内 容
西洋中心でもなく、地域主義でもなく ——。科学的な「知」はどこで、いかにして生まれたのか。植物学や地理学から、法、教育の分野まで、近代的な学知の形成において植民地のアクターが果たした役割に注目し、帝国のネットワークにおける移動・循環の中で科学が共同的に構築される現場を描き出す画期的な書。
著者紹介
カピル・ラジ
(Kapil Raj)
デリー大学で修士号取得、パリ第一大学で博士号取得。フランス国立高等電気通信学校、リール第三大学などで教鞭をとり、現在、フランス社会科学高等研究院教授。
(所属などは本邦訳刊行時のものです。)
目 次
序 章
第1章 外科医、
—— 近世南アジアにおけるランプルールの『オリシャの庭園』の制作
はじめに
パリの文書館の忘れられた古写本から……
……17世紀のインド東部まで
『オリシャの庭園』の起源
『オリシャの庭園』の制作
『オリシャの庭園』と『マラバール植物誌』
ランプルールの『庭園』がパリに到達して……
……王立植物園において匿名のものになる
ま と め
第2章 循環と近代的地図作成法の出現
—— イギリスと初期植民地インド、1764~1820年
はじめに
近世イギリス・インドの地理学的実践
インドとイギリスにおける大規模測量の出現
「客観的な」地理的表象としての地図の出現
ま と め
第3章
—— ウィリアム・ジョーンズ、インド人仲介者、そして18世紀後半のベンガルに
おける信頼度の高い法知識の創出
カルカッタ判事のとある一日
知識の生産における信用と洗練性
科学と東インド会社
オリエンタリストの誕生
インドのジョーンズ
ジョーンズの遺産再考
第4章 19世紀初頭におけるイギリスの
グローバリズム対
はじめに
イギリスとフランス革命
19世紀転換期におけるインド、イギリス、フランス
フランスに対抗するためのカレッジ
イギリスの組織としてのカレッジ
第5章 普及論を打破する
—— 19世紀初期ベンガルにおける近代科学教育の制度化
近代科学教育のためのカレッジ
近代科学とボッドロロクの自己成型
19世紀初期にイギリス人に混じって学問をするということ
先住者による科学表象 —— 2つの例
ま と め
第6章 旅人が機器になるとき
—— 英領期の南アジア人による19世紀の中央アジア探検
カシュミール、1863年
東トルキスタン、1863~64年
チベット、1864~66年
高地アジア、1868~82年
チベット、1904年
機器、旅、そして科学
終 章 リロケーション
謝 辞
訳者あとがき
注
参考文献
図版一覧
索 引
書 評
『西洋史学』(第265号、2018年6月、評者:水野祥子氏)
『化学史研究』(第44巻第3号、2017年9月、評者:栢木清吾氏)
『みすず』(第656号、2017年1・2月合併号、評者:増田耕一氏)
『図書新聞』(第3284号、2016年12月24日、評者:坂野徹氏)
関連書
『リヴァイアサンと空気ポンプ』 スティーヴン・シェイピン、サイモン・シャッファー 著/吉本秀之 監訳/柴田和宏・坂本邦暢 訳
『客観性』 ロレイン・ダストン,ピーター・ギャリソン 著/瀬戸口明久・岡澤康浩・坂本邦暢・有賀暢迪 訳
『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』 ピーター・ギャリソン 著/松浦俊輔 訳
『科学ジャーナルの成立』 アレックス・シザール 著/柴田和宏 訳/伊藤憲二 解説
『接続された歴史』 S.スブラフマニヤム 著/三田昌彦・太田信宏 訳