内 容
本書は、ポスト・ケインズ派経済学の現代的展開に照らしてケインズとカレツキの経済学を、理論・思想・政策の三つの側面から総体的に検討し、その統合と発展の方向を探求した力作であり、特に貨幣・金融論に光を当てることによって政治経済学の今日的課題に応えんとするものである。
目 次
はしがき
第Ⅰ部 ケインズ
—— 貨幣的生産経済の不安定性
第1章 ケインズの社会哲学
—— 自由・計画・社会主義
1 はじめに
2 自由と計画の狭間で
3 ケインズと社会主義
4 「自由社会主義」に向かって
5 おわりに
第2章 ケインズにおける「投資の社会化」論の展開
1 はじめに
2 自由放任との訣別
3 『一般理論』の経済政策論
4 「国家」とその機能
5 ルールにもとづく政策
6 ケインズの予算制度改革論
7 資本主義の将来
8 おわりに
第3章 政治思想としてのケインズ主義
—— 政党・民主主義・コーポラティズム
1 はじめに
2 ケインズの三階級区分
3 ケインズの金利生活者批判
4 階級と政党
5 知的エリート主義と民主主義
6 ケインズ主義とコーポラティズム
第4章 ケインズ経済学は価格硬直性の経済学か
—— ニュー・ケインジアン経済学の批判的検討
1 はじめに
2 ニュー・ケインジアン経済学の理論的構造
3 賃金変化に関するケインズの見解
4 貨幣的生産経済における失業の原因
5 ケインズ経済学の可能性
第5章 ケインズ派金融経済論の過去と現在
—— 金融不安定性とマクロ経済変動
1 はじめに
2 「生産の貨幣理論」としてのケインズ経済学
3 戦後におけるケインズ経済学の展開
4 ポスト・ケインジアンとニュー・ケインジアンの分析視角
5 非対称情報と金融構造
6 根本的不確実性と非対称情報
7 おわりに
補論 ポスト・ケインズ派の方法と理論
第Ⅱ部 カレツキ
—— 貨幣と階級の政治経済学
第6章 カレツキと現代
1 はじめに
2 カレツキのマルクス的背景
3 価格と分配の独占度理論
4 階級闘争・所得分配・有効需要
5 景気循環と失業
6 カレツキの現代的意義
第7章 カレツキの貨幣経済論
—— ケインズとの対比において
1 はじめに
2 カレツキの貨幣供給分析
3 危険逓増の原理
4 投資の制約要因としての「信用の利用可能性」
5 おわりに
第8章 カレツキ有効需要理論と貨幣供給の内生性
1 はじめに
2 有効需要理論と貨幣供給の内生性
3 投資資金調達と貨幣供給のメカニズム
4 おわりに
第9章 ポスト・ケインズ派貨幣理論とカレツキ
—— 2つのアプローチの統合をめざして
1 ポスト・ケインズ派経済学の新展開: 批判から統合へ
2 インフレーションと内生的貨幣供給
3 カレツキのインフレーション理論
4 政府支出と銀行政策
5 ピグー効果をめぐって
6 おわりに
第10章 カレツキの政治的景気循環理論
——「完全雇用の政治的側面」(1943年)を再読する
1 はじめに
2 「政治的景気循環」の体制
3 資本主義国家における政策形成過程
4 政治的景気循環理論のモチーフ
5 戦後資本主義の歴史的位相
6 おわりに
第11章 カレツキアンの経済学とカレツキの経済学
—— 資本主義の長期発展理論をめぐって
1 はじめに
2 「独占度」と所得分配
3 カレツキの長期発展理論
4 独占資本主義論の系譜
5 カレツキ理論の活路はどこにあるのか
終 章 ポスト・ケインズ派経済学はどこへ
1 ポスト・ケインズ派経済学の形成
2 ポスト・ケインズ派経済学の現在
3 ケインズとカレツキの遺産
4 政治経済学の再生に向けて
参考文献
初出一覧
人名索引
事項索引
受 賞
関連書
『経済学のどこが問題なのか』 ロバート・スキデルスキー 著/鍋島直樹 訳