2019年度書評一覧
『内陸アジア史研究』 [第35巻、2020年3月] から(評者:宇野伸浩氏)
普遍史の変貌
ペルシア語文化圏における形成と展開
大塚修著『普遍史の変貌』が、『内陸アジア史研究』(第35巻、2020年3月、内陸アジア史学会発行)で紹介されました。歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
大塚 修 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
在庫有り
『イスラム世界』 [第92号、2019年11月] から(評者:小笠原弘幸氏)
普遍史の変貌
ペルシア語文化圏における形成と展開
大塚修著『普遍史の変貌』が、『イスラム世界』(第92号、2019年11月、日本イスラム協会発行)で紹介されました。歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
大塚 修 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
在庫有り
『オリエント』 [第62巻第1号、2019年9月] から(評者:矢島洋一氏)
普遍史の変貌
ペルシア語文化圏における形成と展開
大塚修著『普遍史の変貌』が、『オリエント』(第62巻第1号、2019年9月、日本オリエント学会発行)で紹介されました。歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
大塚 修 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
在庫有り
『経済セミナー』 [2020年4・5月号、第713号] から(評者:鹿野嘉昭氏)
近世貨幣と経済発展
岩橋勝著『近世貨幣と経済発展』が、『経済セミナー』(2020年4・5月号、第713号、日本評論社発行)で紹介されました。「三貨制」史観を塗り替える画期的労作 ——。小額貨幣の流通は、庶民の生活水準の上昇を示す指標である。銭貨や藩札などの需要面に注目し、多様性とダイナミズムを内包する日本各地の実態を分析、東アジアにおける徳川経済の先進性を実証します。
“…… 本書は近世における貨幣の流通状況について、従来にない視点から論じた第一級の研究書ということができる。その一方で論述は平易なため、近世貨幣と経済発展との関係を理解するうえでの貴重な書籍でもある。本書を読み、貨幣史研究の醍醐味を味わってほしい。”(『経済セミナー』2020年4・5月号、p.109)
岩橋 勝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0965-2 C3033
在庫有り
『アジア・アフリカ地域研究』 [第19-2号] から(評者:長尾明日香氏)
帝国後のインド
近世的発展のなかの植民地化
小川道大著『帝国後のインド』が、『アジア・アフリカ地域研究』(第19-2号、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科編集・発行)で紹介されました。インドはなぜ英領となったのか。ムガル帝国の衰退と後継国家の群雄割拠のもと生じた在地の大変動をとらえ、中間層権力をめぐる状況の変遷から植民地化の起源を解明、イギリス統治政策の浸透過程を丹念にたどるとともに、近代インドを近世史の発展との連続性のなかに位置づけます。
“…… 本書は地方史ではなく、政治史、外交史、統治機構、徴税・司法・治安維持・軍事等の諸制度、ローカルなレベルにおける政府金融、流通ネットワーク等の幅広いテーマを扱っており、高度な学術的独創性と論旨の一貫性、トピックの多様性、入門書としての配慮を兼ね備えた稀有な一冊である。インド近世・近代史分野における新たな必読書の出版を喜びたい。……”(『アジア・アフリカ地域研究』第19-2号、p.210)
小川道大 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-0939-3 C3022
在庫有り
『史苑』 [第80巻第2号、2020年3月] から(評者:村田光司氏)
原典 中世ヨーロッパ東方記
高田英樹編訳『原典 中世ヨーロッパ東方記』が、『史苑』(第80巻第2号、2020年3月、立教大学史学会編集・発行)で紹介されました。モンゴル帝国の侵攻はヨーロッパを震撼させ、その世界像に転換を迫った。当時、東方に派遣された修道士や商人たちは何を見、どのように記録したのか。ルブルクやマルコ・ポーロ、ハイトンらの旅行記から、書簡、教会壁画、世界地図まで全15編を原典から翻訳集成し、ヨーロッパによるアジア認識の展開をたどります。
高田英樹 編訳
税込13,200円/本体12,000円
菊判・上製・852頁
ISBN978-4-8158-0936-2 C3022
在庫有り
「中日新聞・東京新聞」 [2020年3月15日付] から
「国家総動員」の時代
比較の視座から
森靖夫著『「国家総動員」の時代』が、「中日新聞・東京新聞」(2020年3月15日付)で紹介されました。第一次大戦後、大正デモクラシー下の日本において模索された民間主体の国家総動員構想を解明、同時代の英米で展開された政策も初めて精査して、その驚くべき重なりを跡づける。ファシズムや軍部独裁をその必然的帰結とみなす通説を大きく書き換え、近代史理解の新たな地平を拓く。
森 靖夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・432頁
ISBN978-4-8158-0975-1 C3031
在庫有り
『日本歴史』 [2020年4月号、第863号] から(評者:鈴木淳氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『日本歴史』(2020年4月、第863号、日本歴史学会編集・吉川弘文館発行)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“旧海軍の技術者が戦後の技術発展や経済成長に貢献したことはノンフィクションの作品などで広く知られているが、本書は機械工業や工業教育、技術開発体制の歴史について多くの業績を重ねている著者が、個人史の軌跡に即し、当事者の意識に迫りながら軍民転換、さらには「防衛生産」の登場のなかでの彼らの役割や生き方を描いたものである。…… 資料が残り、また一般にも受け入れられやすい「活躍」を伝えるだけではなく、旧海軍関係団体の呼びかけに応じず「資史料に登場しない無数の技術者」にも目配りしながら戦中と戦後の「連続と断絶」を把握しようとする著者の姿勢は、学ばされるところが大きい。”(『日本歴史』2020年4月号、p.99、101)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『農業経済研究』 [春季号、2020年3月、第91巻第4号] から(評者:松本武祝氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『農業経済研究』(春季号、2020年3月、第91巻第4号、日本農業経済学会編集・発行)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
『農業経済研究』 [春季号、2020年3月、第91巻第4号] から(評者:泉田洋一氏)
もう一つの金融システム
近代日本とマイクロクレジット
田中光著『もう一つの金融システム』が、『農業経済研究』(春季号、2020年3月、第91巻第4号、日本農業経済学会編集・発行)で紹介されました。日本の発展を導いたのは、日銀中心の銀行システムだけではなかった。現代の郵便貯金や農協に連なる系譜をもつ「大衆資金ネットワーク」が地方経済の安定と成長に果たした役割を、資金供給の実例や制度設計から解明。見過ごされてきた半身に光を当て、経済成長の条件を問い直す意欲作。
田中 光 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0932-4 C3033
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年3月13日号、第3331号] から(評者:塩出浩之氏)
引揚・追放・残留
戦後国際民族移動の比較研究
蘭信三・川喜田敦子・松浦雄介編『引揚・追放・残留』が、『週刊読書人』(2020年3月13日号、第3331号、読書人発行)で紹介されました。日本人引揚やドイツ人追放をはじめとする戦後人口移動の起源を、ギリシア=トルコの住民交換を画期とする近代国際政治の展開から解明するとともに、東西の事例を冷戦やソ連の民族政策もふまえて世界史上に位置づけ、地域や帝国の枠組みをこえた引揚・追放・残留の知られざる連関を浮かび上がらせます。
蘭 信三・川喜田敦子・松浦雄介 編
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・352頁
ISBN978-4-8158-0970-6 C3031
在庫有り
『平和研究』 [第53号、2020年1月] から(評者:福島涼史氏)
法と力
戦間期国際秩序思想の系譜
西平等著『法と力』が、『平和研究』(第53号、2020年1月、日本平和学会編/早稲田大学出版部発行)で紹介されました。「国際法 vs 現実政治」を超えて ——。第一次大戦後の国際法学の中から「国際政治学」的思考は誕生した。〈国際紛争は裁判可能なのか〉という連盟期の最重要課題を軸に、法と力の関係をダイナミックに捉える諸学説の系譜をたどることで、モーゲンソーやE・H・カーらの思想を新たに位置づけ直す力作。
“「法と力」というやや大げさに見えるタイトルを冠した本書は、その実、平易に訳出されたドイツ語・英語文献を基に、精緻に一つの筋を浮かび上がらせる。その筋というのは、戦間期の国際法学とハンス・J・モーゲンソーやE・H・カーなどをつなぐラインである。従来、我々は二つのラインを観念していた。すなわち、法的な手続きにより頼む楽観的な平和主義の国際法学というライン、そして、それと対峙する力の要素を重視する悲観的な現実主義の国際政治学というラインの二つである。本書は、その中間に、紛争の法的解決を志向しつつも、裁判の限界を基礎づけようとした、忘れられたラインのあることを示す。そして、この系譜が国際法学に淵源をもちつつ、上の国際政治学の大家たちによって担われていったことをあまたの著述を提示することで立証する。
このことが平和研究(平和学、平和論)にもたらすインパクトは絶大であって、元来の「敵」を「味方」にすることができる。このことは、本書が、従来「国際法否定論者」とされてきたアドルフ・ラッソンを、国際秩序構想の側に取り戻していることによって顕著に示されている。学説史上の Reconquista というような表現は適切でないにしても、これまでの議論の枠は大きく組み変わる。無論、モーゲンソーやE・H・カーの平和構想(平和論)という地平は、平和研究自体にも内在的省察を促す。……”(『平和研究』第53号、pp.109-110)
西 平等 著
税込7,040円/本体6,400円
A5判・上製・398頁
ISBN978-4-8158-0919-5 C3032
在庫有り
「毎日新聞」 [2020年3月15日付] から
宣教と適応
グローバル・ミッションの近世
齋藤晃編『宣教と適応』が、「毎日新聞」(2020年3月15日付)で紹介されました。異文化と出会った〈普遍〉の使者たち ——。大航海時代から啓蒙時代にかけて、アジアやアメリカに派遣されたイエズス会士らは、現地社会に適応することで布教を試みる。だが、それは今日なお解決しえない難問の蓋を開けることだった。異文化適応を軸にキリスト教の世界宣教の全体像に迫る、待望の著作。
“…… 本書は十数名の研究者による宣教師の異文化適応という難問に挑んだ重厚な共同研究の成果であり、人間の文明のあり方を問いかける。”(「毎日新聞」2020年3月15日付、第11面)
齋藤 晃 編
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・554頁
ISBN978-4-8158-0977-5 C3022
在庫有り
「日本経済新聞」 [2020年3月14日付] から
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、「日本経済新聞」(2020年3月14日付)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
“…… 先鋭化する路線対立を前に、組織内で戦術が練られた経緯など、等身大でリアルな記述も多い。生身の「労働者」たちが、ダイナミックな戦後史に翻弄されながらも、進むべき針路を求めていった姿が浮かぶ。……”(「日本経済新聞」2020年3月14日付、第27面)
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
在庫有り
『図書新聞』 [2020年3月14日号、第3439号] から(評者:中澤信彦氏)
美学イデオロギー
商業社会における想像力
大河内昌著『美学イデオロギー』が、『図書新聞』(2020年3月14日号、第3439号、武久出版発行)で紹介されました。個々人が自らの情念にしたがって利益を追求する社会は調和しうるのか —— この政治経済学の問いは、あからさまに美学的であり、しかも近代英国の道徳哲学からロマン主義文学までを貫く根本問題だった。テクストの精読により、イデオロギーの構造と展開を批判的に跡づけ、思想史と文学研究を編みなおす画期的労作。
“…… 全16章からなる本書では、(17世紀後半や19世紀前半をも含む)いわゆる「長い18世紀」の文人たちのテクストが時系列的に読解されているが、「この時代の美学的言説は、いかにして自己の利益を追求する個別的な市民たちが、秩序ある調和的な社会を構成するのかという問題を、道徳哲学や政治経済学と共有していた」という認識から、リチャードソン、ワーズワス、メアリー・シェリー、コールリッジらの文学作品のみならず、従来は文学研究の対象とは考えてこられなかった道徳哲学(マンデヴィル、ハチソン、ケイムズ、ヒューム)や政治思想(バーク、メアリー・ウルストンクラフト)や政治経済学(アダム・スミス、マルサス)に関するテクストも文学的な精読の技法の適用対象となっている。これによって文学研究の領域が拡張されたのみならず、美学と道徳哲学・政治思想・政治経済学との深い類縁関係が明るみに出されたことは、研究書としての本書の最も大きな貢献であろう。また、著者は文学的な精読の技法によってそのテクストがもつ表面的な主張(論述的次元)だけでなく、潜在的な二次的メッセージ(修辞的次元)をも掘り起こそうと試みている。それによって、例えば、リチャードソンの感傷小説『クラリッサ』のテクストが、スミス『道徳感情論』の議論の内容を先取りしているだけでなく、その理論的な限界点とジレンマに関する洞察をもすでに内包している、という刮目すべき洞察を導き出している。これは本書の学際的な成果を最も端的に示す洞察であるように思われる。……”(『図書新聞』2020年3月14日号、第5面)
大河内 昌 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・376頁
ISBN978-4-8158-0966-9 C3097
在庫有り
『西洋史学』 [第268号、2019年12月] から(評者:岡本充弘氏)
歴史は現代文学である
社会科学のためのマニフェスト
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳『歴史は現代文学である』が、『西洋史学』(第268号、2019年12月、日本西洋史学会編集兼発行)で紹介されました。文学的ゆえに科学的? 真実と物語のあいだで揺れ動き、その意義を問われてきた歴史。ポストモダニズムの懐疑を乗り越えた後で、いかにして「歴史の論理」を立て直すことができるのか。自らの実践に基づき、社会科学と文学の手法を和解させ、歴史記述を刷新するための挑戦の書。『メタヒストリー』以後の新たな歴史論であり、好評既刊『私にはいなかった祖父母の歴史』の姉妹編。
イヴァン・ジャブロンカ 著
真野倫平 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・320頁
ISBN978-4-8158-0908-9 C3022
在庫有り
『日本歴史』 [2020年3月号、第862号] から(評者:村井章介氏)
五山僧がつなぐ列島史
足利政権期の宗教と政治
斎藤夏来著『五山僧がつなぐ列島史』が、『日本歴史』(2020年3月号、第862号、日本歴史学会編集)で紹介されました。地域の信仰を背景に各地を結び付け、体制的武士層を欠く足利政権の全国支配の鍵ともなった、「夷中」の五山僧の決定的役割を浮かび上がらせて、中央偏重の五山制理解を一新、五山文学も手がかりに、列島社会が内包していた異国的世界をも展望し、新たな中世史像を描き出します。
斎藤夏来 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・414頁
ISBN978-4-8158-0903-4 C3021
在庫有り
『史学雑誌』 [2020年1月号、第129編第1号] から(評者:小池求氏)
中国の誕生
東アジアの近代外交と国家形成
岡本隆司著『中国の誕生』が、『史学雑誌』(2020年1月号、第129編第1号、公益財団法人史学会発行)で紹介されました。東アジア在来秩序を揺るがした明治日本の登場から、琉球、ヴェトナム、朝鮮、チベット、モンゴルへと続く属国・藩部の危機と再編を通して、現代中国の原型が浮かび上がる過程を詳述、万国公法などの翻訳概念の変容を手がかりに、誰も描きえなかった「中国」誕生の全体像に迫った渾身作。
岡本隆司 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・562頁
ISBN978-4-8158-0860-0 C3022
在庫有り
『社会経済史学』 [第85巻第4号、2020年2月] から(評者:木村幹氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『社会経済史学』(第85巻第4号、2020年2月、社会経済史学会発行)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
「毎日新聞」 [2020年2月23日付] から(評者:加藤陽子氏)
歴史としての日教組【上下巻】
広田照幸編『歴史としての日教組』(上下巻)が、「毎日新聞」(2020年2月23日付)で紹介されました。過剰な期待と歪んだ批判の狭間で、実像とかけ離れたイメージが作られてきた日教組。膨大な非公開史料や関係者へのインタビューに基づき、学術的にその歴史を徹底検証 ——。上巻では、戦後の労働運動での立ち位置から、独自の教育理念や「教師の倫理綱領」の作成まで、初期の模索を跡づけ、下巻では、1980年代の労働戦線の再編から、教育運動の転換、文部省との「歴史的和解」まで、新たな路線選択の時代に迫ります。
“…… 読みながら、書かれた内容の持つ、あまりの迫力にたじろぎ、本を持つ手が震えた。このような読者体験はめったにない。本書の迫力はどこから来るのか。著者らは、未公開だった日教組所蔵史料を全面的に用いている。日教組は複数の単位組合をゆるく結集した連合体だったので、決議機関である大会までの議決の過程が重視される。そのような特徴を持つ組織が、各級会議の逐次発言録、役員選挙史料、対決動議の投票数等、意思決定を辿れる全史料を持ち、それを研究者が活用できたらどうなるのか。知のスパークが始まるに決まっている。……”(「毎日新聞」2020年2月23日付、第9面)
広田照幸 編
税込各4,180円/本体各3,800円
A5判・上製・上336頁+下326頁
ISBN 上:978-4-8158-0972-0 下:978-4-8158-0973-7 C3037
在庫有り
『みすず』 [2020年1・2月合併号、読書アンケート特集] から
『みすず』(2020年1・2月合併号、みすず書房発行)の読書アンケート特集で、以下の図書が紹介されました。
【石田雄氏による紹介】
仁平典宏著
『「ボランティア」の誕生と終焉 ——〈贈与のパラドックス〉の知識社会学』
“…… 戦前の奉仕活動から戦後自発的選択へと変化した「ボランティア活動」が、国家の社会保障の削減に伴って権力に利用されるに至る変化を詳細にあとづける。日本における市民社会のあり方に関する重大な問題を示唆する大著である。……”(p.8)
【杉田英明氏による紹介】
芳賀徹著
『桃源の水脈 —— 東アジア詩画の比較文化史』
“…… これまでさまざまな形で目にしたり、著者から直接話を伺ったりした諸章が統合されたのみならず、時間の経過のお蔭で豊かに枝葉が茂り、小川芋銭や多田智満子や福永武彦の作品世界にまで読者を導いてくれる。……”(p.12)
【小澤実氏による紹介】
足立孝著
『辺境の生成 —— 征服=入植運動・封建制・商業』
