内 容
スミス経済学など、社会科学の形成に与えたニュートン主義の影響を、実験哲学の導入、科学と道徳世界の統合による発展とその解体過程への着目から本格的に解明、決定論的世界像というニュートン主義の通俗的解釈を排し、その多様な相貌と近代知のあり方に残した航跡を鮮やかに描き出す。
目 次
はじめに
第1章 ニュートン主義の定義・方法・機関
—— プロジェクターたちのアカデミー
1 「ニュートン」という名前
2 「ニュートン」というプロジェクト
3 道徳世界と自然
第Ⅰ部 スコットランドのニュートン主義
第2章 根源への終わりなき階梯
—— 18世紀前半の世界喩と初期ニュートン主義
1 ニュートン主義と線形性
2 文人たちのニュートン批判
3 ハチンスン主義者ダンカン・フォーブズ
4 初期ニュートン主義と混沌としての世界
第3章 無限性の迷宮
—— バークリ『解析者』とマクローリン『流率論』
1 数学批判者としてのバークリ
2 ニュートン派の数学者マクローリン
3 『解析者』とニュートン主義者たち
4 自然哲学と意志としての神
5 数学における無限をめぐって
第Ⅱ部 道徳哲学とニュートン主義
第4章 動力のない機械
—— ターンブルと道徳世界・自然法則・神の手
1 魔術と外在性
2 ニュートン主義の道徳哲学
3 道徳世界と外部
4 神の自由、人間の自由
第5章 北東のラピュータ
—— アバディーン啓蒙と実験哲学
1 経験科学と道徳哲学 —— アバディーン哲学協会
2 総合科学の構想と方法 —— 大学改革
3 科学方法論としての論理学
4 社会科学におけるニュートン主義の問題性
第6章 壊れやすい時計
—— ニュートン主義の政治経済学
1 自由主義、有機的秩序、理性の不完全性
2 実験哲学の方法と政治経済学
3 偉大な時計職人
4 完全な時計
第Ⅲ部 盛期啓蒙と実験哲学
第7章 永久機関と力
—— 初期ニュートン主義への挑戦
1 ニュートン批判としてのケイムズ運動論
2 ケイムズの自然像と神の役割の転換
3 18世紀化学革命の物質観
4 初期ニュートン主義の転換
5 実験哲学とキリスト教社会主義のユートピア
第8章 「道徳哲学のニュートン」
1 「天文学史」と「ニュートンの方法」
2 スミスの方法の起源
3 普遍主義的体系と相対主義的科学論
第9章 帝国、産業、そして実験
1 哲学的政治学の退場
2 道徳哲学の終焉と「社会科学における実験」
3 結 論
あとがき
註
参考文献
索 引
受 賞
著者の既刊書
『知識経済の形成』 ジョエル・モキイア 著/長尾伸一 監訳/伊藤庄一 訳