内 容
驚くほど似ていた一つの世界 ——。東アジアでも西ヨーロッパでも、発達した市場経済は生態環境の制約に直面していた。なぜ西欧だけが大きく分岐していったのか。今日にいたる世界経済の根源的な謎を明らかにし、新しい歴史像を提示したグローバルヒストリーの代表作、遂に邦訳。
著者紹介
ケネス・ポメランツ
(Kenneth Pomeranz)
1958年生まれ、1988年にイェール大学より博士号取得、カリフォルニア大学(アーバイン校)教授を経て、現在シカゴ大学教授。本書『大分岐』によりジョン・K・フェアバンク賞、世界歴史学会著作賞を受賞。ほかにThe Making of a Hinterland ; The World that Trade Created (共著、邦訳『グローバル経済の誕生』筑摩書房)などの著作がある。2013-14年にアメリカ歴史学会会長を務める。
(所属等は初版第1刷発行時のものです)
訳者一覧
川北 稔 (監訳および日本語版への序文・第6章)
鴋澤 歩 (序章)
石川亮太 (第1章)
西村雄志 (第2章・補論)
岩名 葵 (第2章)
松中優子 (第2章)
浅野敬一 (第3章)
坂本優一郎 (第4章)
水野祥子 (第5章)
目 次
凡 例
日本語版への序文
序 章 ヨーロッパ経済発展のさまざまな比較、説明、叙述
さまざまなヨーロッパ中心史観 —— 人口、生態環境、資本蓄積
他のヨーロッパ中心史観 —— 市場、企業、組織
ヨーロッパ中心史観の諸問題
より包括的なストーリーの提起
比較、説明、そして議論の構造
地理的範囲についての覚え書き
第Ⅰ部 驚くほど似ていた、ひとつの世界
第1章 ヨーロッパはアジアよりも早く発展したか
—— 人口、資本蓄積、技術
農業、輸送、そして資本としての家畜
ヨーロッパ人は長生きで、豊かだったのか
出生率
資本蓄積に差異はあったか
技術に差異はあったか
第2章 ヨーロッパとアジアにおける市場経済
中国と西ヨーロッパにおける土地市場と土地利用への規制
労働の制度
移民、市場、制度
農産物市場
農村工業と副業
中国とヨーロッパにおける家内労働
——「インヴォリューション」と「勤勉革命」
第Ⅰ部の結論 —— 近代世界経済における多数の中核と共通する制約
第Ⅱ部 新たな経済は新たな精神から生まれるのか
—— 消費、投資、資本主義
はじめに
第3章 奢侈的消費と資本主義の勃興
より一般的であった奢侈品とそれほど一般的でなかった奢侈品
近世ヨーロッパとアジアにおける日常生活に用いる奢侈品と民衆の消費
耐久消費財と奢侈の「即物化」
エキゾティックな商品と流行の速さ
—— グローバルな複合状況と文化に基づく経済的差異の出現
奢侈品の需要、社会システム、資本主義的企業
第4章 見える手
—— ヨーロッパとアジアにおける企業構造、社会・政治構造、「資本主義」
海外からの富の搾取と資本蓄積 —— ウィリアムズ・テーゼ再考
衒示的なものの重要性 —— 奢侈需要、資本主義、そして新世界の植民地化
国家間競争、暴力、国家システム
—— いかに重要ではなかったか、いかに重要であったか
第Ⅱ部の結論 類似点の重要性 —— そして相違点の重要性も
第Ⅲ部 スミスとマルサスを超えて
—— 生態環境の制約から工業の持続的な成長へ
第5章 共通の制約
—— 西ヨーロッパと東アジアにおける生態環境の重圧
中国における森林破壊と土壌の消耗 —— ヨーロッパとの比較研究
旧世界における「周辺」との、資源のための貿易
—— 疑似マルサス的問題に対するスミス的解決の共通パターンと限界
第6章 土地の制約を外す
—— 新しいかたちの周辺としての南北アメリカ
もうひとつの新世界、もうひとつの「思いがけない授かり物」—— 貴金属
生態環境上の救済の方途 —— 産業革命時代のイギリス
比較と計算 —— 数字の意味するもの
数字では表せないもの
工業化時代の世界へ
最後の比較 —— 労働集約度、資源、そして工業の「成熟」
補論A 1人当たり陸上輸送能力の推計
—— 1800年前後のドイツと北インドを事例として
補論B 18世紀末の中国北部とヨーロッパにおける施肥推計
—— およびその結果としての窒素流出量の比較
補論C フランス、嶺南、そして一部の中国北部の森林と燃料供給の推計
—— 1700年から1850年まで
補論D イギリスへの商品輸入がもたらした「幻の耕地」の推計
—— 18世紀末と19世紀初め
補論E 中国長江下流域農村における織物労働者の稼得能力推計
—— 1750年から1840年まで
補論F 1750年とそれ以降における、長江下流域および中国全体としての棉花生産と
生糸生産の推計
—— イギリス(連合王国)、フランス、ドイツとの比較とともに
訳者あとがき
注
参考文献
図表一覧
索 引
書 評
朝日新聞(2019年12月16日付、文化の扉「地球規模の新・世界史」)
『週刊東洋経済』(2019年12月7日号、特集「ビジネスマンのための世界史&宗教」)
『社会経済史学』(第82巻第4号、2017年2月、評者:岸本美緒氏)
『週刊読書人』(第3120号、2015年12月18日付、評者:髙木勇夫氏)
『図書新聞』(第3226号、2015年10月17日付、評者:村上衛氏)
訳者の既刊書
『近代世界システム』(全4巻) I. ウォーラーステイン 著/川北 稔 訳
『西洋近現代史研究入門[第3版]』 望田幸男・川北 稔 他編
関連書
『近代世界の誕生』 C.A.ベイリ 著/平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
『世界史のなかの産業革命』 R.C.アレン 著/眞嶋史叙・中野 忠・安元 稔・湯沢 威 訳
『知識経済の形成』 ジョエル・モキイア 著/長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳
『ヨーロッパの奇跡』 E.L.ジョーンズ 著/安元 稔・脇村孝平 訳