内 容
アジアから問い直す —— 。奴隷国家から移民国家へ転換したとされるアメリカ。しかし、そこには「中国人問題」が存在した。南北戦争後の国家と社会の再編のなか、アメリカの帝国的拡大と人種やセクシュアリティや労働の問題が交錯する〈アメリカ人〉の境界画定の動きを、多角的かつ重層的に読み解き、アメリカ史像の核心をうつ力作。
目 次
序 論
1 問題設定 —— アジアから問う「移民国家」アメリカの生成
2 本書の分析枠組み —— 研究史の批判的考察
第Ⅰ部 南北戦争・再建期の「中国人問題」移民流入~1882年
第1章 移民と「苦力」
—— 奴隷解放期のグローバル・ヒストリー
はじめに
1 苦力・中国人移民流出のはじまり —— 世界システムと珠江デルタ地域
2 中国人移民の渡航システムと苦力規制の動き
3 清朝政府の移民政策と多様な海外ネットワーク
結び 奴隷国家から移民国家への険しい道
第2章 サンフランシスコの民衆世界と排華運動
はじめに
1 サンフランシスコの都市形成と民衆世界 —— 西部開拓と中国人労働者
2 チャイナタウンの都市生活 —— 中国人擁護派と排斥派の対立
3 中国人売春婦問題とサンフランシスコの性の政治
4 暴動の発生 —— 都市の秩序と暴力
結び 排華運動の構図 ——「金ぴか時代」のサンフランシスコ社会
第3章 連邦政府の中国人移民政策
—— 1868年バーリンゲイム条約から1882年排華移民法へ
はじめに
1 自由労働と移民国家 —— バーリンゲイム条約の成立
2 再建期の〈アメリカ人〉の形成と「中国人問題」
3 再建政治の挫折と〈国民〉の選定
4 排華法の制定過程
結び 1882年排華移民法成立の歴史的意義
第4章 〈アメリカ人〉の境界と中国人移民
—— 風刺画のなかのネーション・セクシュアリティ・人種
はじめに
1 カリフォルニアの黒人化する中国人
2 南北戦争と再建政治 —— トマス・ナストの問いかけ
3 人種混交の物語 —— セクシュアリティのポリティクス
4 「人種」の分類と再建政治の変質
結び 歴史のなかの想像力 —— 南北戦争の戦後論
第Ⅱ部 排華移民法成立以後の「中国人問題」 1882~1906年
第5章 労働騎士団の結社の文化と「中国人問題」
—— 1885年ロックスプリングズ暴動
はじめに
1 労働騎士団の労働文化再考 —— 金ぴか時代における儀礼の社会的機能
2 ロックスプリングズ暴動と労働騎士団
結び 「中国人問題」と自由労働イデオロギーの終焉
第6章 世紀転換期の中国人移民政策の変容
——〈アメリカ人〉の境界の帝国的再編
はじめに
1 在米中国人社会の変貌
2 1882年排華移民法成立の余波
3 門戸開放政策と排華運動の沈静化
結び 排華運動の鎮静化と帝国意識の効能
結 語 アメリカ合衆国における「中国人問題」の歴史的意義
1 「中国人問題」をつくりだしたもの
2 「中国人問題」がつくりだした〈アメリカ人〉の境界
3 アジアから問う移民国家アメリカの行方
—— ポスト9・11とアジア系移民の歴史経験
あとがき
注
史料文献一覧
図表一覧
索 引
受 賞
書 評
『史学雑誌』(第122編第8号、2013年、評者:馬暁華氏)
『歴史学研究』(2013年7月号、第907号、評者:村田勝幸氏)
『東京大学 アメリカ太平洋研究』(第13号、2013年、評者:戸田山祐氏)
『CAPS ニューズレター』(第117号、2013年1月、評者:中野由美子氏)
『アメリカ学会会報』(第181号、2013年4月、評者:山本明代氏)
関連書
『国際移民の時代[第4版]』 S.カースルズ 他著/関根政美 他監訳
『帝国のフロンティアをもとめて』 東 栄一郎 著/飯島真里子・今野裕子・佐原彩子・佃 陽子 訳