内 容
客観性とは何か。科学はいかにして「客観的なもの」と向き合うようになったのか ——。近世の博物学や解剖学から、写真の衝撃を経て、現代のナノテクノロジーまで、科学者の実践や「認識的徳」の展開をたどり、客観性の歴史を壮大なスケールで描き出した名著、待望の邦訳。カラー図版多数。
著者紹介
ロレイン・ダストン(Lorraine Daston)
マックス・プランク科学史研究所名誉所長。18世紀の確率論や、初期近代の博物学における驚異などを幅広く研究してきた科学史家。主な著作に、Wonders and the Order of Nature, 1150–1750(共著、1998年)、Against Nature(2019年)などがある。
ピーター・ギャリソン(Peter Galison)
ハーヴァード大学教授。実践に注目した科学史研究を牽引し、近年はドキュメンタリー映像の制作にも携わる。主な著作にImage and Logic(1997年)など、邦訳に『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』(名古屋大学出版会、2015年)がある。
(所属等は本邦訳書初版第1刷発行時のものです。)
目 次
凡 例
ペーパーバック版前書き
初版前書き
プロローグ 客観性の衝撃
第1章 眼の認識論
盲目的視覚
集合的経験主義
客観性は新しい
科学的自己の歴史
認識的徳
本書の議論
普段着姿の客観性
第2章 本性への忠誠
客観性以前
自然の可変性を飼いならす
観察のなかの理念
四眼の視覚
自然を写生する
客観性以降の本性への忠誠
第3章 機械的客観性
曇りなく見る
科学および芸術としての写真
自動的図像と盲目的視覚
線画と写真の対立
自己監視
客観性の倫理
第4章 科学的自己
なぜ客観性なのか
科学者の主観(主体)
科学者のなかのカント
科学者のペルソナ
観察と注意
知る者と知識
第5章 構造的客観性
図像のない客観性
心の客観的科学
実在的なもの、客観的なもの、伝達可能なもの
主観性の色
神ですら言えないこと
中立的な言語の夢
宇宙規模の共同体
第6章 訓練された判断
機械的複製の不安
客観性のために正確性を犠牲にすべきではない
判断のアート
実践と科学的自己
第7章
見ることは存在すること —— 真理・客観性・判断
見ることはつくること —— ナノファクチュア
正しい描写
謝 辞
訳者あとがき
注
索 引
書 評
河北新報(2021年12月26日付、読書欄特集「わたしの3冊 2021」、評者:古田徹也氏)ほか計18地方紙
毎日新聞(2021年12月18日付、読書欄特集「2021 この3冊 下」、評者:内田麻理香氏)
『図書新聞』(2021年12月18日号、第3524号、特集「21年下半期読書アンケート」、評者:坂野徹氏)
Tokyo Academic Review of Books(TARB、2021年9月15日、評者:岡澤康浩氏)
関連書
『科学ジャーナルの成立』 アレックス・シザール 著/柴田和宏 訳/伊藤憲二 解説
『アインシュタインの時計 ポアンカレの地図』 ピーター・ギャリソン 著/松浦俊輔 訳
『リヴァイアサンと空気ポンプ』 S.シェイピン・S.シャッファー 著/吉本秀之 監訳/柴田和宏・坂本邦暢 訳
『近代科学のリロケーション』 カピル・ラジ 著/水谷 智・水井万里子・大澤広晃 訳
『20世紀物理学史』(上下巻) ヘリガ・カーオ 著/岡本拓司 監訳/有賀暢迪・稲葉 肇 他訳