内 容
新たな文体は新たな社会をつくる ——。小説中心主義を脱し、政論・史論から翻訳・哲学まで、徳富蘇峰を起点にして近代の「文」の歩みを辿りなおし、新興の洋文脈と在来の和文脈・漢文脈の交錯から、それまでにない人間・社会像や討議空間が形づくられる道程をつぶさに描いた意欲作。
目 次
凡 例
序 章 徳富蘇峰という始点
1 精神的開国の始まり
2 文学者としての徳富蘇峰
3 文は道を載るの器なり
4 本書の内容
5 表現欲の履歴
第Ⅰ部 精神的開国
第1章 徳富蘇峰の出発
1 はじめに
2 キリスト教、コブデン、ブライト
3 福沢諭吉と徳富蘇峰
4 『将来之日本』
5 帝都の大家へ
第2章 徳富蘇峰の思想と文体
1 はじめに
2 平民主義の展開
3 欧文直訳体
4 故郷の発見
5 宮崎湖処子『帰省』
6 山林に自由存す
第3章 徳富蘇峰の人物論
1 はじめに
2 「ジヨン、ブライト」と『人物管見』
3 解剖への自覚
4 『吉田松陰』
5 星野天知と北村透谷
6 徳富蘇峰の相続人たち
第Ⅱ部 文学者の顔と政治家の顔
第4章 ポヱチカルな俗語
1 はじめに
2 二葉亭四迷の文体実験
3 平民主義と俗語
4 内田魯庵訳『罪と罰』
5 山路愛山の史論
6 19世紀末の討議空間
第5章 社会の罪を暴く
1 はじめに
2 徳富蘇峰と森田思軒
3 ユゴーへの賛同
4 樋口一葉「にごりえ」
5 娼婦小説の流行
6 写実主義の改訂版
第6章 移譲される風景論
1 はじめに
2 志賀重昴と徳富蘇峰
3 『日本風景論』
4 美意識の動員
5 文学青年たちの風景論
6 新思想の移譲
第7章 文明史から文学史へ
1 はじめに
2 文明史の輸入
3 文学史の勃興
4 排斥される慷慨
5 偉人化する文学者
6 人心の共同研究
第Ⅲ部 成長する不健全
第8章 深刻の季節
1 はじめに
2 懐疑する泉鏡花
3 変貌する尾崎紅葉
4 告白する国木田独歩
5 心の革命
第9章 群生する人生観
1 はじめに
2 北村透谷の厭世
3 人物論型の文学研究
4 高山樗牛の本能
5 自然主義の隆盛
6 知識人の使い道
第10章 女哲学者、平塚らいてう
1 はじめに
2 小説と哲学の協力
3 極大の時空間
4 小栗風葉「さめたる女」
5 森田草平『煤煙』
6 思想先づ動きて動作生ず
第11章 煽動する告白
1 はじめに
2 自然主義文壇の告白
3 『青鞜』と田村俊子
4 平塚らいてうの共同生活
5 私的なものの擁護
終 章 文の明治史
1 青年を育てる
2 討議空間を作り直す
あとがき
初出一覧
図表一覧
索 引
書 評
『日本近代文学』(第109集、2023年11月、評者:山田俊治氏)
『日本文学』(2023年7月号、第72号、評者:大橋崇行氏)
『中央公論』(2023年5月号、「新刊この一冊」、評者:栗原悠氏)
『図書新聞』(2023年4月8日号、第3586号、評者:中山弘明氏)