内 容
イスラム的世界帝国の理念・現実・変容 ——。ナショナルな主権国家とは異なる秩序観に基づき、多様な人々を包摂した大帝国。そのダイナミックな「国際」関係や対外交渉行動を描くとともに、近代の西欧国際体系との関係を、外交使節や公館、革命や大戦への対応などから論じた、碩学の労作。原初から終焉までの600年余を文明史的視角から一望する。
目 次
序 章 イスラム的世界帝国としてのオスマン帝国
1 オスマン帝国とは何か
2 オスマン帝国の形成
3 内的統合のシステムと「イスラム的寛容」
4 イスラム的世界秩序と対外関係
5 近代西欧国際体系とオスマン帝国
6 帝国の解体とその後にくるもの
7 本書の構成
第Ⅰ部 オスマン帝国の世界秩序
第1章 イスラム世界の「内」と「外」
—— 境界・言語・移動
はじめに
1 オスマン帝国と境界
2 言語と文字と異言語集団間媒体
3 ヒトとモノと情報の移動
おわりに
第2章 オスマン帝国の異文化集団支配
1 政治単位の諸タイプと異文化集団間関係
2 イスラム世界における異文化集団支配の伝統
3 オスマン帝国における異文化集団支配
4 ナショナリズムの衝撃と伝統的システムの解体
第3章 イスラム国際法とオスマン帝国の外交
1 文化世界・世界秩序・「国際法」
2 文化世界としてのイスラム世界とその対異文化世界関係
3 イスラム的世界秩序の理念
4 政治的基本単位の性格
5 世界法としてのシャリーアと異教徒の処遇
6 オスマン帝国と西欧世界
7 「西洋の衝撃」の到来
第4章 オスマン帝国の世界秩序観と国際関係の変容
1 オスマン帝国の世界秩序観とイスラム的伝統
2 オスマン帝国における国際関係の現実とその変容
3 世界秩序観とアイデンティティーの変容
第5章 オスマン帝国の対外交渉行動
はじめに
1 オスマン帝国の対外行動と戦争行動の優位
2 オスマン的交渉行動とその背景
3 後期オスマン帝国における交渉行動の重要化とその対内的影響
4 後期オスマン帝国の事例と幕末日本の事例
5 交渉行動の技術的普遍性と文化的特殊性
第Ⅱ部 オスマン帝国と近代西欧国際体系
第6章 ウィーン派遣大使と『ウィーン使節記』
1 18世紀初頭オスマン帝国の対西欧関係
2 オスマン帝国の使節たち
3 大使イブラヒム・パシャのウィーン派遣の背景
4 ウィーン派遣大使イブラヒム・パシャについて
5 『ウィーン使節記』
おわりに
第7章 パリ派遣大使と『フランス使節記』
はじめに
1 イルミセキズ・チェレビィの経歴(1)—— パリ派遣まで
2 パリ奉使行と『フランス使節記』
3 イルミセキズ・チェレビィの経歴(2)—— パリ派遣後
おわりに
第8章 オスマン帝国とフランス革命
はじめに
1 オスマン帝国とフランス —— 地中海の2つの「友邦」の2世紀半
2 革命期フランスと東方
3 オスマン人の革命期フランス観
おわりに
第9章 オスマン帝国の在外公館網の拡大
はじめに
1 オスマン帝国の常駐在外公館制度の拡大過程とその特色
2 日本及び中国のケースとの比較
おわりに
第10章 オスマン帝国と第一次世界大戦
はじめに
1 オスマン帝国と「欧州」諸国 —— ハプスブルクとフランスと
2 新たな脅威と新たな友邦
3 領土喪失・改革・革命
4 諸戦争から大戦へ
5 大戦と帝国の運命
あとがき
初出一覧
註
索 引
書 評
『西洋史学』(第277号、2024年6月、評者:山下範久氏)
『アジア・アフリカ地域研究』(第23-2号、2024年3月、評者:松井真子氏)
関連書
『カーシャーニー オルジェイトゥ史』 大塚 修・赤坂恒明・髙木小苗・水上 遼・渡部良子 訳註