内 容
明治40年前後における小説技法の革命的転換を、グローバルかつ領域横断的な目配りによって考古学的に跡づけた労作。特に心理学・映画からの理論上・技法上の影響を中心に、小説技法成立史上まれに見る百花斉放期を、同時代読者の読みに即して描き出す。
目 次
プロローグ 小説の考古学へ
第Ⅰ部 人称・自我・主観客観/多元描写
漱石と一人称体
『彼岸過迄』の実験
『行人』と二つの〈自我〉
多元描写の試みと挫折
第Ⅱ部 感覚・感情・表情/モンタージュ
『それから』の感覚描写
クローズアップ論序説
第Ⅲ部 記憶・回想・意識の流れ/心理学
寅彦散文の追憶の方法
「回想」の発見と表現
追憶の遠近法と女たちの声 ——『野菊の墓』
第Ⅳ部 写生文からの離陸
写生文・映画・時間 —— 過去形表現の成立
虚子小説における同時代的課題 —— 「欠び」を例として
第Ⅴ部 今、なぜ同時代研究か
今、なぜ同時代研究か —— 日本近代文学研究の転換点
同時代読者の読みを求めて
「青年期の研究」としての『青年』
『心』の考古学 —— 農村問題を中心として
あかり革命下の『明暗』
エピローグ 江藤淳の漱石研究について —— 読みの方法との関連で
あとがき