内 容
日本経済の進む隘路を照らす ——。現状をどう考えればよいか、この先どうなるのか。過去30年間に陥った不可思議な均衡とその行方を初めて包括的に解明。戦中・敗戦直後の経験も踏まえた透徹した分析から、危機対応の方針を含め、政府・日銀のすべきこと/してはいけないことを明確に提示する。
【試し読み】
目 次
序 章
1 財政規律棚上げという厄介な事態
2 予知・予言に関する財政規律棚上げ派と財政規律重視派の対立
3 財政規律をめぐるマクロ経済学
4 政策提言のジレンマ
5 危機対応マニュアルの必要性
6 戦中・敗戦直後を振り返って
7 物価高と金利高のグローバルな環境に直面する日本政府の「借りっぱなし」
8 本書のスタイル
第1章 1990年代以降の日本の財政金融政策
1 日本経済の景気循環
2 政府債務の動向
3 物価の動向
4 金利の動向
5 政府債務をめぐる政府、日銀、銀行、家計とのやり取り
6 日本経済の超過供給・過少需要の下での積極的な財政金融政策
第2章 マクロ経済学から見た財政規律
1 モダンなマクロ経済モデルにおいて忘れ去られたこと(その1)
2 モダンなマクロ経済モデルにおいて忘れ去られたこと(その2)
3 不均衡分析からの視点
—— 財・労働市場の過少需要と国債・貨幣市場の超過需要
4 財政規律を棚上げにしたマクロ経済をモデル化する試み
—— 政府の「借りっぱなし」と家計の「貸しっぱなし」
第3章 戦中・敗戦直後の財政金融政策
—— 国債と貨幣への旺盛な需要が突然消滅した経験
1 なぜ、戦中・敗戦直後なのか
2 戦中における闇市場からの旺盛な貨幣需要
—— 経済統制期の国民所得統計の謎をめぐって
3 太平洋戦争期における占領地の発券銀行・中央銀行による錬金術
第4章 財政規律棚上げレジームから財政規律遵守レジームへ
1 本章の問題意識
2 理論モデルによって説明すべき「これまで」と予測すべき「これから」
3 理論モデルの構造
4 理論モデルによって説明する「これまで」と予測する「これから」
5 本章をどのように咀嚼すべきなのか
—— ハイパーインフレを未然に防ぐために
第5章 政府の「借りっぱなし」と家計の「貸しっぱなし」の解消
—— 私たちの新しい出発点とするために
1 海外から見た政府の「借りっぱなし」と家計の「貸しっぱなし」
2 2020年代の海外情勢と日本経済 —— 海外物価を基準とした強烈なデフレ圧力
3 財政規律棚上げレジームから財政規律遵守レジームへスイッチした場合のインパクト
4 日本経済の再出発のために
補論A 財・労働市場の過少需要と国債・貨幣市場の超過需要の関係について
補論B 統合政府の生涯予算制約と家計の生涯予算制約の関係
補論C 実物資産が存在する場合の統合政府と家計の生涯予算制約
補論D 1945年の名目GNEの推計
補論E 公定価格と闇価格が併存する場合の国民所得統計
補論F 財政規律棚上げレジームから財政規律遵守レジームへのスイッチを考慮した貨幣
経済モデル
補論G フィッシャー方程式の一般化
補論H シミュレーションの前提
補論I GDPデフレーターと国内物価との関係
補論J 長期金利の平価関係、実質金利の平価関係
補論K 通貨・為替スワップの仕組み
参考文献
あとがき
索 引
書評等
『ファイナンス』(2024年2月号、第699号、評者:廣光俊昭氏)
『週刊東洋経済』(2024年2月10日号、評者:河野龍太郎氏)
日本経済新聞(2023年12月23日付、特集「エコノミストが選ぶ 経済図書ベスト10」)
「日経BOOKプラス」(2023年12月12日公開、評者:前田裕之氏)
『週刊金融財政事情』(2023年11月28日号、第74巻第44号、評者:板谷敏彦氏)