内 容
長い進化の過程で、人間はなぜ、どのように道徳感覚を手に入れたのか。進化で道徳を説明できるのなら、そもそも道徳理論など不要ではないのか。心理学や神経科学の最新の知見を交えてなされる活発な議論を一望。道徳とは、人間の本性とは何かを問うすべての人に向けた最良の入門書。
著者紹介
スコット・ジェイムズ
(Scott M. James)
メリーランド大学で博士号(哲学)を取得したのち、現在、ノース・キャロライナ・ウィルミントン大学准教授。価値論、道徳心理学、進化論を専門としている気鋭の研究者。
(所属等は初版第1刷発行時のものです)
目 次
序 文 哲学者と生物学者がバーに入っていくと…………
第Ⅰ部 「利己的な遺伝子」から道徳的な存在へ
—— ダーウィン以後の道徳心理学
第1章 自然選択と人間本性
1 基本的な説明
2 いくつかのよくある誤解
3 修繕屋としての母なる自然
4 進化心理学と人間の本性
5 進化した心の道具箱
6 (さらに)いくつかのよくある誤解
7 本章のまとめ
第2章 正しさの(最も初期の)起源
1 団結すれば頑張れる?
2 包括適応度と「遺伝子目線」の観点
3 汝の隣人を愛せ —— しかし汝の家族を真っ先に愛せ
4 偽陽性とコアシステム
5 「利他性」についての手短な注意
6 互恵的利他性
7 本章のまとめ
第3章 穴居人の良心
—— 人間の道徳の進化
1 道徳的生物はどういう意味で
2 道徳性の進化
3 道徳判断の本質を説明する
4 本章のまとめ
第4章 公正な報い
1 最後通牒ゲーム
2 公共財ゲーム
3 勝者は罰しない
4 罪(の意識)の利点
5 ライオンに囲まれた子羊か?
6 道徳
7 普遍道徳か普遍理性か?
8 本章のまとめ
第5章 美徳と悪徳の科学
1 苦悩テスト
2 心を読む
3 「ならぬものはならぬ」
4 道徳の生得性と言語との類比
5 配電盤、バイアス、情動共鳴
6 非生得主義者の疑念
7 本章のまとめ
第Ⅱ部 「何であるか」から「何であるべきか」へ
—— ダーウィン以降の道徳哲学
第6章 社会的調和
—— 善と悪、および生物学的な醜さ
1 存在の大いなる連鎖から生命の樹、道徳性まで
2 生命の樹を引っこ抜く
第7章 ヒュームの法則
1 演繹的に妥当な論証
2 入れていないものを取り出すことはできない
3 「決定的な重要性」
4 力から正義への移行を阻止すること
5 ダーウィン主義と、人類を保存すること
6 本章のまとめ
第8章 ムーアの自然主義的誤謬
1 未決問題テスト
2 未決問題テストに落第する —— 欲求することを欲求すること
3 未決問題テストに落第する —— スペンサー
4 未決問題テストに落第する —— ウィルソン
5 本章のまとめ
第9章 ムーアとヒュームを再考する
1 未決問題テストに関するいくつかの予備的な疑念
2 事物が何を意味するか 対 事物が何であるか
3 社会ダーウィン主義に対する含意
4 「である」と「べし」の隔たりに対する挑戦 —— サール
5 「である」と「べし」の隔たりに対する挑戦 —— レイチェルズ
6 本章のまとめ
第10章 進化論的反実在論
—— 初期の試み
1 神の住まう脳
2 準備事項
3 E・O・ウィルソン
4 特異性論法
5 重複論法
6 因果関係、正当化、そして ………… 腐った死体
7 本章のまとめ
第11章 最近の進化論的反実在論
1 ナポレオンの錠剤
2 ダーウィン主義のジレンマ
3 本章のまとめ
第12章 進化論的実在論者が取りうる選択肢
1 選択肢1 —— 正・不正の学習
2 選択肢2 —— 反応依存性
3 選択肢3 —— 自然化された徳倫理学
4 選択肢4 —— 道徳的構成主義
5 実在主義者の選択肢に対する批判
6 本章のまとめ
訳者解説
注
引用文献
索 引
書 評
『一橋法学』(第18巻第2号、2019年7月、評者:森村進氏)
『図書新聞』(2018年12月8日号、第3378号、評者:柏葉武秀氏)
関連書
『ヒューム 道徳・政治・文学論集 [完訳版]』 デイヴィッド・ヒューム 著/田中敏弘 訳
『ロボットからの倫理学入門』 久木田水生・神崎宣次・佐々木 拓 著