内 容
中国やインド、大陸ヨーロッパではなく、イギリスで産業革命が起こり得たのはなぜか? 食事、健康などの生活水準をもとに、世界史的な視野でその起源を捉えなおし、エネルギーなどの自然環境が果たした役割も視野に、産業革命の新たな全体像を示した決定版。
【本書「日本語版への序」】
著者紹介
ロバート・C.アレン
(Robert C. Allen)
1947年生まれ。オックスフォード大学ナッフィールド・カレッジ・フェロー、経済史教授を経て、現在、同カレッジ・シニア・リサーチフェロー兼ニューヨーク大学アブダビ校グローバル特別栄誉教授。著書に、Enclosure and the Yeoman: The Agricultural Development of the South Midlands, 1450-1850(1992)、Farm to Factory: A Re-interpretation of the Soviet Industrial Revolution(2003)。いずれも、経済史学会(アメリカ)のラーンキ賞を受賞。
目 次
日本語版への序
謝 辞
第1章 前工業化経済と産業革命
産業革命を説明する
文化と経済 —— 原因それとも結果か
消費主義と勤勉
結婚と子ども
近代文化の成立
産業革命への経済的アプローチ
ヨーロッパ経済の変容 1500~1750年
近世の拡大から産業革命へ
第Ⅰ部 工業化以前の経済
第2章 前工業化イギリスの高賃金経済
賃金と価格
イギリスにおける賃金の収斂
熟練労働者
高賃金経済は生活の質にどのような意味を持つのか
高賃金と経済成長
第3章 農業革命
マクロの視点 —— 人々はどのように食料を供給されたのか
農業労働者の1人当たり産出量
なぜ産出量と生産性は上昇したのか
囲い込みは産出量と生産性を上昇させたのか
開放耕地農民はどのように農業の近代化を達成したのか
農民たちはなぜ自分たちの農法を改良したのか
結 論
第4章 低価格エネルギー経済
ロンドンの成長と石炭取引の興隆
家庭用石炭暖房の方法
北東部炭鉱地帯以外の石炭生産の増加
世界を視野に入れたイギリスのエネルギー
オランダの都市化と 「木材危機」
結 論
第5章 なぜイギリスが成功したのか
進歩と貧困のモデル
19世紀への多様な経路
イギリスが成功した要因
含意するものとさらなる疑問
補遺 近世経済の方程式
第Ⅱ部 産業革命
第6章 なぜ産業革命はイギリスで起きたのか
イギリス —— 高賃金で安価なエネルギー経済
なぜイギリスの独特な賃金・価格構造が問題となるのか —— 労働を資本で
代替する
イギリスと中国にモデルを応用する
イギリスとフランスにモデルを応用する —— ピン工場の例
第2段階 —— ミクロレベルの発明の流れ
3つのマクロレベルの発明の歴史
補 遺
第7章 蒸気機関
第1段階 —— ニューコメンのマクロレベルの発明
第2段階 —— 1世紀半にわたる改良
蒸気機関の普及
第8章 綿 業
マクロレベルの技術革新、第1段階 —— ジェニー紡績機
リチャード・アークライトの発明
なぜフランスではないのか
なぜフランスではなくてイギリスで紡績機械が発明されたのか
第2段階 —— 紡績機械の改良
結 果
補遺1 ジェニー紡績機の収益率
補遺2 アークライト工場の収益率
第9章 コークス溶鉱法
マクロレベルの発明、第1段階 —— エイブラハム・ダービー1世の業績
マクロレベルの発明、第2段階 —— コークス溶鉱鉄の競争力を高める発明、
1720~55年
1755~1850年までのマクロレベルの発明への一層の改良
ヨーロッパ大陸におけるコークス溶鉱法の導入
アメリカにおけるコークス溶鉱法の導入
コークス溶鉱法はなぜイギリスで発明されたのか
第10章 発明家、啓蒙主義そして人的資本
産業的啓蒙主義
重要な発明家に関する統計分析
産業的啓蒙主義と実験
長期的視点で見た産業的啓蒙主義
経済的、社会的発展の水準
産業革命の原因としての文化
補遺 重要な発明家リスト
第11章 産業革命から近代経済成長へ
参考文献
訳者解説
図表一覧
索 引
書 評
『西洋史学』(第266号、2018年12月、評者:山本千映氏)
『図書新聞』(第3353号、2018年6月2日付、評者:重富公生氏)
『週刊エコノミスト』(2018年2月6日号、評者:上川孝夫氏)
関連書
『知識経済の形成』 ジョエル・モキイア 著/長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳
『近代世界の誕生』 C.A.ベイリ 著/平田雅博・吉田正広・細川道久 訳
『最初の近代経済』 J.ド・フリース 他著/大西吉之・杉浦未樹 訳
『ヨーロッパの奇跡』 E.L.ジョーンズ 著/安元 稔・脇村孝平 訳