内 容
世界最大のムスリム人口を抱えるインドネシア。外来の宗教が地域に根づき、時代と社会の要請に応えて発展しつづける姿を、オランダ植民地時代から民主化後の現在まで、イスラーム法の浸透と解釈による現地化を軸に、ムスリム指導者の知的営為や政治との関係にも光をあて動態的に描き出す。
目 次
はじめに
序 章 イスラーム地域研究の方法
—— インドネシア・イスラームの実像を求めて
1 研究の流れ —— 方法論を中心に
2 イスラーム地域研究の基本 —— グローバル性と地域性
3 イスラーム世界の周縁部としてのインドネシア —— イスラームとアダット
4 継続するイスラーム化
5 イスラーム化とその担い手
第Ⅰ部 植民地期ジャワのイスラーム
—— イスラーム法浸透のメカニズム
第1章 言語から見たジャワのイスラーム受容
はじめに —— インドネシア・ムスリムとアラビア語
1 外来宗教と言語
2 ジャワ語の中のアラビア語借用語
むすびにかえて
第2章 プサントレンとキタブ
はじめに
1 プサントレンの由来
2 オランダのイスラーム教育への関心
3 クルアーン読誦教育
4 キタブ教育
5 旅するサントリ
むすびにかえて
第3章 プンフルと宗教行政
はじめに
1 宗務官吏の由来
2 プンフルの植民地官僚化
3 宗務官吏機構
4 プンフルと宗教行政
5 19世紀の宗教行政の問題点
むすびにかえて
第4章 イスラーム法裁判所の確立
—— 多元的司法制度の成立
はじめに
1 イスラーム法裁判所の始まり
2 ヨーロッパ司法の導入とイスラーム法裁判所
3 初期植民地支配下の宗教裁判所
むすびにかえて
資 料
第5章 20世紀のウラマー、ウマット、ウマラ
はじめに
1 ヌサンタラのウラマー
2 ウマットの台頭
3 ウマラとの対峙 —— 日本占領下のウラマー
むすびにかえて —— ウラマーと政治
第Ⅱ部 現代インドネシアのイスラーム
—— イスラーム法の解釈と再解釈
第6章 独立インドネシアの政治とイスラーム
1 国家建設とイスラーム
2 新秩序体制下のイスラーム
3 民主化時代のイスラーム —— イスラーム組織・政党と市民社会
第7章 イスラーム法体制と家族法問題
はじめに
1 インドネシアにおけるイスラーム法体制
2 婚姻法と関連諸法
3 ムスリム家族法改正問題
むすびにかえて
第8章 イスラーム法学議論の展開
はじめに
1 ナフダトゥル・ウラマー内の革新
2 「イスラーム法集成対案」の方法論
3 法理論の革新と「イスラーム法集成対案」
——「シャリーアの目的」、マスラハ、カーイダ
むすびにかえて —— イスラーム法学の創造的営み
第9章 「公的ファトワ」とウマット
—— ウラマー評議会をめぐって
はじめに —— ファトワとは何か
1 ムスリムはファトワを求める
2 新秩序体制とウラマー評議会
3 「公的ファトワ」の波紋 ——「味の素」事件を事例に
むすびにかえて
第10章 暮らしの中のイスラーム法
—— ナフダトゥル・ウラマーの法学決定集から
はじめに
1 ナフダトゥル・ウラマーの法学決定
2 植民地期の法学決定
3 独立インドネシア期の法学決定
むすびにかえて
終 章 インドネシア・イスラームの展望
1 イスラーム法制度とウラマーの知的営為
2 インドネシアのイスラームはどこへ行く
注
用語説明
参考文献
あとがき
初出一覧
人名索引
事項索引
書 評
【日本経済新聞書評】
【朝日新聞書評】
関連書
『世界史のなかの東南アジア 上・下』 アンソニー・リード 著/太田 淳・長田紀之 監訳