の歴史的文脈の中、それとせめぎ合う作品を精緻に読み解き、新たな小津像を提示した国際的力作。[愛媛新聞・徳島新聞・大分合同新聞:2021年1月24日付、秋田さきがけ:2021年1月17日付]
朱 宇正 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-1002-3 C3074
在庫有り
『図書新聞』 [2021年1月30日号、第3481号] から(評者:正清健介氏)
小津映画の日常
戦争をまたぐ歴史のなかで
朱宇正著『小津映画の日常』が、『図書新聞』(2021年1月30日号、第3481号、武久出版発行)で紹介されました。無の美学から日常の政治性へ ——。小津は保守的で日本的なのか。だとしても、それはどういう意味でか。映画産業との関係を含め、大不況や戦争、復興など、近代性と葛藤する同時代の日本の歴史的文脈の中、それとせめぎ合う作品を精緻に読み解き、新たな小津像を提示した国際的力作。
朱 宇正 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-1002-3 C3074
在庫有り
「秋田さきがけ」 [2021年1月17日付] から
小津映画の日常
戦争をまたぐ歴史のなかで
朱宇正著『小津映画の日常』が、「秋田さきがけ」(2021年1月17日付)で紹介されました。無の美学から日常の政治性へ ——。小津は保守的で日本的なのか。だとしても、それはどういう意味でか。映画産業との関係を含め、大不況や戦争、復興など、近代性と葛藤する同時代の日本の歴史的文脈の中、それとせめぎ合う作品を精緻に読み解き、新たな小津像を提示した国際的力作。
朱 宇正 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-1002-3 C3074
在庫有り
『週刊佛教タイムス』 [2021年1月14日号、第2881号] から
中世日本の王権神話
阿部泰郎著『中世日本の王権神話』が、『週刊佛教タイムス』(2021年1月14日号、第2881号、仏教タイムス社発行)で紹介されました。龍や狐、海人や童子、神仏や魔王が躍動し、神器や国土の由来を説く物語たち ——。中世の権力は、自らの「正統」を示す数多の縁起説話によって支えられていた。天皇の即位儀礼から、武家の始祖伝承や幸若舞などの芸能、さらには「中世日本紀」の歴史叙述まで、豊かな王権神話の水脈を探る、永年の探究の到達点。
“…… 本書で次々と解明されていく中世王権神話のメカニズムは、決して過去の遺産ではない。著者が「あとがき」で記す「王とその王権が必然としてもたらす『恐るべきもの』」の正体を追究することを現代の宗教者が怠った時、「宗教を口実とした権力と支配への欲望から発する抗争」が生起するのではないか。”(『週刊佛教タイムス』2021年1月14日号、第8面)
阿部泰郎 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・452頁
ISBN978-4-8158-0982-9 C3095
在庫有り
『図書新聞』 [第3480号、2021年1月23日号] から(評者:植原亮氏)
自由の余地
ダニエル・C・デネット著/戸田山和久訳『自由の余地』が、『図書新聞』(第3480号、2021年1月23日号、武久出版発行)で紹介されました。われわれは完全に自由なのか? それとも自由とは幻想にすぎないのか? 進化論から認知科学、ギリシア哲学から実存主義まで縦横無尽に取り込み、コントロール、自己、責任などの概念を再吟味。望むに値する自由意志を、明晰な論理で描き出す、デネット哲学の原点にしてエッセンス。
“…… 本書はいうまでもなく哲学の書であるが、同時に強烈な哲学批判の書でもあるということだ。どうしたらそんな手に負えない哲学的な問題が生じてきてしまうのか —— その罠に陥る過程や要因を丹念に分析し、自由や自由意志にまつわる形而上学の「化け物」が育たないようにするべく本書は書かれているのである。最近の分析哲学では、哲学方法論の見直しを中心として哲学そのものを批判的に検討するメタ哲学的な議論が盛んに進められているが、1984年に原著が出版された本書の内容は、そうした現代の観点から見ても古びることのない有益な示唆に富んでいる。もちろん、科学的世界観と日常的人間像を折り合わせようとするデネットの積極的な主張も非常に興味深い。一例を挙げれば、次のような自己観の提案は実に啓発的だ。すなわち、道徳的な責任を備えた自由な個人を、有限ではあっても自分の力で徐々に自己を形作り改善を重ねていくがゆえにその製造物責任を引き受ける主体として捉え直そうというのである。有限な人間でも望むに値する自由を確保しようとする本書の議論は紛れもなく重要なものであるが、そうした大筋以外の場所にも貴重な宝物がいくつも眠っており、その意味で本書は、入り組んではいるものの繰り返し潜りたくなるダンジョンとして読者の探検を待っている。”(『図書新聞』2021年1月23日号、第3面)
ダニエル・C. デネット 著
戸田山和久 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・342頁
ISBN978-4-8158-0996-6 C3010
在庫有り
『図書新聞』 [第3479号、2021年1月16日号] から(評者:矢内義顕氏)
十字軍国家の研究
エルサレム王国の構造
櫻井康人著『十字軍国家の研究』が、『図書新聞』(第3479号、2021年1月16日号、武久出版発行)で紹介されました。〈キリスト教対イスラーム〉を超えて、多様な人々からなる社会の全体像へ ——。第1回十字軍によって生まれた「聖地防衛国家」は、内と外の異教徒とともになぜ存続しえたのか。祈る人、戦う人、働く人が都市と農村で形づくる王国の姿を、ヨーロッパとの関係も含め、精緻な史料分析から初めて解明した画期的労作。
櫻井康人 著
税込9,680円/本体8,800円
A5判・上製・744頁
ISBN978-4-8158-0991-1 C3022
在庫有り
『週刊ポスト』 [2021年1月15日・22日号] から(評者:関川夏央氏)
小津映画の日常
戦争をまたぐ歴史のなかで
朱宇正著『小津映画の日常』が、『週刊ポスト』(2021年1月15日・22日号、小学館発行)で紹介されました。無の美学から日常の政治性へ ——。小津は保守的で日本的なのか。だとしても、それはどういう意味でか。映画産業との関係を含め、大不況や戦争、復興など、近代性と葛藤する同時代の日本の歴史的文脈の中、それとせめぎ合う作品を精緻に読み解き、新たな小津像を提示した国際的力作。
朱 宇正 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-1002-3 C3074
在庫有り
『社会と倫理』 [第35号、2020年12月] から(評者:小山虎氏)
信頼の政治理論
西山真司著『信頼の政治理論』が、『社会と倫理』(第35号、2020年12月、南山大学社会倫理研究所編集兼発行)で紹介されました。市民社会と国家を媒介する概念と見なされる「信頼」—— 良好な政治のミクロな指標として注目を集める一方、従来の信頼論が前提とする認識論やアプローチは深刻な問題を抱えている。ソーシャル・キャピタル論へ至る学説を乗り越えた先に、革新的な政治理論を導き出す気鋭の力作。
西山真司 著
税込9,680円/本体8,800円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-0960-7 C3031
在庫有り
『経営史学』 [第55巻第3号、2020年12月] から(評者:荒川憲一氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『経営史学』(第55巻第3号、2020年12月、経営史学会)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『化学史研究』 [第47巻第4号、2020年12月] から(評者:大野誠氏)
戦争国家イギリス
反衰退・非福祉の現代史
デービッド・エジャトン著『戦争国家イギリス』(坂出健監訳/松浦俊輔ほか訳)が、『化学史研究』(第47巻第4号、2020年12月、化学史学会発行)で紹介されました。20世紀イギリスは、衰退に苦しむ福祉国家などではなかった。エキスパートが権力を握り産業界と手を結びつつ科学技術の開発に熱を上げた 「闘志あふれる」 国家を描き、現代史の神話をラディカルに破壊。ジェントルマン中心の歴史観が見過ごしてきた実像を明るみに出す野心作。
デービッド・エジャトン 著
坂出 健 監訳/松浦俊輔ほか訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・470頁
ISBN978-4-8158-0874-7 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2021年1月9日号、第3478号] から(評者:田中智彦氏)
世俗の時代(上下巻)
チャールズ・テイラー著/千葉眞監訳『世俗の時代』(上下巻)が、『図書新聞』(2021年1月9日号、第3478号、武久出版発行)で紹介されました。近現代の特徴の一つとされる「世俗化」。しかし、人々は様々なかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
チャールズ・テイラー 著
千葉 眞 監訳
税込各8,800円/本体各8,000円
A5判・上製・上548頁+下502頁
ISBN 上:978-4-8158-0988-1 下:978-4-8158-0989-8 C3010
在庫有り
「日本経済新聞」 [2020年12月26日付、読書欄特集「回顧2020 私の3冊」] から(評者:中沢孝夫氏)
平和構築を支援する
ミンダナオ紛争と和平への道
谷口美代子著『平和構築を支援する』が、「日本経済新聞」(2020年12月26日付)の読書欄特集「回顧2020 私の3冊」で紹介されました。リベラル平和構築論を超えて ——。15万人に及ぶ犠牲者を出し、日本も関わるアジアの代表的地域紛争の和平をいかに実現すべきか。徹底した現地調査により、分離独立紛争とその影に隠れた実態を解明、外部主導の支援の限界を示して、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を考えます。
“……「平和構築」の難しさを、丹念な現地での聞き取りと、1次資料の読み込みによって、15万人の犠牲者を生んだミンダナオ(フィリピン)の和平への過酷な道を冷静に語ることにより、新たな「支援」の方法論を提示する。アジア・太平洋賞特別賞受賞の一冊。……”(「日本経済新聞」2020年12月26日付、第28面)
谷口美代子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・390頁
ISBN978-4-8158-0985-0 C3031
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「読売新聞」 [2020年12月27日付、読書欄特集「読書委員が選ぶ『2020年の3冊』」] から(評者:苅部直氏)
世俗の時代(上下巻)
チャールズ・テイラー著/千葉眞監訳『世俗の時代』(上下巻)が、「読売新聞」(2020年12月27日付)の読書欄特集「読書委員が選ぶ『2020年の3冊』」で紹介されました。彷徨える私たちの時代 ——。「世俗化」は近現代の特徴の一つとされるが、しかし人々はさまざまなかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
“…… 最後の体系的哲学者と思われるテイラーの代表作。近代社会における世俗化の過程を幅ひろくたどり、宗教の意味を問い直す。……”(「読売新聞」2020年12月27日付、第10面)
チャールズ・テイラー 著
千葉 眞 監訳
税込各8,800円/本体各8,000円
A5判・上製・上548頁+下502頁
ISBN 上:978-4-8158-0988-1 下:978-4-8158-0989-8 C3010
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「読売新聞」 [2020年12月27日付、読書欄特集「読書委員が選ぶ『2020年の3冊』」] から(評者:山内志朗氏)
ルネサンスの数学思想
東慎一郎著『ルネサンスの数学思想』が、「読売新聞」(2020年12月27日付)の読書欄特集「読書委員が選ぶ『2020年の3冊』」で紹介されました。科学革命の前夜、数学や関連する諸学はどのように捉えられていたのか。それらは果たして確実なものなのか。数学の対象や認識・論証の特質、学問全体における位置づけ、教育的意義などをめぐって、当時の思想家たちのテキストを精緻に読み解き、見失われて久しい知の相互連関を問い直す、白眉の学問論。
“…… 本年度の思想史関連書の白眉と思う。圧倒的力量を示す本だ。この本は紛うことなく世界一流である。本が輝いている。”(「読売新聞」2020年12月27日付、第11面)
東 慎一郎 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・408頁
ISBN978-4-8158-1010-8 C3010
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「好書好日 じんぶん堂」 [2020年12月28日] から
今夜ヴァンパイアになる前に
分析的実存哲学入門
L・A・ポール著『今夜ヴァンパイアになる前に』(奥田太郎・薄井尚樹訳)が、「好書好日 じんぶん堂」(朝日新聞社、2020年12月28日)で紹介されました(“著者と語り、本に出会う体験を 「代官山人文カフェ」仕掛け人がつくる「つながる場」:代官山蔦屋書店” 宮台由美子氏)。進学、就職、転職、結婚、出産など、人生の岐路で大きな決断を迫られたとき、人は合理的に選択することができるのか。何かを選ぶことで、今とはまったく違う自分に変わってしまうかもしれないというのに ——。誰しもが悩む「変容の経験」、その実存的な問いを分析哲学の視点から考える注目作。
L.A. ポール 著
奥田太郎・薄井尚樹 訳
税込4,180円/本体3,800円
A5判・上製・236頁
ISBN978-4-8158-0873-0 C3010
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『教育学研究』 [第87巻第3号、2020年9月] から(評者:夏目達也氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『教育学研究』(第87巻第3号、2020年9月、日本教育学会発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
“…… 本書の特徴として、主に以下の点をあげることができる。第1に、国内外の高等教育研究に関する数多くの著作・論文を渉猟し、米英を中心に諸外国の大学・大学教育の政策やその実施状況につき把握したうえで、日本の大学政策を分析している。第2に、国内外の大学政策に対する批判的な立場を鮮明にしており、とくに大学の質改善には財政的裏付けが不可欠にもかかわらず、政府がそれを怠り各大学や教職員へと責任転嫁している現実を、具体的に示している。第3に、政府の政策動向の分析・批判にとどまらず、大学のアクターや彼らが創る組織文化や組織の特性(質保証の意義や方策を同僚間で協議を困難にしている)にも着目し言及しており、それが分析に厚みと説得力をもたせている。
本書は、大学の内外を問わず大学に関係する広範な人々に対して、多くの問題を提起している。高等教育を専門とする研究者に対しても、大学とは何か、大学は何をなすべきかの大学に関する理想や価値や規範をめぐる議論の欠如等、研究のあり方の根本にかかわる問題を指摘している。大学の各構成員には、これをいかに受けとめ、こたえるかが問われている。”(『教育学研究』第87巻第3号、p.88)
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
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『社会経済史学』 [第86巻第3号、2020年11月] から(評者:神田さやこ氏)
帝国後のインド
近世的発展のなかの植民地化
小川道大著『帝国後のインド』が、『社会経済史学』(第86巻第3号、2020年11月、社会経済史学会編集兼発行)で紹介されました。インドはなぜ英領となったのか。ムガル帝国の衰退と後継国家の群雄割拠のもと生じた在地の大変動をとらえ、中間層権力をめぐる状況の変遷から植民地化の起源を解明、イギリス統治政策の浸透過程を丹念にたどるとともに、近代インドを近世史の発展との連続性のなかに位置づけます。
“…… 本書は、インド史研究における主要テーマの一つである「なぜインドは植民地化されたのか」という問いに正面から取り組んだ優れた研究書である。ペルシャ語(ムガルの公用語)や現地語の資料に依拠した「中世」史研究と主に英語資料に基づいた「近代」史研究の分断によって、18世紀後半~19世紀前半というムガルや後継国家からEICへの移行期の変容を実証的に明らかにすることはむずかしかった。そうしたなかで、本書は、古い書体で書かれた現地語と英語双方で書かれた徴税関連文書を駆使して一つの郡を通時的に分析することで、この問題を見事に克服した。その結果、文官や武官といった中間層の重要性が浮かびあがり、EICの統治形態がイギリスから移植されたのではなく、マラーターの精緻化された軍事・行政・官僚機構の発展やその失敗のうえに連続的になりたっていたことを示すことに成功したのである。近世的発展の延長線上にEICによる植民地化があったという本書の主張は、実証性が高く、きわめて説得的である。……”(『社会経済史学』第86巻第3号、p.101)
