内 容
西欧近代美術の外部に排除された広大な領域と、内部に取り込まれた諸要素との臨界を検証し、その透過と拒絶のメカニズム、および諸要素の意味と運命を、ドラクロワからゴッホ、ゴーギャン、マティスへ、あるいは徳川日本の洋風画から、北斎、印象派、世紀末装飾藝術まで、卓抜な読みと縦横な論理をもって描き出した労作。
目 次
序 西欧近代美術とその外部
第1章 オリエンタリズム絵画と表象の限界
1 外攻 —— 象徴的暴力の諸形態
2 同化 —— その様態と限界
3 分離と内攻
4 文法解体
5 〈東方〉の桎梏
第2章 透視図法の往還
—— 徳川洋風画から西欧ジャポニスムへ
1 徳川日本における透視図法の初期受容
2 〈和風化〉としての「遠 = 近方」
3 脱 = 構築としての〈静物 = 風景画〉
4 〈人物 = 風景画〉の成立
5 空間表象のジャポニスム
第3章 ジャポニスムと日本美術
—— 規範の葛藤
1 印象派美学と「日本」
2 浮世絵師から東洋の巨匠へ —— 北齏の列神式
3 ジャポニスムの造形的イデオロギー
4 ジャポニスムの里帰り
第4章 幻想の合わせ鏡
—— ファン・ゴッホの日本 東洋のファン・ゴッホ
1 ファン・ゴッホの日本 —— 幻想の分析学とその病理
2 近代東アジアにおけるファン・ゴッホ幻想
第5章 失楽園の修辞学
—— ゴーギャンと異文化交雑の倫理
1 魔術と救済
2 引用の織物 —— 混淆の戦術
3 混淆の果ての倫理 —— クレオール絵画の創成
4 不在の場所としての涅槃
第6章 表象の彼方へ
—— 装飾再考
1 エミール・ベルナールとポン・タヴェン
2 ナビ派と「装飾の国、日本」
3 相互浸透 —— アンティミストの美学
4 装飾という問題圏
補 章 画家に棲まう美術史
—— モーリス・ドニ『理論集』の軌跡
1 象徴主義理論の揺らぎとゴーギャンの評価
2 古典主義理論の形成とセザンヌの再発見
3 古典開眼とドレフュス事件
4 アンリ・マティスとモーリス・ドニ
初出覚書 —— あとがきにかえて
註
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欧文要旨