内 容
証券市場が高度に発達した戦前日本において、三井、三菱、住友など財閥系銀行はいかにしてその隔絶した地位を築きえたのか。見過ごされてきた証券・国際業務を軸に、近世来の両替商がユニバーサルバンクへと発展する姿を鮮やかに示し、巨大銀行と金融市場の関係に新たな光を投げかける。
目 次
序 章 証券・国際業務と金融市場
1 本書の課題
2 本書の構成
第Ⅰ部 両替商から銀行へ
—— 短期金融市場の形成
第1章 近世・近代における両替商の動向と銀行設立
1 はじめに
2 大坂における両替商の参入と退出
3 屋号の盛衰
4 1867年の大坂の両替商
5 江戸の両替商
6 明治期における両替商と銀行の設立
7 おわりに
第2章 為替と金融市場の展開
—— 近世から近代へ
1 はじめに
2 第一国立銀行における手形・小切手決済
3 東京と大阪の手形取引所における為替・手形取引
4 東京手形交換所における手形・小切手決済
5 金融恐慌後のコール市場
6 おわりに
第3章 三井銀行の資金循環と季節調整
—— 安田銀行と対比して
1 はじめに
2 日本銀行信用の変化
3 三井銀行の「預金銀行」化
4 安田金融網と日本銀行依存
5 おわりに
第4章 三菱銀行の資金循環と季節調整
1 はじめに
2 三菱銀行の借用金の動向と本支店貸借の概観
3 資金繰りの推移
4 当座貸越と借用金との関連
5 おわりに
第Ⅱ部 ユニバーサルバンクの証券業務と国際業務
第5章 有力銀行の形成と証券・国際業務
1 はじめに
2 分析対象と変数の選択
3 クラスター分析の結果
4 おわりに
第6章 債券引受と債券市場
—— 証券会社・地方銀行との関係を中心に
1 はじめに
2 普通銀行の有価証券保有の規定要因
3 普通銀行の債券売買
4 おわりに
第7章 国際展開と外国為替業務
1 はじめに
2 日本の銀行の外国為替業務の開始
3 普通銀行の外国為替業務 —— 特殊銀行と対比しつつ
4 為替銀行の顧客基盤
5 おわりに
第Ⅲ部 ユニバーサルバンクの人的資源管理
第8章 三井銀行の人的資源管理
1 はじめに
2 三井銀行の雇用の特徴と人事制度
3 新卒採用の定着と雇用期間の長期化
4 採 用
5 職務ローテーション
6 転 勤
7 昇 進
8 退 職
9 おわりに
第9章 三菱銀行の人的資源管理
1 はじめに
2 職員制度と名簿および銀行合同
3 職員配置・転勤および昇進・職務経験と採用区分
4 森村銀行転入行員と三菱銀行在籍行員との比較
5 付 論 —— 女性について
6 おわりに
終 章 金融市場の発展とユニバーサルバンク
—— 戦後都市銀行へ
1 これまでの考察のまとめ
2 本書の結論
参考文献
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引
書 評
『経済学論集』(第84巻第1号、2024年3月、評者:伊藤正直氏)
『経営史学』(第57巻第3号、2022年12月、評者:岩間剛城氏)
『経済研究』(第73巻第1号、2022年1月、評者:小野有人氏)
『日本歴史』(2022年2月号、第885号、評者:小林延人氏)
『社会経済史学』(第87巻第3号、2021年11月、評者:武田晴人氏)
『週刊エコノミスト』(2021年2月16日号、評者:平山賢一氏)