内 容
バブル崩壊後の長期不況に苦しんだ日本と、新興企業の叢生に沸いたアメリカ —— 日米経済の広く知られた90年代像の実態を初めて本格的に再検討、主要産業における日米企業関係を実証的に分析し、日米企業競争の真の焦点がどこにあったのかをグローバル競争の光のもとで浮彫りにした成果。
執筆者一覧
(執筆順、*は編者)
*橘川 武郎 堀 一郎 李 美花
米倉誠一郎 谷口 明丈 田中 彰
原 泰史 長谷川 信 齊藤 直
夏目 啓二 桑嶋 健一 横山 和輝
宇田 理 大東 英祐 宮崎 信二
高柳 美香 山口 一臣 太田原 準
*塩見 治人 高岡 美佳 岩田 裕樹
目 次
序 章 ニューエコノミーと 「失われた十年」 —— 本書の課題と構成
1 1990年代に注目する理由
2 アメリカのニューエコノミー
3 日本の 「失われた十年」
4 「日米逆転」 と 『日米関係経営史』
5 「日米再逆転」 と本書の構成
6 チャンドラー・モデルの相対化
Ⅰ ニューエコノミーとアメリカの再生
第1章 「見える手」 から 「消えゆく手」 へ
—— インターネット産業: ライブドア・楽天と Google
1 日本のインターネット企業
2 世界を変える会社
3 日米インターネット企業構造の比較
第2章 プラットフォームにおける技術革新
—— ゲーム産業: 任天堂・ソニーとマイクロソフト
1 日本のゲームソフトは凋落したか
2 ゲーム産業とプラットフォーム
3 ファミコンと任天堂の開発・生産体制
4 プレイステーションとゲーム産業
5 ウィンテルの巻き返し —— マイクロソフトのゲーム機戦略
第3章 オープン化とコモディティ化の帰結
—— PC産業: IBM と NEC を中心に
1 PC ビジネスの日米グローバル競争の諸相
2 黎明期の日米パソコン業界 —— 業界標準と PC-98 の業界支配
3 DOS/V 革命 —— その背景と業界へのインパクト
4 競争優位の源泉の変化 —— 製品差別化から価格競争、そしてビジネスモデル
の競争へ
5 業界再編の波と各社の対応
6 PC ビジネスにとって1990年代とは何だったのか
第4章 垂直囲い込み型と水平展開型の拮抗
—— アニメーション産業: ディズニーとスタジオジブリ
1 エンターテインメント・コンテンツ産業とアニメ
2 メディア・コングロマリットによるハリウッドの再生
3 ディズニーの独占と新たな企業の挑戦
4 スタジオジブリと日本のアニメ市場
5 ハリウッドにおける日本アニメの認識と拡がり
6 アニメ産業における独特の関係
Ⅱ オールドエコノミーの転換と日米間競争
第5章 対日 「逆キャッチアップ」 とそれへの対応
—— 自動車産業: GM とトヨタ
1 グローバル寡占市場での競争と協調
2 対日 「逆キャッチアップ」 とトヨタの戦略的対応
3 GM のジャパナイゼーションと事業部制組織の終焉
4 アメリカ市場をめぐる GM・トヨタ対抗
5 日本型企業システムの国際波及と成熟市場での競争優位
第6章 リストラ後のマーケット・インとプロダクト・アウト
—— 鉄鋼業: 新日鉄と US スチール・ニューコア
1 戦後世界鉄鋼業の発展と日米関係
2 1980年代における新日鉄の品質戦略への転換と US スチールの生き残り戦略
3 1990年代における新日鉄の業務再建とニューコアの経営革新
4 世紀転換期における世界鉄鋼企業の再編と日米鉄鋼企業の競争力格差
第7章 「選択と集中」 による異質化の進行
—— 電気機械産業: GE と東芝
1 同質化から異質化へ
2 1970年代の GE と東芝
3 GE における事業構造の変革と組織革新 (1980年代を中心に)
4 GE における変革の継続 (1990年代を中心に)
5 東芝の事業展開と組織の階層化 (1980年代)
6 東芝の 「集中と選択」 とデジタル家電ブーム (1990~2000年代)
