内 容
新たな包括的理解の試み ——。従来「イスラーム神秘主義」と訳され、知的エリートの深遠な思索がクローズアップされてきたスーフィズム。本書は、聖者信仰・「スーフィー教団」など民衆的要素や歴史的・地域的展開もふまえ、その多様な姿を文献とフィールドから総合的に把握、イスラームの中核に位置づけた画期的論考である。
目 次
凡 例
序 章
第Ⅰ部 スーフィズムへの視座
第1章 スーフィズム研究の歴史と潮流
はじめに
1 スーフィズム研究史
2 近年の研究動向
おわりに
第2章 スーフィズムの分析枠組
—— 三極構造論
はじめに
1 スーフィズム再考
2 スーフィズムの三極構造論
3 三極構造論から見たスーフィズムの史的変容
おわりに
第3章 スーフィズムの歴史
はじめに
1 スーフィズムの成立(12世紀中葉まで)
2 イスラームの核としてのスーフィズム(12世紀中葉から17世紀まで)
3 スーフィズム・タリーカの変革(18世紀)
4 ヨーロッパ植民地主義の衝撃とタリーカ(19世紀)
5 近代国家とタリーカ(20世紀~)
おわりに
第Ⅱ部 神秘主義としてのスーフィズム
—— 存在一性論学派を中心に
第4章 イブン・アラビーと存在一性論学派
はじめに
1 イブン・アラビーの生涯
2 イブン・アラビーの著作
3 イブン・アラビーの思想
4 存在一性論学派
おわりに
第5章 存在一性論学派の顕現説における「アッラー」の階位
—— カーシャーニーとジーリーを中心として
はじめに
1 カーシャーニーの五次元説
2 ジーリーの六段階説
おわりに
第6章 存在一性論学派における存在論と完全人間論
—— ジーリーを中心に
はじめに
1 存在一性論と完全人間論
2 ジーリーの存在論
3 ジーリーの完全人間論
おわりに
第7章 存在一性論学派の地域的展開と地域的偏差
はじめに
1 超越性と人格性
2 存在一性論学派の地域的展開の理解に向けて
おわりに
第Ⅲ部 民間信仰としてのスーフィズム
—— 聖者信仰をめぐって
第8章 イスラーム聖者の二系列
—— スーフィー聖者と非スーフィー聖者
はじめに
1 聖典とスーフィズムにおけるワリー論
2 聖者列伝とスーフィー列伝
おわりに
第9章 イスラームの聖者論と聖者信仰
—— イスラーム学の伝統のなかで
はじめに
1 4種の聖者論
2 聖者論と聖者信仰のあいだ
おわりに
第Ⅳ部 イスラームのなかのスーフィズム
—— その位置づけをめぐって
第10章 マムルーク朝初期のタサウウフの位置づけ
—— イブン・タイミーヤの「スーフィズム」批判を中心として
はじめに
1 イブン・タイミーヤの神秘主義哲学批判とタリーカ慣行批判
2 イブン・タイミーヤのタサウウフ像
おわりに
第11章 マムルーク朝末期におけるタサウウフをめぐる論争
—— ビカーイー・スユーティー論争を中心に
はじめに
1 歴史書に見るイブン・アラビー、イブン・ファーリド論争
2 ビカーイーの批判の書とスユーティーの反批判の書
3 論争書の検討
おわりに
第12章 スンナ派とスーフィズム
—— ワッハーブ派への反批判をめぐって
はじめに
1 ワッハーブ派とスーフィズム
2 ワッハーブ派の「謬説」とそれに対する反論
3 ワッハーブ派の「スーフィズム批判」の実態
おわりに
終 章 「多神教」的イスラーム
—— スーフィー・聖者・タリーカをめぐって
はじめに
1 スーフィー、聖者/ワリー、タリーカ
2 神秘主義哲学批判
3 聖者信仰批判とタリーカ慣行批判
4 「多神教」的イスラーム
おわりに
あとがき
参考文献
索 引
書 評
『イスラーム世界研究』(第7巻、2014年3月、評者:小田淑子氏)
著者の既刊書
『イスラーム世界研究マニュアル』 小杉 泰・林 佳世子・東長 靖 編