内 容
本書は、これまで近代絵画史の分水嶺と見なされてきたエドゥアール・マネをめぐるスキャンダルを、①絵画と批評言語の関係、②美術の社会認知をめぐる政治力学を軸に再検討し、「近代芸術」の価値観・歴史観、その成り立ち自体をも捉え直した気鋭による力作である。
目 次
第1章 抹殺されたスキャンダル
—— もうひとつの1863年
1 問題の所在
2 『落選者展』再訪
3 隠蔽されたスキャンダル
4 歴史のからくり
5 裸体画と醜聞
第2章 死亡記事の闘い
—— 1883年のエドゥアール・マネ
1 反響と回顧の視線
2 理論・作品・藝術家
3 事件から歴史へ
第3章 死後売り立ての政治学
1 売り立ての舞台裏
2 見えざる革命
第4章 大藝術の終焉
1 老化と夭折
2 美術批評家ゾラの軌跡
3 物語絵画の終焉と絵画の自律
4 修正主義論争
第5章 黄昏あるいは黎明
—— 美学の変貌
1 仕上げの彼方へ
2 藍狂い症候群
3 日本という美学
4 瞬時性の美学
第6章 美術行政と美術制度の刷新
1 アンデパンダン展の成立
2 第三共和制初期の美術行政
3 記憶の政治学
4 オルセー美術館へ
本書の構想についての自註 —— あとがきにかえて
註
文献案内
索 引
仏文要旨
受 賞
第14回(1997年度)「渋沢・クローデル賞」ルイ・ヴィトンジャパン特別賞