小川道大 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-0939-3 C3022
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「紀伊國屋じんぶん大賞2021」
統計学を哲学する
大塚淳著『統計学を哲学する』が、「紀伊國屋じんぶん大賞2021 読者と選ぶ人文書ベスト30」(紀伊國屋書店主催)で第8位にランクインしました。関連フェアは、2021年2月1日(月)より紀伊國屋書店各店舗にて開催予定で、選考委員および読者からの推薦コメントを掲載した小冊子が店頭および電子書籍配信サービスKinoppyにて配布されます。
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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『怪と幽』 [第6号、2021年1月] から(評者:門賀美央子氏)
怪を志す
六朝志怪の誕生と展開
佐野誠子著『怪を志す』が、『怪と幽』(第6号、2021年1月、KADOKAWA発行)で紹介されました。歴史と宗教のあしもとで ——。「怪力乱神を語らぬ」儒教の国にあって、怪異はなぜ、いかにして記録されるようになったのか。『今昔物語集』等にも影響を与えた古代中国の「志怪」について、史書の伝統や仏教伝来との関係を軸に、社会的文脈から生成過程、文体まで、初めてトータルに捉え、中国人の精神のかたちを逆照射します。
“…… この一冊を読めば、志怪小説の知識を一通り得ることができる。個人的には志怪の仏教説話(僧伝や霊験譚)への影響をもっとも興味深く読んだ。言うまでもなく本邦の仏教説話は中国のそれに多大な影響を受けており、その仏教説話が怪談や妖怪譚の成立に深く関わっている以上、本書が与えてくれる知識はお化けを語る上で欠かせない。千数百年前の中国で生まれたお化け話の類型が、現代日本の怪談に影響していると思えばなんとも愉快ではないか。……”(『怪と幽』第6号、p.402)
佐野誠子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・382頁
ISBN978-4-8158-0983-6 C3022
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『IVY』 [第53巻、2020年12月] から(評者:滝川睦氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、『IVY』(第53巻、2020年12月、名古屋大学英文学会)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
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『生化学』 [第92巻第6号、2020年12月] から(評者:遠藤玉夫氏)
糖鎖生物学
生命現象と糖鎖情報
北島健・佐藤ちひろ・門松健治・加藤晃一編『糖鎖生物学』が、『生化学』(第92巻第6号、2020年12月、日本生化学会発行)で紹介されました。生体内で多様な情報を担う糖鎖は、DNA鎖、ポリペプチド鎖に続く「第3の生命鎖」として注目を集めている。受精・神経・免疫・癌・感染などの生命現象における糖鎖の役割を中心に、基礎から最先端のトピックまで解説した本書は、理学・農学・医薬系などの大学院生・研究者必読。
北島 健・佐藤ちひろ・門松健治・加藤晃一 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・306頁
ISBN978-4-8158-0981-2 C3045
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『図書新聞』 [2021年1月1日号、第3477号] から(評者:金馬国晴氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『図書新聞』(2021年1月1日号、第3477号、武久出版発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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「週刊佛教タイムス」 [2020年12月10日・17日合併号、特集「仏教・宗教関係書 今年の3冊」] から(評者:弓山達也氏、小林奈央子氏)
宗教文化は誰のものか
大本弾圧事件と戦後日本
永岡崇著『宗教文化は誰のものか』が、「週刊佛教タイムス」(2020年12月10日・17日合併号、仏教タイムス社発行)の特集「仏教・宗教関係書 今年の3冊」で紹介されました。信仰の “内か外か” を越えて ——。最大の宗教弾圧事件の記憶は戦後、いかに読み直され、何を生み出してきたのか。教団による平和運動を導くとともに、アカデミアにおける「民衆宗教」像の核ともなった「邪宗門」言説の現代史から、多様な主体が交差する新たな宗教文化の捉え方を提示。
弓山達也氏評:“…… 2つの弾圧事件や研究者や作家などが盛んに言及する大本を、今さら新たに研究するは難しかろうにという老婆心を、本書の教団内外の教団史解釈の相互依存的な「読みの運動」という視点は鮮やかに覆す。……”
小林奈央子氏評:“…… 大本事件や『大本教七十年史』編纂事業など教団にとって重要な事柄について、「読みの運動」という概念を用いながら、さまざまな立場の人びとが、それらをともに読みなおし、新たな宗教文化をつくりあげていくプロセスを把握しようとしている。宗教文化とは、あらゆる関係者が「多様な解釈に開かれた」信仰遺産をともに読み、語りなおすなかで、動態的に生成されていくということが説得的に述べられる。そして、分析的介入をする永岡氏自身もその運動の成員であるとの言葉に、氏の研究者としての真摯な姿勢を感じる。……”(「週刊佛教タイムス」2020年12月10日・17日合併号、第5面)
永岡 崇 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-1005-4 C3014
在庫有り
『図書新聞』 [2020年12月19日号、第3476号、特集「20年下半期読書アンケート」] から
『図書新聞』(2020年12月19日号、第3476号、武久出版)の特集「20年下半期読書アンケート」で、以下の図書が紹介されました。
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳
『歴史家と少女殺人事件 —— レティシアの物語』
塚原史氏評:“…… 十年前の少女誘拐虐殺事件を歴史家としても著名な作家が「歴史研究の対象」として取り上げ、「事件を生み出した社会の抑圧的な構造そのもの」(訳者)を解明しようとする力作。息詰まる展開に引き込まれる。……”(『図書新聞』2020年12月19日号、第3面)
永岡崇著
『宗教文化は誰のものか —— 大本弾圧事件と戦後日本』
川村邦光氏評:“…… 戦前に弾圧された大本教団を通じて敗戦後に生み出された宗教文化の多岐にわたる潮流を刺激的に論じている。……”(『図書新聞』2020年12月19日号、第5面)
『ヴィクトリア朝文化研究』 [第18号、2020年11月] から(評者:福原俊平氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、『ヴィクトリア朝文化研究』(第18号、2020年11月、日本ヴィクトリア朝文化研究学会)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
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『ヴィクトリア朝文化研究』 [第18号、2020年11月] から(評者:八谷舞氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフ/C・ホール著『家族の命運』(山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦訳)が、『ヴィクトリア朝文化研究』(第18号、2020年11月、日本ヴィクトリア朝文化研究学会)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
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「毎日新聞」 [2020年12月12日付、読書欄特集「2020 この3冊 上」] から
「毎日新聞」(2020年12月12日付)の読書欄特集「2020 この3冊 上」で、以下の図書が紹介されました。
竹本洋著
『スミスの倫理 ——『道徳感情論』を読む』
伊東光晴氏評:“…… 15年前に『「国富論」を読む』を書いた著者の健筆には頭が下がる。”(「毎日新聞」2020年12月12日付、第18面)
H・コリンズ/R・エヴァンズ著
奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳
『専門知を再考する』
内田麻理香氏評:“…… メディアには、新型コロナについて語る「専門家」があふれかえった。…… 改めて、専門とは何か、専門家とは何か、を熟考するための指針となる書だ。……”(「毎日新聞」2020年12月12日付、第18面)
「読売新聞」 [2020年12月6日付] から(評者:三中信宏氏)
統計学を哲学する
大塚淳著『統計学を哲学する』が、「読売新聞」(2020年12月6日付)で紹介されました。統計学は実験や臨床試験、社会調査だけでなく、ビッグデータ分析やAI開発でも不可欠である。ではなぜ統計は科学的な根拠になるのか? 帰納推論や因果推論の背後に存在する枠組みを浮き彫りにし、科学的認識論としてデータサイエンスを捉え直す。科学と哲学を架橋する待望の書。
“…… 近年は “データサイエンス” だの “ビッグデータ” だのとうわついたカタカナ語が飛び交うことしきりだ。しかし、統計学はもともと既知のデータから未知の仮説への橋渡しをする非演繹的な帰納推論のための学問である。その背後には単なる数学的論理にはおさまりきらない哲学(存在論・意味論・認識論)上の諸問題が横たわっている。
本書に取り上げられたトピックスをきっかけにして生産的な議論が大きく広がることを評者は確信している。個別科学と連携しながら発展してきた科学哲学がいま統計学と結びつくことで新たな時代の幕開きを感じさせる鮮烈な新刊だ。”(「読売新聞」2020年12月6日付、第12面から)
大塚 淳 著
税込3,520円/本体3,200円
A5判・並製・248頁
ISBN978-4-8158-1003-0 C3010
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『経済セミナー』 [2020年12月・2021年1月号、第717号] から
世界史のなかの東アジアの奇跡
杉原薫著『世界史のなかの東アジアの奇跡』が、『経済セミナー』(2020年12月・2021年1月号、第717号、日本評論社発行)で紹介されました。脱〈西洋中心〉のグローバル・ヒストリー。—— 豊かさをもたらす工業化の世界的普及は、日本をはじめとする「東アジアの奇跡」なしにはありえなかった。それは「ヨーロッパの奇跡」とは異なる、分配の奇跡だった。地球環境や途上国の行方も見据え、複数の発展径路の交錯と融合によるダイナミックな世界史の姿を提示する、渾身のライフワーク。
杉原 薫 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・776頁
ISBN978-4-8158-1000-9 C3022
在庫有り
『土木技術』 [2020年12月号、第75巻第12号] から
専門知を再考する
H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、『土木技術』(2020年12月号、第75巻第12号、土木技術社発行)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づける。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳/和田 慈・清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
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『日経サイエンス』 [2021年1月号] から(評者:谷村省吾氏)
自由の余地
ダニエル・C・デネット著/戸田山和久訳『自由の余地』が、『日経サイエンス』(2021年1月号、日経サイエンス社発行)で紹介されました。われわれは完全に自由なのか? それとも自由とは幻想にすぎないのか? 進化論から認知科学、ギリシア哲学から実存主義まで縦横無尽に取り込み、コントロール、自己、責任などの概念を再吟味。望むに値する自由意志を、明晰な論理で描き出す、デネット哲学の原点にしてエッセンス。
“……『自由の余地』においてデネットは、決定論的物理的世界であっても自由意志が成立する余地がある、ということをなるべく科学的に議論している。デネットは、自由意志は「何ものにも支配されない意志、誰にも予測できない選択」などではなく、もっとリーゾナブルなもの(周囲の状況に適応した判断)でしょ、と説得し、科学は玉突きの玉の動きしか予測できないような貧弱なものではなく、もっと複雑で精妙なものじゃないですかと説く。
物理学者たる私は、うん、こういう哲学的論考なら苦もなく読めるし、納得もする。気になるのは、デネットは生物進化論に楽観的に頼りすぎている点である。あと、デネットが思っている以上に自由意志論を支持する材料を物理学は提供できますよと私は言いたい。しかし、ともかくデネットの哲学は科学と共存可能かつ科学者が応援できる哲学だと言える。
この本の原著は Elbow Room(ひじの余地)という奇妙なタイトルで1984年、いまから36年前に刊行された。いまさら日本語に訳して出版する意義があるのかなと私も思ったが、AI研究も進みつつあるいまだからこそ読まれる意義があると思う。戸田山和久氏の親しみやすい訳文とマニアックとも言える細かい訳注のおかげで英語版よりも価値が上がっていると思う。”(『日経サイエンス』2021年1月号、p.108)
ダニエル・C. デネット 著
戸田山和久 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・342頁
ISBN978-4-8158-0996-6 C3010
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『映像学』 [第104号、2020年7月] から(評者:渡邉大輔氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『映像学』(第104号、2020年7月、日本映像学会)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
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「沖縄タイムス」 [2020年10月31日付] から(評者:小野まさ子氏)
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、「沖縄タイムス」(2020年10月31日付)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描きます。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
“…… 方策を誤れば、欧米諸国の武力による侵略もあり得る、幕・薩の意向を諾々と受け入れては王国の存続が危ない。さまざまな事例に対して、琉球王国の政策者たちが、苦慮しつつも取ったスリリングな対応が、著者による綿密な史料の読み解きによって、明らかになっている。”(「沖縄タイムス」2020年10月31日付、第15面)
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
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『図書新聞』 [2020年11月14日号、第3471号] から(評者:直野章子氏)
ヒロシマ
グローバルな記憶文化の形成
ラン・ツヴァイゲンバーグ著『ヒロシマ』(若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子訳)が、『図書新聞』(2020年11月14日号、第3471号、武久出版発行)で紹介されました。原爆とホロコーストの交点へ ——。かつて「75年間は草木も生えない」と言われた都市は復興を遂げ、平和記念公園は「穏やかな」聖地と化した。どのようにして? 追悼・記念や観光をめぐる記憶の政治、証言とトラウマ、絡み合う犠牲者言説などに注目し、世界のなかのヒロシマの位置を問い直す挑戦作。
ラン・ツヴァイゲンバーグ 著
若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子 訳
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-0994-2 C3021
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『カナダ研究年報』 [第40号、2020年] から(評者:丹羽卓氏)
チャールズ・テイラーの思想