“…… 社会科学のモデルに鋭敏で、オリジナリティの高い個別研究を発表してきた西洋中世史家による初めての単著。中世イベリア半島をレコンキスタ・文化接触・特殊辺境性といったお定まりの分析枠組みからいったんすくいとり、その「辺境」の社会経済的構造のなかに見える普遍性原理をモデル化し、中世封建世界の特徴とは何かを問い直す。……”(p.14)
【阿部公彦氏、川端康雄氏による紹介】
大石和欣著
『家のイングランド —— 変貌する社会と建築物の詩学』
“…… 近年、あらためて注目を集めている「ハビトゥス」概念にもからめながら、住むこと、空間といった観点でイングランドの文化・文学を読み直す試み。……”(阿部公彦氏、p.27)
“…… カントリー・ハウス、郊外住宅、コテージ、都市のスラムなど、19世紀後半から20世紀前半にかけてのイングランドのさまざまな家の文学表象をブルデューの「ハビトゥス」の概念に依拠して考察した「建築文学論」。標題は同出版会から出た川崎寿彦著『庭のイングランド』(1997年)へのオマージュにもなっている。……”(川端康雄氏、p.56)
【酒井哲哉氏による紹介】
西平等著
『法と力 —— 戦間期国際秩序思想の系譜』
“…… モーゲンソーを初めとする戦間期の国際法学者達が「法と力」の関係を如何に考え抜いたかを検証する事で、戦間期国際秩序思想の最も重要な系譜を描き出した研究。このような本を国際法学者に書いてもらいたいと長年思っていたが、ついに念願がかなった。左翼リアリズムの底力を感じさせる名著である。”(p.48)
【上野千鶴子氏による紹介】
イヴァン・ジャブロンカ著/真野倫平訳
『歴史は現代文学である —— 社会科学のためのマニフェスト』
“……「言語論的転回」以降の歴史学の中では、記憶とナラティブが主題化されているというのに、このタイトルの簡明すぎるマニフェストは、歴史学者からはかえってスルーされてしまうのだろうか。外の旋風に対して、日本の歴史学界が「無風状態」なのが気になる。同じ著者による『私にはいなかった祖父母の歴史 —— ある調査』(田所光男訳、名古屋大学出版会、2017年)は、ナチの強制収容所で亡くなった祖父母の足跡を辿るエゴ・ドキュメンタリー。ファクトにこだわり記憶の多元性を許さないように見えるユダヤ人被害者の子孫が、記憶を辿る旅を描く。……”(p.53)
【川端康雄氏による紹介】
大河内昌著
『美学イデオロギー —— 商業社会における想像力』
“……「美学」を鍵語にして18世紀イギリスの思想家、小説家、詩人たちのテクストを精読し、無秩序に至る恐れのある近代的な商業社会において全体的調和を得るために想像力がどのように発揮されたか、そこに中心的に関わる「美学イデオロギー」を考察している。……”(p.55)
【石原千秋氏による紹介】
アントワーヌ・リルティ著/松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳
『セレブの誕生 ——「著名人」の出現と近代社会』
“…… たしか別役実が、子供に将来何になりたいかと聞いたら「有名人」と答えた話を書いていたが、ここで言う「著名人」とは「有名人」とは違う。公共圏が成立して公的な面と私的な面が分離されたときに生まれた近代的な人間である。人々の関心は私的な領域に向かうから、沈黙や著名人になることに無関心な姿勢が、さらにその人を著名にする。文学なら、志賀直哉の名声がもっとも高まったのは、作品を発表できない時期だったとされている。公共圏成立の過程を鮮やかに論じている。……”(p.57)
【上山安敏氏による紹介】
西村稔著
『丸山眞男の教養思想 —— 学問と政治のはざまで』
“…… 丸山眞男を教養思想から追うという意表をついた追跡の原動力が何であったか考えさせられる。彼は日本人の心性に宿る「作法」と「教養」というモチーフを持ち続けた。それと記者出身の彼の筆致の裏にはジャーナリズム=編集者の感覚がある。偉大な日本人の成し遂げた業績を学者として丹念に資料操作していくと同時に編集していく技倆には脱帽する他ない。……”(p.91)
『経済学論集』 [第82巻第4号、2019年10月] から(評者:加藤慶一郎氏)
経済成長の日本史
古代から近世の超長期GDP推計 730-1874
高島正憲著『経済成長の日本史』が、『経済学論集』(第82巻第4号、2019年10月、東京大学大学院経済学研究科発行)で紹介されました。奈良時代~近代初頭にいたる列島経済の展開を一望、最貧国水準を抜け出し、1人あたりGDPが着実な上昇に転じていく過程を、利用可能な数値の精査と多様な文献の活用により、災害・飢饉・環境・都市化なども視野に解明。はじめて日本の超長期GDP推計を実現し、日本史の新たな扉を開きます。
高島正憲 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・348頁
ISBN978-4-8158-0890-7 C3033
在庫有り
『経済学論集』 [第82巻第4号、2019年10月] から(評者:西川純子氏)
グリーンスパンの隠し絵【上下巻】
中央銀行制の成熟と限界
村井明彦著『グリーンスパンの隠し絵』(上下巻)が、『経済学論集』(第82巻第4号、2019年10月、東京大学大学院経済学研究科発行)で紹介されました。揺れ動く金融政策。何が正しいのか。前人未到の長期安定を実現したアメリカ中央銀行総裁が中央銀行制を嫌っていたのは何故か。神話の陰に隠れたその思想と行動を初めて経済学的に解明、現代経済学の枠組みを再設定した画期的労作。上巻では、若き日の遍歴から「大平準」まで、下巻では、大恐慌の再解釈に踏み込みつつ、予言的な講演から現在までをたどります。
村井明彦 著
税込各3,960円/本体各3,600円
A5判・上製・上326頁+下290頁
ISBN 上:978-4-8158-0869-3 下:978-4-8158-0870-9 C3033
在庫有り
『郵便史研究』 [第49号、2020年3月] から(評者:星名定雄氏)
郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提
伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『郵便史研究』(第49号、2020年3月、郵便史研究会編集発行)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。
“郵政民営化の本丸は郵便貯金だ。本書は、その郵貯に焦点をあて、統計を駆使し郵貯の発展をまず繙く。後段で郵貯を含む郵政三事業を民営化した小泉改革の虚実にメスを入れる。…… 著者は終章に「改革はなされたが、結果が明らかになるのには、しばらく時間が必要。郵政改革は官民と公私とが交差するところでまだ揺れ動いている」と記し本書を結ぶ。……わが国の政治経済財政、さらには国際金融など幅広く目配りがなされ叙述されている。戦後日本の経済史として読むこともできよう。……”(『郵便史研究』第49号、p.56)
伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
在庫有り
『美学』 [第255号、2019年冬] から(評者:稲賀繁美氏)
キュビスム芸術史
20世紀西洋美術と新しい〈現実〉
松井裕美著『キュビスム芸術史』が、『美学』(第255号、2019年冬、美学会)で紹介されました。絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききります。
松井裕美 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-0937-9 C3071
在庫有り
『映像学』 [第102号、2019年7月] から(評者:長谷正人氏)
テレビ成長期の日本映画
メディア間交渉のなかのドラマ
北浦寛之著『テレビ成長期の日本映画』が、『映像学』(第102号、2019年7月、日本映像学会)で紹介されました。「テレビ vs 映画」を超えて ——。高度成長期、テレビの台頭で映画は「斜陽」を迎えたのか。テレビ向けフィルム映画の試みやお色気・やくざ映画の流行、ワイドスクリーンという新機軸、時代劇やメロドラマの変遷など、映像の新時代の幕開けを描き、現在につながる大転換の実像を明らかにします。
北浦寛之 著
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-0905-8 C3074
在庫有り
『週刊東洋経済』 [2020年2月8日号] から(評者:林雅彦氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『週刊東洋経済』(2020年2月8日号、東洋経済新報社発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り
『IDE現代の高等教育』 [2020年2-3月号、第618号] から(評者:大﨑仁氏)
新制大学の時代
日本的高等教育像の模索
天野郁夫著『新制大学の時代』が、『IDE現代の高等教育』(2020年2-3月、第618号、IDE大学協会発行)で紹介されました。戦前からの試みとGHQ占領下の大転換をへて到達した高等教育の新時代。だが、それは新たな模索の始まりだった。様々なアクターによる議論と交渉を通して、何が選ばれ、どのような問題が遺されたのか。現在の大学改革につながる課題の由来と制度の構造を歴史的に浮き彫りにします。
“…… 連合軍・米軍の間接統治という特殊な状況で形成された新制大学の問題点と独立回復後の見直しの過程を精緻に解明した労作である。「第Ⅰ部 模索と選択」で新制大学の形成過程を、「第Ⅱ部 反省と批判」で新制大学に対する関係者の評価を、そして「第Ⅲ部 修正と改革」で独立回復後の修正の動きを、周到な資料の裏付けにより論述している。新制大学の形成と再改革を巡る錯綜した動きを「設置認可行政」、「教育課程編成」、「管理運営機構」、「短期高等教育制度」、「大学院制度」、「国立セクター再編」の6つの視点から整理解明している点も本書の優れた特色である。また、独立回復後の動きについて、60年安保、所得倍増計画などの新たな時代への対応を重視し、見直しの方向性の結節点を、中教審の38年答申に求めている点も、類書に見られない著者の見識を示している。本書は、今後新制大学の形成に関する基本文献として永く読み継がれるであろう。……”(『IDE 現代の高等教育』2020年2-3号、p.62)
天野郁夫 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・558頁
ISBN978-4-8158-0956-0 C3037
在庫有り
『歴史と経済』 [第62巻第2号、2020年1月] から(評者:藤原辰史氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『歴史と経済』(第62巻第2号、2020年1月、政治経済学・経済史学会発行)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
『経営史学』 [第54巻第3号、2019年12月] から(評者:高柳美香氏)
テレビ成長期の日本映画
メディア間交渉のなかのドラマ
北浦寛之著『テレビ成長期の日本映画』が、『経営史学』(第54巻第3号、2019年12月、経営史学会)で紹介されました。「テレビ vs 映画」を超えて ——。高度成長期、テレビの台頭で映画は「斜陽」を迎えたのか。テレビ向けフィルム映画の試みやお色気・やくざ映画の流行、ワイドスクリーンという新機軸、時代劇やメロドラマの変遷など、映像の新時代の幕開けを描き、現在につながる大転換の実像を明らかにします。
“…… 映画への興味とテレビとの関わりを数多くの作品を通じて、様々な角度から、時代背景や芸術性も含めて詳細な分析によって、丁寧に迫っているところに本書の面白みがあると言えよう。…… テレビも著者の言うようにインターネットの登場によって旧来のメディアとなってしまっていると言えるだろう。“映像” の視聴はこれからどのように変化していくのであろうか。コンテンツはどのように変わっていくのか。そして映像の視聴を含め、人々のエンターテインメントはどこに向かうのか。何が人々を魅了するのであろうか。その答えを見つけるのは容易ではないが、本書に答えの一つがあるように思う。研究書ではあるが、映画やテレビ好きにはたまらない1冊である。……”(『経営史学』第54巻第3号、p.51)
北浦寛之 著
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-0905-8 C3074
在庫有り
『週刊エコノミスト』 [2020年1月28日号] から(評者:服部茂幸氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、『週刊エコノミスト』(2020年1月28日号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り
『図書新聞』 [2020年1月25日号、第3432号] から(評者:三好章氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『図書新聞』(2020年1月25日号、第3432号、武久出版発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年1月17日号、第3323号] から(評者:川戸貴史氏)
近世貨幣と経済発展
岩橋勝著『近世貨幣と経済発展』が、『週刊読書人』(2020年1月17日号、第3323号、読書人発行)で紹介されました。「三貨制」史観を塗り替える画期的労作 ——。小額貨幣の流通は、庶民の生活水準の上昇を示す指標である。銭貨や藩札などの需要面に注目し、多様性とダイナミズムを内包する日本各地の実態を分析、東アジアにおける徳川経済の先進性を実証します。
岩橋 勝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0965-2 C3033
在庫有り
『週刊読書人』 [2020年1月17日号、第3323号] から(評者:武藤秀太郎氏)
対日協力者の政治構想
日中戦争とその前後
関智英著『対日協力者の政治構想』が、『週刊読書人』(2020年1月17日号、第3323号、読書人発行)で紹介されました。日中戦争には、抗日と同時に、占領地における協力の側面もあった。しかし多様な協力者たちは戦後、漢奸として糾弾され、その歴史も未完の政治構想とともに葬り去られた。本書はこの影の側面に光を当て、戦争の全体像に迫るとともに、占領から始まった戦後日本に鋭い眼差しを投げかけます。
関 智英 著
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・616頁
ISBN978-4-8158-0963-8 C3022
在庫有り
「京都新聞」 [2019年12月29日付、読書欄特集「2019 目利きが選んだ3冊」] 他から(評者:生井英考氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、「京都新聞」(2019年12月29日付)ほか計18地方紙の読書欄特集(「2019 目利きが選んだ3冊」「今年の収穫」)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。[神戸新聞:2019年12月15日付、岩手日報・下野新聞・静岡新聞・長崎新聞:2019年12月22日付、北日本新聞・沖縄タイムス:2019年12月28日付、秋田さきがけ・河北新報・新潟日報・京都新聞・山陽新聞・中国新聞・日本海新聞・山陰中央新報・高知新聞・徳島新聞・熊本日日新聞・南日本新聞・琉球新報:2019年12月29日付]
“……「映画を見る」経験に関する理論と事例研究の壮大な試み。従来の映画諸理論をふまえ、観客を「単に映画館で映画を観る人々」にとどまらない主体とする理論構想を、日本映画の最初期から「3・11」後のドキュメンタリー自主上映会までの歩みとすり合わせる。……”(「岩手日報」2019年12月22日付、第9面)
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り
「京都新聞」 [2019年12月29日付、読書欄特集「2019 目利きが選んだ3冊」] 他から(評者:成相肇氏)
キュビスム芸術史
20世紀西洋美術と新しい〈現実〉
松井裕美著『キュビスム芸術史』が、「京都新聞」(2019年12月29日付)ほか計16地方紙の読書欄特集(「2019 目利きが選んだ3冊」「今年の収穫」)で紹介されました。絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききります。[岩手日報・下野新聞・静岡新聞:2019年12月22日付、北日本新聞・沖縄タイムス:2019年12月28日付、秋田さきがけ・河北新報・新潟日報・京都新聞・山陽新聞・中国新聞・日本海新聞・山陰中央新報・高知新聞・徳島新聞・熊本日日新聞・南日本新聞・琉球新報:2019年12月29日付]
“…… キュビスムは単なる描き方のスタイルではなく、認識を変容させる、一種の装置の発明だった。それはどんな設計で、どんなエンジンが付き、どんな機能があったのか。作品に則した実証的な分析を徹底し、いかつい学術書に見えて記述はきわめて明快。プログラム(仕組み)を解き明かしつつ作品空間を仮想体験するような冒険の書。……”(「岩手日報」2019年12月22日付、第8面)
松井裕美 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-0937-9 C3071
在庫有り
『東洋史研究』 [第78巻第3号、2019年12月] から(評者:隠岐さや香氏)
イエズス会士と普遍の帝国
在華宣教師による文明の翻訳
新居洋子著『イエズス会士と普遍の帝国』が、『東洋史研究』(第78巻第3号、2019年12月、東洋史研究会編集兼発行)で紹介されました。カトリック拡大のため東方に渡った宣教師らが、巨大な清朝に見出したものは何か。中国古来の世界像や学術は、キリスト教の教義や勃興する科学と結びつくのか。共通言語から統治体制や歴史編纂まで、新たな帝国像を描き出した18世紀のアミオを軸に、多言語史料から「文明の翻訳」の実相を捉える力作。
新居洋子 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・414頁
ISBN978-4-8158-0889-1 C3022
在庫有り
『キネマ旬報』 [2019年10月下旬号、第1822号] から(評者:北村匡平氏)
影の美学
日本映画と照明
宮尾大輔著『影の美学』(笹川慶子・溝渕久美子訳)が、『キネマ旬報』(2019年10月下旬号、第1822号、キネマ旬報社発行)で紹介されました。光と影から見た日本映画史 ——。それは伝統ではなかった! 『陰翳礼讃』以前、日本映画は「明るさ」に価値を求めていた。では「影の美学」はどのように現れ、展開し、伝統となったのか。照明のテクノロジーに注目し、トランスナショナルな視点から新たな日本映画史を描きます。
“…… 本書は日本映画史に「影の美学」がいかに登場し、なぜ必要とされたのか、その複雑に絡まりあった歴史・政治・文化的背景を解き明かしていく。いわば照明の光/影から日本映画史を捉えなおす果敢な試みだ。筆者は作家主義的な研究の限界を指摘し、製作プロセスや歴史的文脈を重視しながら作り手たちの映画史を描き直す。特に長谷川一夫と宮川一夫を論じた第2章と終章は抜群に面白く、不可視だった映画史の一端が鮮明に照らされる。換言すれば、照明の映画史であると同時に優れた長谷川一夫論/宮川一夫論にもなっている。ライティングという切り口で映画史が豊かに、重層的に浮かび上がるのを実感してほしい。映画という芸術の奥深さを痛感すること間違いなし。”(『キネマ旬報』2019年10月号、p.149)
宮尾大輔 著
笹川慶子・溝渕久美子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・374頁
ISBN978-4-8158-0951-5 C3074
在庫有り
『アジア経済』 [第60巻第4号、2019年12月] から(評者:岩間一弘氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『アジア経済』(第60巻第4号、2019年12月、ジェトロ・アジア経済研究所発行)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年12月28日付、読書欄特集「書評委員が選ぶ『今年の3点』」] から(評者:間宮陽介氏)
セレブの誕生
「著名人」の出現と近代社会
アントワーヌ・リルティ著『セレブの誕生』(松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳)が、「朝日新聞」(2019年12月28日付)の読書欄特集「書評委員が選ぶ『今年の3点』」で紹介されました。スキャンダラスな公共性 ——。称賛と批判につつまれた「セレブ」とは、現代のメディアが作り上げた虚像なのか、それとも新たな威光の形なのか。王族・政治家から作家・俳優・音楽家まで、近代の始まりとともに生まれた「セレブリティ」の展開をたどり、公共圏が孕むパラドックスを問います。
