内 容
アメリカの「自由と民主主義」はなぜ「人種」問題を解決できないでいるのか。またそれはグローバル化の進行の中でどのような意味を持つのか。——「普遍的」価値体系としてのアメリカニズムと「人種」の関係を、植民地時代以来の多元的な歴史と、現代アメリカ社会における困難という二つの軸で捉え、全体像を浮き彫りにする。
執筆者一覧
(執筆順、*は編者)
*川島正樹 (はじめに・第6章・第7章・おわりに)
古矢 旬 (序章)
西出敬一 (第1章)
真下 剛 (第2章)
佐藤 円 (第3章)
貴堂嘉之 (第4章)
中野耕太郎 (第5章)
中村雅子 (第8章)
松本悠子 (第9章)
小澤英二 (第10章)
中野博文 (第11章)
峯 陽一 (終章)
目 次
はじめに
序 章 アメリカニズムと「人種」
—— その原点と現在
1 「人種問題」の現在 —— アメリカ社会の二極化
2 アメリカニズムの創出と「人種」概念の変容
3 20世紀アメリカニズムと「人種問題」
おわりに
第Ⅰ部 アメリカ史と「人種」
第1章 アメリカ史の初期設定と「人種」
1 黒人奴隷制度の形成
2 奴隷制と人種偏見
3 奴隷制と人種主義
第2章 奴隷制廃止運動と「人種」
1 奴隷所有共和国の成立
—— 奴隷財産の保持と黒人「除去」の願望
2 北部における漸進的奴隷解放
—— 自由黒人の「向上」追求と白人による抑圧・排除
3 奴隷制即時廃止運動の展開 —— 人種観の固定化
4 政治的アボリショニズムの伸張 ——「建国理念」の再構築
第3章 インディアンと「人種」イデオロギー
—— チェロキー族の黒人奴隷制を事例に
1 チェロキー族固有の奴隷制
2 インディアン奴隷交易への参入
3 黒人奴隷交易と人種意識の受容
4 チェロキー族の「文明化」と黒人奴隷制
5 チェロキー族の奴隷取締法
おわりに
第4章 未完の革命と「アメリカ人」の境界
—— 南北戦争の戦後50年論
1 問題の所在 —— 戦後社会における国民化と人種化の相克
2 もう一つの奴隷制 —— 環太平洋世界の人の移動
3 戦後社会の時空間 —— 国民化と人種化の時代としての再建期
4 世紀転換期における国民の帝国的再編 —— 移民制限と海外領土問題
第5章 新移民とホワイトネス
—— 20世紀初頭の「人種」と「カラー」
1 ハンキー・ステレオタイプと移民政策の形成
2 揺れ動く「カラー」の境界
3 「大移動」と超愛国主義
おわりに —— カラーラインの全国化とアメリカナイゼーションの完成
第6章 公民権運動から黒人自立化運動へ
—— 南部を中心に
1 モントゴメリーとリトルロック
2 南部公民権運動の高揚
3 ミシシッピの「自由の夏」
4 「ヘッドスタート」
5 真の自立化を目指して
第Ⅱ部 現代アメリカと「人種」
第7章 住宅と「人種」
1 居住区隔離の現状と歴史的展望
2 北部都市の事例から
3 「北部化」する南部
おわりに —— グローバル化の中で
第8章 教育と「人種」
—— 再隔離とアファーマティヴ・アクション
1 ブラウン判決 —— その背景と意義
2 公教育における人種隔離廃止へのとりくみ —— ブラウン判決後の展開
3 平等な教育機会の模索 —— 共学化と補償教育
4 高等教育におけるアファーマティヴ・アクション
5 教育における「人種」——カラーコンシャス v. カラーブラインド
第9章 「人種」と結婚
—— 人種混淆をめぐる政治学
1 異人種間結婚禁止法
2 異人種間結婚のもつ意味
3 多人種主義運動と2000年センサス
4 人種混淆とジェンダー
5 鏡としてのブラジル
おわりに
第10章 スポーツにおける「人種」
1 スポーツ・レイシズムの発生と展開
2 スポーツ界における「人種統合」の展開
3 スポーツにおける黒人の「身体的優位」と「スタッキング」
4 スポーツにおけるアファーマティヴ・アクション
おわりに —— スポーツにおける「平等」とは
第11章 「人種」をめぐる権利政治
—— 20世紀アメリカ国家とその市民像
1 21世紀のカラーライン
2 権利革命の衝撃 —— 20世紀国家の形成と発展
3 アメリカ市民の条件 —— 人種的排斥を生み出す政治の論理
4 多文化主義への疑問 —— 市場経済と道義的共同体の狭間で
5 21世紀アメリカの課題
終 章 アメリカの経験、南アフリカの経験
1 植民地化の時代
2 人種隔離体制の成立と起源
3 アメリカとアフリカのフロンティア
おわりに —— 収斂し、分岐する課題
おわりに —— 過去の清算から未来の展望へ
索 引