ルース・アビィ著/梅川佳子訳『チャールズ・テイラーの思想』が、『カナダ研究年報』(第40号、2020年、日本カナダ学会)で紹介されました。多文化社会から宗教、AIまで、「哲学的人間学」の全景 ——。多様性と統合への渇望とのあいだで思考し、「承認の政治」やコミュニタリアニズムなど現代の思想を牽引してきた哲学者テイラー。自己論や道徳論から、言語論、認識論、政治哲学、宗教論まで、その巨大な思想の全体を体系的に理解するために最善の入門書。
ルース・アビィ 著
梅川佳子 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・332頁
ISBN978-4-8158-0947-8 C3010
在庫有り
『防衛学研究』 [第63号、2020年9月] から(評者:五十嵐隆幸氏)
台湾外交の形成
日華断交と中華民国からの転換
清水麗著『台湾外交の形成』が、『防衛学研究』(第63号、2020年9月、日本防衛学会)で紹介されました。「一つの中国」という原則と、国際社会での地位存続との板挟みのなかで、台湾は何を選択してきたのか。安全保障をめぐる米国との交渉、国連の中国代表権問題、日中国交回復とその裏での対日断交などを、台湾側の動向を軸にたどり、今日の台湾外交の真の根源を浮き彫りにする画期的著作。
“…… 本書は、民主化が緒に就いたばかりの1990年代台湾で、外交史料が公開されるのか否かも見通しがつかないなか、断片的な資料とインタビューなどに基づき執筆した博士論文を軸とし、その後公開が進んだ資料と照らし合わせて加筆・修正を重ねた研究書である。筆者は、外交の当事者として生き抜いた方々の話をうかがう機会に恵まれたことを幸いとして謝辞を述べているが、評者は、タイミングを逃すと二度と聞くことができない貴重な経験を求め歩んだ筆者のフットワークと、外交史料を丹念に読み込んだうえで彼らの声を生きた文字として遺し、「台湾の外交史」として完成させた著者の努力に敬意を表したい。……”(『防衛学研究』第63号、pp.152-153)
清水 麗 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-0935-5 C3031
在庫有り
『中国研究月報』 [2020年10月号、第74巻第10号] から(評者:高柳峻秀氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『中国研究月報』(2020年10月号、第74巻第10号、中国研究所発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
“…… 本書は従来専論が不足していた人物にも光を当てつつ、綿密な史料の読み込みを通して多数の興味深い事実を解明している。本書の意義は多岐に亘り、注目すべき様々な論点が示されている ……
まず、協力者の主体的な側面をその言論と活動から解明した点である。各章冒頭の挿話では、「漢奸」と一括りにできない協力者の姿や戦後との繋がりが印象的に示されている。…… 次に、協力者をめぐる戦前戦中と戦後の繋がりを解明した点である。…… 他にも、本書は西村と蘇が関与した農民自治運動と大道政府樹立運動の経緯から、日本軍が工作当初は民間有志に頼り、事態安定後に介入して彼らを排除するという軍の占領地工作の最末端の様相を解明しており(197~198頁)、日本の占領地工作を考える上で重要な論点を提示している。……”(『中国研究月報』2020年10月号、pp.30-31)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『中国研究月報』 [2020年10月号、第74巻第10号] から(評者:平川幸子氏)
台湾外交の形成
日華断交と中華民国からの転換
清水麗著『台湾外交の形成』が、『中国研究月報』(2020年10月号、第74巻第10号、中国研究所発行)で紹介されました。「一つの中国」という原則と、国際社会での地位存続との板挟みのなかで、台湾は何を選択してきたのか。安全保障をめぐる米国との交渉、国連の中国代表権問題、日中国交回復とその裏での対日断交などを、台湾側の動向を軸にたどり、今日の台湾外交の真の根源を浮き彫りにする画期的著作。
“…… 印象に残った著者の洞察がある。それは、言説としては70年代までに確立しているのに、現状としては一向に完結しない「一つの中国」についての新たな理解である。後段部分に何かを言い添えたくなる、つまり「一つの中国、——。」(250頁)という一拍の呼吸の「間」が存在する。著者は、その無言の余白こそが、台湾外交が開拓している生存空間であり、「あいだ=現在」を創り出す作業こそが「現状維持」の本質だと指摘するのである。そのような「中間領域」を見出す能力と外交の「わざ」は、歴史的に最もしがらみの強い日本との関係の中に最も表れやすいのではないかと評者は感じた。……”(『中国研究月報』2020年10月号、pp.34-35)
清水 麗 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-0935-5 C3031
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『林業経済』 [2020年10月号、第864号] から(評者:椙本歩美氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『林業経済』(2020年10月号、第864号、林業経済研究所編集発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
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「NHK出版新書を探せ!」 [第8回、2020年10月28日] から
戦争違法化運動の時代
「危機の20年」のアメリカ国際関係思想
『戦争違法化運動の時代』の著者である三牧聖子先生のインタビューが、「NHK出版新書を探せ!」(NHK出版・本がひらく)に掲載されました(第8回 アメリカ例外主義に別れを告げて —— 三牧聖子さん(国際政治学者)の場合〔前編〕)。「現実主義」対「理想主義」をこえて ——。国際関係を権力闘争に還元する見方も、「悪」の侵略国に対する「善」なる制裁という見方も説得力を失った。合衆国における戦争違法化思想をトータルに跡づけ、忘却された戦間期のラディカルな展開を再考することで、国際秩序の新たな可能性を探ります。
三牧聖子 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0782-5 C3031
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『アジア研究』 [第66巻第4号、2020年10月] から(評者:森下明子氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、『アジア研究』(第66巻第4号、2020年10月、アジア政経学会発行)で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出す。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
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「朝日新聞」 [2020年10月24日付] から(評者:戸邉秀明氏)
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、「朝日新聞」(2020年10月24日付)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描きます。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
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「読売新聞」 [2020年10月25日付] から(評者:加藤聖文氏)
闘う村落
近代中国華南の民衆と国家
蒲豊彦著『闘う村落』が、「読売新聞」(2020年10月25日付)で紹介されました。互いに武力闘争を繰り返す城塞化した村落 ——。それは王朝交替や辛亥革命などを経ても変わらぬ、明末以来の基層社会の姿であり、共産主義へと向かう農民運動の凄惨な暴力に極まる。宣教師文書を駆使しつつ、初めてその生成・展開・終焉を跡づけ、新たな中国史像を提示した渾身の力作。
“なんて刺激的なタイトルだろう。本書は、何百年にもわたって闘いに明け暮れた中国広東省東部の農民世界に迫った意欲的な研究だ。…… 華南地方は日本の戦国時代さながらのなかで激動の近代を迎える。しかし、彼らはどこまでもしたたかだ。欧米の進出に合わせて、村落はキリスト教会を取り込み、北京の中央集権化に対抗する。植民地化など表面的なものに過ぎない。そして、清末に社会が不安定になると、新しい時代の思潮に触れた青年層の村落を超えた連帯が生まれる。
しかし、歴史は一直線には進まない。封印されたかに見えた械闘は、1920年代の国民党と共産党の対立激化を機に一気に噴き出る。本書の圧巻はここだ。1927年、中国史上初の共産党による地方革命政府「海陸豊ソヴィエト」は、まさに械闘の本場で誕生したが、覆い隠されていた械闘を革命の名の下によみがえらせ、大殺戮をもたらした。その対象は、地主や資産家だけではなく、身体障害者やハンセン病患者にも向けられた。万国旗のようにつるした生首の下で開かれた「人頭会議」は、青年たちの理想からあまりにもかけ離れている。……”(「読売新聞」2020年10月25日付、第11面)
蒲 豊彦 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0998-0 C3022
在庫有り
『アジア・アフリカ地域研究』 [2020年 第20-1号] から(評者:生方史数氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、『アジア・アフリカ地域研究』(2020年 第20-1号、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科編集・発行)で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出します。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
“…… 本書の特徴は、何といってもその枠組みである。地域研究者がこれまでみてきたような、国家主導の開発や環境対策が地域に与える負の側面が、ブラックボックスにされがちな国家の側から分析されている。なかでも開発国家と環境国家の連鎖への注目は特筆に値する。著者が述べるとおり、どちらも「現場に何らかの不足を見出し、外からその不足を埋め合わせるための資源を持ち込むという開発国家のエートス」(p.284)を保持するからである。かくして開発主義から生じた問題は、「持続可能な開発」のもとでさらなる開発主義へとつながる。筆者はここ数年ベトナムでPFES(森林環境サービスへの支払)の研究を行なってきたが、この点は全く同感である。また、自然環境への働きかけという一見非政治的な国家のふるまいが、その非政治的装いゆえに非常に政治的な結果を生み出しているという「環境対策の隠れた政治性」を、多彩な理論と現場の情報を駆使して明らかにしている点も、本書の大きな魅力である。たとえば、水力社会や社会的財の概念を援用して、環境の統治が人の支配に転用される点を論じるくだりや、本書第2部で示される反転のさまざまなバリエーションの解釈は鮮やかで説得力がある。さらには、第3部でそれまでに検討した内容を実践的提言に的確に結び付けている点も、著者の真摯な姿勢を感じさせる。……”(『アジア・アフリカ地域研究』2020年第20-1号、pp.147-148)
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
在庫有り
『アジア・アフリカ地域研究』 [2020年 第20-1号] から(評者:近藤有希子氏)
ジェノサイド再考
歴史のなかのルワンダ
鶴田綾著『ジェノサイド再考』が、『アジア・アフリカ地域研究』(2020年 第20-1号、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科編集・発行)で紹介されました。1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
“…… 本書は、多数派民族集団の「フトゥ」による少数派の「トゥチ」に対する大量殺戮として、これまで、ともすると安易な単純化のもとに描かれてきたルワンダのジェノサイドを取り上げて、その「標準的な説明」(p.1)の刷新に向けて、果敢に取り組んだ労作である。著者をして「停滞」(p.5)した印象を抱かせるルワンダの歴史研究に対して、著者はいくつかの分析視角を携えて挑戦している。ひとつに、著名な歴史家の提言にもあるように、歴史のダイナミズムや当時のモメンタムを捉え損なわないようにすること。ひとつに、トゥチやフトゥ、ベルギー人といった集団間関係の考究とともに、集団内の関係や対立にも目を向けること。ひとつに、国内・国際・ローカルという各層の政治レベルの交錯に敏感であること。…… 著者はあくまで歴史を「実証」(p.28)することにこだわり、それを手放すことなく、紙資料をもとに堅実に記述を積み重ねていく。そのことによって、「トゥチ」「フトゥ」「ベルギー」「国連」など、一枚岩ではない集団の解体を試みる。主として扱う資料は異なるものの、基本的にそのような姿勢は人類学を学ぶ評者と軌を一にする。なにより、1950年代および1960年代のルワンダで、政党間の対立に限らない、協力的な関係の生成する可能性をうかがわせた描写は、現在のルワンダの権威主義的な体制を前にしては見いだせないものであり、刹那であるが鮮やかな躍動感を感じさせるものであった。……”(『アジア・アフリカ地域研究』2020年第20-1号、p.152,154)
鶴田 綾 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0931-7 C3031
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『史学雑誌』 [2020年9月号、第129編第9号] から(評者:嘉藤慎作氏)
インド経済史
古代から現代まで
ティルタンカル・ロイ著/水島司訳『インド経済史』が、『史学雑誌』(2020年9月号、第129編第9号、史学会編集・発行)で紹介されました。古代以来、有数の巨大経済でありながら看過されてきた、独自の発展のダイナミズムとは何か。地理・気候から商品・技術・知識まで、インドの固有性と世界経済との接続の効果を縦横に論じ、アジアとヨーロッパを結ぶ経済の全体像を浮かび上がらせた、地域史からのグローバル・ヒストリー。現代の興隆への道筋をも示します。
“…… 従来の議論の中心であった土地制度ではなく、交易を主題として通史を試みた本書の意義は大きく、これに邦語でアクセスできることは南アジアの経済史を学ぶ者にとって喜ばしいことである。また、本書は、グローバル・ヒストリーを実践するあり方の一つとして、特定地域の歴史を叙述する手法を提示するものでもあり、グローバル・ヒストリーに関心のある方にも手に取っていただきたい一冊である。”(『史学雑誌』2020年9月号、p.89)
ティルタンカル・ロイ 著
水島 司 訳
税込4,620円/本体4,200円
A5判・上製・340頁
ISBN978-4-8158-0964-5 C3022
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「朝日新聞」 [2020年10月17日付] から
イスラーム・ガラス
真道洋子著/桝屋友子監修『イスラーム・ガラス』が、「朝日新聞」(2020年10月17日付)読書欄の「おすすめ」で紹介されました。歴史を彩る「世界の華」——。古来のガラス文化を統合して成立し、近代芸術にも大きな影響を与えたイスラーム・ガラス。その器形や成形・装飾技法から、美術工芸としての展開、さらには日本をはじめ世界各地への伝播まで、多数のカラー図版とともに豊かな物質文化の全体像を映し出します。
“…… ガラス器の美しい色や形を伝える写真、歴史秘話も随所にちりばめられ、専門外の読者が手にとってもガラス文化の奥深さに包まれる一冊だ。…… 専門的な記述もあるが、好きなところだけを拾って読むのもいい。例えば化粧や薔薇水用のガラス瓶。アイラインを描く棒がついている。アイラインは「邪視を防ぐ」呪術的な目的もあったとか。次々と興味が広がり旅に出たくなった。”(「朝日新聞」2020年10月17日付、第26面、久田貴志子氏)
真道洋子 著/桝屋友子 監修
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・496頁
ISBN978-4-8158-1001-6 C3072
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『中国研究月報』 [2020年9月号、第74巻第9号] から(評者:殷晴氏)
関羽と霊異伝説
清朝期のユーラシア世界と帝国版図
太田出著『関羽と霊異伝説』が、『中国研究月報』(2020年9月号、第74巻第9号、一般社団法人中国研究所発行)で紹介されました。三国志の英雄はなぜ中国を代表する神となったのか。民間信仰の広がりと近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出します。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。
