内 容
使節たちの報告書が映しだす世界と中国——。イギリス、ロシア、アメリカなど欧米に派遣された常駐公使が、途上や任地での見聞・交渉と、変動する本国のはざまで記した「出使日記」。中国外交形成期の在外公館というプリズムを通して、日本を含む各国の状況や国際関係、そして中国の政治・社会・思想の姿が鮮やかに浮かび上がる。
目 次
凡 例
総 論 常駐公使と外交の肖像 …………………… 岡本隆司
—— 清末における在外公館と出使日記
はじめに
1 「出使日記」というもの
2 著述と刊行
3 時代の転換
4 「出使日記」と公使館 —— その歴史的位置
第Ⅰ部 使節の旅立ち
第1章 西洋と中国 …………………… 岡本隆司
—— 郭嵩燾『使西紀程』
はじめに
1 郭嵩燾という人
2 『使西紀程』をめぐって
3 みどころ
むすびにかえて ——『使西紀程』の位置
第2章 華夏と夷狄 …………………… 岡本隆司
—— 劉錫鴻『英軺私記』
1 劉錫鴻と『英軺私記』
2 記述の特徴
3 劉錫鴻の論理
4 渡欧の前後
補論1 志剛『初使泰西記』…………………… 箱田恵子
—— 中国の岩倉使節団とその記録
はじめに
1 『初使泰西記』の刊行とその内容
2 外交使節団の報告書としての側面
おわりに
補論2 陳蘭彬『使美記略』…………………… 青山治世
—— 忘れられた初代駐米公使のアメリカ紀行
はじめに —— なぜ忘れられたのか
1 報告用「出使日記」の作り方 —— 公使と随行員の共同作業
2 情報の差別化 —— 旅程と構成
3 アメリカと華人 ——『使美記略』の重点
おわりに
第Ⅱ部 出使の転換
第3章 出使日記の成長 …………………… 青山治世
—— 曾紀澤『曾侯日記』の分析
はじめに
1 『曾侯日記』の出現と「出使日記」の作成過程
2 『曾侯日記』の特徴
おわりに —— 曾紀澤が作る「出使日記」と清朝外交
第4章 駐欧公使曾紀澤とロシア …………………… 岡本隆司
——『金軺籌筆』を読む
1 『金軺籌筆』の体例
2 背 景
3 内容と特徴
4 ロシアのスタンス
5 転 換
6 収 束
7 まとめと展望
第Ⅲ部 出使と変法
第5章 駐米公使張蔭桓と清末の対外関係 …………………… 岡本隆司
——『三洲日記』よりみた
はじめに
1 書誌的なこと
2 記述内容とその特色
3 外交問題 —— アメリカ政治との対峙
まとめ
第6章 薛福成の外交構想 …………………… 箱田恵子
—— 各種日記の比較を通じて
はじめに
1 『出使四國日記』の編纂過程とその意図
2 『出使四國日記』編纂の動機
3 『續刻日記』および稿本日記の史料的価値と世界地誌編纂計画
おわりに
補論3 崔国因『出使美日祕崔日記』…………………… 青山治世
—— 意見書としての出使日記
はじめに
1 編集上の特徴と史料的価値
2 意見書としての「出使日記」
おわりに
第Ⅳ部 出使日記の背後で
第7章 日本を記す …………………… 岡本隆司
—— 日記と公使と部下たち
はじめに
1 何如璋『使東述略』
2 黄遵憲の日本研究
むすび
第8章 調査から外交へ …………………… 箱田恵子
——「随員日記」の研究
はじめに
1 「泰西風土記」—— 張徳彝の『四述奇』
2 在外公館員のガイドブック
3 清仏戦争後の変化 —— 知識人の遊歴と在外公館
4 外交報告としての「随員日記」
むすび
補論4 ミセラーネ、あるいは出使日記の運命 …………………… 岡本隆司
はじめに ——「出使日記」と
1 「出使日記」と叢書
2 「出使日記」と文集
むすびにかえて —— 出使日記の消滅
註
あとがき
附録1 出使日記関連史料総目録(青山治世編)
附録2 清朝在外公館員表(1877~94)(箱田恵子編)
文献目録
別名字号一覧
図表一覧
索 引
書 評
『中国研究月報』(第70巻第9号、2016年9月、評者:戴海斌氏)
『歴史学研究』(945号、2016年6月、評者:森万佑子氏)