“…… 祭り上げる民衆と祭り上げられる著名人。18、19世紀のフランスを舞台にした歴史書であるが、「著名人」という視点は、現代のファシズムやポピュリズムを理解する一助となるかもしれない。”(「朝日新聞」2019年12月28日付、第21面)
アントワーヌ・リルティ 著
松村博史・井上櫻子・齋藤山人 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・474頁
ISBN978-4-8158-0933-1 C3022
在庫有り
『大原社会問題研究所雑誌』 [第735号、2020年1月] から(評者:原山浩介氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『大原社会問題研究所雑誌』(第735号、2020年1月、法政大学大原社会問題研究所)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“……「食をめぐるさまざまな事象や問題を論じることはすなわち、生きることを論じること」という設定は、私にとっては、よくぞ明言してくれた、と思うところがある。これは、この言明が、歴史叙述における心構えとして魅力的だからというばかりではない。そもそも今日において、「食」と「生きる」ということが、内在的な連動をもって思考され、論じられているのかということに対する疑問の表明でもあるからである。この問題について、ここで立ち入った議論はできないが、煎じ詰めていえば、「食の安全」が行政施策として、あるいは科学性に依拠した「リスクコミュニケーション」のなかで扱われたり、国際間の貿易交渉における「関税」と日本の生産現場の問題が取り上げられたりする際、それらはいずれも「生きる」人の好み、思想、社会への態度、そしてもちろん命そのものに深く関わっているはずであるにもかかわらず、体温が感じられない抽象的な議論に切り詰められる傾向が強い。あとがきで、「胃袋が社会への経路としての意味を失いつつある」と記されているように、いわば「大人の議論」が、足元の「食べる」ということのリアリティと結び合うきっかけを取り逃したままであることを告発するのが、本書の隠されたねらいであると私は考えている。……”(『大原社会問題研究所雑誌』第735号、p.79)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『経営史学』 [第54巻第3号、2019年12月] から(評者:加藤健太氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『経営史学』(第54巻第3号、2019年12月、経営史学会発行)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 本書の魅力の一つは、数多くの写真を用いた点にある。たとえば、第2章では、大阪自彊館所蔵の簡易食堂の外観、内観および炊事場の写真を使っている。これにより、読者は当時の情景をよりリアルに思い浮かべながら読み進めることができる。…… 二つ目の魅力として、……日常の食生活史を「都市化」や「産業化」といった社会経済史が探求し続けてきた問題と相互に関連づけながら実証した点を強調したい。…… 「生産と分配」にとどまることなく、人口動態を含む経済社会との相互連関を有機的に把握しながら、食の近代を描き出したといえよう。……”(『経営史学』第54巻第3号、pp.74-75)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『歴史と経済』 [第245号、2019年10月] から(評者:藤原辰史氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『歴史と経済』(第245号、2019年10月、政治経済学・経済史学会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 「玄関」ではなく「勝手口」からの歴史学だと自己規定するこの本が、歴史学全般に投げかけた問いはとても豊かで重い。また、発掘された事実と概念は貴重で、もっと知られるべきものだ。本書執筆にあたってのさまざまな史料の収集と整理、丹念な聞き取り、そしてなにより、それ以前に史料提供者との関係の構築にかけられた膨大な時間と労力は本書の至るところからにじみ出ており、そこを感じるだけでも本書を読む価値はあると思う。”(『歴史と経済』第245号、p.47)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『西洋古典学研究』 [第67号、2019年] から(評者:浜本裕美氏)
ギリシア悲劇と「美しい死」
吉武純夫著『ギリシア悲劇と「美しい死」』が、『西洋古典学研究』(第67号、2019年、日本西洋古典学会)で紹介されました。死の美学、それとも ——。三島由紀夫も憧れた古代ギリシアの「美しい死」。ホメロスやプラトンから葬礼演説までの遺されたテクストを踏まえつつ、戦死を称える詩人の言葉が悲劇作品においてたどった運命を丹念に読み解き、魅惑と苦悩のあいだに浮かび上がるその実像を明らかにします。
“…… 本書の大きな特長は、著者自身強調するように、Thesaurus Linguae Graecae に記録された前8-5世紀の作品を対象に、カロスと修飾された死の全事例を網羅したことにある。ギリシアにおける「カロス・タナトス(美しい死)」(以下、k.th.)という概念に対する探究心と粘り強くテクスト解釈に向き合う姿勢が本書の軸となる。…… 独自の観点からk.th.のモチーフの歴史を辿り、そのモチーフに着目することで、各々の悲劇について従来見過ごされてきた諸問題を浮かび上がらせ、新たな角度から読み解いている。活発な議論を呼ぶ一冊になるだろう。”(『西洋古典学研究』第67号、p.112,114)
吉武純夫 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・384頁
ISBN978-4-8158-0906-5 C3098
在庫有り
『週刊エコノミスト』 [2019年12月31日・2020年1月7日合併号] から(評者:平山賢一氏)
郵政民営化の政治経済学
小泉改革の歴史的前提
伊藤真利子著『郵政民営化の政治経済学』が、『週刊エコノミスト』(2019年12月31日・2020年1月7日合併号、毎日新聞出版発行)で紹介されました。戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出します。
“本書は、政治だけでなく金融市場に影響を与えてきた郵政が、どのように膨張し、金融自由化の荒波の中で国債問題に対峙し、そして民営化に至るかの道程を詳述する。従来、部分的な議論が多かった郵政についての課題を、総合的に捉え直し、改めて「郵政とは何だったのか?」を問うものである。……「郵政改革は、官民と公私とが交差するところでまだ揺れ動いている」という筆者の吐露が示すように、完全民営化への進度と、日本銀行の金融緩和政策からの出口戦略の影響の大きさによっては、財政システムが機能不全に陥るという縁にわれわれは立たされている。郵貯も日本銀行も財政資金供給から立ち去るならば、誰がその役割を担うのか? 完全民営化の先に見る筆者の懸念は、「そして、誰もいなくなった」という言葉で表せるかもしれない。”(『週刊エコノミスト』2019年12月31日・2020年1月7日合併号、pp.64-65)
伊藤真利子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・358頁
ISBN978-4-8158-0968-3 C3033
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年12月21日付] から(評者:石川健治氏)
大学論を組み替える
新たな議論のために
広田照幸著『大学論を組み替える』が、「朝日新聞」(2019年12月21日付)で紹介されました。何を守り、何を見直していけばよいのか ——。なしくずしの政策追随に陥る大学。なぜこんなことになっているのか。価値や理念や規範をめぐる議論を避けることなく、教育の質、評価、学問の自由など具体的なトピックを通して、よい改革論とダメな改革論を区別し、大学が公共的な役割を果たし続けられる道を拓きます。
広田照幸 著
税込2,970円/本体2,700円
四六判・並製・320頁
ISBN978-4-8158-0967-6 C3037
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年12月16日付、文化の扉「地球規模の新・世界史」] から
「朝日新聞」(2019年12月16日付)の「文化の扉:地球規模の新・世界史」で、以下の図書が紹介されました。
I.ウォーラーステイン著/川北稔訳
『近代世界システム』(全4巻)
K.ポメランツ著/川北稔監訳
『大分岐 —— 中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』
「毎日新聞」 [2019年12月15日付、読書欄特集「2019 この3冊」] から(評者:松原隆一郎氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、「毎日新聞」(2019年12月15日付)の読書欄特集「2019 この3冊」で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出す。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
“……「環境に優しい」はずの政策が、現場で住民を苦しめるのはなぜか。…… 宇井純『公害原論』を引用しつつ、アジアに適用された環境政策の裏面を丹念に解き明かす。”(「毎日新聞」2019年12月15日付、第8面から)
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
在庫有り
『図書新聞』 [2019年12月21日号、第3428号、特集「19年下半期読書アンケート」] から(評者:山本圭氏)
信頼の政治理論
西山真司著『信頼の政治理論』が、『図書新聞』(2019年12月21日号、第3428号、武久出版発行)の特集「19年下半期読書アンケート」で紹介されました。市民社会と国家を媒介する概念と見なされる「信頼」—— 良好な政治のミクロな指標として注目を集める一方、従来の信頼論が前提とする認識論やアプローチは深刻な問題を抱えている。ソーシャル・キャピタル論へ至る学説を乗り越えた先に、革新的な政治理論を導き出す気鋭の力作。
“……「信頼論」がもともと持っていたインパクトに着目し、人々の日常生活を経験的に記述するための政治理論を打ち立てようとする本書の企図は、質・量ともにきわめて重い。”(『図書新聞』2019年12月21日号、第1面から)
西山真司 著
税込9,680円/本体8,800円
A5判・上製・726頁
ISBN978-4-8158-0960-7 C3031
在庫有り
『世界』 [2020年1月号、第928号] から(評者:三宅芳夫氏)
グローバル冷戦史
第三世界への介入と現代世界の形成
O・A・ウェスタッド著『グローバル冷戦史』(佐々木雄太監訳/小川浩之・益田実・三須拓也・三宅康之・山本健訳)が、『世界』(2020年1月号、第928号、岩波書店発行)で紹介されました。脱植民地化による第三世界の台頭は、超大国の命運をどのようにかえていったのか? 冷戦の主要舞台であった第三世界諸国の苦闘と戦略的対応を縦横に叙述、超大国の蹉跌の真の原因を描き出す。第三世界から見た冷戦史の新たな全体像を示し、現代世界の諸問題の起源をも捉えた注目作。
O・A・ウェスタッド 著
佐々木雄太 監訳
小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳
税込7,260円/本体6,600円
A5判・上製・508頁
ISBN978-4-8158-0643-9 C3031
在庫有り
「東京大学 教養学部報」 [2019年12月号、第614号] から(評者:田中純氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、「東京大学 教養学部報」(2019年12月号、第614号、東京大学教養学部発行)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
在庫有り
「読売新聞」 [2019年12月8日付] から(評者:藤原辰史氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフ/C・ホール著『家族の命運』(山口みどり/梅垣千尋/長谷川貴彦訳)が、「読売新聞」(2019年12月8日付)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
“…… 本書は、工業都市バーミンガムと農村部のエセックスとサフォークで暮らしていた中産階級の遺した膨大な史料を用いて、外からは成功者に見える中産階級の抑圧構造を暴いていく。とりわけ重視されるのは「男らしさ」と「女らしさ」というジェンダー規範と、「公」と「私」の形成だ。中産階級の人びとには、女性は家庭に入り、男性を支え、男性に従属するという規範があり、女性が独立した行動を起こすと「女らしくない」と押さえ込み、他方で、家族を守れない男を「男らしくない」としてこき下ろした。…… 重要なのは、世界に冠たる国を支えたこの規範の内部はすでに矛盾含みだったこと。この階級の特徴である市場に頼る経済構造は、妻の家計のやりくりにかなり依存する。商業行為と宗教規範の矛盾に悩む男は、ますます妻に頼る。頼りながら妻や娘を束縛する家父長の矛盾は、結婚制度によって覆い隠されてきた。いまの日本社会に根深く存在する性差別の構造を知るためにも役立つ歴史書だ。”(「読売新聞」2019年12月8日付、第12面から)
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
在庫有り
「毎日新聞」 [2019年12月8日付、読書欄特集「2019 この3冊」] から
「毎日新聞」(2019年12月8日付)の読書欄特集「2019 この3冊」で、以下の図書が紹介されました。
【内田麻理香氏による紹介】
広田照幸著
『大学論を組み替える —— 新たな議論のために』
“…… 現在の大学は政策に振り回されているが、「良い改革論」と「ダメな改革論」を区別した上で、大学論を組み替える必要があることを示す。……”(「毎日新聞」2019年12月8日付、第10面から)
【張競氏による紹介】
芳賀徹著
『桃源の水脈 —— 東アジア詩画の比較文化史』
“…… 詩歌や絵画における桃源郷の表象には長い歴史があるにもかかわらず、これまで日本や韓国だけでなく、中国にもまだ専門に扱う書物はない。…… 40年以上の歳月をかけてまとめられたもので、東アジア文化における理想郷憧憬の系譜を見事に説き明かした。……”(「毎日新聞」2019年12月8日付、第11面から)
『図書新聞』 [2019年12月14日号、第3427号] から(評者:野々村淑子氏)
家族の命運
イングランド中産階級の男と女 1780~1850
L・ダヴィドフ/C・ホール著『家族の命運』(山口みどり/梅垣千尋/長谷川貴彦訳)が、『図書新聞』(2019年12月14日号、第3427号、武久出版発行)で紹介されました。現在、没落を言われる「中間層」は、どのように形成されたのか。—— 経済・政治・社会が急激に変動する産業革命の中心国を舞台に、家族とジェンダーに注目し、そのイデオロギー・制度・実践を、さまざまな男女の生き様を通して、鮮やかに描き出した名著、待望の邦訳。
“…… この研究の重要性は、そうした史料をもとに、近代資本主義の社会が徐々に出来上がっていく、職住分離のプロセスが描かれていることだろう。製造と販売が徐々に分離しつつ、住み込み店員や家族労働の形態から、職場とは別の住居に住むようになっていく過程である。男女の領域分離は、突然起きたことではない。各々の労働を支える経済構造、社会構造が徐々に変化していくなかで、その仕事が中産階級の男性の仕事として定義され、まさにその仕事を担う存在として、彼らが男性となっていく。そしてそれと対をなすように、中流階級の女性たちは、それら男性による有給の仕事から排除されていく様子が、具体的な生活に即して叙述されるのである。……”(『図書新聞』2019年12月14日号、第5面から)
L・ダヴィドフ/C・ホール 著
山口みどり・梅垣千尋・長谷川貴彦 訳
税込7,920円/本体7,200円
A5判・上製・520頁
ISBN978-4-8158-0955-3 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年12月6日号、第3318号] から(評者:城山陽宣氏)
関羽と霊異伝説
清朝期のユーラシア世界と帝国版図
太田出著『関羽と霊異伝説』が、『週刊読書人』(2019年12月6日号、第3318号、読書人発行)で紹介されました。三国志の英雄はなぜ中国を代表する神となったのか。民間信仰の広がりと近世国家による統治の不可分の関係を示すとともに、帝国版図の拡大にはたしたその役割を、ユーラシア諸民族とのせめぎあいや現地の神々との習合も視野に描き出す。古代から今日にいたる関羽信仰の全貌を捉えた力作。
太田 出 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・324頁
ISBN978-4-8158-0961-4 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年11月29日号、第3317号] から(評者:山辺春彦氏)
丸山眞男の教養思想
学問と政治のはざまで
西村稔著『丸山眞男の教養思想』が、『週刊読書人』(2019年11月29日号、第3317号、読書人発行)で紹介されました。「知」が問い直される時代に ——。教養と学問が関係することは、実は自明ではない。教養とは何か。また学問と思想はどのように関わるのか。知識人として、学者として、丸山が発し続けた問いと思考の展開を、遺された言葉の総体から精緻に読み解き、「丸山論」をこえて現代日本に提示。
西村 稔 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・566頁
ISBN978-4-8158-0953-9 C3010
在庫有り
『図書新聞』 [2019年12月7日号、第3426号] から(評者:伊達直之氏)
家のイングランド
変貌する社会と建築物の詩学
大石和欣著『家のイングランド』が、『図書新聞』(2019年12月7日号、第3426号、武久出版発行)で紹介されました。建築物に積み重なる経験と記憶に寄り添うとき、そこには何が見えてくるのか。カントリー・ハウスや田舎家、郊外住宅から、都市の闇としてのスラムまで、テクストが描きだす多様な建築表象を歴史的・社会的文脈の中で読み解き、「イングリッシュな家」の神話を問い直す画期的な建築文学論。
“…… 本書を開くとまず目に飛び込むのが、柔らかく美しい色調で懐かしく描かれた農家屋の口絵である。樹々に守られ花に飾られた美しい田園の家とその前に佇む、質素だが幸せそうに幼子を抱く健康な母の風景。ヘレン・アリンガムが当時のベストセラー、『イングランドのコテッジ・ホーム』(1909)に寄せた挿絵だ。まさに自然と文明が適度に調和するイングランドの美徳を、ピクチャレスクに体現したステレオタイプの極み。しかしこのコテッジは現実存在ではない。むしろ「忙しなく不衛生な都会から隔離された憩いのオアシスとして人工的に構築され、メディアによって演出され、さらに文学と絵画を通して理想化され、時には投機や売買の対象として市場価値を付与されることで出来上がったイメージである。言い換えれば、人為によって形成された政治的な記号であり、人々の嗜好とイデオロギーを体現した人工物であり、意識的に保持された文化的産物」なのだと分析される。そして歴史的にこのイメジャリーを生みだした文化的認識の根源には、先行する時代に急速に可視化された、大都市のスラム街の拡大と不衛生な貧困生活への圧倒的な認識があり、相反しての平等で健康な中世への憧憬と、人間が退化するスラム街に対照対置されたかのネオ・ゴシック建築の大流行の前史があったことが、詳述される。……”(『図書新聞』2019年12月7日号、第4面から)
大石和欣 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・418頁
ISBN978-4-8158-0959-1 C3098
在庫有り
『週刊東洋経済』 [2019年12月7日号、特集「ビジネスマンのための世界史&宗教」] から
『週刊東洋経済』(2019年12月7日号、東洋経済新報社発行)の特集「ビジネスマンのための世界史&宗教」の、「世界史ベストブック 超解説」(宇山卓栄氏)で、以下の図書が紹介されました。