“…… 関聖帝君が暗闇を切り裂く明かりの中に顕れて闇の世界を照らし出す戦いの場面(78~80頁)や、道光帝が自ら鳥銃を構えて白蓮教の紙人紙馬をばたばたと打ち落とす情景(166頁)など、色鮮やかな霊異の世界が生き生きと描かれ、読者に驚きを与える。軍事行動と言えば、普通は血なまぐさい刀や矛が思い浮かべられるが、その向こう側にこのような多彩な世界が広がっていることが、著者の史料を駆使する手腕と筆さばきによって、我々の目の前に示されたのである。むろん、本書の魅力は、読み応えのある細部のみならず、それらを宗教と王朝の統治体制との関係という大きな枠組みのもとに統合した点にも存在する。…… 本書は、上奏文、上諭、地方志、碑文といった多様な史料の緻密な読解に基づき、清朝皇帝が関羽の加護を宣伝することで統治の正当化を図ろうとしていたこと、関羽の加護のもとにあるという認識は人々の一体感を生み出す精神的紐帯であったこと、関帝廟は版図へ組み込んだことの証としての役割を果たしていたこと、といった論点を明快に提示している。関羽信仰に注目することで、清朝支配の特徴を深く考察できるようになるという著者の着眼は傑出したものと言えよう。さらに、他地域や近現代との比較を常に念頭に置いているという点も、本書の大きな特徴である。本書はあくまで漢文史料に依拠したものであるが、先行研究と自身の分析を統合することで、チベット・モンゴルの宗教信仰をも視野にいれており、また近世東アジアにおける王権と宗教の関係についても巨視的な見通しを示した。このような研究スケールの大きさは、前著と共通する著者の一貫した作風と言える。今後は、キリスト教世界、イスラーム世界との比較研究も期待できよう。……”(『中国研究月報』2020年9月号、pp.28-29)
太田 出 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-0961-4 C3022
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『中国研究月報』 [2020年9月号、第74巻第9号] から(評者:小林亮介氏)
中国の誕生
東アジアの近代外交と国家形成
岡本隆司著『中国の誕生』が、『中国研究月報』(2020年9月号、第74巻第9号、一般社団法人中国研究所発行)で紹介されました。東アジア在来秩序を揺るがした明治日本の登場から、琉球、ヴェトナム、朝鮮、チベット、モンゴルへと続く属国・藩部の危機と再編を通して、現代中国の原型が浮かび上がる過程を詳述、万国公法などの翻訳概念の変容を手がかりに、誰も描きえなかった「中国」誕生の全体像に迫った渾身作。
“…… 500頁を超える大著を読み終えて特に印象深いのは、近代西洋概念の東アジア「漢語圏」への流入が、「非漢語圏」をも含めた清朝と周辺諸国・諸民族との関係を大きく規定していった経緯である。本書が「内陸アジア史」として括る満洲史・モンゴル史・チベット史などの分野では、儒教的価値観による潤色を受けた漢語文献よりも、満洲語・モンゴル語・チベット語などの言語で書かれた文献が、「非漢語圏」の人々の視点・立場を分析するための史料として重視される。そうした手法から清朝の秩序や民族間関係を照射してきた研究の価値と意義は、著者が本書の序論で強調している点でもある。しかし、19世紀後半以降の清朝では、李鴻章に代表される漢人官僚が著しく存在感を高めたこと、満洲人の「漢語化」(p.422)が進んだことは事実であるにもかかわらず、「「藩部」の研究は、「互市」論と同様、時間・空間を限定していて、ほぼ清代・18世紀まで、草原オアシス世界の外には」(p.10)あまり出ようとしなかった。「清朝・「中国」の歴史は、「明清史」・満洲・藩部・「近代史」、いずれの研究成果が欠けても、全体像は描けない」(p.13)という問題意識に立脚した本研究の成果は、それらの「棲み分け」のバリアに挑み、各分野の架橋を試みた点で意義深いものである。19世紀以降の漢人たちの意識・言動、及びそれを規定する漢語の政治概念が、西洋由来の概念や和製漢語との邂逅を通じていかに変質し、清朝の秩序・対外関係に対する考え方をどう変貌させ、政治外交の実務レベルにおいてどのような影響を与えたのかを論じる本書は、チベット・モンゴル・新疆/東トルキスタンの命運を考える上でも極めて重要になるだろう。……本書の緻密な論証は、漢語の翻訳概念と現実の乖離、そしてそれがチベットを含めた東アジアの秩序に新たな事態を生み出していった経緯を、徹底して示してくれるものである。20世紀初頭までに形成されていたこの「名・実のギャップ」の「途方も」ない大きさ(p.426)が引き起こす問題は、少なからず今日にも受け継がれていよう。……”(『中国研究月報』2020年9月号、pp.41-42)
岡本隆司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・562頁
ISBN978-4-8158-0860-0 C3022
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『経営史学』 [第55巻第2号、2020年9月] から(評者:高橋雄造氏)
日本の電子部品産業
国際競争優位を生み出したもの
中島裕喜著『日本の電子部品産業』が、『経営史学』(第55巻第2号、2020年9月、経営史学会編集・発行)で紹介されました。大手家電メーカーの落日やモジュール化の波に直面してなお、圧倒的な国際競争力を獲得できたのはなぜか。戦後復興期の組立ラジオの隆盛から今日まで、荒波の中で培われた多様な顧客への志向と、部品の汎用性をめぐる戦略の決定的役割を捉え、グローバルサプライヤーへの軌跡を示します。
“…… セットメーカーは不況に際して負担を部品メーカーに転嫁しようとするので、部品メーカーはこのリスクをヘッジすべく顧客の多様化を図り、電子部品の汎用性を高める。著者は、“日本の電子部品産業は長期的な産業史の展開を通して、市場と顧客の多様化のプロセスを歩んでおり、それが当該産業の競争優位を支えているのである”(268頁)と述べている。また、戦後における日本の電子部品産業の特徴として、これが軍需に頼ることなくして発展したと指摘している。産業史研究では、基幹産業を対象にして、巨大企業の動向や官の政策、また軍事技術の波及効果を追い、史料もこの方面に限られることが多い。本書では、電子部品産業という “脇役” に着目し、中小企業関係の史料を丹念に見ている。本書は、産業をリードするのは巨大企業、官の政策、軍事技術であるという史観への反証でもある。平本厚による研究(“日本における電子部品産業の形成 —— 受動電子部品”、『研究年報 経済学』(東北大学)、61巻4号、2000年ほか)と併せて、本書は日本の電子部品産業史のほぼ十全な分析となると思われる。
大阪ほか関西の事例を詳細に述べているのも本書の特色であり、東京・関東中心の話になりがちな電子工業史研究において貴重である。……”(『経営史学』第55巻第2号、pp.62-63)
中島裕喜 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0942-3 C3033
在庫有り
『経営史学』 [第55巻第2号、2020年9月] から(評者:安部悦生氏)
戦争国家イギリス
反衰退・非福祉の現代史
デービッド・エジャトン著『戦争国家イギリス』(坂出健監訳/松浦俊輔ほか訳)が、『経営史学』(第55巻第2号、2020年9月、経営史学会編集・発行)で紹介されました。20世紀イギリスは、衰退に苦しむ福祉国家などではなかった。エキスパートが権力を握り産業界と手を結びつつ科学技術の開発に熱を上げた 「闘志あふれる」 国家を描き、現代史の神話をラディカルに破壊。ジェントルマン中心の歴史観が見過ごしてきた実像を明るみに出す野心作。
デービッド・エジャトン 著
坂出 健 監訳/松浦俊輔ほか訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・470頁
ISBN978-4-8158-0874-7 C3022
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『図書新聞』 [2020年10月10日号、第3466号] から(評者:種村剛氏)
専門知を再考する
H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、『図書新聞』(2020年10月10日号、第3466号、武久出版発行)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づけます。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳/和田 慈・清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
在庫有り
『史学雑誌』 [2020年8月号、第129編第8号] から(評者:岸本美緒氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『史学雑誌』(2020年8月号、第129編第8号、公益財団法人史学会編集兼発行)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
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『現代中国』 [第94号] から(評者:鄒燦氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『現代中国』(第94号、日本現代中国学会編集)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
“…… 本書の最も大きな功績は、これまでの占領地研究に看過された中国人対日協力者の政治思想や構想に光を当てて、同時代的視角から協力者の立場と言論の合理的な側面とその限界を検討したことにある。このようにして、占領地という政治空間に生まれた協力者の多種多様な人物像が生き生きと浮かび上がってきた。……
次に、本書の工夫をこらした構成と慎重な史料の処理について、感想を述べたい。登場人物に関連する戦後のエピソードを、章の冒頭に紹介する形で各章の議論を始めるという著者の手法は、非常に印象的である。このようなエピソードを交えた叙述は、本論で多用されているものの、厳密な研究書としての本書の客観性に些かも損なっていない。その客観性を担保しているのは、著者の史料処理の慎重さである。本書は、各占領地政権の刊行物、同時代の出版物、関係者の回想・伝記などを大量に利用している。このような記録を史料として駆使する場合、記録が生まれた時代背景、執筆者や語り手の置かれた政治的環境と個人的な立場に対して、十分な注意を払う必要がある。また、著者自身も指摘しているように、対日協力者の言論は必ずしも本音であるわけではない(40、67頁)。これが史料処理を一層困難にする。しかし著者は、膨大な関連文献を網羅した上で、当事者の語ったものと多方面の史料とを照合しながら丹念に分析作業を行っている。このようにして、対日協力者の本音でない発言の背後に隠された歴史の真実を掘り起こしているのである。評者は、歴史研究の客観性と歴史書としての叙述性の両方に十分な配慮を加えた著者に、敬意を表したい。……”(『現代中国』第94号、pp.111-112)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『歴史学研究』 [2020年10月号、第1001号] から(評者:樋口秀実氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『歴史学研究』(2020年10月号、第1001号、歴史学研究会編集)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『アジア経済』 [第61巻第3号、2020年9月] から(評者:金沢謙太郎氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、『アジア経済』(第61巻第3号、2020年9月、ジェトロ・アジア経済研究所編集兼発行)で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出します。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
“…… 著者の佐藤仁は、これまで開発研究、資源論、環境政策など幅広い分野において、刺激的な論考を発表し続けてきた。「現場に身を置いて、人々の側から問題を捉え議論を組み立てていくこと」を「社会科学の仕事」(ⅷページ)と言明する著者は、豊富なフィールドワークの実践に基づいて環境政策を読み解く。経済開発と環境保護をひとつの連続としてとらえる著者の視線の先にあるのは、そこに発動する権力の動きである。経済開発も環境保護も国家を主体とした公共事業であり、両者は一連のつながりをもつ。本書はこうした視点から、環境政策のパラドクスを解き明かしていく。……
本書はその副題にあるように、持続可能性という概念に潜む罠に警鐘を鳴らすものである。現在、開発業界ではSDGsが一種の「流行語」になっているが、本書の問題意識を重ねれば、実態が伴っていないのにSDGsに対応しているかのようにみせかける「SDGsウォッシュ」やSDGsの反転の可能性にも留意する必要があろう。また、結論では、環境国家の権力構造を踏まえ「やはり、開発と社会制度のあり方そのものを見直す必要が出てくる」(293ページ)と言及されているが、今後具体的にそれをどう見直していくのかが問われることになろう。本書は、持続可能性とは何をいつまで持続することなのか、という問いについて幅広い学問的視野とアジアの人々の暮らし向きから深く探究した書物であり、今後開発と環境の問題を追究するうえで欠かせない道標になるだろう。”(『アジア経済』第61巻第3号、pp.97, 100)
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
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『組織科学』 [第54巻第1号、2020年9月] から(評者:新宅純二郎氏)
日本の電子部品産業
国際競争優位を生み出したもの
中島裕喜著『日本の電子部品産業』が、『組織科学』(第54巻第1号、2020年9月、組織学会編集)で紹介されました。大手家電メーカーの落日やモジュール化の波に直面してなお、圧倒的な国際競争力を獲得できたのはなぜか。戦後復興期の組立ラジオの隆盛から今日まで、荒波の中で培われた多様な顧客への志向と、部品の汎用性をめぐる戦略の決定的役割を捉え、グローバルサプライヤーへの軌跡を示します。
“…… 著者は、日本の電子部品メーカーが汎用部品化を巧みに活用してきたことが成功要因のひとつであると考えており、「電子部品の『市販部品』としての汎用性は、部品メーカーによる独自技術の開発と市場開拓の努力の積み重ねによって、戦略的に獲得された」(308頁)と主張する。そのプロセスを一貫した歴史的なストーリーとして描いていることが本書を際立って魅力的にしている。…… ストーリー展開を楽しみながら読むことができ、かつ、個別の章は著者が丹念に集めた資料にもとづく分析が展開されている。改めて、歴史研究の良書とはこういうものなのだなと、学生時代にチャンドラーを読んだときのようなワクワク感を思い出した。……”(『組織科学』第54巻第1号、pp.74-75)
中島裕喜 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0942-3 C3033
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「琉球新報」 [2020年9月20日付] から(評者:栗野慎一郎氏)
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、「琉球新報」(2020年9月20日付)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描きます。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
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「BOOKウォッチ」 [2020年9月26日] から
黒船来航と琉球王国
上原兼善著『黒船来航と琉球王国』が、「BOOKウォッチ」(2020年9月26日)で紹介されました。ペリーはまず沖縄にやって来た。—— 19世紀、次々と現れる列強の、布教をふくむ開国要求にさらされ、「鎖国」の防波堤とされた琉球の人々。彼らはいかに対応したのか。幕府や薩摩藩の姿勢は? 東アジアの変動のなか、外圧と内圧の狭間におかれた〈境域〉の経験から、琉球と欧米との交渉過程を初めてトータルに描きます。浦賀中心では見えない、新たな開国史。
上原兼善 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・370頁
ISBN978-4-8158-0995-9 C3021
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『文藝春秋』 [2020年10月号] から(評者:佐久間文子氏)
歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、『文藝春秋』(2020年10月号、文藝春秋発行)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。フランスでテレビドラマ化。
