内 容
戦後日本の発展と軌を一にし、隠れた福祉・再分配機能をはたした郵便貯金が、その巨大化の過程で抱え込んだ問題の核心とは。金融財政史の展開から民営化論の虚実を捉え直し、熱狂と混迷を生み出した小泉改革の歴史的位置を、政治手法やイデオロギーをめぐる議論をこえて初めて描き出す。
目 次
序 章 郵政民営化と郵便貯金
1 郵政民営化 ——「問題」としての郵便貯金
2 郵便貯金の歴史 —— 先行研究の整理
3 「民営化」とは何か —— 経済史からのアプローチ
4 本書の構成
第1章 「郵貯増強メカニズム」の誕生
—— 高度成長期の郵便貯金(1)
1 高度成長期の郵便貯金
2 「郵貯増強メカニズム」の形成過程
3 財政投融資制度の再編と郵貯資金
4 小 括
第2章 郵便局政策の地域的展開
—— 高度成長期の郵便貯金(2)
1 高度成長期の地域構造変化
2 神奈川県における郵便貯金の展開
3 郵便局政策の地域的展開
4 小 括
第3章 金融構造の変化と郵貯「大膨張」
—— 安定成長期の郵便貯金
1 安定成長期の郵便貯金
2 金融構造の変化
3 郵貯「大膨張」の要因
4 小 括
第4章 金融自由化と「1990年ショック」
—— バブル経済下の郵便貯金
1 バブルの発生と崩壊
2 金利自由化と郵便貯金
3 郵便貯金の「1990年ショック」
4 均衡予算主義の終焉と国債流通市場の形成
5 小 括
第5章 国債問題の顕在化
—— 長期不況下における郵便貯金
1 金融の不安定化
2 金融制度改革と銀行再編
3 国債問題と郵貯「2000年問題」
4 小 括
第6章 郵政民営化の政策決定過程
—— 小泉改革下の郵便貯金
1 経済財政諮問会議と郵政改革
2 郵貯民営化論と小泉改革
3 郵政民営化のフレーム —— 政策課題と政策対応
4 小 括
第7章 郵政民営化の現在と巨大郵貯のゆくえ
1 ポスト小泉改革下の政策対応
2 ポスト小泉改革下の郵便貯金
終 章 郵政民営化とは何だったのか
注
参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引
書 評
『金融経済研究』(第45号、2022年3月、評者:浅井良夫氏)
『歴史と経済』(第251号、2021年4月、評者:立松潔氏)
『図書新聞』(2020年5月2日号、第3446号、評者:西垣鳴人氏)
『自由思想』(第156号、2020年4月、評者:杉浦勢之氏)
『郵便史研究』(第49号、2020年3月、評者:星名定雄氏)
『週刊エコノミスト』(2019年12月31日・2020年1月7日合併号、評者:平山賢一氏)