K.ポメランツ著/川北稔監訳
『大分岐 —— 中国、ヨーロッパ、そして近代世界経済の形成』
I.ウォーラーステイン著/川北稔訳
『近代世界システム』(全4巻)
『国際開発研究』 [第28巻第2号、2019年11月] から(評者:森晶寿氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、『国際開発研究』(第28巻第2号、2019年11月、国際開発学会発行)で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出す。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
在庫有り
「神戸新聞」 [2019年11月17日付] 他から
影の美学
日本映画と照明
宮尾大輔著『影の美学』(笹川慶子・溝渕久美子訳)が、「神戸新聞」(2019年11月17日付、共同通信社配信記事)ほか計9地方紙で紹介されました。光と影から見た日本映画史 ——。それは伝統ではなかった! 『陰翳礼讃』以前、日本映画は「明るさ」に価値を求めていた。では「影の美学」はどのように現れ、展開し、伝統となったのか。照明のテクノロジーに注目し、トランスナショナルな視点から新たな日本映画史を描きます。[下野新聞・日本海新聞:2019年10月27日付、南日本新聞:2019年10月31日付、茨城新聞・神奈川新聞・山梨日日新聞・大分合同新聞:2019年11月3日付、河北新報:2019年11月10日、神戸新聞:2019年11月17日]
宮尾大輔 著
笹川慶子・溝渕久美子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・374頁
ISBN978-4-8158-0951-5 C3074
在庫有り
『史学研究』 [第304号、2019年10月] から(評者:東田雅博氏)
近代世界の誕生【上下巻】
グローバルな連関と比較 1780-1914
C.A.ベイリ著『近代世界の誕生』(平田雅博・吉田正広・細川道久訳、上下巻)が、『史学研究』(第304号、2019年10月、広島史学研究会)で紹介されました。【上巻】欧米から日本まで全世界に及ぶ相互連関と比較を軸に、「近代世界」成立の全体像を描ききるグローバル・ヒストリーの代表作。待望の邦訳。【下巻】世界各地の相互連関を解明し、従来の地域史や一国史を見直すことで、「多中心的」な近代史を描き出すグローバル・ヒストリーの名著。
“……『近代世界の誕生』はどういう意味で傑作であると言えるのか。評者がこの著書をはじめて眼にした時、『帝国の時代』(野口建彦、長尾史郎、野口照子訳、みすず書房、1993年)などで知られる20世紀最高の歴史家と評しても過言ではない、エリック・ホブズボームの著書が頭に浮かんだ。スケールが桁違いに大きく、かつ通常の歴史書では排除されてしまう芸術などの分野までも視野に収めているところが両者に共通するからである。しかし、ベイリの著書を読み進めれば両者の違いは明らかになる。ベイリは、18世紀の末から20世紀の初頭までの時代の「グローバルな連関と比較」を描くと謳うのだが、これを文字通りにやってのけるのである。ヨーロッパ、南北アメリカ、アジア、イスラム世界、そしてアフリカを、つまりまさにグローバルな世界全体を視野に収め、しかも人間の営みのあらゆる領域、政治、経済、社会、思想、科学、宗教、芸術を対象としてである。世界の衣服や人名の統一化まで論じている。まさに圧巻のグローバル・ヒストリーである。このベイリの傑作を前にすればホブズボームの傑作もいささか霞んでしまうのはやむを得まい。……”(『史学研究』第304号、p.92から)
C.A.ベイリ 著
平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
税込各4,950円/本体各4,500円
A5判・上製・上356頁+下408頁
ISBN 上:978-4-8158-0929-4 下:978-4-8158-0930-0
C3022
在庫有り
『史学雑誌』 [2019年10月号、第128編第10号] から(評者:井谷鋼造氏)
普遍史の変貌
ペルシア語文化圏における形成と展開
大塚修著『普遍史の変貌』が、『史学雑誌』(2019年10月号、第128編第10号、公益財団法人史学会編集・発行)で紹介されました。歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
大塚 修 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0891-4 C3022
在庫有り
『日本物理学会誌』 [2019年11月号、第74巻第11号] から(評者:岡本拓司氏)
力学の誕生
オイラーと「力」概念の革新
有賀暢迪著『力学の誕生』が、『日本物理学会誌』(2019年11月号、第74巻第11号、日本物理学会編集・発行)で紹介されました。ニュートン以後、自然哲学との決別を通して力学は生まれ直した。惑星の運動から球の衝突まで、汎用性をもつ新たな学知として立ち上がる過程を丹念に追跡。オイラーの果たした画期的役割を、ライプニッツやベルヌーイ、ダランベールやラグランジュらとの関係の中で浮彫りにします。
有賀暢迪 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-0920-1 C3040
在庫有り
『日本物理学会誌』 [2019年11月号、第74巻第11号] から(評者:神原陽一氏)
磁性と超伝導の物理
重い電子系の理解のために
佐藤憲昭・三宅和正著『磁性と超伝導の物理』が、『日本物理学会誌』(2019年11月号、第74巻第11号、日本物理学会編集・発行)で紹介されました。超伝導状態は磁性不純物で容易に壊されることから、磁性と超伝導は一見相容れないが、ある種の物質では両者が共存し、相関すらしている。本書は、このメカニズムを理解するために、磁性と超伝導を統一的に把握。レアアースをはじめとするf 電子系物質に、実験・理論双方から迫ります。
佐藤憲昭・三宅和正 著
税込6,270円/本体5,700円
A5判・並製・400頁
ISBN978-4-8158-0726-9 C3042
在庫有り
『科学史研究』 [2019年10月号、第Ⅲ期第58巻第291号] から(評者:中澤聡氏)
力学の誕生
オイラーと「力」概念の革新
有賀暢迪著『力学の誕生』が、『科学史研究』(2019年10月号、第Ⅲ期第58巻第291号、日本科学史学会編集兼発行)で紹介されました。ニュートン以後、自然哲学との決別を通して力学は生まれ直した。惑星の運動から球の衝突まで、汎用性をもつ新たな学知として立ち上がる過程を丹念に追跡。オイラーの果たした画期的役割を、ライプニッツやベルヌーイ、ダランベールやラグランジュらとの関係の中で浮彫りにします。
有賀暢迪 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・356頁
ISBN978-4-8158-0920-1 C3040
在庫有り
『経済研究』 [第70巻第4号、2019年10月] から(評者:横山和輝氏)
日本中世市場論
制度の歴史分析
安野眞幸著『日本中世市場論』が、『経済研究』(第70巻第4号、2019年10月、一橋大学経済研究所編/岩波書店発行)で紹介されました。支払い・貸借・契約・裁判・差押えなど、市場が果たした多様な役割を明らかにするとともに、債権取立てを軸に中世日本の展開を描き出したライフワーク。神人・悪僧に発し金融を担う「公界」と公権力とは、慣習法と制定法、文書とその破棄、暴力と秩序等をめぐり、いかに切り結ぶのか。
安野眞幸 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・460頁
ISBN978-4-8158-0921-8 C3021
在庫有り
『経済研究』 [第70巻第4号、2019年10月] から(評者:寺西重郎氏)
もう一つの金融システム
近代日本とマイクロクレジット
田中光著『もう一つの金融システム』が、『経済研究』(第70巻第4号、2019年10月、一橋大学経済研究所編/岩波書店発行)で紹介されました。日本の発展を導いたのは、日銀中心の銀行システムだけではなかった。現代の郵便貯金や農協に連なる系譜をもつ「大衆資金ネットワーク」が地方経済の安定と成長に果たした役割を、資金供給の実例や制度設計から解明。見過ごされてきた半身に光を当て、経済成長の条件を問い直す意欲作。
田中 光 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0932-4 C3033
在庫有り
『経済研究』 [第70巻第4号、2019年10月] から(評者:厳善平氏)
産業化する中国農業
食料問題からアグリビジネスへ
宝剣久俊著『産業化する中国農業』が、『経済研究』(第70巻第4号、2019年10月、一橋大学経済研究所編/岩波書店発行)で紹介されました。製造業など工業の高度成長の陰で見過ごされてきた農業。しかしその経済発展を可能にしたのは、飢饉の経験を乗り越えて、厖大な人口への食料供給を実現した農業であった。龍頭企業の台頭など、アグリビジネスでも世界的地位を築きつつある中国農業の現状を、新たな視座で描き出します。
宝剣久俊 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・276頁
ISBN978-4-8158-0886-0 C3033
在庫有り
「読売新聞」 [2019年11月3日付] から(評者:坂井豊貴氏)
近世貨幣と経済発展
岩橋勝著『近世貨幣と経済発展』が、「読売新聞」(2019年11月3日付)で紹介されました。「三貨制」史観を塗り替える画期的労作 ——。小額貨幣の流通は、庶民の生活水準の上昇を示す指標である。銭貨や藩札などの需要面に注目し、多様性とダイナミズムを内包する日本各地の実態を分析、東アジアにおける徳川経済の先進性を実証します。
“通貨は円やドルだけを気にすればよい時代は終わってしまった。…… これまでの常識が通用しなくなるなか、いかにして変化を理解すればよいのか。一つの有効な方法は、参考となる史実をたよりに、いまの理解に努めることだろう。本書は徳川期の貨幣流通を分析するものだが、その手引きとしての価値をも有している。…… 時代は変われども、通貨が市場経済を駆動すること、信用が要であることは普遍的である。”(「読売新聞」2019年11月3日付、第26面)
岩橋 勝 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・456頁
ISBN978-4-8158-0965-2 C3033
在庫有り
「読売新聞」 [2019年10月28日付] から
老年と正義
西洋古代思想にみる老年の哲学
瀬口昌久著『老年と正義』が、「読売新聞」(2019年10月28日付)の「編集手帳」で取り上げられました。老年論の原点 ——。老年とはたんに福祉の対象なのか。人生の最終章をむかえ、あらためてよく生きることを考え、実践すべき時ではないのか。老人は政治にも参与すべきか。西洋古代思想にさかのぼり、見失われた正義という観点から、老年を内面から支える精神的基盤を問い直す注目の書。
瀬口昌久 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・328頁
ISBN978-4-8158-0676-7 C3010
在庫有り
『図書新聞』 [2019年11月2日号、第3421号] から(評者:喜多川進氏)
反転する環境国家
「持続可能性」の罠をこえて
佐藤仁著『反転する環境国家』が、『図書新聞』(2019年11月2日号、第3421号、武久出版)で紹介されました。国家に依存した自然保護の急速な展開は何をもたらしたのか ——。東南アジアをフィールドに、灌漑や森林、漁業資源をめぐって起こる思いがけない「人の支配」への転化や、開発と保護の連鎖する関係をあぶりだし、その解決策を現場の人々のしたたかな戦略や日本の経験に見出します。環境論の新たな地平を拓く著者の到達点。
“…… 多様な反転の態様をインドネシアの灌漑用水、タイの共有林、カンボジアの漁業資源などの事例から明らかにしている。その結果、「環境にやさしい」はずの政策が、地域の人々を苦しめる実態が浮き彫りになっている。…… 新しい視座を提示するとともに、「環境政策を真に社会科学的な課題にしていくための土台を準備」(ⅶ頁)したといえる本書は、環境問題をいわゆる「環境好き」の人びとの考察対象にとどめず、統治・支配のあり方を議論するうえでの格好の素材として見出している。昨今はSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)ブームであるが、本書をSDGsの反転の芽を察知するうえでの警世の書とみなすこともできる。 ……”(『図書新聞』2019年11月2日号、第3面)
佐藤 仁 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0949-2 C3031
在庫有り
『史林』 [第102巻第4号、2019年7月] から(評者:大塚修氏)
モンゴル時代の「知」の東西【上下巻】
宮紀子著『モンゴル時代の「知」の東西』(上下巻)が、『史林』(第102巻第4号、2019年7月、史学研究会)で紹介されました。日本からヨーロッパまで、人・モノ・情報が行き交う ——。世界史上、空前のレベルで展開したユーラシアを貫く「知」の交流。百科事典や辞書・地図から宗教・政治・経済の諸制度まで、モンゴル帝国によるダイナミックな革新と統合の実像を、多言語の文献・美術品・出土文物を駆使して描き出す記念碑的労作。
“「凄い」。本書を形容する言葉として、この一語のほかに相応しい言葉があろうか。…… 本書には、著者の20年来の史料調査の成果、それらの徹底的な分析、何より、定説にとらわれない柔軟な思考から導き出された学説が散りばめられており、その学術的貢献は計り知れない。本書のウリの一つは充実した脚注で、時に論旨とは関係ない事項にまで脚注が付され、新たな論が展開されるなど、それぞれが一つの史料研究に昇華する可能性を秘めたものも多い。…… そこには多くの重要な知見が含まれており、幅広い分野の研究者に役立つ内容となっている。今後、専門や地域を問わず、モンゴル時代を研究する者が必読すべき論文集となるであろうことに疑いの余地はない。……”(『史林』第102巻第4号、pp.98-102)
宮 紀子 著
税込各9,900円/本体各9,000円
菊判・上製・上574頁+下600頁
ISBN 上:978-4-8158-0900-3 下:978-4-8158-0901-0
C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2019年10月19日号、第3419号] から(評者:板倉史明氏)
影の美学
日本映画と照明
宮尾大輔著『影の美学』(笹川慶子・溝渕久美子訳)が、『図書新聞』(2019年10月19日号、第3419号、武久出版)で紹介されました。光と影から見た日本映画史 ——。それは伝統ではなかった! 『陰翳礼讃』以前、日本映画は「明るさ」に価値を求めていた。では「影の美学」はどのように現れ、展開し、伝統となったのか。照明のテクノロジーに注目し、トランスナショナルな視点から新たな日本映画史を描きます。
“…… 本書を通じて、これまで何気に見ていた映画作品の意味を、映像の光と影の特徴から(も)読み解くという、映画の新たな愉しみ方を習得することができる。ただし、本書は単に映画における照明技法の細部とその意味を読み解くリテラシーを教えてくれるだけではない。そのスキルを踏まえたうえで、具体的な映画作品における照明表現と、同時代の照明に関する言説との関係を考察することで、同時代の映画人や映画産業と社会・国家をめぐるポリティクスを浮かび上がらせることこそが、本書のより重要な目的である。なぜなら、「照明のテクノロジーとテクニックは、スクリーン上のイメージを超えて、映画ビジネスの主導権や、日本の文化的アイデンティティの確立などをめぐる、映画製作者、批評家、観客の間での絶え間ない葛藤と交渉の中に存在していた」(本書277頁)からである。…… 本書の成果は、映画研究だけでなく、同時代の写真や絵画など、ほかの表象文化における「影の美学」との比較にも活用できそうだ。戦時下あるいは戦後復興期の日本映画界と同じように、日本写真界や日本画の世界においても、“日本独自の”「影の美学」という “伝統の創出” や、その文化的・政治的な流用が行われたのではないか。その意味で、本書は映画研究者だけでなく、より表象芸術一般に興味を持つ読者・研究者にも大きな刺激を与えてくれるものになるだろう。”(『図書新聞』2019年10月19日号、第6面)
宮尾大輔 著
笹川慶子・溝渕久美子 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・374頁
ISBN978-4-8158-0951-5 C3074
在庫有り
『図書新聞』 [2019年10月12日号、第3418号] から(評者:都築勉氏)
丸山眞男の教養思想
学問と政治のはざまで
西村稔著『丸山眞男の教養思想』が、『図書新聞』(2019年10月12日号、第3418号、武久出版)で紹介されました。「知」が問い直される時代に ——。教養と学問が関係することは、実は自明ではない。教養とは何か。また学問と思想はどのように関わるのか。知識人として、学者として、丸山が発し続けた問いと思考の展開を、遺された言葉の総体から精緻に読み解き、「丸山論」をこえて現代日本に提示。
西村 稔 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・566頁
ISBN978-4-8158-0953-9 C3010
在庫有り
『アイソトープニュース』 [2019年10月号、第765号] から(評者:坂野康昌氏)
詳解テキスト 医療放射線法令[第三版]
西澤邦秀編『詳解テキスト 医療放射線法令[第三版]』が、『アイソトープニュース』(2019年10月号、第765号、日本アイソトープ協会)で紹介されました。医療放射線法令の全体像を理解するために、医療法施行規則第4章の内容を、関連通知も含めて体系的に整理。図表や写真を豊富に用いて視覚的・直感的に把握できる本書は、診療放射線技師をめざす学生だけでなく、医療放射線実務のための参考書としても必携。第2版刊行後に出された通知や改正など、最新の情報を盛り込んだ待望の改訂版。
“…… この書籍は、学生時代のテキストに使用するだけでは勿体無いです。むしろ実務の医療現場は、「医療法をはじめとする多数の法律で幾重にも取り巻かれている」といっても過言ではないため、現職のプロフェッショナルや放射線領域の管理者が活用すべき書物とも言えます。…… 放射線による不要な被ばくの防止・低減を主眼として、医療用放射線を有効に活用していくためのマイルストーンになるということは間違い無いでしょう。”(『アイソトープニュース』2019年10月号、p.51)
西澤邦秀 編
税込4,950円/本体4,500円
B5判・並製・222頁
ISBN978-4-8158-0934-8 C3047
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年10月5日付] から(評者:山下範久氏)
『近代世界システム』(全4巻)
I.ウォーラーステイン著/川北稔訳『近代世界システム』(全4巻)が、「朝日新聞」(2019年10月5日付)読書欄の「ひもとく」で紹介されました。
『近代世界システム』(全4巻)
I.ウォーラーステイン 著/川北 稔 訳
第Ⅰ巻: 農業資本主義と「ヨーロッパ世界経済」の成立
第Ⅱ巻: 重商主義と「ヨーロッパ世界経済」の凝集 1600-1750
第Ⅲ巻:「資本主義的世界経済」の再拡大 1730s-1840s
第Ⅳ巻: 中道自由主義の勝利 1789-1914
『国際安全保障』 [第47巻第2号、2019年9月] から(評者:クロス京子氏)
ジェノサイド再考
歴史のなかのルワンダ
鶴田綾著『ジェノサイド再考』が、『国際安全保障』(第47巻第2号、2019年9月、国際安全保障学会)で紹介されました。1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
“…… 本書は、1994年にジェノサイドがなぜ起こり、そして「虐殺の記憶」がいかに形成されてきたのかを歴史的視座から明らかにするものである。カガメ大統領の独裁が進む現在のルワンダの「歴史の政治化」の背景に迫る、まさに時機に投ずる研究であるといえよう。……
本書は、…… 以下の2点の特徴がある。第一に、ジェノサイドの起源を理解するために、1950年代後半から60年代前半のフトゥ・エリートによってトゥチの王政が転覆された「社会革命」から独立期の民族間、及び民族内の政治対立に着目する点である。筆者は、民族関係がこの時期を通じて変化したことを指摘し、後のジェノサイドの遠因とされる社会革命がそれ以前に形成されていたトゥチとフトゥの対立の帰結とする先行研究とは異なる見方を提示する(20頁)。本書は1950年代後半から60年代前半の革命・独立期のトゥチとフトゥという民族と民族間関係の構築過程の分析を通じて、ジェノサイドの発生原因のみならず、ジェノサイド後のルワンダで民族と政治がいかに複雑に絡み合っているのかを考察する。