“…… 失踪現場から始まり、最後にまた事件の夜に戻っていく。調査の過程を明らかにしながら徐々に真実に迫る構成は、上質のミステリを読むようにゾクゾクさせられる。トルーマン・カポーティ『冷血』やノーマン・メイラー『死刑執行人の歌』を想わせるが、著者自身も言うように、それらと違うのは、本書が加害者ではなく被害者の人生の物語として書かれている点だ。事件の被害者として初めて何千万もの人間にその名を知られることになったレティシアは、それまでどのように生きてきたのか。『私にはいなかった祖父母の歴史』で、ユダヤ人収容所で命を落とした祖父母の人生をたどった著者は、同じ熱意で、自分の言葉をあまり持たない内気な少女の短い一生を描く。……”(『文藝春秋』2020年10月号、p.373)
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年9月18日号、第3357号] から(評者:福間聡氏)
世俗の時代(上下巻)
チャールズ・テイラー著/千葉眞監訳『世俗の時代』(上下巻)が、『週刊読書人』(2020年9月18日号、第3357号、読書人発行)で紹介されました。近現代の特徴の一つとされる「世俗化」。しかし、人々は様々なかたちで信仰や霊性とともに生きている。では、神信仰はいかにして力を失い、個人の選択肢の一つとなったのか。壮大な歴史的展望のもとに宗教・思想・哲学の曲折に満ちた展開を描き出す記念碑的大著、ついに邦訳。
チャールズ・テイラー 著
千葉 眞 監訳
税込各8,800円/本体各8,000円
A5判・上製・上548頁+下502頁
ISBN 上:978-4-8158-0988-1 下:978-4-8158-0989-8 C3010
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「朝日新聞」 [2020年9月19日付] から(評者:本田由紀氏)
ヒロシマ
グローバルな記憶文化の形成
ラン・ツヴァイゲンバーグ著『ヒロシマ』(若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子訳)が、「朝日新聞」(2020年9月19日付)で紹介されました。原爆とホロコーストの交点へ ——。かつて「75年間は草木も生えない」と言われた都市は復興を遂げ、平和記念公園は「穏やかな」聖地と化した。どのようにして? 追悼・記念や観光をめぐる記憶の政治、証言とトラウマ、絡み合う犠牲者言説などに注目し、世界のなかのヒロシマの位置を問い直す挑戦作。
ラン・ツヴァイゲンバーグ 著
若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子 訳
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-0994-2 C3021
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「日本経済新聞」 [2020年9月12日付] から(評者:根井雅弘氏)
スミスの倫理
『道徳感情論』を読む
竹本洋著『スミスの倫理』が、「日本経済新聞」(2020年9月12日付)で紹介されました。スミス倫理学の真の射程とは。近代における倫理のメカニズムと意義を明瞭に説き、政治・経済・社会のよき運用を支える心理学的な人間学を打ち立てた、もうひとつの主著から描き出す。『国富論』とは違った現代への示唆と、経済学にとどまらない社会科学的知への豊かな洞察を浮かび上がらせます。
竹本 洋 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・262頁
ISBN978-4-8158-0990-4 C3012
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「日刊ゲンダイ」 [2020年8月29日公開] から
歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、「日刊ゲンダイ」(2020年8月29日公開、日刊現代)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。フランスでテレビドラマ化。
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
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「西日本新聞」 [2020年9月6日付] から
歴史としての日教組【上下巻】
『歴史としての日教組』(上下巻)の編者・広田照幸先生のインタビュー記事が、「西日本新聞」(2020年9月6日付)に掲載されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
在庫有り
『WINDS(ウィンズ・風)』 [第96号、2020年8月] から
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、『WINDS(ウィンズ・風)』(第96号、2020年8月、福岡県人権・同和教育研究協議会編集発行)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
“…… いろいろなおもしろい話が白日の下に晒されることになった。上巻では戦後の労働運動と日教組の関係がだいたい明らかになったし、「教え子を再び戦場に送るな」とか「教師の倫理綱領」なんかの生まれた事情が今回きちんと解明されている。…… このあたりを読むだけでも本書の価値はある。下巻ではあの400日抗争の実情が解明され、1989年の日教組分裂の事情、文部省との「歴史的和解」など日教組に関心のある人、日教組に偏見を持っている人、日教組に過剰な期待を持っている人にとって興味津々の史実がボロボロ出てくる。……”(『WINDS』第96号、p.68)
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
在庫有り
『日本歴史』 [2020年9月号、第868号] から(評者:広中一成氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『日本歴史』(2020年9月号、第868号、日本歴史学会編集)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
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『法制史研究』 [第69号、2019年] から(評者:山内進氏)
法と力
戦間期国際秩序思想の系譜
西平等著『法と力』が、『法制史研究』(第69号、2019年、法制史学会)で紹介されました。「国際法 vs 現実政治」を超えて——。第一次大戦後の国際法学の中から「国際政治学」的思考は誕生した。〈国際紛争は裁判可能なのか〉という連盟期の最重要課題を軸に、法と力の関係をダイナミックに捉える諸学説の系譜をたどることで、モーゲンソーやE・H・カーらの思想を新たに位置づけ直す力作。
“…… 本書は重厚で革新的な著作である。革新的な理由の第一は、国際法思想史という方法的立場をとっていることである。…… 国際法思想史という概念のもとに、国際法学と国際政治学の2つを同時に視野に収めた考察を本格的に行うことができたのは、この方法的立場のためであろう。しかも、その基軸となる対象は、戦間期の重要課題であった、そして現在もなお重要課題である「国際紛争の裁判可能性」の問題であった。本書は、その歴史的理解に画期をなす成果をあげている。これは、国際法思想史という概念によって、国際法学者はもとより、モーゲンソーやカーという国際政治学者を考察すること、そのことによって実に厚みのある分析をすることが可能となったからである。
革新性の第二は、20世紀国際法思想史の通説的理解に欠落していたものを明示し、新しい歴史像の可能性を示したことである。著者が強調しているように、これまでの国際法史研究は、不戦条約から国際連合憲章による集団安全保障体制、戦争の違法化という大きな流れのなかに国際連盟の活動をおき、その観点から国際連盟を位置付け、違法化や集団的措置の不十分さや欠如を強調して、その失敗を語ってきた。本書は、その見方を否定はしないが、一面的であることを明らかにした。国際連盟のもとでは、それと同時に、軍縮や国際裁判の拡充、非裁判的な紛争解決手段の整備など、平和維持体制の可能性が模索されており、それが大きな力をもっていたという。その土壌のなかから国際政治思想が現れてきたというのも一つの大きな発見であった。…… 自覚的に国際法思想史が語られ、大きな成果が示されたことの意義は大きい。国際法思想史が今後さらに実り多い研究成果をもたらし、独自の魅力的な研究領域として発展するための礎石がおかれたことを高く評価したい。……”(『法制史研究』第69号、pp.263-264)
西 平等 著
税込7,040円/本体6,400円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0919-5 C3032
在庫有り
『怪と幽』 [第5号、2020年8月] から
怪を志す
六朝志怪の誕生と展開
『怪を志す』の著者・佐野誠子先生が、『怪と幽』(第5号、2020年8月、KADOKAWA発行)の「次代の探究者たち」に、ご自身の研究紹介を寄稿されました。【本書の内容】歴史と宗教のあしもとで ——。「怪力乱神を語らぬ」儒教の国にあって、怪異はなぜ、いかにして記録されるようになったのか。『今昔物語集』等にも影響を与えた古代中国の「志怪」について、史書の伝統や仏教伝来との関係を軸に、社会的文脈から生成過程、文体まで、初めてトータルに捉え、中国人の精神のかたちを逆照射する。
佐野誠子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・382頁
ISBN978-4-8158-0983-6 C3022
在庫有り
『年報2019(名古屋大学大学院人文学研究科)』 [2020年] から
怪を志す
六朝志怪の誕生と展開
『怪を志す』の著者・佐野誠子先生の自著紹介が、『年報2019』(2020年、名古屋大学大学院人文学研究科教育研究推進室)に掲載されました。【本書の内容】歴史と宗教のあしもとで ——。「怪力乱神を語らぬ」儒教の国にあって、怪異はなぜ、いかにして記録されるようになったのか。『今昔物語集』等にも影響を与えた古代中国の「志怪」について、史書の伝統や仏教伝来との関係を軸に、社会的文脈から生成過程、文体まで、初めてトータルに捉え、中国人の精神のかたちを逆照射する。
佐野誠子 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・382頁
ISBN978-4-8158-0983-6 C3022
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「読売新聞」 [2020年8月30日付] から(評者:三中信宏氏)
専門知を再考する
H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、「読売新聞」(2020年8月30日付)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づけます。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
“…… 本書は科学における専門知の特徴とその実在性を明快に整理した上で、この専門知がどのように形作られて広まるかを理論と実験の両面から解明しようとする。本書が提唱する専門知を分類する「周期表」は興味深い。とりわけ、ある分野を実質的に担う「貢献型専門知」を会得した “その道の専門家” との密接なやりとりを通して得られる「対話型専門知」という新たなカテゴリーが論議の核となっている。この対話型専門知をよりどころとして新たな科学論への道筋が示される。……”(「読売新聞」2020年8月30日付、第12面)
H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳
和田 慈/清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
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「日本経済新聞」 [2020年8月29日付] から
ヒロシマ
グローバルな記憶文化の形成
ラン・ツヴァイゲンバーグ著『ヒロシマ』(若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子訳)が、「日本経済新聞」(2020年8月29日付)で紹介されました。原爆とホロコーストの交点へ ——。かつて「75年間は草木も生えない」と言われた都市は復興を遂げ、平和記念公園は「穏やかな」聖地と化した。どのようにして? 追悼・記念や観光をめぐる記憶の政治、証言とトラウマ、絡み合う犠牲者言説などに注目し、世界のなかのヒロシマの位置を問い直す挑戦作。
“被爆地、広島の街の戦後の復興へ向けた複雑な経過を跡づけるとともに、ホロコーストの現場、アウシュビッツとの連帯の模索とその結末を記したドキュメント風の論考となっている。広島は終戦直後から平和へのメッセージと観光振興をリンクさせた政策を図ってきた。同時に悲惨な戦争被害の地として、宗教者らを中心にアウシュビッツの関係者らへの働きかけも進み、やがては、広島近郊の自治体に記念館の誘致も進められた。しかし、歴史を振り返る姿勢の違いや、イスラエルをめぐる国際政治の力学などから頓挫した経緯があるのだという。戦後75年を経て、記憶をどう次の世代へ正確に伝えるのか。重い課題を突きつける一冊である。”(「日本経済新聞」2020年8月29日付、第25面)
ラン・ツヴァイゲンバーグ 著
若尾祐司・西井麻里奈・髙橋優子・竹本真希子 訳
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-0994-2 C3021
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『図書新聞』 [2020年9月5日号、第3462号] から(評者:楠和樹氏)
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、『図書新聞』(2020年9月5日号、第3462号、武久出版発行)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
“…… 前著『イギリス帝国からみる環境史 —— インド支配と森林保護』(岩波書店、2006年)で19世紀後半から第一次大戦時までのインドにおける林学と森林政策の展開を取り上げた著者は、本書でおもな舞台をアフリカへと移すとともに生態学を中心とする科学知へと対象を広げ、戦間期から第二次世界大戦後までのその生成過程を描き出すことで、日本語圏ではほとんど類書のない領域を切り拓いている。…… 本書の議論はイギリス帝国史、開発学、環境史、科学史など幅広い分野にまたがっていることから、読者の多様な学問的関心を喚起するに違いない。と同時に、本書の射程はそれだけにとどまらないだろう。「大加速(Great Acceleration)」を経て、「エコロジーの世紀」の次の時代を生きる、人間の生物学的存在としての側面とその地球環境に与える影響の大きさに日々向き合っている読者にも、示唆に富んだ知見をもたらしてくれる書である。”(『図書新聞』2020年9月5日号、第3面)
水野祥子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『自由と正義』 [2020年8月号、第71巻第6号] から(評者:市川充氏)
法曹の倫理[第3版]
森際康友編『法曹の倫理[第3版]』が、『自由と正義』(2020年8月号、第71巻第6号、日本弁護士連合会編)で紹介されました。考え方の「なぜ」を体系的に学べる法曹倫理の決定版テキスト、好評第3版。グローバル化とともに拡大・多様化する法務の実態を反映して記述を一新、諸外国の法制にも目を配りつつ、良き法曹のあり方を原理に遡って考える。法科大学院「法曹倫理コアカリキュラム」完全準拠。
森際康友 編
税込4,180円/本体3,800円
A5判・並製・466頁
ISBN978-4-8158-0958-4 C3032
在庫有り
『日本植民地研究』 [第32号、2020年8月] から(評者:福岡正章氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『日本植民地研究』(第32号、2020年8月、日本植民地研究会発行)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年8月21日号、第3353号] から(評者:菅谷憲興氏)
歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、『週刊読書人』(2020年8月21日号、第3353号、読書人発行)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。フランスでテレビドラマ化。
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
在庫有り
『西洋史学』 [第269号、2020年6月] から(評者:伊東剛史氏)
農の科学史
イギリス「所領知」の革新と制度化
並松信久著『農の科学史』が、『西洋史学』(第269号、2020年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。ローカルな知は科学となるのか ——。農業は古来、多くの地域で主要産業であった。工業化が進む中、諸科学と葛藤しつつ「農学」を成立させていく多元的な知と制度の展開を、啓蒙時代から20世紀まで、イギリス社会の文脈で描く。科学史と農業史を架橋し、間文化的な示唆を与える労作。
