内 容
中国にとって「近代」外交とは何であり、それはいかにして形づくられたのか。国際社会における「文明国」の地位をめざして外交官僚たちが紡ぎだした制度や政策を、当時の外交档案を博捜することによって同時代的文脈のなかで明らかにし、そこに「中国」が表出されていくさまを捉えた力作。
目 次
序 論
1 「文明国化」の使命と「近代」の位相
2 中国外交史研究の位置
3 先行研究と本書の位置(1)—— 前史・清末以前の対外関係
4 先行研究と本書の位置(2)—— 民国前期外交史
5 史料について
第Ⅰ部 「近代」的外交行政制度の確立
はじめに ——「外交」について考える
第1章 組織的変容過程
1 総理衙門の成立と組織制度
2 外務部から外交部へ ——『外交部沿革紀略』に依拠して
3 部内各部局の組織
4 在外公館の展開
第2章 人事行政をめぐる制度変化
1 清末外交官養成論議
2 官制面からみた北京政府の外交官資格
3 外交部内部での諸辦事規則の制定
第3章 北京政府の外交官試験
1 外交官試験実施要領 —— 制度面からの考察
2 外交官・領事官試験の実施状況
3 試験受験者・合格者の性格
第4章 地方外交制度
1 総理各国事務衙門と地方大官
2 清末の地方交渉機関 —— 洋務局から交渉署へ
3 民国交渉署制度
4 交渉署の業務内容
5 交渉員をめぐる諸議論
第5章 広東政府の外交行政制度
1 軍政府期
2 改組軍政府期
小 括
第Ⅱ部 「文明国化」と不平等条約の改正
はじめに
第1章 清末における「近代」外交
—— 不平等条約改正への志向性
1 同治年間の条約観
2 光緒年間の条約観 —— 特に新政下の不平等条約改正への努力について
第2章 北京政府の不平等条約改正政策
1 中華民国成立と「文明国」—— 政府承認獲得
2 対キューバ条約締結交渉
3 対チリ条約
4 対スイス条約
第3章 第一次大戦参戦と山東問題解決プログラム
1 第一次大戦参戦からパリ講和会議へ
2 パリ講和会議と山東問題 —— 全権代表団会議議事録に依拠して
3 国際連盟への山東問題提起の模索
4 ワシントン会議への道程
第4章 施肇基十原則の形成過程
1 施肇基十原則の策定時間
2 施肇基十原則と各方面の反応
3 議題としての極東問題 ——駐英公使顧維鈞と英国外相カーゾンの会談を中心に
4 在外公使の議題に関する議論 —— アメリカからのアジェンダ提起以前
5 国内での諸議論 —— アメリカからのアジェンダ提起以前
6 中国側の動向に対する日本の認識
7 極東問題に関する会議の議題をめぐる日米の見解(1)—— 日本案を中心に
8 極東問題に関する会議の議題をめぐる日米の見解(2)—— 中米交渉を中心に
9 外交部第一次修正案の作成
10 外交部第二次修正案の作成
11 施肇基十原則提出への経緯
第5章 新独立諸国との条約締結
——「修約外交」と大国化志向
1 国際社会の変容
2 対ギリシャ条約締結交渉
3 対ボリビア条約
4 欧州各国との交渉経緯
5 国際連盟外交
第6章 広東政府の外交政策
—— 第一次大戦を中心に
1 第一次大戦と広東政府
2 パリ講和会議と広東政府
小 括 —— 中国外交史の通史的理解と民国前期外交への評価
第Ⅲ部 中国的「伝統」外交の底流
—— 宗主・大国化・空間認識
はじめに
第1章 対朝鮮外交
—— 主権の下の宗主
1 宗主体制の再編としての「属国体制」—— 1880年代後半の『清季外交史料』
2 朝鮮半島の中国租界撤廃をめぐる中日交渉
第2章 対シャム交渉
—— 主権と宗主の葛藤
1 保護民から「中国国民」へ —— シャム華僑の選択
2 「華僑虐待」というロジックと国民保護
3 華僑学校問題の発生と中国の世論
4 アジア連結論と正式交渉開始
5 「皇帝」称号問題と特使派遣要請
第3章 空間意識と地域外交
—— ロシア革命前後の対中央アジア外交に見られる新疆省「外交」
1 清末民初の新疆と中央アジア —— イリ条約
2 ロシア崩壊前後の秩序形成(1)—— 二月革命前後
3 ロシア崩壊前後の秩序形成(2)—— 十月革命前後
4 アフガニスタン独立と「新阿」通行条件
小 括
第Ⅳ部 外交をめぐる中央と地方
はじめに
第1章 もう一つの中央政府と外交
—— 広東政府外交の三層構造
1 広東政府外交の三層構造
2 三層構造と北京政府との関係 —— 北京政府外交部档案に依拠して
第2章 外交をめぐる中央と地方
1 交渉署の活動に関する具体的事例
—— 政策決定への関与と地方案件処理
2 中央と地方社会の重層性
第3章 北京政府外交部による「中央政府」としての表現
—— 1921年ワシントン会議参加をめぐる中国統一論議
1 参加条件としての「統一」と北京政府の対策
2 国内各界の「統一」論議と北京政府の対応
第4章 ワシントン会議における中華民国全権代表団編成過程
1 北京政府の対外一致政策と全権代表
2 ワシントン会議と広東政府 —— 南北交渉を中心に
3 代表団の形成と解体
第5章 関東大震災と中国外交
—— 北京政府外交部の対応を中心に
1 「震災」という外交案件の発生
2 地方の眼 —— 外交部と浙江省・吉林省・上海市
3 王正延派遣と事後処理
小 括
結 語
注
あとがき
初出一覧
参考史料・文献
事項索引
人名索引
受 賞
書 評
【読売新聞書評】