内 容
多様な宗教を包摂する「民主化の成功国」で、「不寛容」の烙印を押されたイスラーム主義者の系譜がなぜ人々を糾合できたのか。デモクラシーと排他性の間で揺れてきた彼らの活動を軸に、インドネシアにおける政治と宗教のダイナミズムを、独立期からSNSの時代まで総体的に捉え直した、俊英の力作。
目 次
インドネシア地図
序 章
1 問題の所在 —— 多宗教の共存とイスラーム主義
2 現代インドネシアにおけるイスラームと政治
3 イスラーム主義の系譜とマシュミ
4 本書の分析枠組みと主張
5 本書の構成
第1章 民主主義の擁護者としてのマシュミ
—— 独立期~スカルノ政権期 1945-66年
1 論争の発端としてのジャカルタ憲章
2 議会制民主主義時代の到来と対立の構図
3 マシュミ党首ナッシールとその民主主義論
4 インドネシア共和国革命政府への参加とマシュミ解党
小 括
第2章 近代主義思想と宗教的少数派排斥の論理
—— スハルト政権前半期 1966-89年
1 スハルト政権の成立
2 インドネシア・イスラーム・ダアワ評議会とそのイデオロギー
3 政権による締め付けの強化と懐柔
小 括
第3章 「政権派」への変容
—— スハルト政権後半期 1990-98年
1 スハルト政権のイスラーム化とインドネシア・ムスリム知識人協会の設立
2 ポスト・マシュミ世代の台頭と近代主義思想の後退
3 新たな対立の構図
小 括
第4章 民主化後の旧マシュミの分裂と迷走
—— 移行期 1998-2004年
1 ハビビ降ろしと旧政権派、「自警団」の登場
2 1999年総選挙と旧マシュミ勢力の分裂
3 ジャカルタ憲章「復活」の試み
小 括
第5章 宗教的少数派排斥運動の活性化
—— ユドヨノ政権期 2004-2014年
1 多様化するイスラーム主義イデオロギーとウラマー評議会の変容
2 ユドヨノ政権発足とウラマー評議会の影響力拡大
3 「異端」排斥運動の活性化
4 シーア派排斥運動への飛び火
5 組織を超えた同盟形成とその限界
小 括
第6章 理念なき圧政批判
—— ジョコ・ウィドド政権期 2014-2019年
1 2014年大統領選挙 —— プラボウォとの二度目の同盟形成
2 ジョコウィ政権とウラマー評議会の緊張関係
3 2019年大統領選挙
小 括
終 章 インドネシアの民主主義とマシュミの伝統
あとがき
注
参考文献
初出一覧
図版出典一覧
索 引
書評等
『アジア・アフリカ地域研究』(第24-1号、2024年9月、評者:大形里美氏)
『図書新聞』(2024年3月2日号、第3629号、評者:水野祐地氏)
関連書
『イスラーム世界研究マニュアル』 小杉 泰・林佳世子・東長 靖 編