並松信久 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・480頁
ISBN978-4-8158-0853-2 C3061
在庫有り
『西洋史学』 [第269号、2020年6月] から(評者:伊川健二氏)
イエズス会士と普遍の帝国
在華宣教師による文明の翻訳
新居洋子著『イエズス会士と普遍の帝国』が、『西洋史学』(第269号、2020年6月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。カトリック拡大のため東方に渡った宣教師らが、巨大な清朝に見出したものは何か。中国古来の世界像や学術は、キリスト教の教義や勃興する科学と結びつくのか。共通言語から統治体制や歴史編纂まで、新たな帝国像を描き出した18世紀のアミオを軸に、多言語史料から「文明の翻訳」の実相を捉える力作。
新居洋子 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・414頁
ISBN978-4-8158-0889-1 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2020年8月8日号、第3459号] から(評者:吉村竜氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『図書新聞』(2020年8月8日号、第3459号、武久出版発行)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
在庫有り
『ラテンアメリカ時報』 [2020年夏号、第1431号] から(評者:桜井敏浩氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『ラテンアメリカ時報』(2020年夏号、第1431号、ラテンアメリカ協会発行)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
在庫有り
『ヒストリア』 [2020年6月号] から(評者:村上友章氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『ヒストリア』(2020年6月号、大阪歴史学会編)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“…… 本書の最大の意義は、可能な限り渉猟した資料を基に、旧海軍技術者の陰影に富んだ戦後の全体像を示した点にあろう。著者が指摘するように、従来、「ちょうど水が高いところから低いところに流れるように、復員した優秀な元軍事関連技術者が民間部門に就職することによって民間部門の技術が大きく向上した」(240頁)という単純な成功物語が人口に膾炙されてきた。だが、こうした通説に違和感を持つ著者は、本書において、海軍技術者らの再就職先が、その職能や職階(造船、造機、施設、そして機関科将校)によって、かなり多様であり、その軌跡も一筋縄にはいかなかったことを見事に明らかにする。本書の白眉は、各章に掲載された、種々の文献から著者が整理した旧海軍技術者たちの様々な履歴リストである。そのバラエティに富む再就職先の一つ一つを眺めれば興味は尽きない。
一方、著者は代表的な海軍技術者一人一人の個性や履歴も丁寧に紹介しており、本書からは、それぞれの職能集団の中ですら、彼らの進路に相当の幅があったことが理解できる。その中には、靖国神社宮司としてA級戦犯合祀を断行した松平永芳(海軍機関科学校45期生)のような意外な人物も含まれる。このように取り上げる人物が多岐にわたるだけに、その個々のエピソードに様々な分野の研究者を惹きつける有益な情報が含まれていることも、本書の魅力であろう。……”(『ヒストリア』2020年6月号、p.91)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
「日本経済新聞」 [2020年8月8日付] から(評者:小倉孝誠氏)
歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、「日本経済新聞」(2020年8月8日付)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。フランスでテレビドラマ化。
“…… 産業の空洞化、社会的不平等、教育制度の欠陥、若者たちの社会への不適応など、日本社会にも共通した問題が、レティシアの物語を通じて炙り出される。…… 事件の謎が解決されていくさまは、あたかも上質の推理小説の趣があり、独特の語り口をもったノンフィクション文学である。……”(「日本経済新聞」2020年8月8日付、第26面)
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
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『東アジア近代史』 [第24号、2020年6月] から(評者:島田大輔氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『東アジア近代史』(第24号、2020年6月、東アジア近代史学会発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
“…… 1930年代に日本の意向を受けて中国各地に作られた対日協力政権について、その構成員・関係者という「人間」(特に、経歴や思想)に主に焦点を当て、彼等が抱えていた「政治構想」「将来構想」について鋭く分析したのが、本書の最大の意義である。対日協力者については、その傀儡性、対日従属性が前提となった研究が多かったなか、後知恵、先入観を排して分析し、対日協力者の「主体性」を明らかにした。合わせて、日本、重慶政権、共産党といった「占領地外部」の勢力との相互関係(対抗、交叉、水面下の繋がり)や「言論競争」を随所で指摘しており、占領地政権を「閉じた世界」ではなく、「開かれた世界」として描いている点は興味深い(特に、第6、7、10章)。従来看過されてきた対日協力者における戦前・戦後の連続性の分析(第11、12章)も、対日協力者の問題が戦後も継続していたことを示すものであり、その意義は大きい。
そして、本書に登場する人物・事象の多くは、従来研究上では、見落とされてきた(あるいは大きく取り上げられてこなかった)ものである。著者は、こうした人物・事象を丁寧に掘り起こし、既存の研究の枠組みに対する異議申し立てを行った。本書が、対日協力者研究の裾野を広げたのは間違いない。こうした研究が可能になったのは、見落とされてきた人物・事象を見つけ出す著者の感性と、徹底的な史料収集の賜物であろう。対日協力者たちの思想変遷を明らかにするために、諸種のメディアを活用し、著作、署名記事、声明などを網羅的に収集した努力は特筆に値する。……”(『東アジア近代史』第24号、p.197)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『植民地文化研究』 [第19号、2020年7月] から(評者:三木直大氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『植民地文化研究』(第19号、2020年7月、植民地文化学会発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『日本植民地研究』 [第32号、2020年7月] から(評者:齊藤直氏)
満鉄経営史
株式会社としての覚醒
平山勉著『満鉄経営史』が、『日本植民地研究』(第32号、2020年7月、日本植民地研究会編集兼発行)で紹介されました。満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換えます。
“…… 国策会社を対象とした先行研究のなかには、国策会社のイメージを先験的に定めたうえで、そのイメージに適合する部分のみを対象として局地的な分析を行い、国策会社の本質を提示したかのように振舞う研究も存在する。しかし、残念ながら、そうした姿勢で行われた研究では、部分的な史実の解明という点での貢献は期待できても、国策会社の本質に迫ることは困難である。そうした先行研究とは異なり、本書は、従来は等閑視されてきた内部組織や資本市場に関する分析を丹念に行うことを通じて、満鉄の国策会社としての性格が変容を余儀なくされる経緯を解明している。「国策会社」を自明視、絶対視しないからこその分析視角であり、それが本書の存在感を際立たせている。本書は、その分析内容においては「国策会社」を相対化したが、そうであるがゆえに、国策会社研究を生産的に進展させる大きな力を持っていると考えられるのである。”(『日本植民地研究』第32号、pp.98-99)
平山 勉 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0945-4 C3021
在庫有り
『アジア研究』 [第66巻第3号、2020年7月] から(評者:湊照宏氏)
満鉄経営史
株式会社としての覚醒
平山勉著『満鉄経営史』が、『アジア研究』(第66巻第3号、2020年7月、アジア政経学会発行)で紹介されました。満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換えます。
平山 勉 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0945-4 C3021
在庫有り
「朝日新聞」 [2020年7月29日付、文芸時評] から(評者:小野正嗣氏)
歴史家と少女殺人事件
レティシアの物語
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史家と少女殺人事件』が、「朝日新聞」(2020年7月29日付)の「文芸時評」(小野正嗣氏)で紹介されました。18歳の女性が誘拐・殺害された「三面記事」事件。だが、大規模な捜査と政治の介入によって、それはスキャンダラスな国家的事件となった。作者=歴史家は自ら調査を進め、被害者の生の物語を語り始める。そこから明らかになる「真実」とは ——。メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞作。フランスでテレビドラマ化。
“…… 驚くべき書物だ。…… 作家が自由に想像力を駆使する歴史小説とも事実報道に徹するジャーナリズムとも違う。フランスの福祉、教育、司法・警察の諸制度など社会背景を克明に分析し、数多くの関係者へのインタビューを重ね、ときに小説的想像力に依拠しつつ、ジャブロンカが行おうとしているのは、犯人ばかりか政治や里父など男性的・父権的な暴力によっても不当に蹂躙された少女の命の尊厳を、その輝きを取り戻すことなのだ。……”(「朝日新聞」2020年7月29日付、第21面)
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0993-5 C3022
在庫有り
『東方』 [第473号、2020年8月] から(評者:山口早苗氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『東方』(第473号、2020年8月、東方書店発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
“…… 第一に挙げるべきは、本書の狙い通り、対日協力者の具体的な活動を丁寧に腑分けし分析することで、戦争・占領に向き合う彼らの主体性が十分に明らかになった点である。…… 第二に、本書の文体である。本書は一章ずつ異なる人物や組織を取り上げているが、著者の巧みな筆致により、人物の一人一人の人生が詳細に、生き生きと再現される。こうした文体は一般読者にも親しみやすく、また読み物としても非常に良質な印象を受ける。…… 第三に、戦後までタイムスパンを広げることで、これまで見えてこなかった対日協力者の別の姿が浮かび上がってくる点である。……”(『東方』第473号、pp.27-28)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『日本台湾学会報』 [第22号、2020年6月] から(評者:福田円氏)
台湾外交の形成
日華断交と中華民国からの転換
清水麗著『台湾外交の形成』が、『日本台湾学会報』(第22号、2020年6月、日本台湾学会編)で紹介されました。「一つの中国」という原則と、国際社会での地位存続との板挟みのなかで、台湾は何を選択してきたのか。安全保障をめぐる米国との交渉、国連の中国代表権問題、日中国交回復とその裏での対日断交などを、台湾側の動向を軸にたどり、今日の台湾外交の真の根源を浮き彫りにする画期的著作。
“…… 本書は、従来の台湾政治外交研究では位置付けが定まっていなかった蔣経国時代の外交に明確な像を与えた点において、大きな意義をもつ。…… 第二に、本書は1960年代から1970年代の台湾外交、とりわけ対日政策の展開を、関係者へのインタビュー、民主化以降継続して公開されてきた台湾の公文書、および自らが発掘した個人の史料などに依拠して、詳細に描いているという点において価値が高い。…… 第三に、…… 中華民国/台湾の政治外交史は、蔣介石、蔣経国、李登輝などの権力者に焦点を当てた叙述がなされがちであるが、著者は外交官や国民党エリート間の立場の相違や論争に焦点を当てている。…… 最後に、本書は単線的な日中台関係史の理解や、日本人の単純化された中国・台湾理解に警鐘を鳴らすものとして、今後の日中台関係史研究はもちろんのこと、日中、日台関係にかかわる政策研究や論争においても参照される価値があるだろう。……”(『日本台湾学会報』第22号、pp.140-141)
清水 麗 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・344頁
ISBN978-4-8158-0935-5 C3031
在庫有り
『歴史評論』 [2020年7月号、第843号] から(評者:畑野勇氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『歴史評論』(2020年7月号、第843号、歴史科学協議会編)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“…… 本書を手に取り頁を繰った者で、いくつもの詳細かつ巨大な表に結実した、著者が手がけた調査領域の広大さと成果の巨大さに驚嘆しない者はいないであろう。そして、この分野の研究者で、その成果を享受できることに喜びを感じない者も、おそらく絶無と思われる。一万名を超えるすべてではないにせよ、その主要な人数のほぼすべての動向を系統的にまとめあげた著者の学識の広さと深さに、まずは敬意を表したい。ただ、本書の価値はまた別の個所にもある。評者が、本文の記述とその典拠をたどって読み進むにつれて逐一感じたことであるが、本書は、各章における代表的な人物の選定がきわめて的確であり、その説明に使用される典拠も、(記述の信頼度や歴史的価値において)これ以上望めない水準にある。……”(『歴史評論』2020年7月号、p.94)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『経営史学』 [第55巻第1号、2020年] から(評者:湯澤規子氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『経営史学』(第55巻第1号、2020年、経営史学会編)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
“…… 本書に新知見が見出せるのは、著者が7つの飲食物を「食料産業」という視点から分析することで、経営史、経済史の強みを遺憾なく発揮しているからである。様々な統計分析の厚みのうえに史料読解を重ね、それを大局的な視点、すなわち帝国、東アジア、市場、日韓関係史と絶えず交差させながら進められる議論には手堅い説得力がある。……”(『経営史学』第55巻第1号、p.53)
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
東京財団政策研究所ウェブサイト [2020年5月20日] から(評者:菅原健志氏)
大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障
大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、東京財団政策研究所ウェブサイト(2020年5月20日)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。
大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
在庫有り
『国際安全保障』 [第47巻第2号、2019年9月] から(評者:小川浩之氏)
大陸関与と離脱の狭間で
イギリス外交と第一次世界大戦後の西欧安全保障
大久保明著『大陸関与と離脱の狭間で』が、『国際安全保障』(第47巻第2号、2019年9月、国際安全保障学会編)で紹介されました。大国が後退するとき ——。平和を維持する仕組みはいかに構想され、なぜ脆弱化したのか? 国際連盟を含む複数の安全保障観やヨーロッパ派と帝国派のせめぎ合い等のなか、西欧への関与の揺らぐイギリスの外交姿勢と諸国との交渉過程を、膨大な史料から精緻に描き出し、現在への示唆に富む気鋭による力作。
大久保 明 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・532頁
