内 容
超伝導状態は磁性不純物で容易に壊されることから、磁性と超伝導は一見相容れないが、ある種の物質では両者が共存し、相関すらしている。本書は、このメカニズムを理解するために、磁性と超伝導を統一的に把握。レアアースをはじめとするf 電子系物質に、実験・理論双方から迫る。
目 次
まえがき
第1章 自由原子・イオン中の電子
1-1 角運動量と磁気モーメント
1-2 Hund 則と原子内交換相互作用
1-3 J 多重項と磁気モーメント
1-4 自由イオンの磁性
第2章 結晶中の局在電子
2-1 結晶場効果
2-2 結晶場と物性
2-3 局在スピン間の直接交換相互作用
2-4 局在スピン系の磁気秩序
2-5 相転移と自発的対称性の破れ
2-6 臨界現象
第3章 結晶中を遍歴する電子
3-1 電子の非局在化とバンドの形成
3-2 相互作用の衣を着た電子
3-3 重い電子と価数揺動
3-4 de Haas-van Alphen 効果
3-5 遍歴電子系における強磁性
3-6 遍歴電子系における反強磁性
3-7 磁気秩序の崩壊と量子相転移
第4章 超伝導
4-1 完全反磁性と Meissner 効果
4-2 超伝導の基底状態
4-3 超伝導引力の起源
4-4 超伝導励起状態
4-5 臨界磁場
4-6 超伝導における対称性の破れ
4-7 異方的超伝導
4-8 UPd2Al3 と UNi2Al3
第5章 伝導電子が媒介する局在スピン間相互作用
5-1 cf 相互作用
5-2 金属中の局在モーメント
5-3 伝導電子のスピン偏極
5-4 RKKY 相互作用
5-5 磁気励起子
第6章 近藤効果
6-1 近藤-芳田基底状態
6-2 位相シフトから見た近藤効果 —— 重い電子の起源
6-3 電気抵抗極小の現象
6-4 スピンゆらぎの観測
6-5 近藤効果に対する結晶場効果
6-6 多チャンネル近藤効果
第7章 Fermi 液体としての重い電子系
7-1 希薄近藤効果から高濃度近藤効果へ
7-2 重い電子の起源 —— 直観的説明
7-3 断熱接続と Fermi 液体
7-4 Green 関数による準粒子の表現
7-5 Fermi 液体としての重い電子系
7-6 門脇-Woods の関係
7-7 f 2 電子配置での重い電子系
第8章 量子臨界現象
8-1 量子臨界現象とは?
8-2 磁気臨界点にともなう量子臨界現象
8-3 遍歴磁性のモード結合理論
8-4 単サイト量子臨界現象
8-5 価数転移にともなう量子臨界現象
第9章 重い電子系超伝導
9-1 重い電子系超伝導体の概観
9-2 超伝導状態の記述
9-3 物理量の低温(T ≪Tc )での温度依存性
9-4 ペア相互作用の起源
9-5 斥力起源超伝導の系譜
9-6 臨界価数ゆらぎによる「高温超伝導」
9-7 スピン軌道相互作用と超伝導ギャップの構造
9-8 異方的超伝導状態における不純物散乱の効果
第10章 磁性と超伝導の相関
10-1 磁気励起から見た遍歴性と局在性
10-2 磁気モーメントの超伝導に対する影響
10-3 反強磁性秩序と超伝導の共存・競合
10-4 遍歴・局在2重性モデル
10-5 UPd2Al3 における遍歴・局在2重性と超伝導
10-6 強磁性秩序と超伝導の共存と競合
10-7 超伝導転移温度
付録A 生成・消滅演算子
A-1 Fermi 粒子とBose 粒子
A-2 Cooper 対の生成と消滅
A-3 計算例
付録B 結晶場と群論
B-1 結晶場と群論
B-2 Stevens と等価演算子法
B-3 時間反転と Kramers2重項
付録C 動的磁化率と中性子散乱
C-1 一般化磁化率
C-2 中性子散乱実験
付録D Green 関数と準粒子
D-1 松原 Green 関数と遅延 Green 関数
D-2 Green 関数のスペクトル表示
付録E 準粒子の「スピン」保存則の破れ
索 引
書 評
『日本物理学会誌』(2019年11月号、第74巻第11号、評者:神原陽一氏)