内 容
文学的ゆえに科学的? 真実と物語のあいだで揺れ動き、その意義を問われてきた歴史。ポストモダニズムの懐疑を乗り越えた後で、いかにして「歴史の論理」を立て直すことができるのか。自らの実践に基づき、社会科学と文学の手法を和解させ、歴史記述を刷新するための挑戦の書。『メタヒストリー』以後の新たな歴史論であり、好評既刊『私にはいなかった祖父母の歴史』の姉妹編。
【ALL REVIEWS】『図書新聞』書評(2019年1月1日号、第3381号、評者:鹿島徹氏)
著者紹介
イヴァン・ジャブロンカ
(Ivan Jablonka)
1973年生まれ。現在,パリ第13大学教授。本書の実践編でもある『私にはいなかった祖父母の歴史』(2012年。邦訳は田所光男訳、名古屋大学出版会、2017年)によってアカデミー・フランセーズ・ギゾー賞、歴史書元老院賞、オーギュスタン・ティエリ賞を受賞。ほかの著作に『レティシア』(2016年、メディシス賞、ル・モンド文学賞受賞)などがある。
目 次
序 説
歴史を書く
現実についての文学
研究としてのテクスト
第Ⅰ部 大いなる離別
第1章 歴史家、弁論家、作家
悲劇としての歴史
雄弁としての歴史
賛辞としての歴史
宮廷史に抗して
作家と文学の誕生
歴史あるいは「第三の教養」
第2章 小説は歴史の父か
シャトーブリアンと歴史としての叙事詩
スコットと歴史小説
真理をめぐる戦い
創造者としての歴史家
バルザックと道徳科学
第3章 科学としての歴史と「文学という黴菌」
自然主義の方法
科学としての歴史の登場
客観的モード
見者と大学教授の対立
忘れられた二千年
テクストならざるものの誕生
社会科学と「生」
第4章 抑圧された文学の回帰
ナラティヴィスムの「スキャンダル」
「レトリックの転回」
文学の「誘惑」
離婚ののち
第Ⅱ部 歴史の論理
第5章 歴史とは何か
真理の効果
ミメーシスからグノーシスへ
人間が行うことを理解する
原因の説明と理解
世界の整理
第6章 科学としての歴史を書く作家たち
ヘロドトスの論理
アリストテレスとキケロのレトリック
16世紀における科学としての歴史
1690年の精神
真理についての怒り
第7章 真理陳述の作業
距 離
調 査
比 較
証 拠
反 駁
真理についての記述
第8章 方法としてのフィクション
フィクションの地位
啓示としてのフィクション
離 反
信憑性
概念と理論
叙述の手法
フィクションを活性化する
第Ⅲ部 文学と社会科学
第9章 ノンフィクションから真理としての文学へ
管轄外地域
ポスト=レアリスム
ノンフィクション文学
フィクション
事実に基づくもの
文学的なもの
文学と真実の探究
第10章 歴史は拘束された文学なのか
規則は解放する
文体の豊かさ
注の偉大さと悲惨さ
注なき証拠
社会科学の現代化
第11章 研究としてのテクスト
研究者の状況
方法としての「私」
調査を物語る
透明性と有限性
反省的モード
第12章 21世紀の文学について
調査あるいは脱専門化の時代
新たなキケロ主義のために
反=文学
機は熟した
抵抗の精神
謝 辞
訳者あとがき
注
作品名索引
人名索引
書 評
『みすず』(2023年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:上村忠男氏)
日本経済新聞(2022年2月26日付、読書欄「半歩遅れの読書術」、評者:上野誠氏)
『みすず』(2022年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:犬塚元氏)
『西洋史学』(第268号、2019年12月、評者:岡本充弘氏)
『みすず』(2020年1・2月合併号、読書アンケート特集、評者:上野千鶴子氏)
東京新聞・中日新聞(2018年12月23日付、読書欄特集「2018 私の3冊」、評者:小倉孝誠氏)
『図書新聞』(2019年1月1日号、第3381号、評者:鹿島徹氏)
『週刊読書人』(2018年7月27日号、第3249号、評者:立川孝一氏)
『図書新聞』(2018年7月21日号、第3360号、特集「2018年上半期読書アンケート」、評者:小倉孝誠氏、澤田直氏)
『フレグランスジャーナル』(第46巻第6号、2018年6月号)
姉妹編『私にはいなかった祖父母の歴史』
『私にはいなかった祖父母の歴史』 イヴァン・ジャブロンカ 著/田所光男 訳
関連書
『歴史家と少女殺人事件』 イヴァン・ジャブロンカ 著/真野倫平 訳
『アンチモダン』 アントワーヌ・コンパニョン 著/松澤和宏 監訳
『ナチズムと歴史家たち』 P.シェットラー 編/木谷 勤・小野清美・芝 健介 訳
『接続された歴史』 S.スブラフマニヤム 著/三田昌彦・太田信宏 訳
『近代科学のリロケーション』 カピル・ラジ 著/水谷 智・水井万里子・大澤広晃 訳
『フィクションとは何か』 ケンダル・ウォルトン 著/田村 均 訳