内 容
開発はなぜ、いかにしてなされたのか。米・ソ・欧・中の対抗関係を軸にした実践と、国際機関や私的アクターの国境をこえた活動を描き出し、旧植民地・途上国との相克も視野に、20世紀初頭の「開発」の誕生から冷戦後までの、無数の思惑が交錯する複雑な歴史を初めてトータルに把握する。
著者紹介
サラ・ロレンツィーニ(Sara Lorenzini)
1974年生まれ、イタリア出身。2002年にフィレンツェ大学にて国際関係史博士号取得。現在、イタリアのトレント大学人間学部・国際学大学院正教授。2018年から2021年までジャン・モネ・チェア。冷戦史、欧州統合史(グローバル・ヨーロッパ)、脱植民地化と南北関係、環境史などを専門とする。現在、女性のリーダーシップと持続可能な開発概念の誕生に関するプロジェクトに取り組む。最近の著作として The Human Rights Breakthrough of the 1970s: The European Community and International Relations. Santa Barbara: Bloomsbury USA Academic, 2021(共編著)がある。
(所属等は本邦訳刊行時のものです)
目 次
序 章
第1章 帝国のイデオロギーとしての開発
戦間期における文明化の使命
近代性と権威主義的支配
第二次世界大戦
第2章 トルーマンの夢
—— 冷戦と開発の邂逅
ポイント・フォア・プログラム
後進地域研究 —— 社会科学者、マーシャル・プラン、そして冷戦の限界
第3章 社会主義の近代性と第三世界の誕生
植民地問題で試されるイデオロギー
無関心の時代
あと付け
中立主義の時代、あるいは第三世界の誕生
フルシチョフの挑戦
社会主義国による援助の特徴 —— イデオロギー的枠組みの構築
社会主義的協力の政治経済学
第4章 グローバル冷戦における西側の多様な開発政策
対外援助が冷戦の道具となるのは不可避だったのか
ユーラフリカ計画
グローバル冷戦のイデオロギー —— 近代化論の台頭
ケネディ政権 —— 転換点だったのか
第5章 近代化の黄金時代における二極体制の限界
西側における協力の責務
失望 —— 米国と開発援助委員会(DAC)での諍い
ロストウと拘束力のあるルールの考え
ヨーロッパ経済共同体の方式
社会主義国間の調整 —— コメコンの技術援助常設委員会
外部の挑戦への対応
第6章 国際機関とグローバルな使命としての開発
先行事例 —— 国際連盟
第二次世界大戦後の知的職業としての開発
世界銀行
国連と開発 —— 代替案のための場か
国連貿易開発会議(UNCTAD)
「第一次開発の10年」終了時の援助評価
第7章 1970年代の複数の近代性と社会主義の代替案
ソ連による「2つの世界」論の再解釈
収斂と相互依存
第三世界観
中国によるもう一つの開発
独立独行? —— タンザン鉄道と「ウジャマー」の間のタンザニア
第三世界主義と「新国際経済秩序(NIEO)」
第8章 資源、環境、開発
—— 厄介な結びつき
科学技術に対する楽観主義の終焉?
近代社会の諸問題の再検討
グローバル環境主義の登場 —— 1972年のストックホルム
東側から見た環境と開発
ストックホルムの遺産と「持続可能な開発」の発明
第9章 グローバル・サウスからの攻勢への対応
—— 南北対話
「第二次開発の10年」におけるベーシック・ニーズの誕生
ロメ革命
一つの地域計画 —— ユーロ・アラブ対話
南北対話 —— グローバルな次元
開発と人権
第10章 「失われた10年」の力学
終 章
謝 辞
訳者解説
注
参考文献
略語一覧
人物紹介
事項索引
人名索引
書 評
『アジア・アフリカ地域研究』(第23-2号、2024年3月、評者:畔柳理氏)
『歴史評論』(2024年2月号、第886号、評者:奥田俊介氏)
『アフリカレポート』(第61号、2023年、評者:佐藤章氏)
『社会経済史学』(第89巻第1号、2023年5月、評者:渡辺昭一氏)
『図書新聞』(2022年11月19日号、第3567号、評者:佐々木豊氏)
『週刊エコノミスト』(2022年9月6日号、評者:上川孝夫氏)
関連書
『グローバル冷戦史』 O.A.ウェスタッド 著/佐々木雄太 監訳/小川浩之・益田 実・三須拓也・三宅康之・山本 健 訳