内 容
中国は不平等条約体制の被害者だったのか。華人保護を名目とする南洋領事設置の模索から、領事裁判権の行使に至る中国の対外政策の近代的変容を徹底的に実証、条約体制の平等/不平等のみを問う既存の理解を大きく乗り越えて、近代アジアの国際関係の実像を新たな水準で描き出す。
目 次
凡 例
序 章 領事制度と近代中国
はじめに
1 領事制度とその中国への伝播
2 華人保護と領事裁判
3 南洋・南洋華人と清朝
おわりに —— 本書の目的と構成
第Ⅰ部 華人保護論の展開と在外領事拡大論議
第1章 在外領事像の模索
—— 領事派遣開始前後の設置論
はじめに
1 在外領事の派遣開始と領事論の変化
2 在シンガポール領事左秉隆の提言 —— 領事官による領事増設論
おわりに
第2章 南洋華人調査の背景と西洋諸国との摩擦
はじめに
1 調査実施の背景
2 西洋諸国との調査委受け入れ交渉
おわりに
第3章 南洋華人調査の実施
—— 華人保護と領事設置の予備調査
はじめに
1 調査委員の概要
2 第一次調査(1886~87年)
3 第二次調査(1887~88年)
おわりに
第4章 清朝政府の領事拡大論議
—— 在外領事と華人保護の有益性をめぐって
はじめに
1 張之洞の領事増設計画
2 総理衙門の反対上奏(1888年)
3 張蔭桓の動向と南北洋大臣・在外公使の反応
4 薛福成の領事増設論(1890年)
おわりに
第5章 駐英公使薛福成の領事設置活動とその挫折
—— 総理衙門との論争を中心に
はじめに
1 イギリス政府の “同意” と総理衙門への建議
2 総理衙門との電報問答
3 総理衙門内の “妨害者” と領事設置活動の継続
おわりに
第Ⅱ部 中国の在外領事裁判と東アジア
第6章 双務的領事裁判権をめぐる日清交渉
はじめに
1 日清修好条規以前の在日華人に対する処置
2 双務的領事裁判規定の成立 —— 日清修好条規締結交渉(1870~71年)
3 双務的領事裁判規定のゆくえ —— 改定交渉(1872~80年代)
おわりに
第7章 清朝の在朝鮮領事裁判規定の成立と変容
——〈宗属・片務〉関係から〈対等・双務〉関係への転換
はじめに
1 商民水陸貿易章程(1882年)における片務的裁判権規定の成立
2 清韓通商条約(1899年)における双務的領事裁判規定の成立
おわりに
第8章 日本・朝鮮における清朝領事裁判の実態と変容
はじめに
1 日本における領事裁判と観審
2 朝鮮・韓国における清朝機関による華人管理と裁判
むすびにかえて —— 中国法制史との関連で
第9章 在ベトナム領事の設置をめぐる対仏交渉
—— 清朝による領事裁判権要求と「属邦」論
はじめに
1 ベトナムにおける領事設置権の設定 —— 天津条約(1885年)
2 清朝による領事裁判権要求と「属邦」論 —— コゴルダン条約(1886年)
3 在外領事拡大か、内地開放阻止か —— 1887年交換公文からの半世紀
おわりに
第10章 近代日中の “交錯” と “分岐” の軌跡
——- 領事裁判権をめぐって
はじめに
1 “分岐” の時(1871年) —— 日本の「条約改正」への始動と日清修好条規の成立
2 交わらぬ道(1886~88年) —— 日清修好条規の改定交渉と日清の領事裁判観
3 双務的領事裁判権の再要求 —— 日清通商航海条約締結交渉(1895~96年)
おわりに
終 章 近代アジア国際関係史への新たな視座
—— 華人保護と領事裁判権から見た「近代」的変容
はじめに
1 清末の領事拡大論議と不平等条約体制
2 清朝領事とその設置過程の特質
3 東アジアの国家間関係の指標としての領事裁判権
おわりに —— まとめと展望
註
あとがき
文献一覧
図表一覧
索 引
書 評
『東アジア近代史』(第18号、2015年3月、評者:森万佑子氏)