内 容
歴史叙述の根底を問い直す ——。前近代の世界には、天地創造に始まる人類の系譜を描く「普遍史」という歴史類型が存在した。著名な『王書』や『集史』から、地方王朝やモンゴル時代の多様な手稿本までを徹底的に調査し、世界認識のダイナミックな変容を跡づける力作。
目 次
凡 例
地 図
序 章 普遍史研究の意義と展望
はじめに 問題の所在
1 問題設定
2 先行研究
3 時代設定
4 普遍史の定義
5 用語の定義
6 本書の構成
第Ⅰ部 『王書』以前の古代ペルシア史叙述
——『王の書』から『王書』へ
第1章 旧約的普遍史と古代ペルシア史の相克
はじめに
1 アラブの系譜学者と古代ペルシア史
(1)イブン・ハビーブ『美文の書』
2 イブン・ムカッファアと古代ペルシア史
(2)イブン・クタイバ『知識』
(3)ディーナワリー『長史』
(4)『ペルシア・アラブの諸王の歴史に関する究極の目的』
3 古代ペルシア四王朝叙述法の萌芽
(5)ヤアクービー『歴史』
(6)タバリー『預言者と王の歴史』
(7)マスウーディー『黄金の牧場』/『助言と再考の書』
(8)クダーマ・ブン・ジャアファル『租税の書』
章 結
第2章 『王の書』の「復活」と流行
—— ペルシア系地方王朝における普遍史
はじめに
1 ハムザ・イスファハーニーによる古代ペルシア史の再編
(1)ハムザ・イスファハーニー『王と預言者の年代記』
2 ペルシア語歴史叙述の萌芽と『王の書』の流行
(2)アブー・マンスール『王書』
(3)バルアミー『歴史書』
3 ハムザ・イスファハーニー後のアラビア語古代ペルシア史叙述
(4)マクディスィー『創始と歴史』
(5)フワーリズミー『学問の鍵』
(6)ミスカワイフ『諸民族の経験』
(7)ビールーニー『過去の痕跡』
章 結
第3章 フィルダウスィーの『王書』と古代ペルシア史
—— ガズナ朝における普遍史
はじめに
1 フィルダウスィーの古代ペルシア史叙述
(1)フィルダウスィー『王書』
2 フィルダウスィーと同時代の古代ペルシア史叙述
(2)サアーリビー『列王伝精髄』
(3)ガルディーズィー『歴史の装飾』
章 結
第Ⅰ部結論
第Ⅱ部 ペルシア語普遍史書の成立
——『王書』から『選史』へ
第4章 『王書』の流行とペルシア語普遍史
はじめに
1 セルジューク朝時代の『王書』の評価
2 セルジューク朝時代の古代ペルシア史叙述
(1)ガザーリー『諸王への忠告』
(2)イブン・バルヒー『ファールスの書』
(3)『史話要説』
(4)ファフル・ラーズィー『光の真実』/『知識の集成』
(5)イブン・イスファンディヤール『タバリスターン史』
3 アラビア語普遍史書における古代ペルシア史叙述
(6)『天文学者たちの規範』
(7)イブン・ジャウズィー『整然たる歴史』
(8)イブン・アスィール『完史』
4 奴隷王朝における古代ペルシア史叙述
(9)ファフル・ムダッビル『系譜書』
(10)ジューズジャーニー『ナースィル史話』
章 結
第5章 ペルシア語普遍史とオグズ伝承
—— アブー・サイードの即位まで
はじめに
1 ガザン以前のペルシア語普遍史書
(1)バイダーウィー『歴史の秩序』
(2)ザッジャージー『吉兆の書』
2 ガザン以降のペルシア語普遍史書
(3)カーシャーニー『歴史精髄』
(4)ラシード・アッディーン『集史』
(5)バナーカティー『バナーカティー史』
章 結
第6章 旧約的普遍史、古代ペルシア史、オグズ伝承の接合
—— アブー・サイードとギヤース・ラシーディーの時代
はじめに
1 3つの人類史の接合
(1)ハムド・アッラー・ムスタウフィー『選史』
2 アブー・サイード期のペルシア語普遍史書
(2)アフマド『心優しい子ども』
(3)シャバーンカーライー『系譜集成』
(4)アクサラーイー『月夜史話』
章 結
第Ⅱ部結論
第Ⅲ部 ペルシア語普遍史書の再編
——『ペルシア列王伝』から『歴史集成』へ
第7章 古代ペルシア史の再編
—— ハザーラスプ朝におけるペルシア語文芸活動と『ペルシア列王伝』
はじめに
1 ハザーラスプ朝史研究の意義
2 ヌスラト・アッディーンによる文芸活動の庇護・奨励
(1)シャラフ・カズウィーニー『ペルシア列王伝』/『ヌスラト書簡集』
(2)『贈物』
(3)シャムス・ファフリー『ヌスラトの尺度』
(4)ヒンドゥーシャー『先祖の経験』
(5)『アラブ・ペルシアの諸王の歴史に関する諸民族の経験』
3 献呈作品におけるヌスラト・アッディーンの表象
4 『ペルシア列王伝』に対する需要
(6)ニークパイ・ブン・マスウード『ニークパイの歴史』
章 結
第8章 イランの地の地方政権とイラン概念
はじめに
1 ヤズド・ニザーム家の名士シャムス・フサイニー
(1)アリー・トゥスタリー『諸王への贈物』
2 インジュー朝
(2)アームリー『高貴なる諸学問』
3 ジャラーイル朝
(3)アハリー『シャイフ・ウワイス史』
4 ムザッファル朝
(4)アラー・カズウィーニー『探求者の道』
(5)アバルクーヒー『歴史の天国』
章 結
第9章 イランの地の歴史からイランとトゥランの歴史へ
—— ティムール朝時代
はじめに
1 ティムール朝史と普遍史の接合
(1)『イスカンダル無名氏の史書』
(2)『ムイーンの歴史精髄』
(3)イブン・イナバ『スルターンの諸章』
2 オグズ伝承と古代ペルシア史の融合
(4)ヤズディー『勝利の書』
3 ハーフィズ・アブルーによるペルシア語普遍史の再編
(5)ハーフィズ・アブルー『歴史集成』
4 ティムール朝におけるペルシア語普遍史書の手稿本作成
章 結
第Ⅲ部結論
終 章
付表 普遍史における古代ペルシア史叙述の変遷
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『史苑』(第81巻第1号、2020年12月、評者:中川灯里氏)
『内陸アジア史研究』(第35巻、2020年3月、評者:宇野伸浩氏)
『イスラム世界』(第92号、2019年11月、評者:小笠原弘幸氏)
『オリエント』(第62巻第1号、2019年9月、評者:矢島洋一氏)
『史学雑誌』(2019年10月号、第128編第10号、評者:井谷鋼造氏)