内 容
市場経済の自由な発展が見られた中国が、なぜ世界経済の中枢たりえなかったのか? 中華帝国のダイナミズムを支えた構造を、世界経済への巨視的な展望の下、現地通貨と地域間決済通貨という概念をテコに分析、非均衡型の市場経済モデルを提示した気鋭による力作。
目 次
まえがき
序 2つの貨幣
前編 中華帝国の昇華と世界経済の始動
Ⅰ 銀銭二貨制
1 小額通貨の時代
2 銀銭二貨の属性と機能
Ⅱ 撰銭から銭貴へ
—— 乾隆通宝の登場
1 日常としての撰銭
2 乾隆の銭貴
3 制銭流通の崩壊
4 小 結 —— ムガールと清
Ⅲ 穀賤から米貴へ
—— 地域資産への傾斜
1 穀賤から米貴へ
2 穀物現地備蓄の形成
3 制度としての穀物備蓄
4 地域資産過高評価の構造
5 穀物備蓄のその後
Ⅳ 雑種幣制と本位貨幣制
1 無本位制下の銀流通
2 雑種幣制の構造
Ⅴ 中華帝国と重商主義
1 銀・穀物・小額通貨
2 東アジアと世界経済
3 現地通貨と地域権力
4 財政と市場
後編 世界経済の展開と中華帝国の溶解
Ⅵ 辛亥革命への視角
Ⅶ 清末湖北省における幣制改革
—— 広域経済圏への道
1 悪幣インフレ論の虚構
2 第一次幣制改革 —— 国産銀元の失敗
3 1903年の通貨危機
4 第二次幣制改革 —— 銅元・官銭票の普及
5 貨幣の通用状況
6 貨幣循環の変容
7 貿易ならびに物価への影響
8 小 結
Ⅷ 清末湖北省政府の財政改革
—— 中国分省化の選択枝
1 辛亥革命論と財政
2 湖北省財政の規模と歳入構造
3 1902年以前 —— 財政保守主義との相克
4 1902年以後 —— 省財政膨張と自律化傾向
5 中央統制と省財政の危機
6 省財政と州県行政
7 漢口開港場経済と省権力
8 小 結
Ⅸ 世界経済と辛亥革命
1 国際金本位制と第一次産品貿易
2 ドイツ油脂化学工業とアジア小農経済
3 開港場経済の競合
4 光緒新政と分省化
5 小 結 —— 現地通貨の退場と世界経済の転機
Ⅹ 銀銭二貨制の終焉
—— 分省化の回避
1 幣制統一への道
2 袁世凱銀元の普及
3 中国銀行券の普及過程
4 漢口銅貨圏の崩壊
5 小 結
Ⅺ 綿糸棉花流通にみる中国市場構造の特質
1 逆説的市場現象
2 綿糸市場の地域分割と原綿流通
3 決済構造と綿糸・棉花流通
4 中国紡績業の 「黄金期」 と原綿需給
5 小 結
結 2つの債権
あとがき
関連地図
図表一覧
索 引
英文要旨
受 賞
書 評
『週刊エコノミスト』(2012年9月11日号、評者:田代秀敏氏)