内 容
産業の創始から今日までの初の本格的通史により、外国系と国内系石油会社の対抗をダイナミックに叙述、日本の石油会社の挑戦が挫折し続けた原因を正確に摑みだすとともに、歴史的文脈と今日の変化を踏まえ、確かな視点でナショナル・フラッグ・オイル・カンパニー創設への途を指し示す。
目 次
序 章 課題と視角
1 本書の課題と応用経営史
2 日本石油産業が直面する問題
3 日本石油産業の構造的脆弱性
4 歴史分析の必要性
5 本書の構成
Ⅰ 第2次世界大戦以前
第1章 産業の創始とナショナル・フラッグ創設の挫折
1 日本石油産業の創始
2 日本石油の垂直・水平統合戦略の限界
3 石油業界におけるタイプの異なる3人の経営者
小 括
第2章 外国石油会社の日本進出と事業展開
1 日本への直接進出
2 日本市場への浸透
3 産油・精製への進出と撤退
4 1910-20年代における地位低下
5 ソコニーとヴァキュームの合併
6 スタンバックの成立
7 石油業法施行以降の対応
小 括
第3章 外国石油会社と国内石油会社との関係
1 アジアをめぐる国際カルテル
2 「6社協定」の成立まで
3 「6社協定」の成立以後
小 括
第4章 日本政府と外国石油会社との関係
1 商工省の2案発表以前
2 商工省の2案発表以降
3 「石油国策実施要項」の発表以降
4 法案の国会審議時
小 括
第5章 戦時統制期の石油確保と外国石油会社との交渉
1 事実経過
2 商工省鉱山局
3 吉野信次と来栖三郎
小 括
第6章 先駆的な海外事業展開とその帰結
1 出光商会の海外展開の時期区分
2 満鉄への機械油納入と「満洲」進出(1911-1918年)
3 中国北部・朝鮮半島・台湾への進出と経営上の苦難(1919-1930年)
4 「満洲」での事業拡張と上海進出(1931-1936年)
5 外地重点主義の徹底と企業体制の再編(1937-1941年)
6 太平洋戦争下での苦闘と南方進出(1942-1945年)
7 敗戦による打撃(1945-1947年)
小 括
Ⅱ 第2次世界大戦以降
第7章 GHQの石油政策と消費地精製・外資提携
1 GHQの石油政策の転換
2 メジャーズの対日戦略の転換
小 括
第8章 外資への挑戦とその限界
1 エクソン、モービルと日本市場
2 内側からの挑戦 —— 東燃のケース
3 外側からの挑戦 —— 出光興産のケース
小 括
第9章 なぜナショナルフラッグ・カンパニーは生まれなかったのか
1 エンリコ・マッティとEni
2 出光佐三と出光興産
3 山下太郎とアラビア石油
4 イタリアと日本を分けたもの
小 括
第10章 日本石油産業の脆弱性とその克服策
1 規制と産業の脆弱性との相互増幅作用
2 石油産業の規制緩和プロセスとその問題点
3 メジャーズとヨーロッパ非産油国・石油輸入国国策石油会社の動向
4 日本の石油産業の進路と規制緩和のあり方
小 括
第11章 競争力構築をめざす新しい動き
1 日本石油産業の脆弱性
2 脆弱性克服への2つの途
3 上流部門での水平統合
4 コンビナート高度統合と「下流の技術力で上流を攻める」
小 括
終 章 総括と展望
1 日本石油産業における歴史的文脈
2 日本石油産業の2つの脆弱性
3 脆弱性克服・競争力構築の原動力
4 ナショナル・フラッグ・オイル・カンパニーへの途
参照文献
あとがき
図表一覧
事項索引
企業名・組織名索引
人名索引
書 評
『歴史と経済』 (第227号、2015年4月、評者: 武田晴人 氏)