書籍の内容
自己と他者が歴史世界において出会う事実そのものに「聞き入る」こと、すなわち物語以前の歴史経験の構造を、東西の諸思想を介して考察。その深層に、共生の感覚としての悲しみと闊達さを探りあてるとともに、歴史時間と主体のあり方を明るみに出し、歴史哲学に新次元をきりひらいた思考の結晶。
書籍の目次
序 章 「歴史忘却」と共通感覚、あるいは「悲」
1 歴史忘却の経験
2 「全身聴覚」
3 歴史時間と「悲」
第Ⅰ部 歴史哲学の歴史
第1章 歴史の形而上学へ
—— ヘロドトスからカントまで
1 ヘロドトスとトゥキディデスとのあいだ
2 中国と日本の歴史思想
3 アウグスティヌスの「聞くこととしての歴史」
4 カント
第2章 形而上学となった歴史哲学
—— “nach” ヘーゲル
1 鍵語としての「精神」
2 ゲルマン世界、あるいは「外部」をもたない「近代」
3 絶対者の「内なる外部」
4 端的な「外部」としての他者
第3章 歴史思惟の三つの転回
1 歴史思惟の実証主義的転回
2 歴史思惟の言語論的転回(1)
3 歴史思惟の言語論的転回(2)
4 歴史思惟の現象学的転回(1)
5 歴史思惟の現象学的転回(2)
第Ⅱ部 「歴史の感性」としての共通感覚
第4章 場所としての言葉
—— 西田哲学と分析哲学を介して
1 「世界-起-言語」
2 「世界-起-言語」の例
3 「世界-起-言語」と「世界-内-言語」との関係
4 言語論的転回の再解釈
5 「言語以前」としての感性
第5章 歴史における美の感性
—— アドルノを介して
1 歴史世界の「美と醜」
2 感性の社会的・歴史的限定
3 感性の身体的限定
4 「醜」再説 ——「死者」世界との共感
5 「共通感覚」の深層
第6章 「共通感覚」と「悲」
—— ベンヤミンを介して
1 暴力批判論の美学的見地
2 暴力批判論の鍵としての「共通感覚」
3 暴力主体にとっての「他者の不在」
4 ヘーゲルの神とヨーナスの神
5 再び「共通感覚」の深層へ
第Ⅲ部 「歴史時間」と悲
第7章 「身心時間」
—— 道元を介して
1 「目的論的」時間と「終末論的」歴史
2 「哲学」と「非・哲学」とのあいだ
3 心身・時間・世界
4 「歴史時間」の成立
第8章 歴史時間と「最後の神」
—— ハイデッガー『哲学への寄与論稿』
1 『哲学への寄与論稿』というテキスト
2 「性起」の「響き」を「聞くこと」
3 「歴史時間」の構造と現代位相
4 「最後の神の傍過」
5 「根本気分」と「悲」
第9章 聞くこととしての現代
—— 超歴史的なものと伝統
1 京都学派の歴史哲学と本書との位置関係
2 時代区分の成立根拠
3 歴史時間と「エポック」
4 「超歴史的なもの」と「伝統」
注
あとがき
初出一覧
索 引
書籍の書評紹介
【東京新聞・中日新聞書評】
【日本経済新聞書評】