内 容
なぜ女性が担ってきたのか —— 9割に迫る驚異的な加入率を実現し、高度成長の基盤となった日本の生命保険産業。その発展を最前線で支えた女性営業職に着目し、大量採用・大量離職から成果給までその実像を初めて解明。外資系男性営業職もとらえたジェンダー分析により、「非効率」として見過ごされてきた労働のあり方をつぶさに捉え、保険大国への歩みに新たな光を当てる。
目 次
凡 例
序 章 生命保険大国・日本と営業職
1 「正社員」としての「生保レディ」
2 営業職員とジェンダー —— 伝統型生保と後発型生保
3 営業職員の位置づけと本書の分析対象
4 生命保険営業職に注目した先行研究
5 営業職の「顧客ケア」—— 不可視化された労働
6 本書の研究方法
7 本書の構成
第Ⅰ部 歴史からみる生命保険
第1章 日本の生命保険業の軌跡
—— 近代的生命保険の誕生から市場競争へ
はじめに
1 近代的生命保険事業のはじまり
2 戦時統制と復興期の変容
3 生命保険業の発展と護送船団行政
4 規制緩和と後発型生保の参入
おわりに
第2章 「生保レディ」の誕生
はじめに
1 戦前の営業 —— 名望家の代理店から男性外務員へ
2 労働基準法の適用 —— 雇用か、委任か
3 労働組合法上の労働者性の獲得
4 失業保険の適用
5 営業職の担い手の女性化と処遇問題
おわりに
第Ⅱ部 生命保険営業職をつくる
—— 企業の論理
第3章 生命保険営業職の採用・育成
—— 大量採用とプロフェッショナリズム
はじめに
1 生命保険営業職の組織構成と営業方法
2 中高年女性の勧誘・説得 —— 伝統型生保の大量採用
3 「働く意思」の醸成と個別教育 —— 伝統型生保の育成過程
4 高学歴男性のプライドとネットワーク —— 後発型生保の厳選採用
5 プロフェッショナリズムの追求 —— 後発型生保の育成過程
おわりに
第4章 生命保険営業現場のマネジメント
—— 管理職のキャリアとジェンダー
はじめに
1 営業拠点長の役割と統制力 —— 固定給か、歩合給か
2 総合職の「役立ち方」—— 伝統型生保の営業拠点長(1)
3 「生保レディ」としての経験の活用 —— 伝統型生保の営業拠点長(2)
4 「男としての尊敬」とチームワーク —— 後発型生保の営業拠点長
おわりに
第Ⅲ部 生命保険営業職を生きる
—— 労働者の論理
第5章 喚起される保険ニーズと「顧客ケア」
—— 生命保険の営業プロセス
はじめに
1 見込み客の発見
2 ニーズ喚起と契約成立
3 既契約者の管理 ——「顧客ケア」と「応援」する顧客
4 生命保険営業職のスキル・能力
おわりに
第6章 誰が脱落して、誰が生き残るのか
—— 歩合給の検討
はじめに
1 生命保険営業職の報酬制度
2 統計からみた生命保険営業職の賃金と勤続年数
3 「生保レディ」の歩合給と生活
4 後発型生保で脱落するのは誰か
おわりに
第Ⅳ部 変化のなかの生命保険
第7章 対面営業は変化するのか
—— コロナインパクトとその後
はじめに
1 見込み客発見の制限 —— 伝統型生保への打撃
2 ネットワーク営業の強み —— 後発型生保への影響
3 デジタルツール・AI の活用
4 コロナ禍が変化させたもの、させなかったもの
おわりに
第8章 自己投資時代の生命保険
—— 変化する経済・社会と生保営業
はじめに
1 生命保険ニーズの変容 —— 死亡保障から生存保障へ
2 投資意欲の醸成と生命保険
3 若年層顧客の獲得
4 生命保険会社の新たな取り組み
おわりに
終 章 「生保レディ」モデルとは何だったのか
—— 総括とインプリケーション
1 「生保レディ」モデルの構造的背景
2 生命保険営業の労働とジェンダー
3 不可視化された労働の可視化
4 生命保険大国と「生保レディ」モデル
参考文献
あとがき
付 表
図表一覧
索 引





