内 容
モヤモヤしている人のために ——。「科学」の地位を得るために、経済学は様々な数学やモデルを使ってきた。しかし、それらは本当に有効なのか。現実から離れた想定によって視野を狭めているのではないか。スタンダードな経済学の考え方を再検討し、今後に向けての処方箋を提示する話題作、待望の邦訳。
著者紹介
ロバート・スキデルスキー(Robert Skidelsky)
1939年、満洲生まれ。オックスフォード大学ジーザス・カレッジで歴史学を専攻したのち、同大学ナフィールド・カレッジで政治学の博士号を取得。ジョンズ・ホプキンズ大学、ウォリック大学などで教鞭をとり、現在はウォリック大学政治経済学名誉教授。歴史学と経済学を専門とし、とくに全3巻のケインズ伝の著者として知られている。
著書に、『ジョン・メイナード・ケインズ』(東洋経済新報社、1987-92年)、『ケインズ』(岩波書店、2001年)、『共産主義後の世界』(柏書房、2003年)、『なにがケインズを復活させたのか?』(日本経済新聞出版社、2010年)、『じゅうぶん豊かで、貧しい社会』(共著、筑摩書房、2014年)ほかがある。
(所属等は本邦訳刊行時のものです)
目 次
凡 例
序 文
第1章 なぜ方法論なのか
開放系と閉鎖系
経済学の方法
第2章 基 礎
—— 欲求と手段
欲 求
手 段
第3章 経済成長
人 口
投 資
貿 易
国家の役割
開発経済学
構造主義
ワシントン・コンセンサス
誰が正しいのか
第4章 均 衡
均 衡
利己心 —— 経済学における重力の等価物
摩 擦
均衡についての質問
第5章 モデルと法則
モデル化
問題についての事実
計量経済学
複雑性をモデル化する
プラトン的なモデル化
科学か修辞学か
それでは経済学は科学なのか
第6章 経済心理学
経済人の行動
活動中の経済人
それは合理的なのか
行動経済学
速い思考と遅い思考
第7章 社会学と経済学
社会学は経済学の助けとなりうるのか
社会的なものと個人的なもの
社会学の視角
ゲマインシャフトとゲゼルシャフト
資本主義の精神
市場は人間にとって自然なものであるのか
和 解
第8章 制度経済学
「旧」制度主義
「新古典派」制度主義
第9章 経済学と権力
権力の諸形態
権力の正当性
経済学者は権力をどう扱っているのか
権力システムにおける経済学の役割
ブルジョア経済学に対するマルクス主義者の非難
第10章 なぜ経済思想史を研究するのか
方法論上の論争
パラダイムと研究プログラム
第11章 経済史
統計の源泉としての歴史
経済学は歴史学を改善することができるか
「循 環」
「さまざまな発展段階」——『はしごを外せ』
第12章 倫理学と経済学
公正価格
受託責任としての所有
進歩の代償
「ケーキの成長が真の宗教の目的となった」(ケインズ)
倫理学はどのようにして経済学の助けとなりうるのか
第13章 完全な知識からの退却
認識論 —— リスクと不確実性
存在論 —— 何が存在しているのか
より良い地図
第14章 経済学の将来
経済学の政治的目的
参考文献
訳者あとがき
図版一覧
索 引
書 評
『経済学史研究』(65巻2号、2024年1月、評者:江頭進氏)
『社会経済史学』(第88巻第4号、2023年2月、評者:高見典和氏)
『季刊経済理論』(第59巻第4号、2023年1月、評者:瀬尾崇氏)
『図書新聞』(2022年11月5日号、第3565号、評者:小峯敦氏)
『週刊東洋経済』(2022年9月3日号、評者:中山智香子氏)
『週刊エコノミスト』(2022年8月30日号、評者:服部茂幸氏)
関連書
『資本主義は生きのびるか』 J.A. シュンペーター 著/八木紀一郎 編訳
『ハイエク、ハイエクを語る』 S. クレスゲ,L. ウェナー 編/嶋津 格 訳
『知識経済の形成』 ジョエル・モキイア 著/長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