内 容
大手家電メーカーの落日やモジュール化の波に直面してなお、圧倒的な国際競争力を獲得できたのはなぜか。戦後復興期の組立ラジオの隆盛から今日まで、荒波の中で培われた多様な顧客への志向と、部品の汎用性をめぐる戦略の決定的役割を捉え、グローバルサプライヤーへの軌跡を示す。
目 次
序 章 顧客多様化の歴史的起源
1 日本のエレクトロニクス産業を代表する「一般電子部品」
2 産業分析における歴史的パースペクティブ
3 戦後における電子部品産業発展の歴史的前提
4 本書の構成
第Ⅰ部 戦後民主化と電子部品産業の形成
第1章 ラジオ産業の復興
はじめに
1 ラジオ受信機の生産統制
2 生産活動の停滞
3 本格的な生産復興
小 括
第2章 ラジオ部品流通網の形成と展開
—— 大阪・日本橋を中心に
はじめに
1 日本橋問屋街の概観
2 日本橋問屋街の形成
3 ラジオ部品の地方販売
小 括 家電小売への転換
第3章 ラジオ部品産業の復興
はじめに
1 ラジオ部品をめぐる統制政策
2 ラジオ部品メーカーの動向
3 部品業界における組織的活動
小 括 電子部品産業の形成
第Ⅱ部 専門生産の確立と高度化
第4章 家電セットメーカーによる下請専属化
—— 電子部品の需要構造(1)
はじめに
1 松下電器の協約工場
2 三洋電機(北條製造所)の協力工場
3 東芝(柳町工場)の認定工場
小 括
第5章 トランジスタラジオ輸出の展開
—— 電子部品の需要構造(2)
はじめに
1 生産および輸出の概要
2 トランジスタラジオ産業の形成 —— 1950年代後半
3 トランジスタラジオ産業の再編 —— 1960年代前半
小 括
第6章 電子部品の技術革新と「専門生産」の確立
はじめに
1 電子部品の供給構造
2 電子部品の技術革新
小 括
第7章 業界団体による電子部品の規格化
—— 電子部品産業発展の社会的基盤(1)
はじめに
1 部品標準化問題の発生
2 電子機械工業会の規格化活動
3 CES規格の効果
小 括
第8章 電子部品産業振興と試験研究機関
—— 電子部品産業発展の社会的基盤(2)
はじめに
1 電子工業振興臨時措置法による電子部品産業の育成
2 関西電子工業振興センターの活動
3 中部電子工業技術センターの活動
小 括
第9章 承認図部品開発と専門生産の高度化
—— 帝国通信工業の事例
はじめに
1 帝国通信工業の設立経緯と1950年代までの展開
2 1960年代の経営動向
3 特注品開発の承認プロセス
4 生産管理能力の彫琢
小 括
第Ⅲ部 国際競争優位の確立
第10章 電子部品市場の多様化と技術革新
—— 1970-89年
はじめに
1 概 観
2 石油ショックへの対応
3 電子部品市場の多様化
4 電子部品の「微小化」技術開発
小 括
第11章 グローバルサプライヤーの誕生
—— 1985-2017年
はじめに
1 ASEAN諸国への展開
2 中国への展開
3 国際競争優位の固守
4 アルプス電気の海外展開
小 括
終 章 国際競争優位の歴史的コンテクスト
1 アイデンティティの共有がもたらした産業の形成
2 戦略的に獲得された電子部品の汎用性
3 専門生産の確立と高度化
注
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『経営史学』(第55巻第2号、2020年9月、評者:高橋雄造氏)
『組織科学』(第54巻第1号、2020年9月、評者:新宅純二郎氏)