ISBN978-4-8158-0918-8 C3022
在庫有り
『史潮』 [新87号、2020年6月] から(評者:髙綱博文氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『史潮』(新87号、2020年6月、歴史学会編集/同成社発売)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
“…… 本書が扱う対日協力者は汪精衛のような著名人もいるが、そのほとんどが日中戦争の帰趨が定まらない状況にあって日中双方の狭間に生きたグレーゾーン的な人物であり、これまで本格的な実証研究がない人々である。著者はこれまで無視されてきた対日協力者たちを発掘し、彼らの経歴と政治思想について戦前・戦後を通して詳細に調べ上げ、対日政権を担った彼らの政治的な言説を同政権の刊行物等から復元する作業を行った。著者は日本占領地における対日協力者や占領地政権に新たな光を当て、「日中戦争、さらに近代日中関係を捉えなおす」ことを意図している。…… 日本の占領下の中国における協力者の「主体に寄り添う」具体的な分析を通じて、現代史における協力者(collaborator)のような白黒で評価出来ない存在を普遍的に論じる視点と素材を提供し、私たちが世界的に共有可能な新たな歴史認識を構築することに大きく貢献するものと期待される。”(『史潮』新87号、p.63, 71)
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
「読売新聞」 [2020年6月28日付] から(評者:佐藤信氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、「読売新聞」(2020年6月28日付)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
“東アジアにおける14~19世紀の中国明・清時代の通商と外交を、朝貢・海禁・互市のキーワードから読み解き、歴史像をとらえ直す研究。…… 今日、自国中心理念の硬直性と、交流・経済の柔軟性との関係を考える際に、参考となるように思う。”(「読売新聞」2020年6月28日付、第10面)
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2020年7月4日号、第3454号] から(評者:中島楽章氏)
朝貢・海禁・互市
近世東アジアの貿易と秩序
岩井茂樹著『朝貢・海禁・互市』が、『図書新聞』(2020年7月4日号、第3454号、武久出版発行)で紹介されました。朝貢体制論を超えて ——。「天下を統べる皇帝と朝貢する蕃夷諸国」という美しい理念の外形を辛うじて保っていた明代の通商外交体制も、海と陸の辺縁からの衝撃で転換を迫られ、やがて清代には互市が広がっていく。西洋とは異なる「もう一つの自由貿易」への構造変動を、日本の役割も含めて跡づけ、新たな歴史像を実証する労作。
“……「朝貢から互市へ」という大きな流れを基軸に、明清時代の貿易秩序の理念と実態、その時代的変遷を、多数の一次史料にもとづき従来の研究よりもはるかに精緻かつ体系的に解明した、きわめて重要な業績である …… 今後は本書が、明清時代だけではなく中国王朝の外交や通商を論じるうえでの基本文献となるだろう。”(『図書新聞』2020年7月4日号、第4面)
岩井茂樹 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0984-3 C3022
在庫有り
「朝日新聞」 [2020年6月25日付、「あすを探る 科学技術」(内田麻理香氏)] から
専門知を再考する
H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、「朝日新聞」(2020年6月25日付)の「あすを探る 科学技術」(内田麻理香氏)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づけます。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳
和田 慈/清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
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『ドイツ研究』 [第54号、2020年] から(評者:伊藤実歩子氏)
政治教育の模索
オーストリアの経験から
近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『ドイツ研究』(第54号、2020年、日本ドイツ学会発行)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づける。
近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
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『史林』 [第102巻第6号、2019年11月] から(評者:村上衛氏)
帝国後のインド
近世的発展のなかの植民地化
小川道大著『帝国後のインド』が、『史林』(第102巻第6号、2019年11月、史学研究会発行)で紹介されました。インドはなぜ英領となったのか。ムガル帝国の衰退と後継国家の群雄割拠のもと生じた在地の大変動をとらえ、中間層権力をめぐる状況の変遷から植民地化の起源を解明、イギリス統治政策の浸透過程を丹念にたどるとともに、近代インドを近世史の発展との連続性のなかに位置づけます。
“…… 本書は手書きの現地語一次史料を駆使することによって、植民地側の記録からはみえてこなかった中間層の存在とその弱体化によるライヤットワーリー制の導入の過程を明らかにし、近世から近代への移行期を連続的に把握することを可能にした。これは、インドの在来社会をより動的に理解することにつながるから、本書は、イギリス植民地政府と静的な村落共同体の関係から描かれてきたインド植民地化の研究に大きな転換をせまるものである。また、共同体内における職商集団の農業兼業から、農民と職人の分業像にも大きな疑問を投げかけた。……”(『史林』第102巻第6号、p.90)
小川道大 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-0939-3 C3022
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『日本史研究』 [第692号、2020年4月] から(評者:林尚之氏)
吉野作造と上杉愼吉
日独戦争から大正デモクラシーへ
今野元著『吉野作造と上杉愼吉』が、『日本史研究』(第692号、2020年4月、日本史研究会編集)で紹介されました。「民本主義」対「国家主義」の単純な枠組みに収まりきらない、近代社会科学最大のライバルの共通基盤と真の分水嶺はどこにあったのか。ドイツ経験などの見過ごされた契機も手掛かりに、近代日本政治の現実の焦点を捉え、デモクラシーと帝国をめぐる議論に新たな地平を拓きます。
“…… 本書は、ドイツ留学経験やドイツ学との格闘が、吉野と上杉の政治や社会に関する分析、さらには国際社会に関する認識、思想形成にいかに相関していたのかを実証的に明らかにしながら、立憲学派と君権学派、民本主義と反民本主義といった「二元論的な対立構図」に収まらない両者の思想的側面を炙り出している。とりわけ、吉野の国家主義的側面、上杉の直接民主主義的側面に分析の焦点をあてることで、両者の多様な可能性を考察している点に本書の特長がある。……”(『日本史研究』第692号、pp.65-66)
今野 元 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・484頁
ISBN978-4-8158-0926-3 C3031
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『Voice』 [2020年7月号] から(評者:奈良岡聰智氏)
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、『Voice』(2020年7月号、PHP研究所発行)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
“…… 従来日本の国家総動員体制は、ナチスのそれと類似しているとみられることが多かったが、本書はむしろ英米との共通性を強調している。また、日中戦争勃発以降の国家総動員は、軍、官僚、政党などが認識のずれを抱えたまま、ちぐはぐな状態で進行したのであり、軍部独裁といえるようなものではなかったとも指摘している。目下世界では、新型コロナウイルスとの戦いが続いている。日本を含む先進諸国は、いかに自由で民主的な社会を維持しながら、このウイルスと戦い抜くかに苦心している。「総力戦」下にあるいま、本書から得られる示唆は大きい。”(『Voice』2020年7月号、p.241)
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
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UTokyo BiblioPlaza から
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
『反転する環境国家』の著者・佐藤仁先生による自著紹介が、UTokyo BiblioPlaza(東京大学)に掲載されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出す。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
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「朝日新聞」 [2020年6月10日付、「折々のことば」] から
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』の一文が、「朝日新聞」(2020年6月10日付)の「折々のことば」(鷲田清一氏)で紹介されました。【内容】国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出す。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
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『月刊ラティーナ』 [2020年5月号] から(評者:岸和田仁氏)
移民と徳
日系ブラジル知識人の歴史民族誌
佐々木剛二著『移民と徳』が、『月刊ラティーナ』(2020年5月号、ラティーナ発行)で紹介されました。ブラジルへの貢献と移民の成功をともに導いた徳=内面的資質と、それを体現する人々としての日系人は、いかにして生みだされたのか。移民知識人がはたした決定的役割から、日系コロニア構築の100年を超える歴史をとらえ、デカセギや世代交代とともに失われゆくその姿をも映し出します。
“…… 若き人類学徒が「ブラジルの日本移民たちが行うローカルな知識実践に着目しながら、人々が知識を通じて発現させた行為主体性を理解することを試み」ようと、この土曜会・人文研に結集した日系知識人たちの活躍の事例を子細に考察し、これを「移民的徳の誕生」と捉え、さらに移民史が70年史、80年史から百年史となるにつれ、その叙述を巡って様々な齟齬・亀裂が生じた経緯を “生き証人” として記録している。こうした「移民的徳」を歴史民族誌的に明らかにしたのが本書である。目配りの行き届いた著者のマクロ視線に読者は感心することになろう。”(『月刊ラティーナ』2020年5月号、p.66)
佐々木剛二 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0978-2 C3036
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『IDE現代の高等教育』 [2020年6月号、第621号] から(評者:羽田貴史氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『IDE現代の高等教育』(2020年6月号、第621号、IDE大学協会発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
“…… 本書は、現在の高等教育をめぐる多様なトピックについて、高等教育研究の多様な成果をもとにした比較考察を行っており、読者が問題を考察する手助けになる。高等教育研究も細分化が進み、原理的な分析よりは、時々の政策をどう具体化するかというスタンスが多い。また、批判的考察を目的とする研究は、依拠する資料の選択に難があるが、著者はバランスよく文献を取り上げており、こうした姿勢は貴重である。……”(『IDE現代の高等教育』2020年6月号、p.62)
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り
『歴史学研究』 [2020年6月号、第997号] から(評者:岩間俊彦氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフ/C・ホール著『家族の命運』(山口みどり/梅垣千尋/長谷川貴彦訳)が、『歴史学研究』(2020年6月号、第997号、歴史学研究会編集/績文堂出版発行)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり/梅垣千尋/長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
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『大原社会問題研究所雑誌』 [2020年5月号、第739号] から(評者:五十嵐千尋氏)
パチンコ産業史
周縁経済から巨大市場へ
韓載香著『パチンコ産業史』が、『大原社会問題研究所雑誌』(2020年5月号、第739号、法政大学大原社会問題研究所編集兼発行)で紹介されました。戦前以来の縁日娯楽はなぜ、30兆円産業となりえたのか。見過ごされてきた周縁経済の躍動を、ホール、メーカー、規制の動向からダイナミックに捉え、「地下経済」論を超えた等身大の姿を浮き彫りにする。産業が存続可能となる条件を新たな視点で照射し、日本経済論の盲点に迫った初の通史。
“…… 本書は産業が存続することは自明ではないという考えに基づき、本書を通底するキーワードとして「存続可能性」があげられている。著者はパチンコ産業の特徴の一つに「規制産業」であることをあげている。揺籃期のパチンコ産業の様子は、著者があとがきで述べているように、在留期限更新の著者の様子と重なるものがある。著者が研究を重ね、在留期限更新に対する不安感が薄れていったように、規制され、いつ潰えるともしれない、産業ともみなされない「周縁」経済の一端であったパチンコ産業がいかに存続し、拡大しえたのか。規制に対していかに対応したのかがM商会の一次資料を用いて丹念に綴られている。……”(『大原社会問題研究所雑誌』2020年5月号、pp.66-67)
韓 載香 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・436頁
ISBN978-4-8158-0898-3 C3033
在庫有り
「毎日新聞」 [2020年5月30日付] から(評者:内田麻理香氏)
専門知を再考する
H・コリンズ/R・エヴァンズ著『専門知を再考する』(奥田太郎監訳/和田慈・清水右郷訳)が、「毎日新聞」(2020年5月30日付)で紹介されました。<専門家 vs 素人>を超えて ——。科学技術の浸透した世界で物事を決めるとき、専門家を無視することも、絶対的に信頼することもできない。では専門知とは何か。会話や「農民の知」から、査読や科学プロジェクト運営まで、専門知の多様なあり方を初めてトータルに位置づけます。対話型専門知の可能性に光をあて、現代社会に展望をひらく名著。
“…… 新型コロナウイルスは、論争的な科学であり、専門知とは何か、誰を専門家として鑑定するか、市民としてどう関わるべきか、などの問題を突きつけている。専門知の正体を見極めようと探求する本書は、いまの時代に必読であると考える。”(「毎日新聞」2020年5月30日付、第12面)
H・コリンズ/R・エヴァンズ 著
奥田太郎 監訳
和田 慈/清水右郷 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・220頁
ISBN978-4-8158-0986-7 C3030
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『週刊読書人』 [2020年5月29日号、第3341号] から(評者:安高啓明氏)
徳川日本の刑法と秩序
代田清嗣著『徳川日本の刑法と秩序』が、『週刊読書人』(2020年5月29日号、第3341号、読書人発行)で紹介されました。江戸の裁きにおいて、罰せられるべき者はいかにして決まったのか。具体的な判例から江戸期固有の法理を探り出し、西洋法を規範とする刑法理解を塗り替えるとともに、幕政を基礎づけた統治原則をも浮き彫りにします。今日に及ぶ日本人の法観念への新たな理解を開く力作。
代田清嗣 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・386頁
ISBN978-4-8158-0980-5 C3032
在庫有り
『アステイオン』 [第92号、2020年6月] から(評者:苅部直氏)