第二に、本書が、ルワンダ国内や信託統治国であったベルギー、国連の公文書館の史資料に加え、先行研究で十分活用されてこなかった米国や英国、日本の公文書館やカトリック宣教師の史資料など、複数の公文書を利用・分析するマルチアーカイブ方式を採用した研究である点である。本書は複数国にまたがるルワンダに関する史資料を広範に渉猟し、先行研究が欠如している1950年代後半から60年代前半の国際関係がいかにルワンダ国内に影響を及ぼしたのかを実証的に分析する。”(『国際安全保障』第47巻第2号、pp.119-120)
鶴田 綾 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0931-7 C3031
在庫有り
『歴史評論』 [2019年9月号、第833号] から(評者:李穂枝氏)
朝鮮外交の近代
宗属関係から大韓帝国へ
森万佑子著『朝鮮外交の近代』が、『歴史評論』(2019年9月号、第833号、歴史科学協議会)で紹介されました。朝鮮はなぜ、東アジア政治の焦点となるのか。中華と近代の結節点に位置し、摩擦のなかから生み出されていった外交の論理をその起源から解明。外政機構の形成から大韓帝国の成立までを一貫した視座でとらえ、激動の東アジア国際関係史のなかで決定的な位置を占めた姿を浮かび上がらせます。
森 万佑子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0883-9 C3022
在庫有り
『ゲンロン10』 [2019年9月] から
ロボットに倫理を教える
モラル・マシーン
ウェンデル・ウォラックほか著『ロボットに倫理を教える』(岡本慎平・久木田水生訳)が、『ゲンロン10』(2019年9月、ゲンロン)の「ブックガイド 山本貴光+吉川浩満 人工知能と人文知を結ぶ15の必読書」で紹介されました。AIやロボットは、果たして道徳的になれるのか? 間近に迫る倫理的な機械の必要性を、哲学的背景も含めて明確に提示。実現に向けた種々の工学的アプローチを概観し、困難ではあるが避けがたい取り組みのこれからを展望する。エンジニアと哲学者を架橋する待望の書。
ウェンデル・ウォラック/コリン・アレン 著
岡本慎平/久木田水生 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0927-0 C3010
在庫有り
『アジア経済』 [第60巻第3号、2019年9月] から(評者:三須拓也氏)
ジェノサイド再考
歴史のなかのルワンダ
鶴田綾著『ジェノサイド再考』が、『アジア経済』(第60巻第3号、2019年9月、ジェトロ・アジア経済研究所)で紹介されました。1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
“…… 評者の観点では、本書の評価点は3つある。第1の評価点として本書は、ルワンダ独立史の詳細な分析を試みるが、刮目に値するのはさまざまな資料を渉猟した点である。…… ベルギー植民地関連の史料はもとより、米国政府、英国政府、国連の公式資料、さらには独立当時を知るルワンダ人への聞き取りなどを試みる。…… 第2の評価点として、本書からは歴史の岐路の問題を考えさせられる。本書は、ベルギーがルワンダから退出する際にフトゥに肩入れし、フトゥとトゥチの対立を利用しようとした局面を描く。また本書は、ルワンダとコンゴの統合、タンガニーカとルアンダ・ウルンディの統合の可能性、パン・アフリカニズムに向けた動きなどから、この時期が国境線を巡ってさまざまな未来を展望した時代であったことを想起させる。もしベルギーのこのような分断統治の試みがなければ、あるいは現地社会の実態に即した国境線の変更があれば、歴史はどうなっていたのか。想像は尽きない。第3の評価点として、比較的読みやすい叙述も本書の特徴である。…… 本書は、熟読するほどさまざまな論点を見出すことができる刺激的な本である。…… また世界的にも類書が乏しいなかでの著者の向学心と努力にも感服する。ルワンダ研究の一里塚として、今後、必読書となることは間違いないだろう。”(『アジア経済』第60巻第3号、pp.78-80)
鶴田 綾 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0931-7 C3031
在庫有り
「神戸新聞」 [2019年9月8日付] 他から(評者:福嶋亮大氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「神戸新聞」(2019年9月8日付)ほか26地方紙で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。[福島民友・北日本新聞・北國新聞:2019年7月20日付、岩手日報・秋田さきがけ・南日本新聞・琉球新報:2019年7月21日付、福島民報・沖縄タイムス:2019年7月27日付、下野新聞・神奈川新聞・新潟日報・京都新聞・日本海新聞・山陰新聞・愛媛新聞・宮崎日日新聞:2019年7月28日付、山梨日日新聞・岐阜新聞・四国新聞・長崎新聞・大分合同新聞:2019年8月4日付、信濃毎日新聞:2019年8月11日付、静岡新聞・山陰中央新報:2019年9月1日付、神戸新聞:2019年9月8日付、東奥日報:2019年9月29日付]
“…… 桃源郷はかつてあった世界へのノスタルジーの産物であり、その想像力はいわば「子供の領分」に根ざしている。著者は桃源郷に託して文明の幼年期を、つまり大人たちの忘れた小世界をかたどってみせた。もとより、人間の営みは大人の時間軸には収まりきらない。歴史とは数限りない夢と記憶の折り畳まれた複合体だからである。”(「神戸新聞」2019年9月8日付、第19面)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
『史学雑誌』 [第128編第8号、2019年8月号] から(評者:齊藤寛海氏)
原典 中世ヨーロッパ東方記
高田英樹編訳『原典 中世ヨーロッパ東方記』が、『史学雑誌』(第128編第8号、2019年8月号、史学会)で紹介されました。モンゴル帝国の侵攻はヨーロッパを震撼させ、その世界像に転換を迫った。当時、東方に派遣された修道士や商人たちは何を見、どのように記録したのか。ルブルクやマルコ・ポーロ、ハイトンらの旅行記から、書簡、教会壁画、世界地図まで全15編を原典から翻訳集成し、ヨーロッパによるアジア認識の展開をたどります。
“…… 西欧人が中国やインド洋に進出したのに、なぜ、中国人やムスリムは西欧に進出しなかったのだろうか。本書が紹介した「東方の記」がもたらした東方の知識とそれが掻き立てた憧憬が、進出の原点にあったことは否定できないだろう。”(『史学雑誌』第128編第8号、p.82)
高田英樹 編訳
税込13,200円/本体12,000円
菊判・上製・852頁
ISBN978-4-8158-0936-2 C3022
在庫有り
『しんくみ』 [2019年9月号] から(評者:桑原武志氏)
もう一つの金融システム
近代日本とマイクロクレジット
田中光著『もう一つの金融システム』が、『しんくみ』(2019年9月号、全国信用組合中央協会)で紹介されました。日本の発展を導いたのは、日銀中心の銀行システムだけではなかった。現代の郵便貯金や農協に連なる系譜をもつ「大衆資金ネットワーク」が地方経済の安定と成長に果たした役割を、資金供給の実例や制度設計から解明。見過ごされてきた半身に光を当て、経済成長の条件を問い直す意欲作。
“タイトルの「もう一つの金融システム」とは、個人の少額貯蓄すなわち大衆資金を基盤とした非営利目的の金融システムのことである。本書は、日本の発展を導いたのは、日本銀行を頂点とした一般の銀行・株式市場を中心とした通常の金融システムだけでなく、もう一つの金融システムもそうなのだと主張している。…… 過去から学べるものは数多くある。本書のいう「もう一つの金融システム」から学んだことを、これからの人口減少時代におけるシステム構築に活かすためにも、ぜひ読んでいただきたい一書である。”(『しんくみ』2019年9月号、p.61)
田中 光 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0932-4 C3033
在庫有り
『歴史評論』 [2019年9月号、第833号] から(評者:玉真之介氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『歴史評論』(2019年9月号、第833号、歴史科学協議会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 評者が最も感銘を受けたのは、著者が特に都市の「集団食」をめぐって、国や自治体の社会政策と民間や地域の社会事業が棲み分けつつ相互作用して、確かなネットワークを作っていたことを明らかにした点であった。小河滋次郎の監獄論・食堂論に始まり、大阪のセツルメント運動や大原孫三郎の社会問題研究所設立などの実践、さらに愛知県社会事業主事・三上孝基と方面委員会制度、それとも関わる林曜三の起町での共同炊事事業などなど。
「食」が都市における社会問題となって、それに対する官民双方での社会政策や社会事業が取り組まれたところにこそ、紛れもなく「近代」の日本の姿があった。かつてのパラダイムは、もっぱら生産力や生産関係の近代化に視点を向けるものだった結果として、こうした社会問題とそれへの挑戦に適切な評価を与えられず、「近代化の遅れ」や階級闘争の課題に還元してしまう傾向がつよかった。その場合、著者が検出したような実践も、「温情主義」といった評価しか与えられてこなかったのである。
その意味でも、キーワードは「社会」である。「福祉国家」を解体して新自由主義の時代を導いたリーダーの一人、マーガレット・サッチャーは述べている。「社会なんてものはない。個人としての男がいて、個人としての女がいて、家族がある。ただそれだけだ。」と。社会主義の破綻により、すべての問題を自己責任に帰結させる新自由主義が世界を席巻する今日、かつての発展段階論や階級闘争史観に換わって、著者が着目したような、社会政策の展開や社会事業の実践に対する積極的な評価が必要になっている。その意味でも、著者による社会事業ネットワークの検出は、本書の野心的な取組が新しい歴史学を切り開く着実な一歩であることの証と言えるだろう。……”(『歴史評論』第833号、pp.71-72)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年9月13日付] から
過日逝去された、『近代世界システム』(全4巻)の著者、イマニュエル・ウォーラーステイン氏。本書の訳者である川北稔先生による追悼文が、「朝日新聞」(2019年9月13日付)に掲載されました。“世界システム論、壮大な試み ウォーラーステインさんを悼む”
『近代世界システム』(全4巻)
I.ウォーラーステイン 著/川北 稔 訳
「朝日新聞」 [2019年9月11日付、夕刊、「編集者がつくった本」] から
イスラーム 書物の歴史
当会編集部長である橘宗吾が、「朝日新聞」(2019年9月11日、夕刊)の「編集者がつくった本」で、小杉泰・林佳世子編『イスラーム 書物の歴史』を紹介しました。 “アラビア文字の巨大山脈へ” 本書誕生のきっかけが語られています。【内容】これを知らずして書物を語るなかれ——。近代以前、東アジアの木版本と並んで世界の書物文化の二大山脈を形づくったのはイスラーム世界の写本であった。聖典クルアーンから歴史書や科学書まで、また華麗な書や絵画から装丁まで、広大な地域の知と文芸を支えた書物の歴史を、デジタル時代の現在からふりかえる待望の書。
“今世紀の初め、すでに書物の歴史には、日本についても、ヨーロッパについても、日本語で読める優れた本があった。そんな中、なかなか眺望の得られなかった書物大国・中国について『中国出版文化史』(井上進著)を編集・刊行できて、有頂天になっていた。これで世界の書物の歴史をすべて見渡せた気がしたのだ。
そのことを、イスラーム研究者の小杉泰先生に得意になってお話ししたところ、先生曰く「大きな山を一つ忘れていませんか」。それが、漢字ならぬアラビア文字で記された、イスラーム世界の書物だった。
ショックを受けて勉強開始。だが読める本がない。これは自分でつくるしかない。ということで、また小杉先生にご相談。しかし山は予想を超えて巨大だった。
活版印刷が本格的に始まる以前には、中国とともに世界の書物の二大山脈を形づくっていたのだから、それも当然だ。その時代の写本(手書き本)を中心に、イスラーム誕生からデジタル時代まで、広大なアラビア文字文化圏をカバーし、美麗な文字や挿絵や装丁を論じ、聖典から歴史や科学にわたる書物について述べようとすると、とてもすぐにはできない。
林佳世子先生にご助力いただき、若い研究者が育つのも待って、最初の衝撃から10年ほどかかって出版できたのがこの本だ。以来、「真理の一部をその全体と思うなかれ」が座右の銘となっている(ただし、すぐに忘れる)。”(「朝日新聞」2019年9月11日付夕刊、第3面)
小杉 泰・林 佳世子 編
税込6,050円/本体5,500円
A5判・上製・472頁
ISBN978-4-8158-0773-3 C3022
在庫有り
「静岡新聞」 [2019年9月1日付] 他から(評者:福嶋亮大氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「静岡新聞」(2019年9月1日付)ほか24地方紙で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。[福島民友・北日本新聞・北國新聞:2019年7月20日付、岩手日報・秋田さきがけ・南日本新聞・琉球新報:2019年7月21日付、福島民報・沖縄タイムス:2019年7月27日付、下野新聞・神奈川新聞・新潟日報・京都新聞・日本海新聞・山陰新聞・愛媛新聞・宮崎日日新聞:2019年7月28日付、山梨日日新聞・岐阜新聞・四国新聞・長崎新聞・大分合同新聞:2019年8月4日付、信濃毎日新聞:2019年8月11日付、静岡新聞・山陰中央新報:2019年9月1日付]
“…… 桃源郷はかつてあった世界へのノスタルジーの産物であり、その想像力はいわば「子供の領分」に根ざしている。著者は桃源郷に託して文明の幼年期を、つまり大人たちの忘れた小世界をかたどってみせた。もとより、人間の営みは大人の時間軸には収まりきらない。歴史とは数限りない夢と記憶の折り畳まれた複合体だからである。”(「静岡新聞」2019年9月1日付、第18面)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
「くにおんぴーぷる」 [国立音楽大学ウェブサイト] から
『イエズス会士と普遍の帝国 —— 在華宣教師による文明の翻訳』の著者である新居洋子先生のインタビューが、「くにおんぴーぷる」(国立音楽大学ウェブサイト)に掲載されました。在学時代の思い出や研究の道のりについて語られています。
新居洋子 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・414頁
ISBN978-4-8158-0889-1 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2019年9月14日号、第3415号] から(評者:高田宏史氏)
チャールズ・テイラーの思想
ルース・アビィ著/梅川佳子訳『チャールズ・テイラーの思想』が、『図書新聞』(2019年9月14日号、第3415号、武久出版)で紹介されました。多文化社会から宗教、AIまで、「哲学的人間学」の全景 ——。多様性と統合への渇望とのあいだで思考し、「承認の政治」やコミュニタリアニズムなど現代の思想を牽引してきた哲学者テイラー。自己論や道徳論から、言語論、認識論、政治哲学、宗教論まで、その巨大な思想の全体を体系的に理解するために最善の入門書。
“…… 入門書としての本書の特徴は、テーマ(道徳論、自己論〔人間論〕、政治理論、認識論、そして宗教論)ごとにテイラーの思想を解説している点にある。このアプローチには明確な利点がある。それぞれのテーマについて「テイラーが何を問題とし、どのような主張を展開しているのか」が非常に「わかりやすい」という点である。さらに本書は、テイラーの主張に対する他の思想家や研究者からの主要な反応(批判を含む)を挙げているため、現代哲学上の諸争点におけるテイラー思想の位置づけを理解しやすくなっている。
さらに本書では、テイラーの思想の核心的な部分として、次の2つの点が章を超えて繰り返し指摘されている。第一に、彼の思想における「単純化」ないしは「還元主義」への批判である。道徳であれ、人間理解であれ、政治であれ、知や認識であれ、テイラーは複雑な現象を単一の原理で説明しうるとする立場に鋭く対立する。第二に、彼の思想における「多様性と統一性の和解」というモチーフである。テイラーは、一見すると対立しているようにみえるさまざまな概念や思想的立場が両立可能であるこを、いたるところで示そうと試みているのである。これらのテーマを超えたモチーフの強調は、テイラーの思想の横断的な理解に資することになるだろう。……”(『図書新聞』2019年9月14日号、第5面)
ルース・アビィ 著
梅川佳子 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・332頁
ISBN978-4-8158-0947-8 C3010
在庫有り
『地理学評論』 [第92巻第5号、2019年9月] から(評者:金坂清則氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『地理学評論』(第92巻第5号、2019年9月、日本地理学会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“……「食」をめぐって、多様にして膨大な人びとのさまざまな営為とその成果を押さえつつ広範な観点から論じた結果、本書が日本近代の活き活きした歴史理解に資する作品となっている …… さらに、見えない歴史を歴史学の俎上にのせることを意図した本書が、アナール学派を中心とする社会史を超え、小さな物語と大きな物語の双方を視野に入れて両者のせめぎ合いを描く「新しい歴史学」(リン・ハント)の大きな成果にもなっている ……”(『地理学評論』第92巻第5号、p.299)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
「建築討論」 [ウェブマガジン、2019年9月1日付] から(評者:長谷川新氏)
キュビスム芸術史
20世紀西洋美術と新しい〈現実〉
松井裕美著『キュビスム芸術史』が、「建築討論」(ウェブマガジン、2019年9月1日付、日本建築学会)で紹介されました。絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききります。
松井裕美 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-0937-9 C3071
在庫有り
『図書新聞』 [2019年9月7日号、第3414号] から(評者:山岡加奈子氏)
外交と移民
冷戦下の米・キューバ関係
上英明著『外交と移民』が、『図書新聞』(2019年9月7日号、第3414号、武久出版)で紹介されました。人の移動がもたらす力 ——。ワシントン、ハバナ、そしてマイアミ。衝撃はキューバ危機だけではなかった。移民とその社会が生みだす三つ巴のダイナミズムを捉え、グローバルな冷戦の現場と、アメリカ、キューバの国内政治の連関を、アクセス困難な史料から鮮やかに描きだした俊英の力作。
“本書は、冷戦期の米国とキューバの外交関係を分析する。その際に両国政府の政策に加えて、米国へ移住したキューバ系米国市民の働きかけを詳しく取り上げている。…… フロリダ州に散らばるアーカイブに眠る資料を丹念に発掘し、移民の活動を分析することに成功している。また、米国とキューバ両政府のやり取りについても、米国公文書館だけでなく、米国内に点在する大統領記念館を訪れ、さらにキューバ外務省公文書館やハバナ大学の史料へもアクセスしている。それに加え、日本やカナダ、メキシコの外交文書館や公文書館でも資料を集めており、広い範囲での資料調査を基にしている。米国の資料については、近年機密解除となった新資料も取り上げている。日本のキューバ研究ではかつてない規模での調査を成功させており、世界的に見ても、新史料を取り上げて貢献しており、大変な労作である。……”(『図書新聞』2019年9月7日号、第5面)
上 英明 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0948-5 C3022
在庫有り
