内 容
ニュートン以後、自然哲学との決別を通して力学は生まれ直した。惑星の運動から球の衝突まで、汎用性をもつ新たな学知として立ち上がる過程を丹念に追跡。オイラーの果たした画期的役割を、ライプニッツやベルヌーイ、ダランベールやラグランジュらとの関係の中で浮彫りにする。
目 次
序 論 力の起源をたずねて
第1章 18世紀力学史の歴史叙述
1 解析化と体系化
2 活力論争と力の概念
3 「力学」の誕生
第Ⅰ部 活力論争と「運動物体の力」の盛衰
第2章 17世紀の自然哲学における「運動物体の力」
1 物体の中の「力」と衝突の問題 —— デカルト
2 「固有力」と「刻印力」—— ニュートン
3 「活力」と「死力」——ライプニッツ
第3章 活力論争の始まり
1 ドイツ語圏での支持拡大
2 オランダからの反応
3 フランスでの論戦の始まり
第4章 活力論争の解消
1 ダランベールの「動力学」構想
2 モーペルテュイの最小作用の原理
3 オイラーによる「慣性」と「力」の分離
小括 「運動物体の力」の否定とそれに替わるもの
第Ⅱ部 オイラーの「力学」構想
第5章 「動力学」の解析化
1 活力と死力、その異質性
2 活力と死力、その連続性
3 死力による活力の生成
第6章 活力論争における衝突理論の諸相と革新
1 衝突の法則と物質観
2 ス・グラーフェサンデによる「力」の計算
3 パリ科学アカデミー懸賞受賞論文
4 ベルヌーイによる衝突過程のモデル化
5 オイラーによる「運動方程式」の利用
第7章 オイラーにおける「力学」の確立
1 活力と死力の受容
2 「動力」、「静力学」、そして「力学」
3 ライプニッツ-ヴォルフ流の「力」理解に対する批判
小括 「力学」の誕生
第Ⅲ部 『解析力学』の起源
第8章 再定義される「動力学」と、その体系化
1 パリ科学アカデミーにおける「動力学」の出現
2 「力」の科学から運動の科学へ
3 ダランベールの「一般原理」と、そのほかの「一般原理」
第9章 作用・効果・労力
—— 最小原理による力学
1 弾性薄板と軌道曲線における「力」
2 「労力」の発見
3 最小労力の原理
4 2つの最小原理、2つの到達点
第10章 ラグランジュの力学構想の展開
1 「動力学」のさらなる体系化
2 「普遍の鍵」としての最小原理
3 「一般公式」の由来と『解析力学』の力概念
小括 静力学と動力学の統一、あるいは衝突の問題の後退
結 論 自然哲学から「力学」へ
あとがき
補 遺
年 表
注
参考文献
索 引
書 評
『日本物理学会誌』(2019年11月号、第74巻第11号、評者:岡本拓司氏)
『科学史研究』(2019年10月号、第Ⅲ期第58巻第291号、評者:中澤聡氏)
関連書
『20世紀物理学史』(上下巻) ヘリガ・カーオ 著/岡本拓司 監訳/有賀暢迪・稲葉 肇 他訳