内 容
動物と人間とでは、なにが違うの? 動物倫理という「応用問題」を通して、倫理学全体へとフィードバック。動物実験、肉食、野生動物保護といった切り口から、人間の道徳までも考えてしまう、しなやかでスリリングでまっとうな入門書。
目 次
序 章 倫理学へのけもの道
—— 倫理学の全体像をみわたす
0-1 動物についてちょっと考えてみる
0-2 倫理学は何をする学問か
0-3 メタ倫理学・規範倫理学・応用倫理学
コラム0 倫理的相対主義
第Ⅰ部 基礎編
第1章 動物解放論とは何か
—— 動物の権利運動を通して規範倫理学の基本原理を見る
1-1 動物愛護から動物の権利へ
1-2 功利主義
1-3 義務論
1-4 義務論の要素を入れた功利主義
1-5 2つの倫理学理論と動物
コラム1 「生き物を殺してはならない」というルールは存在するか
第2章 種差別は擁護できるか
—— メタ倫理学の視点から人間を特別扱いする議論を吟味する
2-1 事実を見れば分かるという系統の議論
2-2 事実と価値の関わり
2-3 能力差に訴える議論
2-4 メタ倫理学のさまざまな立場
コラム2 自然主義的誤謬にまつわる誤謬
第3章 倫理は「人と人の間のもの」か
—— 社会契約説の視点から契約という考え方を倫理にとりいれてみる
3-1 契約として倫理を見る
3-2 契約説と動物
3-3 ロールズ以後の契約説と動物の権利論
コラム3 カントのメタ倫理学と契約説
第4章 倫理なんてしょせん作りごとなのか
—— 進化生物学を手がかりに道徳の理由と起源を考える
4-1 道徳の理由と利己主義
4-2 道徳の起源と進化論
4-3 再び道徳の理由について考える
コラム4 共通先祖説と滑りやすい坂道
第Ⅱ部 発展編
第5章 人間と動物にとって福利とは何か
—— 動物実験問題を通して価値があるとは、幸せとはどういうことかを考える
5-1 動物実験
5-2 福利論
5-3 動物の福利への福利論の応用
コラム5 自由の価値
第6章 肉食は幸福の量を増やすか
—— 菜食主義や工場畜産の論争を通して意思決定システムとしての功利計算や
厚生関数について考える
6-1 菜食主義
6-2 功利主義のさまざまなバージョン
6-3 厚生経済学
コラム6 マイナス功利主義
第7章 柔らかい倫理から動物はどう見えるか
—— 野生動物問題を通して環境倫理学、徳倫理学、共同体主義、ケアの倫理に
ついて考える
7-1 野生動物の倫理
7-2 環境倫理学のさまざまな立場
7-3 徳倫理学
7-4 徳倫理学と環境と動物
コラム7 徳倫理学とメタ倫理学
終 章 動物は結局どう扱えばいいのか
—— 往復均衡法を手がかりに倫理学の考え方と理論の改良の方法を考える
終-1 本書の内容を振り返る
終-2 対立する倫理学理論の使い方
終-3 結局動物とどう接すればよいのか
文献案内もかねた文献表
あとがき
索 引
書 評
【毎日新聞書評】
著者の既刊書
『誇り高い技術者になろう[第2版]』 黒田光太郎・戸田山和久・伊勢田哲治 編
『科学技術をよく考える』 伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
『精神医学の科学哲学』 レイチェル・クーパー 著/伊勢田哲治・村井俊哉 監訳
関連書
『ロボットからの倫理学入門』 久木田水生・神崎宣次・佐々木 拓 著