7 GE・東芝の岐路と方向性
第8章 日米市場への相互進出と現地適応
—— 医薬品産業: メルクと武田
1 医薬品ビジネスのグローバル化
2 日米医薬品市場の特徴と構造変化
3 メルクの国際化と経営戦略
4 武田の国際化と経営戦略
5 医薬品産業における日米関係経営史
第9章 経営多角化の差異と世界規模での競争
—— タバコ産業: フィリップ・モリスと JT
1 タバコ業界の世界的再編と1990年代の意味
2 アメリカ禁煙運動の激化に対応する RJR と PM の攻防
3 専売公社から日本たばこ産業株式会社への転身 —— JT の経営多角化
4 JT のグローバル化の変遷と世界タバコ企業との攻防
5 日米タバコ企業における経営多角化の格差とグローバル競争の拡大
第10章 サプライ・チェーン経営の進化における共通性と対照性
—— 小売業: ウォルマートとセブン&アイ
1 ビジネスモデルへの注目
2 日米小売トップカンパニーの交代
3 ビジネスモデルの共通性
4 ビジネスモデルの対照性
5 ウォルマートとセブン&アイとの関係
第11章 垂直統合と分業・長期契約
—— 原料資源調達: US スチールと三井物産
1 オールドエコノミーの逆襲
2 資源独占から開発輸入へ (~1970年代)
3 資源冬の時代 (1980~90年代)
4 再び資源争奪戦の時代へ (2000年代)
5 資源をめぐる長期波動と調達システム
Ⅲ 産業基盤再編の日米比較
第12章 金融自由化と 「周回遅れ」 の発生
—— 銀行業: シティバンクと三菱東京 UFJ 銀行
1 銀行業にとっての1990年代
2 銀行をめぐる経営環境の変化
3 シティバンク —— リテールの競争優位とグローバルバンクとしての地位
4 東京三菱銀行 —— 問題解決の先送りとビジネスモデルの不在
5 日本における銀行業の将来
第13章 グローバル化と経営効率性の格差
—— 生命保険業: アフラックと日本生命
1 グローバル化は生保業を効率化させたのか?
2 日米における生保業への規制と規律
3 1990年代の生保 —— アフラックと日本生命
4 費用面での経営効率性
5 株式会社化による効率化 —— 今後の展望
第14章 通信自由化と企業分割・再編成の偏差
—— 電気通信産業: AT&T 分割と NTT 再編成
1 通信の巨人 AT&T と NTT の1990年代
2 1980年代の AT&T 企業分割と NTT 民営化
3 1996年電気通信法下のアメリカ電気通信の全面的競争と AT&T3 企業分割
4 1990年代の 「第2次情報通信改革」 と 「NTT 再編成」
5 テレコムバブル崩壊後における AT&T と NTT
第15章 自由化とビジネスモデルの模索
—— 電力業: エンロンと東京電力
1 電力自由化の進行と日本市場での対抗
2 日本における電力自由化の進行プロセス
3 電力自由化へのそれぞれの対応 (1995~98年)
4 日本市場における対抗 (1999~2001年)
5 2001年12月のエンロン破たんと残された課題
第16章 環境技術開発をめぐる競争・提携・摩擦
—— 環境保全: トヨタとビッグ3を中心に
1 自動車環境技術の開発と日米企業の競争力
2 環境規制と競争力
3 日米自動車産業における排ガス規制と燃費規制への対応
4 地球温暖化問題と企業の取り組みの変化
5 環境技術を軸とした日米競争力の逆転
終 章 日米関係経営史の1990年代とチャンドラー・モデルの位置
1 「グローバル500」 における日米企業と事例研究の位置
2 1990年代とチャンドラー・モデル
3 チャンドラー・モデルの再検討
4 1990年代日米関係経営史のビジネスモデル間競争
5 1990年代日米関係経営史と企業間関係
6 ビジネスモデル間競争のダイナミクス