『港湾』 [2019年8月号] から(評者:元野一生氏)
海港の政治史
明治から戦後へ
稲吉晃著『海港の政治史』が、『港湾』(2019年8月号、日本港湾協会)で紹介されました。横浜・神戸に代表される国際貿易港から全国の中小港湾まで、帝国日本を世界と結んだ海港はいかにして形成されたのか。開港から戦後に至る史的展開を示すとともに、港湾整備の知られざる難題を剔出、日本の交通インフラ整備が抱える政治的課題をも浮き彫りにしたわが国初の近代海港史。
稲吉 晃 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0789-4 C3031
在庫有り
『日本歴史』 [2019年9月号、第856号] から(評者:長澤伸樹氏)
日本中世市場論
制度の歴史分析
安野眞幸著『日本中世市場論』が、『日本歴史』(2019年9月号、第856号、日本歴史学会)で紹介されました。支払い・貸借・契約・裁判・差押えなど、市場が果たした多様な役割を明らかにするとともに、債権取立てを軸に中世日本の展開を描き出したライフワーク。神人・悪僧に発し金融を担う「公界」と公権力とは、慣習法と制定法、文書とその破棄、暴力と秩序等をめぐり、いかに切り結ぶのか。
“…… 副題とその重厚な内容からも明らかなように、本書が注目するのは、市場内部での売買・契約行為を成り立たせた背景にある「制度」(制度史)の実態である。なかでも説話や狂言・往来物、戦国大名の分国法などを素材として、市場のもつ多様な機能に注目し、かつて網野善彦氏が唱えた「公界」論へのアンチテーゼも含んでいる点に、大きな特徴があろう。…… 市場を一義的に解釈せず、平安末期から戦国時代に至る長期的なスパンのなかで捉え直し、その多面的な役割を明らかにした著者の姿勢は、大いに学ぶべきものがある。本書は、長年にわたり「市」や「港」といった交易空間のあり方を軸に、多くの業績を積み重ねてきた、著者ならではの市場論の集大成と評することができよう。市場史や法制史はもちろん、ひいては近年注目される債務史研究などにも大きな議論を呼ぶ一冊であることは疑いない。……”(『日本歴史』2019年9月号、pp.82-83)
安野眞幸 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・460頁
ISBN978-4-8158-0921-8 C3021
在庫有り
『月刊美術』 [2019年9月号、通巻528号] から
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、『月刊美術』(2019年9月号、通巻528号、サン・アート)で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
「信濃毎日新聞」 [2019年8月11日付] 他から(評者:福嶋亮大氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「信濃毎日新聞」(2019年8月11日付)ほか22地方紙で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。[福島民友・北日本新聞・北國新聞:2019年7月20日付、岩手日報・秋田さきがけ・南日本新聞・琉球新報:2019年7月21日付、福島民報・沖縄タイムス:2019年7月27日付、下野新聞・神奈川新聞・新潟日報・京都新聞・日本海新聞・山陰新聞・愛媛新聞・宮崎日日新聞:2019年7月28日付、山梨日日新聞・岐阜新聞・四国新聞・長崎新聞・大分合同新聞:2019年8月4日付、信濃毎日新聞:2019年8月11日付]
“…… 桃源郷はかつてあった世界へのノスタルジーの産物であり、その想像力はいわば「子供の領分」に根ざしている。著者は桃源郷に託して文明の幼年期を、つまり大人たちの忘れた小世界をかたどってみせた。もとより、人間の営みは大人の時間軸には収まりきらない。歴史とは数限りない夢と記憶の折り畳まれた複合体だからである。”(「信濃毎日新聞」2019年8月11日付、第8面)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年8月16日号、第3302号] から(評者:伊高浩昭氏)
外交と移民
冷戦下の米・キューバ関係
上英明著『外交と移民』が、『週刊読書人』(2019年8月16日号、第3302号、読書人)で紹介されました。人の移動がもたらす力 ——。ワシントン、ハバナ、そしてマイアミ。衝撃はキューバ危機だけではなかった。移民とその社会が生みだす三つ巴のダイナミズムを捉え、グローバルな冷戦の現場と、アメリカ、キューバの国内政治の連関を、アクセス困難な史料から鮮やかに描きだした俊英の力作。
上 英明 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・366頁
ISBN978-4-8158-0948-5 C3022
在庫有り
「日本経済新聞」 [2019年8月10日付] から(評者:河野元昭氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「日本経済新聞」(2019年8月10日付)で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。
“…… 東洋の理想郷である武陵桃源については、古くから考察されてきたし、その根本文献ともいうべき陶淵明の「桃花源記」についても解説が施されてきた。しかし氏の論考は、それらと一線を画する。例えば「腑分け」と称する「桃花源記」の読みについても、その鋭さと深さに感動すら覚える。夢想つまり創造力喚起力を分析し、老子的小国寡民礼賛から田園平和への大転換を指摘し、近代的ユートピアの窮屈さを対比的に浮かび上がらせるところなど、まさに眼からウロコだ。…… 美術史家をもって任じる私にとってはとくに、15世紀朝鮮絵画の傑作である安堅の「夢遊桃源図」から清・査士標の「桃源図巻」に至る「水脈」追跡の痛快さは、胸のすく思いであった。さらに新井白石や蕪村、上田秋成らの作品を丹念に読み込むことによって、氏が提唱する「パクス・トクガワーナ」を桃源の色に染めていく。…… 東アジアの桃源が瓦解しようとしている今日、このような書が世に問われたことの意味は、想像を超えて大きい。……”(「日本経済新聞」2019年8月10日付、第28面)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
『図書新聞』 [2019年8月17日号、第3412号] 他から(評者:近藤和都氏)
映画観客とは何者か
メディアと社会主体の近現代史
藤木秀朗著『映画観客とは何者か』が、『図書新聞』(2019年8月17日号、第3412号、武久出版)で紹介されました。民衆・国民・東亜民族・大衆・市民 ——。映画館でシネマを観る「数」であるにとどまらず、映画や社会と多様な関係をとりむすぶ人々のあり様を、大正期から現在まで、社会主体をめぐる言説に注目することで、変容する政治やメディア環境との交渉のうちに浮かび上がらせた、映画観客100年史。
“…… 本書は、オーディエンス・カテゴリーの言説的構築という従来的な議論に回収されない、豊かな方法論的示唆を含んでいる。…… 先行研究が、あくまでもオーディエンスの受容経験・環境を間接的に理解することに目的の一つが置かれていたのに対し、本書はそうした目的を意図的に断念することで、「観ること」に限定されない「観客」のあり方を多角的に検討しようというのである。…… 著者は …… 先行研究を網羅的かつ精緻に読み解きながら自身の議論を展開していく。しかも、単にそれらの研究を自説の補強に使うのではなく、一定の影響力を持つ先行の議論に対峙しながら新たな歴史の道筋を示すことに徹底している。…… その他にも、…… 映画観客のカテゴリーをめぐるジェンダーやエスニシティの問題、言説の条件として焦点化されるトランスメディア的環境の展開過程、映画をめぐる親密圏と公共圏の折り重なりなど様々な知見をもたらしている。豊かな成果を含む本書は、日本において映画・メディア研究を行うにあたってつねに参照されるべきインフラ的な位置づけを持つことになるに違いない。”(『図書新聞』2019年8月17日号、第6面)
藤木秀朗 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・680頁
ISBN978-4-8158-0938-6 C3074
在庫有り
「熊本日日新聞」 [2019年7月28日付] から(評者:西槇偉氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「熊本日日新聞」(2019年7月28日付)で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。
“…… 著者は、比較文学を日本の学界に定着させた草分け、島田謹二の学統を継承し、比較文学を花開かせた世代の大家の一人。その四十余年来の桃源研究の集大成である本書を耽読しながら、評者は大学院時代に著者の手ほどきを受け、比較研究の面白さに目を啓かれたことを思い出した。談論風発、スケールの大きな「連想」は健在で魅力的だ。そこであぶり出されるのは、文芸の滋味とともに、「理想的な文明のかたちとは」「仕合せとは」など極めて今日的な問題だ。”(「熊本日日新聞」2019年7月28日付、第7面)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
『図書新聞』 [2019年8月3日号、第3410号] から(評者:須永徳武氏)
満鉄経営史
株式会社としての覚醒
平山勉著『満鉄経営史』が、『図書新聞』(2019年8月3日号、第3410号、武久出版)で紹介されました。満州経営の全方位的担い手とみなされた巨大植民地企業が、国策会社化の挫折と満州国成立後の解体的再編をへて、鉄道を主軸とした市場志向の企業として覚醒する姿を、株式市場への対応からとらえ、終戦まで異例の高収益企業であり続けたメカニズムを解明、日本帝国主義の先兵とする満鉄理解を大きく書き換えます。
“…… 本書を貫く視角は明確である。満鉄を「株式会社」として再措定し、「主体性」を基軸に会社として満鉄を経営分析することである。満鉄が半官半民の巨大植民地会社であり、日本帝国による満洲植民地統治の中枢に位置したことは否定すべくもない。また、関東軍や満洲国政府の政策立案にも深く関与していた。帝国主義のコンテクストから進められた多くの研究が、満鉄のこうした側面を過剰に重視した結果、経営体としての満鉄はイメージのベールに包まれた茫洋たる存在となった。しかし、本書により〈イメージとしての満鉄〉のベールは剝ぎ取られ、経営体としての満鉄の実態が明らかにされる。満鉄をごく真っ当な会社分析の俎上に載せた点が、研究史に対する本書の大きな貢献である。……”(『図書新聞』2019年8月3日号、第3面)
平山 勉 著
税込10,450円/本体9,500円
A5判・上製・504頁
ISBN978-4-8158-0945-4 C3021
在庫有り
『歴史学研究』 [2019年8月号、第986号] から(評者:増田都希氏)
セレブの誕生
「著名人」の出現と近代社会
アントワーヌ・リルティ『セレブの誕生』(松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳)が、『歴史学研究』(2019年8月号、第986号、歴史学研究会)で紹介されました。スキャンダラスな公共性 ——。称賛と批判につつまれた「セレブ」とは、現代のメディアが作り上げた虚像なのか、それとも新たな威光の形なのか。王族・政治家から作家・俳優・音楽家まで、近代の始まりとともに生まれた「セレブリティ」の展開をたどり、公共圏が孕むパラドックスを問います。
“…… 一見軽々しい「セレブ」を、まじめな歴史学の対象とすることの意義とはなにか。「セレブ」を培養する「公共圏」や「公衆」の両義性に光をあてることである。ユルゲン・ハーバーマスの「公共圏」の概念が一躍脚光を浴びたことで、そこから捨象された側面が不当に覆い隠されたとリルティは言う。個人が理性の公的使用を行う批判的、合理的熟議の場としての「公共圏」が18世紀フランスに誕生した。しかしその「公共圏」は、誕生した当初から、同時にメディアによる言説・イメージによって増幅される情動的熱狂、集団的自己暗示の場でもあった。この両義性を再確認することで、現代における公共圏の「通俗性の支配」や「脱政治化」を、18世紀には存在していたはずの理想化された「公共圏」の喪失や堕落と見なす紋切り型の批判を越えることがはじめて可能になる。膨大かつ玉石混淆の情報をポケットに入れて持ち歩く時代、その厖大な情報を共有しているようで、各人が見たいものしか見ていない時代において、「公共圏」をどこに、どのような形で求めるのか。未だ見ぬ世界を知るための道標を、歴史に求める。これを実践する作品である。”(『歴史学研究』2019年8月号、p.64)
アントワーヌ・リルティ 著
松村博史・井上櫻子・齋藤山人 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・474頁
ISBN978-4-8158-0933-1 C3022
在庫有り
『洋学』 [26号、2019年4月] から(評者:橋本真吾氏)
近代科学のリロケーション
南アジアとヨーロッパにおける知の循環と構築
カピル・ラジ著『近代科学のリロケーション』(水谷智・水井万里子・大澤広晃訳)が、『洋学』(26号、2019年4月、洋学史学会)で紹介されました。西洋中心でもなく、地域主義でもなく ——。科学的な「知」はどこで、いかにして生まれたのか。植物学や地理学から、法、教育の分野まで、近代的な学知の形成において植民地のアクターが果たした役割に注目し、帝国のネットワークにおける移動・循環の中で科学が共同的に構築される現場を描き出す画期的な書。
カピル・ラジ 著
水谷 智・水井万里子・大澤広晃 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・316頁
ISBN978-4-8158-0841-9 C3022
在庫有り
『洋学』 [26号、2019年4月] から(評者:阿曽歩氏)
イエズス会士と普遍の帝国
在華宣教師による文明の翻訳
新居洋子著『イエズス会士と普遍の帝国』が、『洋学』(26号、2019年4月、洋学史学会)で紹介されました。カトリック拡大のため東方に渡った宣教師らが、巨大な清朝に見出したものは何か。中国古来の世界像や学術は、キリスト教の教義や勃興する科学と結びつくのか。共通言語から統治体制や歴史編纂まで、新たな帝国像を描き出した18世紀のアミオを軸に、多言語史料から「文明の翻訳」の実相を捉える力作。
新居洋子 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・414頁
ISBN978-4-8158-0889-1 C3022
在庫有り
『史林』 [101巻6号、2018年11月] から(評者:鈴木健雄氏)
越境者の政治史
アジア太平洋における日本人の移民と植民
塩出浩之著『越境者の政治史』が、『史林』(101巻6号、2018年11月、史学研究会)で紹介されました。明治期からの国民統合の過程と並行し、大量に送り出された日本人移民たち。近代史から見落とされてきた彼らの政治統合は、日本およびアジア太平洋地域の秩序にどのようなインパクトをもたらしたのか。移民史・政治史の盲点を克服し、一貫した視点で新たな全体像を描き出します。
“…… およそ並の研究者では上梓し難い長大な時間と空間とを対象とした本書は、膨大な先行研究並びに史料に基づいて近代アジア太平洋における国家と民族、ヒトの移動を体系的かつ網羅的に叙述している。日本近代政治史に留まらず、植民地主義や差別の問題、ヒトの移動に伴う社会・権力構造の変化、国家・国籍・民族に関わる諸問題を扱う研究者にとって本書は必読の書であり偉大な成果である。”(『史林』101巻6号、pp.158-159)
塩出浩之 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・524頁
ISBN978-4-8158-0820-4 C3031
在庫有り
「京都新聞」 [2019年7月19日付] から
『絨毯が結ぶ世界 —— 京都祇園祭インド絨毯への道』の著者である鎌田由美子先生が、「京都新聞」(2019年7月19日付)のオピニオン・解説欄「ソフィア 京都新聞文化会議」に寄稿されました。“絨毯がつなぐ祇園祭と世界”
『絨毯が結ぶ世界 —— 京都祇園祭インド絨毯への道』
A5判・上製・608頁 税込11,000円/本体10,000円
ISBN978-4-8158-0855-6 C3072
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年7月24日付] から
『税と正義』(L.マーフィーほか著)の訳者である伊藤恭彦先生が、「朝日新聞」(2019年7月24日付)のオピニオン欄「耕論 税金、もっと納得したい」に寄稿されました。(オピニオン&フォーラム) “尊厳ある生活を守るお金”
『税と正義』
A5判・上製・266頁 税込4,950円/本体4,500円
ISBN978-4-8158-0548-7 C3033
在庫有り
『図書新聞』 [2019年7月20日号、第3408号] から(評者:山本圭氏)
チャールズ・テイラーの思想
ルース・アビィ著/梅川佳子訳『チャールズ・テイラーの思想』が、『図書新聞』(2019年7月20日号、第3408号、武久出版)の特集「2019年上半期 読書アンケート」で紹介されました。多文化社会から宗教、AIまで、「哲学的人間学」の全景 ——。多様性と統合への渇望とのあいだで思考し、「承認の政治」やコミュニタリアニズムなど現代の思想を牽引してきた哲学者テイラー。自己論や道徳論から、言語論、認識論、政治哲学、宗教論まで、その巨大な思想の全体を体系的に理解するために最善の入門書。
ルース・アビィ 著
梅川佳子 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・332頁
ISBN978-4-8158-0947-8 C3010
在庫有り
『地理空間』 [第12巻第1号、2019年] から(評者:坂本優紀氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『地理空間』(第12巻第1号、2019年、地理空間学会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“「ごちそうさまでした」と言いたくなるような読後感である。学術書でありながら読んだ後の満足感と爽快感は、まるで美味しい食事の後のようだ。…… 本書は、これまで着目されてこなかったサイレント・マジョリティー(沈黙する大衆)が蓄積してきた、サイレント・ヒストリーを学問的に取りあげた。大衆に関する史料は、その性質上残されにくい状況にも関わらず、本書では様々なデータが的確に示されている。そのため、彼ら/彼女らの生きた跡がはっきりとみえる。そしてさらに、随所に登場する文学作品が、よりリアルな生活を読者に教えてくれるのも本書の魅力の一つであろう。文学作品に頼り過ぎると客観性に乏しくなるものの、本書は議論を支える多くのデータがあってこそなせる記述である。著者の緻密な調査と、それを基にした読者を惹き込む書きっぷりに感嘆させられる。……”(『地理空間』第12巻第1号、pp.53-55)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『図書新聞』 [2019年7月6日号、第3406号] から(評者:平正人氏)
セレブの誕生
「著名人」の出現と近代社会
アントワーヌ・リルティ著『セレブの誕生』(松村博史・井上櫻子・齋藤山人訳)が、『図書新聞』(2019年7月6日号、第3406号、武久出版)で紹介されました。スキャンダラスな公共性 ——。称賛と批判につつまれた「セレブ」とは、現代のメディアが作り上げた虚像なのか、それとも新たな威光の形なのか。王族・政治家から作家・俳優・音楽家まで、近代の始まりとともに生まれた「セレブリティ」の展開をたどり、公共圏が孕むパラドックスを問います。
“「マリー・アントワネットはダイアナ妃だ!」。本書冒頭のこの文章は、娘ソフィアが監督した映画の撮影に立ち会った父フランシス・フォード・コッポラの言葉である。アントワネットとダイアナ妃。このふたりの女性にどこか似た親近感を覚える人は少なくないのかもしれない。本書を執筆した歴史家リルティはこの映画の見どころのひとつに「アナクロニズム」をあげているが、本書の読みどころもまたそこにある。リルティは、歴史家にとって禁じ手であるはずの「アナクロニズム」を用いて、現代社会のアクチュアリティーを映し出す鏡を、18世紀後半のヨーロッパ社会のアクチュアリティーのなかに発見する。それは「近代的な著名性(célébrité)」であり、現代のセレヴたちが18世紀後半のヨーロッパにその姿を現すのである。…… アクチュアルな問題を解決する鍵を過去に探求することが歴史家の本来あるべき役割であるならば、本書においてリルティが果敢に挑んだ「アナクロニズム」という手法は、もはや歴史家の禁じ手ではなく、現代社会を生きる歴史家にとっていまこそ再評価されるべき歴史学的な方法論のひとつと言えるのではないだろうか。”(『図書新聞』第3406号、第5面)
