内 容
英雄的な物語を超えて ——。NPO と営利企業のハイブリッドとして現れた社会的企業。その華々しい成功譚の背後には、使命と利益の両立をめぐる苦悩が隠されていた。注目を集めるソーシャルビジネスの具体的事例を、当事者インタビューと現地調査を中心に、長期の視点から徹底的に検証。持続的で多元的な社会貢献の可能性をさぐる。
目 次
はじめに
序 章 社会的企業への期待と問題点
1 研究の背景と問題の所在
2 ハニー・ケア・アフリカ社とその選出理由
3 本書における用語の定義
4 本書の構成
第Ⅰ部 社会的企業についての理論と視点
第1章 営利型社会的企業の研究動向と理論的課題
1 営利型社会的企業とは何か?
2 途上国開発における営利型社会的企業の安定性課題
3 ケニアにおける社会的企業に関する研究の動向
4 営利型社会的企業 HCA の評価とその課題
5 本章のまとめ
第2章 分析視点の設定
1 営利型社会的企業の「成功」の解釈とその問題
2 「貧困」の多面的理解と営利型社会的企業の多元的な社会的目的
3 参加型統治
4 営利型社会的企業における組織運営上の課題
—— 社会的コストとオーナーシップ・コスト
5 営利型社会的企業を取り巻く制度的環境 —— 再帰的同型化
6 本章のまとめ
第Ⅱ部 営利型社会的企業の事例研究
第3章 研究方法とケニアの概況
1 研究方法
2 ケニアの社会経済概況
3 ケニアにおける養蜂業とその課題
—— 低生産、持続性、女性の参入障壁
4 ケニアと社会的インパクト投資
5 本章のまとめ
第4章 ハニー・ケア・アフリカ社の営利企業化とその経緯
1 HCA の歴史とビジネスモデルの変遷
2 HCA の営利企業化
3 本章のまとめ
第5章 ダブルボトムラインの追求に生じた問題
—— 養蜂箱ビジネスの事例分析から
1 調査方法
—— データ収集、調査地の概要、調査の限界
2 養蜂箱ビジネスの分析結果
3 養蜂箱ビジネスの中止の要因
—— 社会的コストの問題
4 本章のまとめ
第6章 ハニー・ケア・アフリカ社の営利企業化と外部環境
1 ケニアにおける消費者市場の拡大
2 HCA の販売戦略と営利企業との競争
3 営利企業化と経営幹部の意識の変化
4 社会的投資機関からの圧力と彼らへの説明責任および返済意識
5 本章のまとめ
終 章 営利企業化が意味するものと今後の展望
1 事例分析結果のまとめ
2 HCA の営利企業化の主要因とその問題点
3 営利型社会的企業が開発アクターとして機能するために
4 途上国における営利型社会的企業のゆくえ
5 本書の意義と限界
参考文献
あとがき
図表一覧
索 引
書 評
『アフリカレポート』(第61号、2023年、評者:牧野久美子氏)