丸山眞男の教養思想
学問と政治のはざまで
西村稔著『丸山眞男の教養思想』が、『アステイオン』(第92号、2020年6月、サントリー文化財団アステイオン編集委員会編集)の時評「丸山眞男研究の新たな動向」(苅部直氏)で紹介されました。「知」が問い直される時代に ——。教養と学問が関係することは、実は自明ではない。教養とは何か。また学問と思想はどのように関わるのか。知識人として、学者として、丸山が発し続けた問いと思考の展開を、遺された言葉の総体から精緻に読み解き、「丸山論」をこえて現代日本に提示。
“…… 知識人と政治との関係、および「教養思想」の展開という角度から、丸山の思想を分析する。もともと西洋法制史の研究から出発して、近代社会を支える「教養と作法」の重要性に関心をもち、大正時代以降の「教養思想」の流れのなかに、丸山の思想を位置づけようとした仕事である。…… ”(『アステイオン』第92号、p.181)
西村 稔 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・566頁
ISBN978-4-8158-0953-9 C3010
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『図書新聞』 [2020年5月30日号、第3449号] から(評者:池上英洋氏)
ヨーロッパ中世の想像界
池上俊一著『ヨーロッパ中世の想像界』が、『図書新聞』(2020年5月30日号、第3449号、武久出版発行)で紹介されました。西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界 ——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。
“…… わが国の西洋研究の水準を示す記念碑的作品と評しても、決して大げさではないだろう。…… 心性史や思想史などと書くと、教父たちがのこしたような堅苦しく単調な文献が想像されると思うが、本書で出くわす事例は、傷つけられた心臓の図像のように、非常に珍奇なものであることが多い。それらは時にグロテスクであり、ユーモラスである。あるいはハートマークのように、これまで疑問を抱かなかったことがらにひそむ不可思議さに気付かせてくれる楽しさを有している。大著でかつ高度な学術書ではあるのだが、同時に読み物としても面白く、知的好奇心を大いに刺激してくれることだろう。”(『図書新聞』2020年5月30日号、第4面)
池上俊一 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・960頁
ISBN978-4-8158-0979-9 C3022
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『図書新聞』 [2020年5月23日号、第3448号] から(評者:山崎聡氏)
ピグー 財政学
本郷亮訳『ピグー 財政学』が、『図書新聞』(2020年5月23日号、第3448号、武久出版発行)で紹介されました。公平原則から説き起こし、課税の原理、各種租税の比較、公債、雇用政策など、財政学の核心を明晰に論じた古典。実際的有用性の観点から今なお評価が高い、ピグー厚生経済学体系の三部作の一つを、重要論文とともに、第一人者が初めて邦訳し現代に問いかけます。
“…… 歴史的に先駆けて、税に関する公平性を規範経済学的観点から明瞭に議論している点で、古典として不朽の意義を持つ……”(『図書新聞』2020年5月23日号、第4面)
本郷 亮 訳
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・338頁
ISBN978-4-8158-0969-0 C3033
在庫有り
Journal of Japanese and Korean Cinema [2020年3月24日オンライン公開] から(評者:花田史彦氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、Journal of Japanese and Korean Cinema(2020年3月24日オンライン公開、Taylor & Francis Group)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り
「中日新聞」 [2020年4月24日付、夕刊] から
歴史としての日教組【上下巻】
『歴史としての日教組』(上下巻)の編者・広田照幸先生による自著紹介が、「中日新聞」(2020年4月24日付、夕刊)に掲載されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
“…… 研究を通じて浮かび上がってきたのは、その時代の情勢を多元的に分析し、内部で議論を戦わせ、慎重に運動方針を選び取っていた日教組の姿である。…… たとえば、結成直後の時期の日教組は、革命運動に邁進していた当時の日本共産党の支配下にあったわけでもないし、「教師の倫理綱領」は階級闘争の綱領として作られたのでもなかった。教育運動や平和運動、裁判など、まだこれからまとめていくべきテーマはたくさん残っている。だが、本書によって、日教組という組織の本質に迫り得たと自負している。……”(「中日新聞」2020年4月24日付、第7面)
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
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『史学雑誌』 [第129編第3号、2020年3月] から(評者:池田嘉郎氏)
イスラームのロシア
帝国・宗教・公共圏 1905-1917
長縄宣博著『イスラームのロシア』が、『史学雑誌』(第129編第3号、2020年3月、史学会編集兼発行)で紹介されました。もう一つの市民社会 ——。多数のイスラーム教徒が存在したロシア帝国。彼らはいかに生きたのか。日露戦争から第一次世界大戦・革命へと至る時代に、政治・行政・教育・出版・戦争・慈善等に積極的に関与し、言論と行動によって自らの「公共圏」を生み出したムスリム社会の苦闘を、かつてない深度で描き出します。
“…… 本書の何よりの長所は、所与の社会の実態に関する、手堅い実証である。それがあってはじめて、ムスリム公共圏という構想が説得力をもって立ち上がってくるのである。本書から伝わってくるのは、史料調査に割かれた膨大な労力であり、緻密な実証と斬新な構想との両立に向けられた知的な誠実さと並外れた能力である。……”(『史学雑誌』第129編第3号、p.89)
長縄宣博 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-0888-4 C3022
在庫有り
「毎日新聞」 [2020年4月25日付] から(評者:本村凌二氏)
ヨーロッパ中世の想像界
池上俊一著『ヨーロッパ中世の想像界』が、「毎日新聞」(2020年4月25日付)で紹介されました。西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界 ——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。
池上俊一 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・960頁
ISBN978-4-8158-0979-9 C3022
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『図書新聞』 [2020年5月2日号、第3446号] から(評者:西垣鳴人氏)
郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提
伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『図書新聞』(2020年5月2日号、第3446号、武久出版発行)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。
“…… もっとも重要な点は、郵貯における「7~80年代膨張と90年ショック」「主力商品である定額貯金の意義の変遷」「2000年問題」およびその後の民営化プロセスが国債消化問題や政治的派閥争いと絡めて歴史動態的に右の命題に連結されることで「小泉改革の歴史的前提」が詳らかにされていることである。この「前提」に鑑みれば、何らかの改革は必然だったとしても、観念的・情動的な小泉の民営化とは別な、さまざまな可能性(ナローバンク化はその一つ)があり得たことを本書はわれわれに教えてくれる。長大な歴史的分析から導き出されたこうした示唆にこそ、本書の真価は存在する。……”(『図書新聞』2020年5月2日号、第5面)
伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
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『中国21』 [第51巻、2019年12月] から(評者:藤原貞朗氏)
中国芸術というユートピア
ロンドン国際展からアメリカの林語堂へ
範麗雅著『中国芸術というユートピア』が、『中国21』(第51巻、2019年12月、愛知大学現代中国学会編/東方書店発売)で紹介されました。中華文人の生活芸術か、想像された国民芸術か ——。第二次世界大戦前、中英の協力により一大展覧会が開かれた。様々な出版や外交を伴い東西文化交流の転換点となったイベントを軸に、日本の影響深いウェイリーらの研究から、在英中国知識人の活動、パール・バックの後押しした林語堂の傑作まで、中国芸術とは何かを問いかけます。
範 麗雅 著
税込12,100円/本体11,000円
菊判・上製・590頁
ISBN978-4-8158-0909-6 C3070
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「読売新聞」 [2020年4月19日付] から(評者:三中信宏氏)
結核の文化史
近代日本における病のイメージ
福田眞人著『結核の文化史』が、「読売新聞」(2020年4月19日付)の「新型コロナ 読書対談 下」で紹介されました。明治維新以降1千万人以上の犠牲者を出すという苛酷な現実の一方で、『不如歸』に代表される小説等に描かれ、「上流」「天才」「美人」といった甘美なイメージを喚起した結核という独特な病の、近代日本における文化的位相を、史資料の博捜によって描き出した力作。
福田眞人 著
税込4,950円/本体4,500円
四六判・上製・440頁
ISBN978-4-8158-0246-2 C3095
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『自由思想』 [第156号、2020年4月] から(評者:杉浦勢之氏)
郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提
伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『自由思想』(第156号、2020年4月、石橋湛山記念財団発行)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。
“…… 本書を第一に、これまで研究史の空白をなしてきた戦後郵貯の歴史を系統的に明らかにする研究書として読むことをお勧めしたい。これにより、郵貯が国債不発行主義の下、戦後高度成長を支えてきた財投というシステム、国債大量発行時代における国債市場といかに深く関係していたかに理解が及び、郵政民営化の歴史的位相を踏まえた上で、残された課題の深刻さに思いを致すことができるだろう。第二に、田中政治を通じて戦後を形づくってきた団塊世代、特に著者のいう「都市新中間層」が田中的なものを否定し、無党派層として「革新」から「改革」へと流動し、政治的「ブーム」を生み出すことで小泉旋風となっていく姿に「歴史のイロニー」を感じられるかもしれない。本書はロストジェネレーションを自負する著者による団塊世代へのオマージュ、あるいは「世代の経済史」として読むことも可能であろう。……”(『自由思想』第156号、p.65)
伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年4月3日号、第3334号] から(評者:宮下規久朗氏)
ヨーロッパ中世の想像界
池上俊一著『ヨーロッパ中世の想像界』が、『週刊読書人』(2020年4月3日号、第3334号、読書人発行)で紹介されました。西洋中世の人々が生きた豊穣なる世界 ——。動植物や人間から、四大や宇宙、天使や魔女、仲間と他者、さらには楽園と煉獄まで、文学・図像・伝説・夢を彩る広大な想像界を縦横無尽に論じ、その全体構造を解明する。心性史・社会史を刷新する「イマジネールの歴史学」の集大成。
池上俊一 著
税込9,900円/本体9,000円
A5判・上製・960頁
ISBN978-4-8158-0979-9 C3022
在庫有り
『中日新聞』 [2020年4月1日付、夕刊文化欄「黒板」] から
エコロジーの世紀と植民地科学者
イギリス帝国・開発・環境
水野祥子著『エコロジーの世紀と植民地科学者』が、「中日新聞」(2020年4月1日付、夕刊文化欄「黒板」)で紹介されました。新たな知はどこで生まれ、何をもたらしたのか。—— 20世紀における科学・開発・環境の関係を問い、生態環境をめぐる知の生成と帝国ネットワークによる循環から、植民地開発の思想と実践、国際開発援助への展開をたどり、植民地科学者を軸に「エコロジーの世紀」の成り立ちを描く力作。
水野祥子 著
本体5,940円/本体5,400円
A5判・上製・268頁
ISBN978-4-8158-0971-3 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2020年4月11日号、第3443号] から(評者:崎山直樹氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『図書新聞』(2020年4月11日号、第3443号、武久出版発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
“…… 本書の特徴はどこにあるのか。それは広田が、教育社会学の泰斗であるだけでなく、例えば本書でもその意義や活用方法が論じられている分野別参照基準の作成にも深く関わっているように、政策のレベルにおいても現在大学が置かれた困難な状況を深く理解している一人であり、その見地からの大学論となっている。…… 本書のように、様々な論点から大学が直面している困難を紹介し、共に考えていくための議論のたたき台を提示していくことは、「組み替える」ためのはじめの一歩となるだろう。またこのような議論の枠組みを検討し、より妥当な方向を目指すために、議論そのものを組み替えていく必要がある領域は、何も大学だけではない。新自由主義改革によってもたらされた歪みは、社会のありとあらゆる部分に存在している。そういう社会のあり方を考え直すためにも、大学論は一つのケーススタディとして有効であるかもしれない。”(『図書新聞』2020年4月11日号、第4面)
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り
『中国研究月報』 [2020年3月号、第74巻第3号] から(評者:中村みどり氏)
中国芸術というユートピア
ロンドン国際展からアメリカの林語堂へ
範麗雅著『中国芸術というユートピア』が、『中国研究月報』(2020年3月号、第74巻第3号、中国研究所発行)で紹介されました。中華文人の生活芸術か、想像された国民芸術か ——。第二次世界大戦前、中英の協力により一大展覧会が開かれた。様々な出版や外交を伴い東西文化交流の転換点となったイベントを軸に、日本の影響深いウェイリーらの研究から、在英中国知識人の活動、パール・バックの後押しした林語堂の傑作まで、中国芸術とは何かを問いかけます。
“…… 本書の特色は、国民政府の外交史、ヨーロッパにおける東洋美術の受容史、中国人欧米留学史など細分化された研究領域を超えて、さらに中国近現代文学研究の視点をくわえた広い視野から「中国芸術国際展覧会」をめぐる文化的ネットワークを総体的に捉えようと試みたところにある。厖大な中国語・英語・日本語の一次資料と二次資料(巻末の注釈は100頁を越す)を用いて、論を組み立ててゆくのにあたり、多くのエネルギーと時間が費やされたことが想像される。その成果である本書は、それぞれの研究分野の読者に新たな知見をもたらしてくれる。……”(『中国研究月報』2020年3月号、p.28)
範 麗雅 著
税込12,100円/本体11,000円
菊判・上製・590頁
ISBN978-4-8158-0909-6 C3070
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『東洋史研究』 [第78巻第4号、2020年3月] から(評者:宇野伸浩氏)
モンゴル時代の「知」の東西(上下巻)
宮紀子著『モンゴル時代の「知」の東西』(上下巻)が、『東洋史研究』(第78巻第4号、2020年3月、東洋史研究会編集兼発行)で紹介されました。日本からヨーロッパまで、人・モノ・情報が行き交う ——。世界史上、空前のレベルで展開したユーラシアを貫く「知」の交流。百科事典や辞書・地図から宗教・政治・経済の諸制度まで、モンゴル帝国によるダイナミックな革新と統合の実像を、多言語の文献・美術品・出土文物を駆使して描き出す記念碑的労作。
宮 紀子 著
税込各9,900円/本体各9,000円
菊判・上製・上574頁+下600頁
ISBN 上978-4-8158-0900-3 下978-4-8158-0901-0
C3022
在庫有り