アントワーヌ・リルティ 著
松村博史・井上櫻子・齋藤山人 訳
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・474頁
ISBN978-4-8158-0933-1 C3022
在庫有り
『一橋法学』 [第18巻第2号、2019年7月] から(評者:森村進氏)
進化倫理学入門
スコット・ジェイムズ著/児玉聡訳『進化倫理学入門』が、『一橋法学』(第18巻第2号、2019年7月、一橋大学大学院法学研究科発行)で紹介されました。長い進化の過程で、人間はなぜ、どのように道徳感覚を手に入れたのか。進化で道徳を説明できるのなら、そもそも道徳理論など不要ではないのか。心理学や神経科学の最新の知見を交えてなされる活発な議論を一望。道徳とは、人間の本性とは何かを問うすべての人に向けた最良の入門書。
スコット・ジェイムズ 著
児玉 聡 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・336頁
ISBN978-4-8158-0896-9 C3012
在庫有り
「西日本新聞」 [2019年6月24日付] から
『胃袋の近代 —— 食と人びとの日常史』の著者である湯澤規子先生のインタビューが、「西日本新聞」(2019年6月24日付)文化欄に掲載されました。本書と、2019年3月に刊行された『7袋のポテトチップス —— 食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社刊)に関するインタビューです。
『胃袋の近代
—— 食と人びとの日常史』
四六判・上製・354頁 税込3,960円/本体3,600円
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『史苑』 [第79巻第2号] から(評者:諫早庸一氏)
モンゴル時代の「知」の東西【上下巻】
宮紀子著『モンゴル時代の「知」の東西』(上下巻)が、『史苑』(第79巻第2号、立教大学史学会)で紹介されました。日本からヨーロッパまで、人・モノ・情報が行き交う ——。世界史上、空前のレベルで展開したユーラシアを貫く「知」の交流。百科事典や辞書・地図から宗教・政治・経済の諸制度まで、モンゴル帝国によるダイナミックな革新と統合の実像を、多言語の文献・美術品・出土文物を駆使して描き出す記念碑的労作。
宮 紀子 著
税込各9,900円/本体各9,000円
菊判・上製・上574頁+下600頁
ISBN 上:978-4-8158-0900-3 下:978-4-8158-0901-0
C3022
在庫有り
『農業経済研究』 [第91巻第1号、夏季号、2019年6月] から(評者:田代正一氏)
農の科学史
イギリス「所領知」の革新と制度化
並松信久著『農の科学史』が、『農業経済研究』(第91巻第1号、夏季号、2019年6月、日本農業経済学会)で紹介されました。ローカルな知は科学となるのか ——。農業は古来、多くの地域で主要産業であった。工業化が進む中、諸科学と葛藤しつつ「農学」を成立させていく多元的な知と制度の展開を、啓蒙時代から20世紀まで、イギリス社会の文脈で描きます。科学史と農業史を架橋し、間文化的な示唆を与える労作。
並松信久 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・480頁
ISBN978-4-8158-0853-2 C3061
在庫有り
「日本海事新聞」 [2019年6月27日付] から(評者:元野一生氏)
海港の政治史
明治から戦後へ
稲吉晃著『海港の政治史』が、「日本海事新聞」(2019年6月27日付、日本海事新聞社)で紹介されました。横浜・神戸に代表される国際貿易港から全国の中小港湾まで、帝国日本を世界と結んだ海港はいかにして形成されたのか。開港から戦後に至る史的展開を示すとともに、港湾整備の知られざる難題を剔出、日本の交通インフラ整備が抱える政治的課題をも浮き彫りにしたわが国初の近代海港史。
稲吉 晃 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・400頁
ISBN978-4-8158-0789-4 C3031
在庫有り
「朝日新聞」 [2019年6月27日付] から
『戦争違法化運動の時代』の著者である三牧聖子先生が、「朝日新聞」(2019年6月27日付)のオピニオン欄「あすを探る 国際」に寄稿されました。(オピニオン&フォーラム 論壇時評) “人権問題、米中対立の影”
『戦争違法化運動の時代 ——「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』
A5判・上製・358頁 税込6,380円/本体5,800円
ISBN978-4-8158-0782-5 C3031
在庫有り
「毎日新聞」 [2019年6月23日付] から(評者:張競氏)
桃源の水脈
東アジア詩画の比較文化史
芳賀徹著『桃源の水脈』が、「毎日新聞」(2019年6月23日付)で紹介されました。なぜ懐かしさを感じるのか ——。ユートピアでもなくアルカディアでもなく、東アジアの人びとの根源的な夢想と願望に根ざして作り上げられた、平和の小世界。古代中国に発し、詩的トポスとして幾多の詩文や絵画を生み出してきた「桃源郷」の系譜を、現代の日本に掬いとるライフワーク。
“…… 空想体系のせせらぎを渉るとき、感性的直観の鋭さをいかに深めていくかで、探検者の知性と力量が問われている。著者はテクストの温もりを肌で感じ取り、情念のぬかるみの感触を確かめながら、共同体の記憶の底に沈みたまった古人の想いをすくい上げようとした。そこには批評理論に武装されたような、凝り固まった観念性はなく、海辺へと導く小径を知り尽くした釣り人のような、忘我の恬淡さがあった。こうして、桃源郷を論じる者がまるで桃源郷に迷い込んだように、かつて存在していたかもしれないトポスをめぐって、詩的形象と絵画的言語のあいだを自由自在に往来し、一枚一枚の絵、一首また一首の詩から驚くべき夢の世界を発見した。…… 同じく陶淵明に共鳴しながらも、日本列島と朝鮮半島では桃源郷幻想に向ける想像力のベクトルはまた異なる方向にある。著者は比較文化史家だけあって、そのことを決して見逃さなかった。日中韓のあいだの音階の高低や色彩の濃淡を吟味し、些細な気配の違いから、彼我の風土や精神文化、さらには人生美学の差異を見いだし、円転滑脱な名調子でそれぞれの面白みを縦横無尽に語ってみせた。桃源郷の日本的展開は著者のもっとも得意とするところで、また、その本領がもっともよく発揮される分野でもある。上田秋成の『背振翁伝』、松岡映丘一門による『草枕絵巻』、さらに辻原登の『村の名前』など、近世から現代にいたるまでさまざまな名作を取り上げ、陶淵明はいうにおよばず、あらゆる夢の収集家たちがついに知りえない世界を次々と引き合いに出し、列島の文学芸術にしか見られない感受性を大いに自慢した。……”(「毎日新聞」2019年6月23日付、第10面から)
芳賀 徹 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・380頁
ISBN978-4-8158-0946-1 C3090
在庫有り
『比較家族史研究』 [第33号、2019年3月] から(評者:奥山恭子氏)
歴史人名学序説
中世から現在までのイベリア半島を中心に
芝紘子著『歴史人名学序説』が、『比較家族史研究』(第33号、2019年3月、比較家族史学会)で紹介されました。名前に刻まれたヨーロッパ社会の軌跡 ——。家族・親族の結びつきやアイデンティティのあり方、封建制と家族・ジェンダーの関係、フロンティア社会と文化移転、キリスト教の浸透・教化など、人名という新たなプリズムを通して過去・現在の社会・心性を色鮮やかに浮かび上がらせます。
“…… 本書の内容は単に姓名に関する史料紹介にはとどまらない。姓名は社会制度、産業、宗教、家族形態等々の様々な要因に影響を受け、発生、変貌してきたものである。特にイベリア半島では、ローマの支配以前から諸族の社会、文化が混在し、時に興亡の歴史を経てきていることから、それぞれの時代の命名の記録をたどることで社会構造や変革、文化の潮流、心性も見えるとする序章の記述が、本書刊行の意義でもあろう。”(『比較家族史研究』第33号、p.144)
芝 紘子 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・308頁
ISBN978-4-8158-0912-6 C3022
在庫有り
『表象』 [第13号、2019年4月] から(評者:北村匡平氏)
テレビ成長期の日本映画
メディア間交渉のなかのドラマ
北浦寛之著『テレビ成長期の日本映画』が、『表象』(第13号、2019年4月、表象文化論学会)で紹介されました。「テレビ vs 映画」を超えて ——。高度成長期、テレビの台頭で映画は「斜陽」を迎えたのか。テレビ向けフィルム映画の試みやお色気・やくざ映画の流行、ワイドスクリーンという新機軸、時代劇やメロドラマの変遷など、映像の新時代の幕開けを描き、現在につながる大転換の実像を明らかにします。
“…… 本書における議論の射程は、作品論・作家論から産業史・技術論、さらにはジャンル論・身体論・観客論・都市論まで、きわめて幅広い。メディア間の歴史的な現場を来訪し、その「交渉と闘争の歴史」をさまざまな角度から照射して、人びとの活動や実践を鮮やかに浮かび上がらせている点が本書の妙味である。…… 本書を通読して何より胸を打つのは、20世紀の二大メディアにおける産業・技術の変遷のなかで、2つのメディアに携わり、奮闘してきた者たちの「ドラマ」が見事に浮かび上がってくる点である。それはおそらく、筆者の多角的な視座と歴史の重層性を掬い上げようとする誠実さによって生み出されている。卓越したテクスト分析のみならず、丹念な調査で収集された歴史資料と統計データによって緻密に組み立てられた議論は、今後の映画/テレビ研究の指標となるとともに、重要文献として参照されていくことは間違いない。”(『表象』第13号、p.190,193)
北浦寛之 著
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・312頁
ISBN978-4-8158-0905-8 C3074
在庫有り
『図書新聞』 [2019年6月22日号、第3404号] から(評者:松田健児氏)
キュビスム芸術史
20世紀西洋美術と新しい〈現実〉
松井裕美著『キュビスム芸術史』が、『図書新聞』(2019年6月22日号、第3404号、武久出版)で紹介されました。絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききります。
“…… 本書は …… キュビスムを同時代フランスの政治的・社会的文脈に置いて理解しようとする、至極真っ当な試みである。そこで得られる知見は、想像以上に実り豊かなものだ。キュビスムが「様式のうえでは過去の芸術と明らかな断絶を示すものであったが、他方で、理論のうえでは過去の試みを踏襲するものであった」と明確に述べられているように、キュビスムを単に造形上の「革命」ともちあげるだけの見解に、根底から修正を迫ってくる。…… 本書を読了した後は、たとえば「分析的キュビスムが行った対象の分析を極限まで突き詰めていくと、対象そのものが溶解して把握できなくなってしまうため、壁紙や新聞紙を貼り付けて現実感を導入する総合的キュビスムが始まった」というような、教科書的な物語(ストーリー)さえも採用できなくなってしまうはずだ。しかも、ピカソとブラックを論じるだけで事足れりとするのではなく、このふたりとは別に、キュビスムの展開に寄与したピュトー派(ル・フォーコニエ、ジャック・ヴィヨンやデュシャン兄弟など)、あるいはフェルナン・レジェ、フアン・グリスのキュビスムにも目を配る。このため、キュビスムがもつ多様性を包括的に把握することもできるだろう。……”(『図書新聞』第3404号、第6面)
松井裕美 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-0937-9 C3071
在庫有り
『図書新聞』 [2019年6月15日号、第3403号] から(評者:上田知亮氏)
帝国後のインド
近世的発展のなかの植民地化
小川道大著『帝国後のインド』が、『図書新聞』(2019年6月15日号、第3403号、武久出版)で紹介されました。インドはなぜ英領となったのか。ムガル帝国の衰退と後継国家の群雄割拠のもと生じた在地の大変動をとらえ、中間層権力をめぐる状況の変遷から植民地化の起源を解明、イギリス統治政策の浸透過程を丹念にたどるとともに、近代インドを近世史の発展との連続性のなかに位置づけます。
“…… 植民地化直後のイギリス人行政官には観察できないほど弱体化していた郡レベルの中間層権力のことが英語史料に詳細に書き残されることはなかった。既に存在していないものが記録に残されることは滅多にない。しかし古いものが無くなることで新しいものの道が拓かれるということはしばしば起こる。だが「在る」ものの影響は気付きやすいが、「無い」ものや「無くなった」ことが要因であると着想することは難しい。それを史料に基づき厳密に実証するならなおさらである。しかも植民地化の歴史的意義を再考するという本書の研究課題を解くには、英語史料のみならず、大量のマラーティー語史料を長期にわたって地道に調査することも必要不可欠である。…… 英語史料からは見えない植民地化以前の政治経済構造を踏まえて植民地化前後の継続性を明らかにした本書は、イギリスのインド統治とは何であったか考察するうえでの必読文献となるであろう。……”(『図書新聞』第3403号、第3面)
小川道大 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・448頁
ISBN978-4-8158-0939-3 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年6月14日号、第3293号] から(評者:武田徹氏)
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『週刊読書人』(2019年6月14日号、第3293号、読書人)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『村落社会研究ジャーナル』 [50号、2019年6月] から(評者:安岡健一氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『村落社会研究ジャーナル』(50号、2019年6月、日本村落研究学会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 豊富な資料の探究とともに理論的挑戦も行い、また林芙美子の『放浪記』など文学作品も同時代の記録として折り込むという実験的手法も相まって、本書の達成は多くの角度から見て実りあるものとなっている。第4章の食の産業化に関して取り上げられた事例は「漬物」であった。それから約100年が過ぎた現在、質量ともにはるかに多くの食が規格化され産業化し、その多様性は目をみはるばかりである。当時と比較すれば年間平均で数十倍の肉を食べている、現代的な飽食と欠乏が私たちの眼前にある。この現在を歴史的に相対化し、私たち自身が生きる不安定さを問い返す手がかりにも本書はなるに違いない。”(『村落社会研究ジャーナル』50号、p.53)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『民衆史研究』 [第97号、2019年5月] から(評者:岩崎正弥氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『民衆史研究』(第97号、2019年5月、民衆史研究会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 著者は実証に基づく堅実な歴史地理学者としての顔と同時に、社会的弱者に寄り添おうとする生活者(実践者)としての顔も持ち合わせていると評者は感じた。「あとがき」で引用された石垣りんの詩「くらし」(『表札など』2000年)に象徴されるような、人びとの暮らしに真摯に向き合うという姿勢である。この姿勢こそ本書の通奏低音だろう。食の人文社会科学的な研究は、ともするとマニアックな食の文化史か、権力による食の管理史に傾きがちである。だがそうではなく、フードシステムに目配りしながら、「地域社会事業」という視角からも「胃袋の近代」を切り開こうとした点が、本書を魅力ある《作品》にしていると評者は感じた。……”(『民衆史研究』第97号、p.77)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『社会経済史学』 [第85巻第1号、2019年5月] から(評者:中林真幸氏)
経済成長の日本史
古代から近世の超長期GDP推計 730-1874
高島正憲著『経済成長の日本史』が、『社会経済史学』(第85巻第1号、2019年5月、社会経済史学会)で紹介されました。奈良時代~近代初頭にいたる列島経済の展開を一望、最貧国水準を抜け出し、1人あたりGDPが着実な上昇に転じていく過程を、利用可能な数値の精査と多様な文献の活用により、災害・飢饉・環境・都市化なども視野に解明。はじめて日本の超長期GDP推計を実現し、日本史の新たな扉を開きます。
高島正憲 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・348頁
ISBN978-4-8158-0890-7 C3033
在庫有り
『週刊ダイヤモンド』 [2019年6月8日号、特集「使える哲学」] から
『週刊ダイヤモンド』(2019年6月8日号、ダイヤモンド社)の特集「使える哲学」で、以下の図書が紹介されました。
【伊勢田哲治氏による紹介(クリティカルシンキング講座)】
伊勢田哲治・戸田山和久・調 麻佐志・村上祐子 編
『科学技術をよく考える —— クリティカルシンキング練習帳』
戸田山和久 著
『論理学をつくる』
『週刊読書人』 [2019年5月31日号、第3291号] から(評者:河本真理氏)
キュビスム芸術史
20世紀西洋美術と新しい〈現実〉
松井裕美著『キュビスム芸術史』が、『週刊読書人』(2019年5月31日号、第3291号、武久出版)で紹介されました。絵画、彫刻、文学、建築などの作品においても、理論や批評の言説においても、多面的かつ国際的な拡がりをもつキュビスム。「幾何学」的表現の誕生・深化から、二度の世界大戦を経て、歴史的評価の確立へと至る曲折に満ちた展開を、美術と〈現実〉との関係を軸に描ききります。
松井裕美 著
税込7,480円/本体6,800円
A5判・上製・692頁
ISBN978-4-8158-0937-9 C3071
在庫有り
『図書新聞』 [2019年6月1日号、第3401号] から(評者:饗場和彦氏)
ジェノサイド再考
歴史のなかのルワンダ
鶴田綾著『ジェノサイド再考』が、『図書新聞』(2019年6月1日号、第3401号、武久出版)で紹介されました。1994年の悲劇を導いた力学は、「多数派部族による少数派の虐殺」という標準的な解釈では捉えきれない。脱植民地化から体制の転換を経て内戦へと向かう複雑な過程を、旧宗主国や国連の動向、冷戦などの国際的な文脈に置きなおして丹念にたどり、その深奥から理解を一新する意欲作。
“…… なんにしても社会の事象は、複雑であるから、ルワンダのジェノサイドもそうである。しかし、本書を通して得るこの当たり前の理解が、むしろ大きな意義を持つのは、難民、移民問題を含めエスニックな文脈の事件に関しては、逆にことさら短絡化して理解される傾向が強いからである。そして、そうした単純な受け止め方は、民族問題を道具主義的に悪用しようとする政治権力(たとえば昨今の国際社会で見られる右派ポピュリズム)に対し、無防備にもなってしまうからである。
また、ああすればよかったのに、とわたしたちはよく過去を振り返る。本書では、歴史研究ならタブーであるはずの、この「歴史のif」をあえて提起している。ルワンダのジェノサイドはその被害が常軌を逸していたため、回避・予防という問題意識が強く働くのであるが、それゆえ、本書で示される「あのとき、もしこうしていれば」という当たり前の発送は、格段の重い意義を持つわけである。
E・H・カーが歴史とは「現在と過去との間の尽きることを知らぬ対話」であると指摘したように、植民地時代から現在に至るまでの「継続性」がルワンダのジェノサイドを理解するうえで不可欠である。だから著者はルワンダ内外の公文書館や図書館で一次資料を精力的に渉猟し、丹念に読み解きつつ、また頻繁に現地を訪れインタビューも繰り返した。そうして叙述されるルワンダの歴史は緻密さと臨場感をかねて、読む者をひきつけていく。……”(『図書新聞』2019年6月1日号、第1面から)
