内 容
絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききる。
目 次
凡 例
序 章
第Ⅰ部 幾何学による解剖・解体と「概念の現実」の誕生
第1章 キュビスムをめぐる言説
—— レアリスムとの関係からの考察
1 プロト・キュビスムから分析的キュビスムまで
2 幾何学をめぐる言説と「概念の現実」
3 キュビスム以前の「現実」への問い
第2章 現実の解剖、解体
—— 分析的キュビスムへの展開
1 美術解剖学における図式と抽象
2 ピカソと美術解剖学 —— 解剖学から「概念の現実」へ
3 ピュトー・グループにおける様式的展開
4 キュビスム作品における女性身体像
第Ⅰ部結論
第Ⅱ部 キュビスムの文法と詩学
第3章 芸術と詩的アナロジー
—— 総合的キュビスムの文法
1 二次元と三次元の対話
2 形態的なアナロジーから詩的なアナロジーへ
3 「キュビスム文学」と挿絵本
第4章 機械の詩学
—— 身体のメカニズムの探求からメカニックな身体へ
1 レジェとグリスにおける生物と無生物のアナロジー
2 デュシャン兄弟、クプカ、ピカビアにおける身体表現
3 ヴォーティシズムにおける「現実」と機械のイメージ
第Ⅱ部結論
第Ⅲ部 キュビスムと第一次世界大戦
第5章 前衛と前線
—— 大戦の「現実」と視覚芸術
1 前線の風景と従軍画家たち
2 前線の身体とキュビスム
第6章 古典主義とナショナリズム
—— 第一次世界大戦前後の芸術理論と実践
1 キュビスム理論におけるナショナリズムと第一次世界大戦
2 第一次世界大戦前後のピカソの古典主義
第Ⅲ部結論
第Ⅳ部 新たなる「秩序」へ向けて
第7章 秩序への回帰
—— 大戦間期の美術史モデルとかたちの「生命」
1 キュビスムの歴史化と見出された「原理」
2 キュビスムの理論的な批判と普遍的な理論の追求
3 キュビスム以降の芸術における新たなる「現実」
第8章 キュビスムの形態学
—— 近代のユートピアと前衛芸術
1 キュビスム以降の芸術家たちと近代都市
2 ユートピアの創出、あるいはユートピアへの回帰
第Ⅳ部結論
第Ⅴ部 第二次世界大戦前後の政治社会とキュビスム
第9章 大戦の影と文化的地勢図
—— 展示・論争におけるキュビスムの位置づけ
1 1930年代のフランスにおける現代美術史研究と美術展示
2 レアリスム論争の背景と展開
3 第二次世界大戦下のキュビスム
第10章 キュビスムの生と死
—— 戦後の社会とフランス文化の復興
1 フランス文化の再建
2 サロン・デ・レアリテ・ヌーヴェル
第Ⅴ部結論
終 章
1 見ることと知ること —— 認識メカニズムの表現としてのキュビスム
2 理論と歴史 —— キュビスムと価値システムの構築
3 言葉とイメージ —— 諸現実の地層の再配置
あとがき
初出一覧
注
図版一覧
事項索引
人名索引
仏文要旨
仏文目次
受 賞
書 評
京都新聞(2019年12月29日付、読書欄特集「2019 目利きが選んだ3冊」、評者:成相肇氏)ほか計16地方紙
「建築討論」(ウェブマガジン、2019年9月1日付、評者:長谷川新氏)
『図書新聞』(2019年6月22日号、第3404号、評者:松田健児氏)
『週刊読書人』(2019年5月31日号、第3291号、評者:河本真理氏)