内 容
シュンペーターとケインズの融合や格差問題など、現代的領域の先駆者として理論に革新をもたらす一方、国連職員、開発経済学者、イギリス労働党顧問などのさまざまな顔を通じて社会に深くかかわり、現実に即した経済学の必要を訴え続けた稀代のエコノミストの全体像を提示する。
目 次
序 章 ニコラス・カルドア
—— 一般均衡から経験科学へ
1 ニコラス・カルドア —— 現代経済学の巨人
2 カルドアをめぐる先行研究 —— 課題と方法
第1章 現実の経済社会への関心
—— ハンガリーからイギリスへ
1 オーストリア=ハンガリー二重帝国
2 カルドアの誕生 —— エリートユダヤ人の家庭にて
3 第一次世界大戦とインフレーション
4 ドイツ・ベルリン大学
5 LSE —— アリン・ヤングと「ロビンズ・サークル」
6 アメリカ留学とその後
7 小 括
第2章 一般均衡理論の探究
—— ミクロからマクロへ
1 1930年代の経済学とカルドア
2 均衡経済学
3 企業の理論と不完全競争
4 厚生経済学と補償原理
5 オーストリア資本理論と景気循環論
6 賃金と雇用、投機と流動性選好
7 ミクロからマクロへ
8 小 括
第3章 戦争と戦後の国際経済秩序
—— 応用経済学者としてのデビュー
1 ケンブリッジのLSE
2 戦費調達と国民所得計算、社会保障と完全雇用
3 国際経済秩序の再建 —— LSE辞職、国連、そしてケンブリッジ
4 小 括
第4章 ケンブリッジ学派の主導者
—— 成長と分配、法則と実証、二部門モデル
1 カルドアとケンブリッジ学派
2 成長と分配モデル —— 理論から法則へ
3 「ジャン・バティスト・カルドア」
4 シュンペーターとケインズの融合 —— 技術革新と分配の経済学
5 資本主義と経済成長
6 循環的・累積的因果関係論と収穫逓増
7 未完成の二部門モデル
8 小 括
第5章 エコノミスト・カルドア
—— 理論と実践
1 多才な実践派エコノミスト
2 労働党政権の経済顧問 —— 税制改革の提言
3 EC加盟反対の論陣
4 開発経済学の実践と世界経済の安定
5 ミルトン・フリードマンの「マネタリズム」との対決
6 マーガレット・サッチャーの「新自由主義」への糾弾
7 小 括
終 章 カルドアの遺産
1 晩年の貢献
2 資本主義、技術革新、分配の経済学
3 一般均衡から経験科学へ
4
5 カルドアの遺産
注
参考文献
ニコラス・カルドアの年譜
あとがき
人名索引
事項索引
書 評
『経済学史研究』(第64巻第1号、2022年7月、評者:池田毅氏)
『季刊経済理論』(第58巻第2号、2021年7月、評者:内藤敦之氏)
関連書
『資本主義は生きのびるか』 J.A.シュンペーター 著/八木紀一郎 編訳
『ハイエク、ハイエクを語る』 S. クレスゲ,L. ウェナー 編/嶋津 格 訳
『ピグー 富と厚生』 A.C.ピグー 著/八木紀一郎 監訳/本郷 亮 訳
『知識経済の形成』 ジョエル・モキイア 著/長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