鶴田 綾 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0931-7 C3031
在庫有り
『経済セミナー』 [2019年6・7月号、通巻708号] から(評者:小島庸平氏)
もう一つの金融システム
近代日本とマイクロクレジット
田中光著『もう一つの金融システム』が、『経済セミナー』(2019年6・7月、通巻708号、日本評論社)で紹介されました。日本の発展を導いたのは、日銀中心の銀行システムだけではなかった。現代の郵便貯金や農協に連なる系譜をもつ「大衆資金ネットワーク」が地方経済の安定と成長に果たした役割を、資金供給の実例や制度設計から解明。見過ごされてきた半身に光を当て、経済成長の条件を問い直す意欲作。
“…… 庶民金融のミクロな世界を緻密に分析し、経済発展と関連させて大胆かつマクロに論じたところに、本書の最大の魅力がある。近年、多くの批判にさらされている財政投融資や組合金融が、歴史的に見ればきわめて重要な役割を果たしてきたことを、著者は史料に即して強調する。日本の経済発展の特徴を振り返ろうとしたとき、本書は一つの有力な解答を与えてくれることだろう。……”(『経済セミナー』2019年6・7月号、p.125)
田中 光 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・360頁
ISBN978-4-8158-0932-4 C3033
在庫有り
『教育学研究』 [第86巻第1号、2019年3月] から(評者:坂井俊樹氏)
政治教育の模索
オーストリアの経験から
近藤孝弘著『政治教育の模索』が、『教育学研究』(第86巻第1号、2019年3月、日本教育学会)で紹介されました。半歩先のモデルか ——。民主主義の拡大を支え劣化を押しとどめるために、世界各国で注目される「政治教育」。先駆的な16歳選挙権を導入したオーストリアにおいても試行錯誤が続く。ナショナリズムに動員された過去から、現在のコンピテンシー重視の教育や「民主主義工房」の挑戦まで、変容と深化を跡づけます。
“…… 本書を通じて改めて政治教育とは何かを考えさせられる。オーストリアの取り組みの在り方と共に著者の分析枠組みが、ドイツの政治教育の豊富な知見が基盤にあり、明快に政治教育の概念化を、オーストリアの独特の歴史過程と結びつけながら明らかにしている。それはヒトラーのドイツの侵攻と併合の歴史過程に強く影響されているからである。著者は「世界各地の歴史を学ぶことは、それ自体が貴重な政治的学習に他ならないのである」(Ⅴ頁)と指摘するが、本書はそうした点での貴重な成果である。…… 本書に描かれたオーストリアの紆余曲折の政治教育の展開過程から、親近感と日本の課題が明確に浮きぼりにされると共に、日本の主権者教育を考えていくための貴重な提言が随所になされている。……”(『教育学研究』第86号第1号、p.106,107)
近藤孝弘 著
税込4,510円/本体4,100円
A5判・上製・232頁
ISBN978-4-8158-0913-3 C3037
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年5月17日号、第3289号] から(評者:森枝卓士氏)
飲食朝鮮
帝国の中の「食」経済史
林采成著『飲食朝鮮』が、『週刊読書人』(2019年5月17日号、第3289号、読書人)で紹介されました。牛肉、明太子、ビールなど、帝国による「食」の再編は日韓の食文化を大きく変えた。収奪論をこえて、帝国のフードシステムの歴史的意義をはじめてトータルに解明、生産・流通から植民地住民の身体に与えた影響まで、帝国の統治にはたした「食」の決定的な役割を浮かび上がらせます。
林 采成 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0940-9 C3022
在庫有り
『図書新聞』 [2019年5月25日号、第3400号] から(評者:仲田誠氏)
ロボットに倫理を教える
モラル・マシーン
ウェンデル・ウォラック他著『ロボットに倫理を教える』(岡本慎平・久木田水生訳)が、『図書新聞』(2019年5月25日号、第3400号、武久出版)で紹介されました。AIやロボットは、果たして道徳的になれるのか? 間近に迫る倫理的な機械の必要性を、哲学的背景も含めて明確に提示。実現に向けた種々の工学的アプローチを概観し、困難ではあるが避けがたい取り組みのこれからを展望する。エンジニアと哲学者を架橋する待望の書。
ウェンデル・ウォラック/コリン・アレン 著
岡本慎平・久木田水生 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0927-0 C3010
在庫有り
『女性労働研究』 [第63号、2019年3月] から(評者:矢島聖子氏)
胃袋の近代
食と人びとの日常史
湯澤規子著『胃袋の近代』が、『女性労働研究』(第63号、2019年3月、女性労働問題研究会)で紹介されました。人びとは何をどのように食べて、空腹を満たしてきたのか。一膳飯屋、残飯屋、共同炊事など、都市の雑踏や工場の喧騒のなかで始まった外食の営みを、日々生きるための〈食〉の視点から活写、農村にもおよぶ広範な社会と経済の変化をとらえ、日本近代史を書き換えます。
“…… 随所に登場する『放浪記』の一節や、一膳飯屋、公営食堂、女工たちの食事、あらゆるところに登場するメニューなど本当に興味深い。私たちにも共通の「食べる」ということが中心に据えられているため、筆者が集め丹念に調べたこうした資料によって歴史に対し不思議な追体験をさせられる。たとえば一膳飯屋の朝鮮米とごった煮などの食事と清潔感のない店内、若い女工たちの豊かではないけれどにぎやかな食事風景やまるで給食のお楽しみメニューのようなぜんざい、そして『放浪記』のどうしようもない空腹感……。何度となく自分の胃袋がきゅうきゅうと反応するような記述があり、読み終わったところで、では現代はどうだろう、と目の前の食事についてしばしば考えさせられた。
本書に胃袋をつかまれたというのは大げさだが、こんな歴史や経済のとらえ方があったのかという新鮮な驚きと喜びがあった。需要と供給、大量消費と大量生産、市場と分配、どれも教科書的に学んではいたが、こんなに身近に感じることができたのは文章としてだけではなく、五感で近代を感じることができたからだろう。”(『女性労働研究』第63号、p.203)
湯澤規子 著
税込3,960円/本体3,600円
四六判・上製・354頁
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『世界の艦船』 [2019年6月号、通巻第901号] から
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『世界の艦船』(2019年6月号、通巻第901号、海人社)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“…… 商船や自衛艦の建造に携わった造船技術者、車両や産業機械の発展に尽力した造機技術者、建設会社で国土の復興に努めた施設系技術者など、分野ごとに分かりやすくまとめている。さらに防衛政策への提言を行なった技術者グループの動向も見逃していない。戦後日本を黙々と支えた有名無名の海軍技術者たちの活躍を、手軽に紐解くことができる貴重な書といえよう。”(『世界の艦船』2019年6月号、p.113)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
『ジェイ・シップス JShips』 [2019年6月号、通巻86号] から
海軍技術者の戦後史
復興・高度成長・防衛
沢井実著『海軍技術者の戦後史』が、『ジェイ・シップス JShips』(2019年6月号、通巻86号、イカロス出版)で紹介されました。戦後日本の復興と発展に、海軍技術者たちが果たした役割とは何か。造船、自動車、新幹線開発、土木などで高度成長を下支えした技術継受の全体像を復元、防衛生産も視野にその質的・量的インパクトを客観的に叙述するとともに、技術者たちの敗戦経験の歴史的特質をも浮き彫りにします。
“…… 海軍技術者たちが、どのような思いを抱えて戦後を切り開き、戦前・戦中・戦後を生き抜いたかを、彼らの発言や技術観を通して明らかにしていく。造船、自動車、新幹線開発、土木など、高度成長を支えた技術継受の全体像や、防衛生産のインパクトなどについて、ときにはその問題点も指摘する客観的な考察は興味深い。”(『ジェイ・シップス JShips』2019年6月号、p.105)
沢井 実 著
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・256頁
ISBN978-4-8158-0943-0 C3021
在庫有り
「読売新聞」 [2019年5月12日付] から(評者:宮下志朗氏)
原典 中世ヨーロッパ東方記
高田英樹編訳『原典 中世ヨーロッパ東方記』が、「読売新聞」(2019年5月12日付)で紹介されました。モンゴル帝国の侵攻はヨーロッパを震撼させ、その世界像に転換を迫った。当時、東方に派遣された修道士や商人たちは何を見、どのように記録したのか。ルブルクやマルコ・ポーロ、ハイトンらの旅行記から、書簡、教会壁画、世界地図まで全15編を原典から翻訳集成し、ヨーロッパによるアジア認識の展開をたどります。
高田英樹 編訳
税込13,200円/本体12,000円
菊判・上製・852頁
ISBN978-4-8158-0936-2 C3022
在庫有り
『週刊読書人』 [2019年4月19日号、第3286号] から(評者:緑慎也氏)
ロボットに倫理を教える
モラル・マシーン
ウェンデル・ウォラック他著『ロボットに倫理を教える』(岡本慎平・久木田水生訳)が、『週刊読書人』(2019年4月19日号、第3286号、読書人)で紹介されました。AIやロボットは、果たして道徳的になれるのか? 間近に迫る倫理的な機械の必要性を、哲学的背景も含めて明確に提示。実現に向けた種々の工学的アプローチを概観し、困難ではあるが避けがたい取り組みのこれからを展望する。エンジニアと哲学者を架橋する待望の書。
ウェンデル・ウォラック/コリン・アレン 著
岡本慎平・久木田水生 訳
税込4,950円/本体4,500円
A5判・上製・388頁
ISBN978-4-8158-0927-0 C3010
在庫有り
『国際政治』 [195号、2019年3月] から(評者:衛藤安奈氏)
対中借款の政治経済史
「開発」から二十一ヵ条要求へ
久保田裕次著『対中借款の政治経済史』が、『国際政治』(195号、2019年3月、日本国際政治学会)で紹介されました。戦後ODAの淵源ともいうべき対中借款は、いかにして始まったのか。草創期にあたる日清戦後から第一次大戦期の展開を多角的にたどり、帝国主義的理解の限界をこえて、国際環境と中国側の主体性も踏まえた新たな実像を描き出す。開発と侵略の間を浮彫にする新鋭の成果。
久保田裕次 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・372頁
ISBN978-4-8158-0856-3 C3021
在庫有り
『史学雑誌』 [第128編第3号、2019年3月] から(評者:岸本美緒氏)
大清帝国の形成と八旗制
杉山清彦著『大清帝国の形成と八旗制』が、『史学雑誌』(第128編第3号、2019年3月、史学会)で紹介されました。ユーラシア東方の覇権へ ——。マンジュ(満洲)人が支配する大帝国はいかにして生まれたのか。国家=軍事システムたる「八旗制」を軸に大清帝国の構造を満漢文史料から実証的に解明、その帝国形成を中央ユーラシア世界と近世世界の交点に位置づけることで、新たな世界史像を描き出します。
杉山清彦 著
税込8,140円/本体7,400円
A5判・上製・574頁
ISBN978-4-8158-0798-6 C3022
在庫有り
『ピエリア』 [2019年春号] から(評者:三代川寛子氏)
アレクサンドロス変相
古代から中世イスラームへ
山中由里子著『アレクサンドロス変相』が、『ピエリア』(2019年春号、東京外国語大学出版会・附属図書館)で紹介されました。大王が征服した広大な地域に流布した伝承を、宗教・政治・歴史の分野にわたって、アラブ・ペルシアの多様なテクストにたどり、語りや図像の担い手たちが求めた「真実」に迫ります。アレクサンドロスが内包する本質と、古代世界の遺産を受けいれ再解釈していくムスリムの精神史をみごとに浮かび上がらせた力作。
山中由里子 著
税込9,240円/本体8,400円
A5判・上製・588頁
ISBN978-4-8158-0609-5 C3022
在庫有り
「academist Journal」 [2019年4月10日・12日] から
『「ボランティア」の誕生と終焉 ——〈贈与のパラドックス〉の知識社会学』の著者である仁平典宏先生のインタビューが、「academist Journal」(2019年4月10日・12日)に掲載されました。
【前編】「冷笑的な私」はどこから? ボランティアの歴史からたどる
【後編】日本は「純度100%」を求めがち?
『「ボランティア」の誕生と終焉 ——〈贈与のパラドックス〉の知識社会学』
A5判・上製・562頁 税込7,260円/本体6,600円
ISBN978-4-8158-0663-7 C3036
在庫有り
『図書新聞』 [2019年4月13日付、第3395号] から(評者:岡本充弘氏)
近代世界の誕生【上下巻】
グローバルな連関と比較 1780-1914
C.A.ベイリ著『近代世界の誕生』(平田雅博・吉田正広・細川道久訳、上下巻)が、『図書新聞』(2019年4月13日付、第3395号、武久出版)で紹介されました。【上巻】欧米から日本まで全世界に及ぶ相互連関と比較を軸に、「近代世界」成立の全体像を描ききるグローバル・ヒストリーの代表作。待望の邦訳。【下巻】世界各地の相互連関を解明し、従来の地域史や一国史を見直すことで、「多中心的」な近代史を描き出すグローバル・ヒストリーの名著。
C.A.ベイリ 著
平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
税込各4,950円/本体各4,500円
A5判・上製・上356頁+下408頁
ISBN 上:978-4-8158-0929-4 下:978-4-8158-0930-0
C3022
在庫有り
『東京人』 [2019年5月号、第410号] から(評者:苅部直氏)
吉野作造と上杉愼吉
日独戦争から大正デモクラシーへ
今野元著『吉野作造と上杉愼吉』が、『東京人』(2019年5月号、第410号、都市出版)で紹介されました。「民本主義」対「国家主義」の単純な枠組みに収まりきらない、近代社会科学最大のライバルの共通基盤と真の分水嶺はどこにあったのか。ドイツ経験などの見過ごされた契機も手掛かりに、近代日本政治の現実の焦点を捉え、デモクラシーと帝国をめぐる議論に新たな地平を拓きます。
“……著者の筆致はどちらかと言えば吉野のきびしく、上杉に対する再評価が目立つ。しかしこれは、戦後になって民主主義の先駆者として吉野が顕彰されるかたわら、上杉の活躍が忘れられた状況に対して、均整のとれた叙述をめざす姿勢の表れである。アカデミズムにおいて、異なる立場・学統が競い共存する闊達さが、戦後には失なわれ、閉塞と抑圧を再生産してきた。そうした問題意識が叙述の底に流れている。西洋の学問と日本の伝統とをいかに関係づけるかという問題も含め、現代の学問のあり方についても考えさせられる本である。……”(『東京人』2019年5月号、p.136)
今野 元 著
税込6,930円/本体6,300円
A5判・上製・484頁
ISBN978-4-8158-0926-3 C3031
在庫有り
『建築史学』 [第72号、2019年3月] から(評者:元岡展久氏)
〈モータウン〉のデザイン
堀田典裕著『〈モータウン〉のデザイン』が、『建築史学』(第72号、2019年3月、建築史学会)で紹介されました。クルマと交通システムによって創り出された環境 —— 現代の〈モータウン〉はどのようなカタチをしているのか。自動車工場や住宅から、高速道路や物流ターミナル、レジャーセンターやショッピングモールまで、生産・居住・移動・消費の観点で車社会を捉え直し、環境デザインの可能性を問う力作。
堀田典裕 著
税込5,280円/本体4,800円
A5判・上製・424頁
ISBN978-4-8158-0910-2 C3052
在庫有り
「書標 ほんのしるべ」 [2019年4月号] から
パチンコ産業史
周縁経済から巨大市場へ
『パチンコ産業史』の著者・韓載香先生による自著紹介が、「書標 ほんのしるべ」(2019年4月号、丸善ジュンク堂書店)の「著書を語る」に掲載されました。本書誕生のプロセスがつぶさに語られています。【本書の内容】戦前以来の縁日娯楽はなぜ、30兆円産業となりえたのか。見過ごされてきた周縁経済の躍動を、ホール、メーカー、規制の動向からダイナミックに捉え、「地下経済」論を超えた等身大の姿を浮き彫りにします。産業が存続可能となる条件を新たな視点で照射し、日本経済論の盲点に迫った初の通史。
韓 載香 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・436頁
ISBN978-4-8158-0898-3 C3033
在庫有り
「日刊ゲンダイ」 [2019年4月4日付] から
『胃袋の近代 —— 食と人びとの日常史』の著者である湯澤規子先生のインタビューが、「日刊ゲンダイ」(2019年4月4日付)の HOT Interview に掲載されました。2019年3月に刊行された新刊『7袋のポテトチップス —— 食べるを語る、胃袋の戦後史』(晶文社刊)について語られています。
『胃袋の近代
—— 食と人びとの日常史』
四六判・上製・354頁 税込3,960円/本体3,600円
ISBN978-4-8158-0916-4 C3021
在庫有り
『社会経済史学』 [第84巻第4号、2019年2月] から(評者:鍛冶博之氏)
パチンコ産業史
周縁経済から巨大市場へ
韓載香著『パチンコ産業史』が、『社会経済史学』(第84巻第4号、2019年2月、社会経済史学会)で紹介されました。戦前以来の縁日娯楽はなぜ、30兆円産業となりえたのか。見過ごされてきた周縁経済の躍動を、ホール、メーカー、規制の動向からダイナミックに捉え、「地下経済」論を超えた等身大の姿を浮き彫りにする。産業が存続可能となる条件を新たな視点で照射し、日本経済論の盲点に迫った初の通史。
“…… 本書の意義は、戦後から1990年代に至るパチンコ産業の内的発展動向が初めて学術的観点から解明された点にある。これまでにもパチンコの歴史を扱う書籍や論文が散見されたが、それらの多くは「史実の収集と整理」に終始し、まらその史実の多くを伝聞や先行研究からの引用などに依存する傾向が見られた。本書では、先行研究を踏まえながら業界関係者へのインタビュー内容を織り交ぜ、さらに一般的には入手困難な業界内の一次データを活用し、客観的数値に基づいた史実の抽出を徹底する。「一次データが極少で実態把握が難しい」と言われるパチンコ産業研究において、本書による貫徹した実証分析による表出した多くの史実がもつ意味は極めて大きく、著者の丹念で緻密な資料分析は高く評価される。……”(『社会経済史学』第84巻第4号、鍛冶博之氏評、pp.114-115から)
韓 載香 著
税込5,940円/本体5,400円
A5判・上製・436頁
ISBN978-4-8158-0898-3 C3033
在庫有り
『社会経済史学』 [第84巻第4号、2019年2月] から(評者:江夏由樹氏)
産業化する中国農業
食料問題からアグリビジネスへ
宝剣久俊著『産業化する中国農業』が、『社会経済史学』(第84巻第4号、2019年2月、社会経済史学会)で紹介されました。製造業など工業の高度成長の陰で見過ごされてきた農業。しかしその経済発展を可能にしたのは、飢饉の経験を乗り越えて、厖大な人口への食料供給を実現した農業であった。龍頭企業の台頭など、アグリビジネスでも世界的地位を築きつつある中国農業の現状を、新たな視座で描き出します。
“…… 本書のなかでは、農協と農民専業合作社との比較が論じられるなど、日本と中国の農業の対比がしばしばなされている。農村における高齢化の進行、農産品の消費構造の変化など、中国の向き合う問題の多くは日本の場合と共通するところが少なくない。農村社会の高齢化が農業の将来に難しい問題を投げかけていることは、中国も日本も同様である。「食の高度化」は飼料の輸入増加をもたらし、農業は国際市場の動きに大きく左右されている。本書が論じた中国農業の試みは日本の農業の将来にとって、どのような示唆をあたえるのであろうか。本書は中国経済の専門家だけではなく、日本の農業問題に関心をもつ人々にとっても貴重な内容を含んでいる。”(『社会経済史学』第84巻第4号、江夏由樹氏評、p.126から)
宝剣久俊 著
税込6,380円/本体5,800円
A5判・上製・276頁
ISBN978-4-8158-0886-0 C3033
在庫有り